アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

昔のアメコミを紹介しています

EARTH X #X

2000年 JUN

JIM KRUEGER : story and script

ALEX ROSS : story, cover and character design

JOHN PAUL LEON : pencils

 

 X-51アーロン・スタックの父、アベル・スタックは息子に、我々はどのような死を選ぶかが重要だと言っていた。それがアイデンティティになるのだと。トニー・スタークはまさにそのように死んでいた。旧友の亡骸を抱えるキャプテン・アメリカ

 地球では多数のセレスシャルズを相手にギャラクタスが対峙していた。X-51は、セレスシャルズが惑星に自分たちの種を植え付けてきた事、それを守るためにその惑星の生物を改造し惑星を守らせることで種を保護させていた事、ウォッチャーはセレスシャルズに協力し種の成長を見守っていた事を語っていく。だが、セレスシャルズの宇宙規模の計画を阻止しようとする存在が一人だけいた。ギャラクタスだ。だがギャラクタスはリード・リチャーズが星に変え消滅したはずだ。ならば、ここにいるギャラクタスは誰なのか。

 月面では、マンウルフに変身してしまったジョン・ジェイムソンがリード・リチャーズたちに襲いかかろうとしていた。リードは必死にジェイムソンに呼びかけようとするが、X-51は話が通じていないぞと言う。ウアトゥも、お前にできる事は何もないぞリチャーズ、お前たちはマンウルフ同様獣にすぎないのだと言う。

 地上でギャラクタスは巨大な装置を持ち出していた。X-51はそれを見ながら、ギャラクタスはなぜ呼びかけに答えたのかと考える。セレスシャルズがギャラクタスに先制攻撃を行うが、巨大なバリアがそれを阻んでいる。

 海中からサブマリナーことネイモアが飛び立った。彼は太古の時代にセレスシャルズがアトランティスを海に沈めた事を知っていたのだ。アトランティス軍を率い、怒りを込めてセレスシャルズと戦うネイモア。だが海底軍の力もセレスシャルズにはまったく通じない。次々と落とされていく海獣たち。X-51はそれを見ながら、ネイモアは自分が負けると判っている、だがどのように最後の時間を使うかを選んだのだ、父さんは正しかったと考える。

 マンウルフはリードに噛みつき、リードは着けていたドクター・ドゥームガントレットで助かる。X-51はモノリスを展開しジョンを地球へ送った。地上の太陽が出ている側なら月光は当たらずジョンは元に戻るはずだ。ジョンの妻クリスはX-51に、地球が破滅するって言ってたじゃないと抗議。リードは彼女に、我々は成すべきことをしているのだと答える。

 ギャラクタスの使いであるシルバーサーファーシャラ・バルがセレスシャルズと戦っていた。だがシャラ・バルは粉砕され、サーファーは打ち落とされてしまう。ギャラクタスはシャラ・バルの破片を手で受けとめる。ギャラクタスには慈悲深い面があるとリードはX-51に語る。ギャラクタスの持つ装置は完成し、彼はそれをセレスシャルズの一体に向けた。

 強烈な閃光が放たれ、太陽かと思うほど巨大な光球となり、セレスシャルズの一体が真っ二つに吹き飛ぶ。はじめて巨神セレスシャルズが破壊された瞬間だ。X-51は、リードがギャラクタスを星に変えたとしたら、いまいるあれは誰なんだと訊ねる。リードは、彼が以前の事を憶えているか判らない、もし憶えていないならば、彼が勝っても負けても地球は破滅すると言う。リードは、セレスシャルズに植えられた変異種子はいったん発芽したあとも変異を続けて、最終的には変身能力を獲得するようになる、それはセレスシャルズに反抗しないための最終安全装置なのだと説明する。ギャラクタスは装置を使いセレスシャルズを破壊していく。セレスシャルズはギャラクタスに反撃を打ち込む。

 ギャラクタスの体が揺らぎ、装置は吹き飛び、ギャラクタスの巨体は海に倒れた。リードとX-51は、ソーたちアスガルド神族が、異星でセレスシャルズの種子を開花させ変身能力が発現し、地球の民衆の思う通りに変身してしまうことでセレスシャルズへの反撃を封じられていた種族なのだと気付く。そのアスガルド神族が飛来し、セレスシャルズに攻撃を開始した。神々は、ロキの行動から自分たちの正体を悟り、セレスシャルズに逆襲に来たのだ。だが神々の力もセレスシャルズには通じない。沢山の神々が落とされ海に没していく。一方、ネイモアがシルバーサーファーを海面まで運びあげていた。なぜ助けてくれたというサーファーに、妻を失い、正気を失うのがどんなものか余も知っているからだと答える。海面から再びシルバーサーファーが飛び立っていく。家族への思いを胸に戦い続ける彼らを見て、リードはラトヴェリアへ行くとアーロンに言う。メデューサが彼女の息子を見つける手助けをしなければ、と。

 インヒューマンズのところへ現れたリードは、ブラックボルトメデューサの息子がブリテンのところにいると言い、共に英国へ出向く。メデューサは自在に操ることのできる髪をブリテン王に巻きつけ、息子は何処と迫る。ブリテン王が育てていたブラックナイトがインヒューマンズの王子だった。抱きしめ、息子が被っている兜を取るメデューサ

 アスガルド神族の攻撃の間にギャラクタスは再び立ち上がり、目から強力なビームを放ち、ビームは数体のセレスシャルズを貫通。その圧倒的な力を見て、セレスシャルズは宇宙へ去っていく。ギャラクタスも消耗したが、回復すれば地球を滅ぼしに戻ってくるとウアトゥは言う。

 自由の女神像の松明に立って、リードはギャラクタスに呼びかけ、もう一度顔を見せてくれと言う。鉄仮面を外したギャラクタスの素顔は、リードの息子フランクリン・リチャーズだった。驚くウアトゥ。ファンタスティック・フォーの息子として生まれ、最強の超能力を備えていたフランクリンは、アスガルド神族がそうだったように変身能力を獲得し、自分をギャラクタスと思いギャラクタスと化していたのだ。もしもギャラクタスが自分をフランクリンだと思い出せば、ギャラクタスは存在しなくなり、地球内部のセレスシャルズの種が発芽してしまう。リードはギャラクタスに、あなたは慈悲深くなったと聞いていると言い、助命を願う。ギャラクタスは、宇宙にフランクリンと呼ぶ声が聞こえたと疑問を持ち、リードはそうしてあなたの注意を引こうとしたのだと言い訳する。ギャラクタスはリードの願いを聞き、地球内部へエネルギーを撃ち込んだ。大地から光が天に向けて発射され、セレスシャルズの種子を引き出したギャラクタスは宇宙へと去っていく。彼が去ったあと、さらばだ息子よとつぶやくリード。

 月面ではX-51がウアトゥと対峙していた。私はおまえがなぜここにいるのか、なぜ観察をしているのか知っていると言うX-51。彼は地面に引かれているケーブルをたどって進んでいく。ウォッチャーはセレスシャルズの配下として、多くの世界を非干渉のまま監視してきた。その星の住人たちが滅ぶのを知っていながら。監視している人々が死ねば、ウォッチャーは自由を得るのだ。だがウォッチャーは良いことをする事もできたはずなのだ。おまえは悪など無いと言ったがウアトゥ、それは存在するぞ、おまえが悪なんだ。おまえは私たちを助け、素晴らしい事や名誉ある事を行うこともできたのに、自分の事しか考えなかったと言い、X-51はケーブルの先にあるウアトゥの弱り果てた本体に到達する。X-51はウアトゥに言う。「必要に直面しながら何もしないこと、それが悪だ。」

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 X-51はウアトゥに接続されたケーブルを引き抜く。ウアトゥはX-51に呼びかけるが、彼はその場を立ち去った。

 X-51は地球へ行き、リードに顛末を語った。彼は私の顔を奪ったと言うX-51に、きみの心の中までは奪えないよとリードは答える。リードは世界中に巨大トーチを建造し、大気中のテリジェンの霧を燃やし尽くす計画を進めていた。各国のヒーローたちがそれに協力していた。だがそれに反対する者もいた。自然の精霊の使いを自認するブラックパンサーだ。だが計画は順調に進んでいた。

 警官になっているルーク・ケイジは、ピーター・パーカーが犯罪との戦いに復帰した事を歓迎していた。警官になるのは断ったピーターは、メイに犯罪と戦う時のポイントを教えてやらないとねと答える。また、ミスターSという指導者となったスコット・サマーズは、新X-MENの訓練を続けていた。彼らの前からバイクで走り去るデアデビル

 リードのところへ、ロバの顔になった人物が息子を助けてくれた事に感謝を伝えに現れていた。彼は変異したJ・ジョナ・ジャイムソンだ。その息子ジョンは太陽エネルギーを発しマンウルフへの変身を止めるスーツをリードからもらっていた。巨大トーチの建設のため力をふるうザ・シングもいる。

 リードはそこで、天から光輝く男が舞い降りるのを見た。かつて死亡したヒーロー、キャプテン・マーヴルだ。マーヴルは夢のようにリードとだけ会話する。ロキに真実を伝え行動させるには、ソーを一時的に冥界へ送り地球から引き離す必要があったのだと彼は言う。そして、これから多くの事が起き、私は帰ってくる、だが彼らは歓迎しないだろうと語る。理解できないリードに、自分の復活を隠す方法が必要だと伝えたあと、彼は煙のように消えていた。リードは死後の世界にいるマーヴルに自分の妻スーについて訊ねる。彼女はきみを恋しく思っているよという声が聞こえた。

 X-51は月へ戻るという。誰かが点火を見ていた方がいいと言うX-51に、リードはウォッチャーと呼んだ方がいいかねと訊ねる。相手は、ウォッチャーは受動的すぎて悪い意味を持っていると答え、地球のために能動的に行動する者としてウォッチマンという名を提案するのだった。

 インヒューマンズがやってきた。サナギの状態になっていたルナが、ついに羽化する。蝶のような羽根を持って現れるルナ。彼女は結婚する相手、ブラックナイトに話しかけるが、ブラックボルトの息子である王子は返事を返さない。わからないわと当惑するルナに、同じ境遇であったメデューサは彼女の気持ちがよくわかり、抱きしめる。

 巨大トーチが完成し、キャプテン・アメリカが皆を前に演説していた。我々にはもちろん変化は必要だが、お互いが必要だという事を忘れてしまっていたと語るキャップ。何が必要なものなのかを見つけていこうと言い、彼は松明を点火する。巨大トーチが燃え上がる。

 キャプテン・アメリカの言葉は続く。我々は人間である事を思い出さなければならない。このトーチによりテリジェンの霧が消えれば、我々は元に戻る。天は我々に人間たれと言っている。もし他の星から襲来する者があれば、この我々の人間の炎(ヒューマン・トーチ)を見せてやろうと、彼は高らかに宣言するのだった。

 

 EARTH X最終話は、#13ではなく#X。全14回の壮大なマキシシリーズがひとまず終結した訳だが、続編としてUNIVERSE X、PARADISE Xが発表され、三部作として完結する。

 全人類が超人能力を持ち、逆にスーパーヒーローだった者がヒーロー性を失っている世界を組み立て、そこから立ち上がるという展開はよく練られており感動的で、とても楽しめる。一方で、この話はマーヴルの長い歴史を素材として構築されたオリジナルな展開をしており、アスガルド神族やセレスシャルズの設定など本来のマーヴルユニバースからは大きく変えられた部分もあるため、切り離して楽しむ必要がある。

 この#Xではセレスシャルズとの最終決戦が描かれ、様々な者が攻め手として登場し、これまで張られてきた伏線も収束していき、実に盛り上がる。

 冒頭から登場してきたX-51アーロン・スタックが、自分を束縛していたウォッチャーと対決するクライマックスは素晴らしい。最後にウォッチマンを名乗り、自分から活動を開始し、あとの二部でも活躍していく。

 このコミックが収録された合本は、

https://www.amazon.co.jp/dp/B00AAJQZ5A/

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EARTH X #12

2000年 APR

JIM KRUEGER : story and script

ALEX ROSS : story, cover and character design

JOHN PAUL LEON : pencils, ink assist

 

 ウアトゥリードに、ブラックボルトの敗北で全ては終わったと言うが、リードはブラックボルトの最後の叫びは助けを呼ぶためだったと明かす。そしてそれもトニー次第だと言う。ウォッチャーによりアイアンマンの来歴が語られる。リードは、アイアンマンが誕生する時、インセン教授という老人が時間稼ぎをしてくれた、そして今はトニー自身が老人だと言う。

 そして地球に、何体もの巨神セレスシャルズが降臨した。その異質で強大な姿を見上げるヒーローたち。ここでセレスシャルズに滅ぼされては、スカルとの戦いに勝った事など全てが無意味になる。

 トニー・スタークは巨大ロボの操縦席でリードに語りかける。リードが何らかの方法であの人物にコンタクトを取ったのだとしたら、それが到着するまでの時間セレスシャルズを食い止めねばならない。巨神と戦うスタークロボだが、セレスシャルズに比べるとあまりに小さい。スタークロボの手から、アイアンマンアーマーが弾丸のように発射され、セレスシャルズに撃ち込まれる。だがその攻撃も、巨大なバリアーに遮断されてしまう。

 アスガルドの宮殿では、ロキオーディンの前に謁見していた。これは全てうそっぱちなんだぞとロキは叫ぶ。彼はX-51から知らされた真実を明かす。自分たちは神ではない、人間の信仰に合わせて作られた人形でしかないんだと語るロキ。北欧の人々がソーを善で俺を悪だと信仰したから俺たちはそうなったのだと。だがオーディンやソーたちは彼の言葉を信じない。ロキはナイフを取り出し、自分の腹を刺す。

 月面ではX-51やジョン・ジェイムソンがリードのところへ戻ってきた。ウアトゥはジョンに指示し、ジョンはアルティメット・ニュリフィアーを取り出す。驚くリード。

 地球ではトニー・スタークの奮闘が続いていた。すでにスタークロボの右腕は吹き飛ばされ、トニーは特攻をかける。セレスシャルズの一体にもかすり傷一つ付けられないまま炎に包まれ落下していくスタークロボ。セレスシャルズの審判の指が下を向く。別れの言葉を交わすトニーとリード。大爆発が起こり、ロボが残骸と化し、コックピットから這い出たトニーの胸には金属片が刺さっており、倒れる。だが空を見たトニーは、自分が成功した事を知る。シルバーサーファーシャラ・バルが飛翔していた。という事は…。

 月面では、全てを消滅させる装置アルティメット・ニュリフィアーを持ったジョンがリードたちを脅していた。そこへ光が差し込み、ジョンはうめきながら装置を落とす。手を伸ばしてアルティメット・ニュリフィアーを掴むX-51。光を浴びたジョンは再びマンウルフに変身していた。そして、地球にはリードが呼んだ相手、ギャラクタスが降臨していた。

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 トニー・スタークの悲壮な最後の戦いが本当に凄い、感涙もの。アルティメット・ニュリフィアーの危機も防がれ、次回のエンディングに続いて行く。

 インセンYINSEN教授のスペルがこの号ではVINSENとなっている。単なる誤植と思われる。

 このコミックが収録された合本は、   

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EARTH X #11

2000年 MAR

JIM KRUEGER : story and script

ALEX ROSS : story, cover and character design

JOHN PAUL LEON : pencils, ink assist

 

 リード・リチャーズウアトゥに対峙し、セレスシャルズの変異種子が無かったとしたら我々がどんな姿になっていたか見ることのできる人間が地球にただ一人居ると言い、アリシア・マスターズの話を始める。アリシアは、醜い小男であるヴィランパペットマスターの養女として育ち、また、醜い岩石男ザ・シングの妻となった。それは、アリシアの能力が、突然変異をしなかった場合の相手の姿を見ることだったからかもしれないとリードは推察する。

 アリシアは、シルバーサーファーことノリン・ラッドにも同じように清い心をもって接した。ノリン・ラッドの体内にもセレスシャルズが植えた変異種子があったのだろう。そのシルバーサーファーが仕えていたギャラクタスは、ノリンの母星ゼン・ラと地球の両方に襲来している。それらの星は、星の中にセレスシャルズの種を宿している。ギャラクタスは、セレスシャルズの種を破壊するのが目的だったのだ。星を喰らう魔神と恐れられていたギャラクタスは、宇宙にセレスシャルズが増えるのを防いでいたのだ。衝撃の事実をウアトゥに伝えたリードは、しかし、自分がかつて宇宙を救おうとしてギャラクタスを星に変えてしまったと明かす。私は知らずしてセレスシャルズのための道を拓いてしまったと後悔するリード。

 ニューヨークでは、キャプテン・アメリカの軍勢をも倒したスカルが、この星は俺の星だ、惑星スカルだと演説していた。ビジョンはそれをモニターで見るが、トニー・スタークは動かない。また、自堕落な生活をしていたウルヴァリンの元から、一緒に暮らしていたジーが去る。その時彼女は、自分がジーンではなくマデリーンだった事を明かす。

 路地裏で倒れていたキャプテン・アメリカは、ピーター・パーカーに助けられていた。中年男となっているピーターだが、店で売られていたコスチュームを着て再びスパイダーマンのマスクを被り、娘を救うため動き出す。キャップはスパイダーマンと共にザ・シングを訪ね、スカルを混乱させる事が勝利の鍵だと説明。アリシアの作った粘土細工のヒーロー像なら、魂がないためスカルには操れないと言い、作戦を話す。

 一方、月面には巨神セレスシャルズが何体も着陸していた。ブラックボルトは単身セレスシャルズに立ち向かうが、弾きとばされる。力の差は歴然だ。X-51は戦いの余波を受けたジョンの妻と子を救う。リードはウアトゥに、ブラックボルトの目的を語る。ブラックボルトはセレスシャルズと戦いに来たのではない、助けを呼ぶために来たのだ。セレスシャルズの強力すぎる攻撃で吹き飛ばされたブラックボルトは、その能力で、ある者を呼ぶ声を発し、強大な声は宇宙へ飛んでいく。

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 地球ではヒーローたちのリベンジが始まっていた。アリシアの能力が作りだしたヒーローたちの動く粘土人形が攻め込み、それが操れないのに焦るスカル。スパイダーマンが身を躍らせて戦う。また、先ほどは温存されていたX-MENデアデビルも参戦。ザ・シングも奮戦していたが、スカルに操られてしまう。

 スカルの背後から、キャプテン・アメリカの粘土人形が近づき、組み付いた。いや、それは粘土人形ではない、本物だ! キャップはスカルの首に手をかける。戦いの終わりが来たのだ。

 モニターでそれを見ていたトニー・スタークは旧友を祝福する。そこへ、リード・リチャーズから通信が入った。セレスシャルズについて伝えるリード。トニーはビジョンにアイアン・アベンジャーズの設計図を託し、退出させる。

 リード・リチャーズは、自分にとってトニー・スタークが憧れのヒーローだったと最後の言葉をかける。トニーの巨大な工場が変形しはじめ、地下に隠されていた巨大ロボットが立ち上がる。セレスシャルズに対抗するため、いま、巨大スタークロボが飛び立っていく。「時間稼ぎは、この億万長者に任せておけ」

 

 EARTH Xのヒーローたちは皆、大なり小なり以前の栄光から堕し、みすぼらしい姿をさらしているが、ついにピーター・パーカーとトニー・スタークが立ち上がる姿が見られる回。特にスターク発進シーンは、いままで彼がほとんど動かなかったのが緊急事態の備えのためだったと判り、この号のクライマックスに位置づけられていて本当に格好いい。

 マデリーン・プライヤーはジーン・グレイのクローン。一時期はサイクロプスことスコット・サマーズと結婚し、ケーブルが産まれた。

 月面に並ぶセレスシャルズの異様で無敵な姿も圧巻で、ジョン・ポール・レオンの絵が冴える。

 このコミックが収録された合本は、  

https://www.amazon.co.jp/dp/B00AAJQZ5A/

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EARTH X #10

2000年 JAN

JIM KRUEGER : story and script

ALEX ROSS : story, cover, character design and art assist

JOHN PAUL LEON : pencils, ink assist

 

 ジョン・ジェイムソンウアトゥと会話し、X-51を止める方法はないかと訊ねる。ウアトゥは、かつてギャラクタス襲来の際に持ち出されたアルティメット・ニュリフィアーについて話し、それでX-51を脅せばいいと答える。だがウアトゥは何か隠しているようだ。

 X-51の来歴が語られる。ウアトゥは、X-51はロボットであり感情のように見えるのは電気信号に過ぎず人間ではないことを強調する。そして、X-51はこれから突然変異した人類の目的を消し去ろうとしているのだと語る。

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 ザ・シングことベン・グリムは、地球の危機を知り、妻アリシアと子共たちをインヒューマンズのところへ避難させることにする。

 キャプテン・アメリカワカンダ国を訪れ、かつて自分がブラックパンサーに預けたコズミックキューブスカルとの戦いで使うため返してくれと言うが、パンサーは、あの時きみはたとえきみ自身が来て頼んでもコズミックキューブを渡してはならないと言ったはずだと答え、拒絶する。

 X-51がモノリスのゲートを開き、リードとベンはベンの家族を連れてインヒューマンズのいるラトヴェリアドゥーム城へと現れる。リードはメデューサから、テリジェンの霧を撒いたのはブラックボルトだったことを聞く。リードはブラックボルトに対面し、地球の人々とインヒューマンの世界のために、重要な何事かを頼む。女王メデューサは夫の側に寄り、リードの頼みを聞いてあげてと言い、夫の素顔を見て彼の真意を知る。

 X-51は、スカルに対抗するには精神が分離しているため操ることができないハルクの力が必要だと言い、ハルク発見のためにロキに協力させようと提案。リードにはロキが協力するとは思えなかったが、X-51は、ロキがそのような行動を取ろうとする理由を教えれば協力するようになると考えていた。

 スカルの陣営に変化が起こっていた。スカルが操っていたヴィランウィザードが、突然勝手に行動し始めたのだ。アイアンメイデンは、ウィザードの気が狂ったためだ、狂った者はコントロールできないと言う。スカルはウィザードを射殺させ、これ以上誰も狂うなよと命じる。スパイダーズマンはアイアンメイデンに、美人の姿でいる幻覚を見せてやり、それを機にアイアンメイデンはスカルに反逆する。アイアンメイデンを殴り、スカルは取り乱す。俺がいない方がいいと思ってるのか?、お前たちが動けるのは俺のおかげなんだぞと言ってスカルはアイアンメイデンに倒れるよう命じた。俺は神だと言うスカル。そこへ、キャプテン・アメリカが世界中から集めた加勢と共に登場した。「それなら、私はニーチェだ」

 キャプテン・アメリカたちの攻撃が始まるが、スカルは誰も動かさず、反撃させない。何故と問うアイアンメイデンに、俺は必要ないんだろと拗ねたような事を言うスカルは、このまま相手に殺されたくなければ俺に謝れと迫る。このままでは反撃せずにやられてしまうとアイアンメイデンは謝罪し、スカルは反撃を命じた。相棒だったレッドウイングに組み付かれるキャップ。

 そこでモノリスのゲートが開き、ハルクが加勢に入った。また、スカルは自分が操っている者たちの能力を把握している訳ではなかった。コロッサスネイモアをたやすく倒すことができたが、ネイモアは自分に必要な水分をスカルが与えていないのだと話す。

 ハルクがスカルに襲いかかり、ハルクを操れないことにスカルは驚く。だがまだスカルは敗れたわけではない。ベノムとなったメイ・パーカーにキスさせるスカル。娘の姿を見て、ピーター・パーカーは動き出す。コロッサスはネイモアを海へ返した。スカル軍のアイアンメイデンはブルースを捕らえ、スカルに差し出す。ブルース少年はハルクの精神であり、彼を操ればハルクも操れるのだ。突進したキャプテン・アメリカはスパイダーズマンの幻覚の糸を浴び、バッキーの幻影に苦しむが、再びスカルに飛びかかる。

 月面でウアトゥは、この世界の終末は予見されていたとジョンに言う。だがそこへX-51がリード・リチャーズを連れて戻ってきた。リードはウアトゥを失明させた人物を知っていると言う。ウアトゥは、それはクリー人だと推察していた。クリー人はウォッチャーがセレスシャルズと同盟しているのを知っていたからなと言うウアトゥにだが、リードはそれを否定する。ウォッチャーに知られず近づく事が出来るのは、ここに住んだことのある者だけだというリードの言葉に、ブラックボルトの事かと答えるウアトゥ。ブラックボルトはウォッチャーとセレスシャルズを阻止するために行動したのだ。そして今、月面に飛来したブラックボルトは、再び地球圏に来訪したセレスシャルズに向かって飛んでいく。

 

 これまで各号の冒頭でマーヴルの主要ヒーローについて来歴が語られてきたが、本号はマシンマンの歴史の紹介である。このマキシシリーズでは重要な役割を振られているとはいえ、飛び抜けて有名なわけではないキャラクターだけに、他のヒーローと肩を並べているようで嬉しい。

 コズミックキューブは、持ち手の願いを叶える力を持つ宝具で、1966年のTALES OF SUSPENSE #79のキャプテン・アメリカの話の中で初登場した超エネルギー物質。

 インヒューマンズの王ブラックボルトの能力は衝撃波を発する声だが、あまりにも強力すぎるために彼は一言も言葉を発せない。その能力が使われるのは、最後の手段である。

 アイアンメイデンやスパイダーズマンはEARTH Xオリジナルのキャラクターだが、スカル軍で存在感を見せている。

 キャプテン・アメリカの登場は実に印象的で、彼の復活を見て胸躍る。

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EARTH X #9

1999年 DEC

JIM KRUEGER : story and script

ALEX ROSS : story, cover and character design

JOHN PAUL LEON : pencils, inking assist

 

 裏切られたウォッチャーX-51に呼びかけるが、X-51はもうサタンの盲導犬にはならないぞと言い、返事をしない。ジョン・ジェイムソンに私はアーロン・スタックだと自己紹介し、父は偉大な人間であり、私にもそうなるようにと願っていたと言う。あなたは人間ではなくロボットだろうというジョンの言葉を聞いて、X-51はなぜウアトゥが自分の顔を奪ったのか悟る。呼びかけるウアトゥに、今は私がウォッチャーだと答えたX-51は、ジョンにセレスシャルズの計画について話し始める。

 セレスシャルズは人類の遺伝子にミュータントの種子を植え付けた。一方インヒューマンズクリー帝国の作ったテリジェンの霧により能力が発現されたという違いがある。インヒューマンズの歴史が語られる。クリー帝国にインヒューマンにされた人々は、クリーに反逆し、人類との交渉を断ってアッティラという都に隠れ住んだ。インヒューマンズの王ブラックボルトの弟マキシマスは狂気により反逆。インヒューマンズ王家の一員クリスタルは、ミュータントのクイックシルバーと結婚、ルナという女の子が産まれた。また、ブラックボルトと女王メデューサの息子も産まれたが、王子はその能力を恐れたインヒューマンズの評議会により幽閉される。その後、インヒューマンズの王家は宇宙へと旅立ち、地球には王子が残された。X-51は、テリジェンの霧による全人類のインヒューマンズ化はむしろ人類の命を救っていた事に気付く。

 X-51はセレスシャルズの秘密をリード・リチャーズに伝えるため地球へ行くと言い、ウォッチャーの知識を利用してモノリスのゲートを開く。そのとき、ジョンは自分が月の光を受けマンウルフに変身しないのに気付く。彼が観測した巨大な物体、セレスシャルズが接近し、太陽を隠してしまっていたのだ。

 地球では、英国を訪れたキャプテン・アメリカが、ブリテン王となったキャプテン・ブリテンに会い、スカルとの戦いでの助力を頼んでいた。だがブリテン王は祖国の守りを理由に協力を渋る。彼の背後には、かつて英国で活躍したミュータントチーム、エクスカリバーが石と化していた。グレイガーゴイルの能力で石化された時、キャプテン・ブリテンガーゴイルを切り殺してしまい、石化が解けなくなってしまったのだ。そのあと聖剣エクスカリバーを手に入れたブリテンだが、この剣で皆を切れば呪いが解けるのか、ただ殺してしまうだけなのか、自信はなく、試せないでいた。また、ブリテン王は彼が後継者として育てた騎士ブラックナイトも出陣させないと言う。だがキャプテン・アメリカは粘り強く説得する。

 一方アメリカでは、執務室に踏み込まれたノーマン・オズボーン大統領が、スカル配下の幻覚師スパイダーズマンのクモ糸を浴びせられ、自分が殺したグエン・ステーシーを見て驚く。人間の仮面が外されるとノーマンの顔はかつて仮面だったグリーンゴブリンそのものになっており、動揺したノーマンは窓を破って落下する。

 リード・リチャーズの前にモノリスが出現し、X-51が姿を現した。X-51は自分が新しいウォッチャーだとリードに言う。そして目を望遠鏡のように伸ばし、リードに覗かせる。異様な画像を見て驚くリード。X-51は、人類とは抗体なのだと説明する。

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 ザ・シングことベン・グリムはテレビを見ていたが、スカルが映され、大統領が死に自分が取って替わると宣言する。トニー・スタークの前にビジョンが現れ、アイアン・アベンジャーズがスクラップと化したことを報告する。

 ラトヴェリアでは、ルナの顔にできた吹き出物が全身へと広がっていた。怖がるルナに、メデューサはインヒューマンになる変化が起きているのだと言う。ブラックボルトと部屋で二人きりになったメデューサは、テリジェンの霧を解放したのがマキシマスではなくブラックボルトだったと推察した。だが物言わぬ王は返事をしない。

 X-51はリードに、セレスシャルズの計画とは人類を超人化して、体内にある抗体が病原菌から体を守るのと同じ、惑星の中に植えられたセレスシャルズの種を守る事だったと明かす。衝撃を受けるリード。人類はセレスシャルズの増殖に利用されるために創られたのだ。そして、そのセレスシャルズが地球へと迫っていた。

 

 物語の謎が明かされる第9話。父の言葉通りに、人間として自分の意志で行動するX-51がとても格好いい。

 このコミックが収録された合本は、

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EARTH X #8

1999年 NOV

JIM KRUEGER : story and script

ALEX ROSS : story, cover, character design and ink assist

JOHN PAUL LEON : pencils and ink assist

 

 ウォッチャーX-51が人格回路を削除した事に満足し、セレスシャルズがこの宇宙で何をしているのかという情報のダウンロードを許可する。

 そして、スパイダーマンの来歴について語り始める。公開実験を見に行ったピーター・パーカー少年は放射能グモに噛まれ超能力が発現したが、自分の不注意から叔父を殺された後の彼の人生は、責任感に束縛されるようになった。彼は恋人グエン・ステーシーグリーンゴブリンことノーマン・オズボーンに殺される。そのノーマンは今やアメリカ合衆国大統領となっている。ピーターはメリージェーン・ワトソンと結婚する。ウォッチャーは、責任感や罪悪感というものは、セレスシャルズの計画のための安全装置となっていると指摘するが、安全装置とは何のためかと質問したX-51に好奇心が残っているのに気付く。X-51は実は人格回路を削除してはいなかった。

 X-51はウォッチャーをあざむいていたのだ。あなたは善悪など無いと言った、ならば何が悪いというんだとウォッチャーに反論するX-51。そこへジョン・ジェイムソンが入ってきた。地球に警告が必要なんだというジョンの言葉に振り向くX-51。

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 キャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースは、スカルに対抗するため旧友トニー・スタークを訪ねていた。トニーは体をアーマーで覆って変異物質の影響を遮断しており、今や地球で唯一の普通の人間であった。アイアン・アベンジャーズを操作する司令室で機械に囲まれているトニーはスティーブに、細菌に汚染されてしまう、出ていけと怒鳴る。人間を操る力を振るうスカルがニューヨークに侵攻している事を伝え、手を貸してくれと頼むスティーブ。アイアン・アベンジャーズが動いているはずだと答えるトニーだが、彼のロボットたちの応答がない。

 アイアン・アベンジャーズはすでにスカルの軍団に倒されてしまっていた。胸に赤いパニッシャーマークのような髑髏の服を着た少年スカルの指示で、彼の軍団は寄生生物ヒドラも倒していく。警官となったルーク・ケイジが対抗しようとするが、部下の警官たちも操られ、同士討ちで射殺されてしまった。

 ピーター・パーカーの娘メイは寄生生物を着てベノムとなりスカルと戦おうとしていたが、弱気な中年となったピーターは娘を止めようとする。

 リード・リチャーズセレブロを使い人類を走査した結果、全人類は自分のビブラニウムのためミュータント化したわけではなく、インヒューマンズになっているという事実を知る。

 その頃、ラトヴェリアにいるインヒューマンズたちは、ルナの顔に吹き出物ができているのを知る。ルナはインヒューマンズ化しているとカーナックは語る。この変化は、ブラックボルトの弟マキシマスが地球の大気にテリジェンの霧を散布した結果なのか?

 ロキと結んだクレアは、ソーブルースを死の世界へ封じた。だが冥界にいるドクター・ストレンジが二人を送り返す。ソーのハンマーの一撃がクレアの防御魔法を砕く。クレアはロキに助けを求めるが、偽りの神ロキは姿を消していた。自暴自棄になったクレアの魔法で館は吹き飛ぶ。それをながめるロキ。

 キャプテン・アメリカはロシアへ出向き、皇帝となったコロッサスに謁見し、助力を乞う。そこへニック・フューリーそっくりの身代わりロボットが襲来。コロッサスはそれを撃破し、キャップに手を貸すと答える。

 父親ピーターを振りきったベノムことメイ・パーカーは、スカルの部下アイアンメイデンと交戦し撃破するが、スカルはメイをも操ってしまう。その様子を見ていたピーターは、無力感からその場を立ち去る。スカルは部下を引き連れ、ノーマン・オズボーン大統領の前に現れた。

 

 いよいよX-51の活躍が始まるEARTH X第8話。言われるままに人間性を捨てたと見せかけて、ウォッチャーが隠していたセレスシャルズの秘密を手に入れる展開はグッと来る。

 X-51と接触したジョン・ジェイムソンは、ピーター・パーカーが働いていたデイリー・ビューグル新聞社のJ・ジョナ・ジェイムソンの息子の宇宙飛行士で、月の光で狼に変身するマンウルフだ。

 このコミックが収録された合本は、

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ACTION COMICS #329

1965年 OCT

 (1話目)

SCRIPT: EDMOND HAMILTON

PENCILS: AL PLASTINO

 

 メトロポリスの街に突如、剣を持った甲冑騎士が現れた! 驚く街の人々。甲冑騎士は走ってきたトラックを片手で止めて持ち上げる怪力を見せ、銀行を襲う。鋼鉄の壁や金庫をスパスパ切り開き押し入っていく甲冑騎士。

 騒ぎを超聴力で聞き、スーパーマンが駆けつけた。X線ビジョンで正体を視ようとするが、甲冑は鉛でシールドされていて視ることができない。甲冑騎士は剣を振り下ろし、それがスーパーマンのコスチュームをかすめ、切り裂いた。だの古い剣に見えるものが自分を殺傷できる威力を持つことに驚くスーパーマン。さらに、甲冑騎士のパンチがスーパーマンにヒットし吹っ飛ばし、壁にめり込ませた。この騎士はスーパーマンより強いぞ!と驚く人々。甲冑騎士は現金の入った鞄を持ち去る。スーパーマンは壁が崩れて建物が倒壊しないよう支えていて、甲冑騎士を取り逃がしてしまった。思わぬ強敵にショックを受けるスーパーマン。甲冑騎士を追った人々は、騎士がその剣で高速道路の高架の柱や河川の橋などを容易く切り裂くのを見て仰天する。

 ラジオでそれを聞いたスーパーマンは飛び立ち甲冑騎士を探す。自分のスーパーパワーをも上回るこの相手はどうしてそんな力を持っているのだろう? スーパーマンは荒野の線路で甲冑騎士が列車の後端をそのパワーで引き、止めているのを発見した。X線ビジョンで見ると、列車の最後尾には金塊が積まれている。列車の先端を引いて対抗するスーパーマンだが、彼の怪力をもってしてもぴくりとも動かない! 最後尾の車両の接続部が壊れ、甲冑騎士は列車の壁を剣でチーズにようにくり抜く。スーパーマンはそこへ近づき、剣を避け、後ろから組み付いた。この位置ならば剣が届かない。相手の兜を取って正体を明かそうとするスーパーマンだが、逆に頭を掴まれ怪力でぶん投げられてしまった!

 スーパーマンはなんと、郊外からメトロポリスの街中まで飛ばされてしまった。空からスーパーマンが落ちてくるのに驚き、甲冑騎士に負けたことに失望する街の人々。スーパーマンは人々に激突する前になんとか空中でブレーキをかけて止まるが、人々はスーパーマンを批判するのだった。スーパーマンは街の周囲を超視力で観察したが甲冑騎士は見つからない、また、郊外の丘の一部は鉛の鉱石があるようで透視できなかった。スーパーマンを心配して友人のジミー・オルセンが声をかけるが、スーパーマンは一人にしてくれと言い、北極にある基地孤独の要塞へ向かう。そして、甲冑騎士を止めるため強い決意を胸に、スーパーマンは再びメトロポリスへ戻るのだった。

 右手に剣、そして左手にはクリプトン星の旗を模した色とりどりの盾を持つという、普段はみられない完全武装のスーパーマンは、波止場で甲冑騎士と対峙する。この対決にかけるスーパーマンのただならぬ様子に驚く街の人々。甲冑騎士はスーパーマンの挑戦を返り討ちにし細切れにしてやろうと、初めて言葉を発した。甲冑騎士の最初の一撃でスーパーマンの剣は折られてしまう! あっという間に武器を失ったスーパーマンは、甲冑騎士に組み付き共に海へ落下! ロイス・レーンジミー・オルセンはスーパーマンが浮上してくるのを待っていたが、上がってきたのは甲冑騎士の方だった! 驚くメトロポリス市民。

 スーパーマンを倒した甲冑騎士は颯爽と引きあげ、鉛の鉱石がある丘まで歩いてきた。そこには洞窟があり、奥には秘密研究所があった! 中にいたジョン・スマッテンという科学者は、テレビニュースでスーパーマンの遺体が発見されていないと聞き、自分の計画は成功した、このロボットはスーパーマンを殺した!と喜ぶ。 スマッテンは自分がいかにスーパーマンを憎み、そして殺したか、テープレコーダーに吹き込み始める。

 スーパーマンがまだ少年でスーパーボーイとして活躍していた頃、ジョン・スマッテンは少年院にいた。スーパーボーイは施設の壁に仕掛けられた爆弾をX線ビジョンで発見し、犯人がスマッテンであることを見破ってしまった。その後、大人になったスマッテンは小さいカニ型ロボットを使って宝石を盗む犯罪を行うが、それもスーパーマンに暴かれてしまう。投獄されたスマッテンは逆恨みからスーパーマンへの復讐を誓う。クリプトン人に勝つには、クリプトン星が爆発した時に宇宙へ爆散した弱点物質クリプトナイトが必要だ。

 刑務所から出たあと、スマッテンはスーパーマン対策のため鉛鉱石があり透視できない場所に秘密研究所を作り、特殊なレーダーでクリプトン星からの飛来物を追跡した。その結果、墜落してきた金属を調べ、それが地球のどんな金属よりも硬いのを知る。この破片の中から箱が発見され、中には手紙が入っていた。もちろんクリプトン語で読めないのだが、スマッテンはスーパーマンがクリプトン語をメトロポリス大学の資料に提供しているのを知っていた。解読すると、それはハブ・ルルというクリプトン人科学者の記録だった。

 過去のクリプトン星にて、ハブ・ルルは新型発電機を製作していた。そこへ、高名な物理学者ジョー・エルが訪ねてくる。ジョー・エルには、後にスーパーマンとなる幼児カル・エルがついてきていた。ジョー・エルは新型発電機の危険性を指摘し中止するよう警告するが、ハブ・ルルは研究室へ招き、新金属クリプティウムを見せて、発電機の安全性を主張する。クリプティウムは恐るべき硬度を持っており、バーナー状のデ・コヘーラー光線でのみ加工することができる、と実演してみせるハブ・ルル。ジョー・エルはまだ危険だと思っていたが、引き下がった。ジョー・エルの不安は当たり、ハブ・ルルの新型発電機は大爆発を起こし、クリプティウムやハブ・ルルの記録は宇宙へ吹き飛ばされ、最終的に地球へ墜落したのだった。

 それを手に入れたジョン・スマッテンはデ・コヘーラー光線でクリプティウムを加工し、ロボットの甲冑と剣にしたのだった。目的はスーパーマンへの復讐だったので、銀行強盗や金塊強盗のような派手な事件を起こし、ついに殺害に成功した。

 と、そこまでスマッテンがテープに吹き込んだとき、甲冑騎士が兜や甲冑を取り、中からスーパーマンが現れた! 驚くスマッテン。スーパーマンは、顕微鏡ビジョンで甲冑騎士の金属がクリプティウムであることを見抜いており、スーパー記憶力で幼児だった頃ハブ・ルルに会った時の知識から、デ・コヘーラー光線装置を作成、わざと負けたふりをして海中へ落ち、甲冑を切断して中に潜んだのだった。そして、ロボットを操っている犯人はスーパーマン死亡のニュースを聞くだろうと考え、超聴力でスマッテンの秘密研究所を発見したのだった。

 事件は解決した。孤独の要塞にクリプティウムの剣を持ち帰ったスーパーマンは、いつかこの威力が必要となる事件が起こるのだろうかと考えるのだった。

 本号は前半/後半で別の話が掲載されている。前半のライターは『キャプテン・フューチャー』『スターウルフ』で有名なエドモンド・ハミルトン。「スーパーマンより強い甲冑騎士」→「スーパーマンの焦りと無謀な対決の後の死」→「過去の展開を重ねて説明」→「からの逆転」という、少ないページ数(12ページ弱)にもかかわらず凝った話作りが楽しめる。「武装したスーパーマン」という、普段は見られないものを見せてくれるサービス精神がハミルトンらしいところだと思う。作中では「スーパーマンに対抗できる金属クリプティウム」に主眼が置かれているが、スーパーマンをぶん投げることができるロボットを作れるジョン・スマッテンがなかなか凄い。アートはブレイニアックやスーパーガールを初めて描いた大御所アル・プラスチーノ。

 

(2話目)

SCRIPT: LEO DORFMAN

PENCILS: JIM MOONEY

 

 スタンホープ大学の学生リンダ・リー・ダンバースは実はスーパーガールの仮の姿。リンダは同級生のディック・マルバーンに誘われ、夜のドライブのあと、ファンタスタという女性奇術師のステージショーが見られるクラブへ行くことに。二人でソーダを飲んだあといよいよステージが始まるというときテーブルのソーダや水などが片付けられてしまった。炎の壺から登場するファンタスタだが、リンダは内心トリックだろうと考える。続いてファンタスタは自分の首だけをクッションの上に乗せて飛ばせてみせた。喜ぶディックに、仕掛けがあるのよと答えるリンダ。

 それを聞いたファンタスタはリンダを次のマジックの協力者に指名する。失言を悔やみつつリンダは立ち上がり、言われるままにキャビネットの中へ入った。扉を閉め、ファンタスタは胸から下げたメダルに触れて、あの女の子を消しますと言う。再び扉を開くと中は空だった。喝采を浴びるファンタスタ。ステージのあとディックはリンダがどこへ行ったのか聞きにいくが、ショーのあと目まいがするといって出ていったと言われ納得して帰る。

 だがリンダは驚くべきことに見知らぬ宇宙船の中にいた! 地球にはいない鳥のような生き物がいる。そこにファンタスタも現れた。どんな力を使ったのか問うリンダ。異様な鳥グノモはファンタスタの肩にとまる。ファンタスタはリンダをスーパーガールの姿にしますと言い、胸から下げたメダルに触れると、その言葉通りリンダはスーパーガールになった。驚くスーパーガール。

 ファンタスタはステージショーがスーパーガール捕獲のための罠だったと話し、外宇宙のゴッサ宙域を支配する悪の宇宙犯罪者組織に入ろうとして入団テストとしてスーパーガール捕獲を命じられたことを明かす。この宇宙船はありえないスピードで航行しており、スーパーガールすら見たことのない星域を飛んでいるのだった。と、突然警報が鳴り、ファンタスタはあわてて宇宙船のボタンを押し操作し進路を変えようとする。スーパーガールは進路に水の小惑星があってそれを避けたことを見抜いた。

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 落ち着いたファンタスタにスーパーガールは自分を捕虜にしておけると思わないでよと言う。だがファンタスタは自信満々に、暴力は不必要なのよ、逃げ出してもあなたは必ず戻ってくるわと言い、宇宙船のハッチからスーパーガールを外に解放してみせた。宇宙を飛ぶスーパーガールだが、全く知らない星域ではどこへ向かっていいか判らず、宇宙船に戻る他なかった。

 戻ってきたスーパーガールに勝ち誇るファンタスタだが、スーパーガールは無策で戻った訳ではなかった。宇宙で拾った水を含む隕石をスーパーガールのパワーで絞って水滴を落とす。とたんに警報が鳴りだす。ステージショーの前、先程の宇宙船の進路などから、ファンタスタは水を弱点としているとの推理は当たり、スーパーガールはファンタスタのメダルを奪うことに成功した。

 ファンタスタは失敗したことを認め、罰を受けなければならないと言う。彼女が入りたかった悪の組織は入団テストに際してエネルギー惑星サイクロンにいる鳥を同行させ、失敗した者は鳥の足からの電流を受けて自殺すると決められているというのだ。グノモの足を掴み電流によって原子分解されるファンタスタ。

 一人残されたスーパーガール。地球に戻る方法は無い。そこでスーパーガールは、無機物だったため消滅しなかったファンタスタの服を着て、リンダに変装するときのカツラを加工し、ファンタスタに変装した。グノモは彼女の肩にとまる。ゴッサ宙域への帰還ボタンを押すと宇宙船は疾走していき、棘々のある異様な星に到着した。星の表面ハッチが開き、中へと宇宙船が自動的に着陸する。星の内部が巨大な基地になっているようだ。

 宇宙船から降りたスーパーガールは、ここでは自分の超能力がまったく使えないことに気付き驚く。そこで、宇宙船が着陸した床が降下を始め、悪の犯罪組織の入り口で停止した。候補生ファンタスタが帰還したと思い、中へ通される。

 中には悪の組織の幹部たちが勢揃いしていた。ここで、入団テストが成功したか首領格のキロン議長に報告するのだ。スーパーガールより前にバールという異星人が報告しており、彼はトーク銀河の守護者マイティ・サルマンを殺してコスチュームを持ち帰ったと報告する。二つの試練を終えたことで、バールは悪の組織に入団が認められた。この組織では入団テストで倒したヒーローのコスチュームを着るのがしきたりであり、バールはマイティ・サルマンのコスチューム姿で円卓に加わった。新メンバーを祝う悪人たち。

 次の候補者ヴィンタンは、紫惑星の独裁者ドラング・ザ・デストロイヤーを連れ帰ることが入団テストだった。ドラングはこの悪の組織がぬるすぎると言って入ることを拒否し敵対しているのだ。ヴィンタンはドラングに敗北し、自分に対抗しても無駄だというメッセージを伝えるため送り返されてしまったと話す。ヴィンタンが連れていた鳥はドラングに殺されていたため、キロンは第2のチャンスをやると言って別の鳥をヴィンタンに与えた。だがファンタスタの時と同じく、鳥はヴィンタンを消滅させてしまう。

 ファンタスタの番がきた。ファンタスタに化けたスーパーガールは、スーパーガールを生死にかかわらず連れてこいというテストだったが、クリプトナイトで殺し肉体が消滅してしまったと報告し、マントを差し出す。キロン議長はスーパーガールほど強力なヒロインを倒すのは難しく嘘をついているかもしれないと言い、その真偽を確かめるため「メカノ・スレイブ」というロボットに渡す。メカノ・スレイブはマントを掴み、回転ノコギリになっている歯で切り裂こうするが、逆に歯が砕けてしまった。確かに本物のスーパーガールのマントだと認められ、しきたりに従ってファンタスタはスーパーガールのコスチューム姿となる。実は本人が自分のコスチュームを着ているだけなのだが。

 しかしキロン議長は、二つ目の試練をクリアしなければならないと言い、先程のヴィンタンが失敗した紫惑星のドラング・ザ・デストロイヤーを連れてこいと命じる。驚くスーパーガール。キロンはドラングをこの星域最強の犯罪者だと説明し、コンピューターに入力されている「傷つけれれない鋼鉄の体」「目からビーム」「口からサイクロン」「透明化」などの超能力が表示される。スーパーガールの能力と同等かそれ以上の力を持つ相手に、力を失ったいまどうやって対抗すればよいのか?

 と、そこへ、ドラングの姿が映像にように現れた! コンピューターが表示しなかった「遠距離投影」能力だ。ドラングはこの能力で悪の組織の計画を知っており、投影された映像も目からビームを発射し破壊力を見せつけた。恐るべき相手だ。

 ドラングが去ったあと、キロン議長は予定通りファンタスタに任務を果たすよう命じる。そしてファンタスタに帰還したときのものとは別の宇宙船を与えた。ドラングを恐れて逃げ出すのを防ぐため、この宇宙船の目的地は紫惑星に固定されていると語るキロン。他にどうしようもないため出発するスーパーガール。

 失敗すれば鳥に消滅させられる。帰還方法がわからず行く先も固定されている。能力が無くなっている。ドラングの能力は強大だ。スーパーマンの助けを借りたいが方法がない。唯一、ファンタスタの持っていたメダルがあるが、使い方は不明。どうすればよいのか判らない、圧倒的絶望のなか、宇宙船は紫惑星に接近した。そこへ、ドラングが映像を送ってきた。すでに相手はこちらの事を知っており奇襲も不可能。果たしてどうなる?

 後半はスーパーガールが主役。「奇術師が実は本当に超能力を持つ」「相手は外宇宙の異星人で、これは悪の組織に入るテスト」「悪の組織のしきたりとは」「それを上回る強敵の存在」「能力を失いつつ強敵に対抗し脱出しなければならない」と、たった12ページ弱にもかかわらずいくつもの要素が展開していくのがとても楽しい。登場する悪の組織THE CIRCLE OF EVILが妙に存在感がありつつドラングにはてんで弱くて笑えてしまう。実はこの号では完結せず、次号に続くのだ。

EARTH X #0

1999年 MAR

JIM KRUEGER and ALEX ROSS : story

JIM KRUEGER : script

JOHN PAUL LEON : pencils

 

 彼の父は、人間の心とは出入り口のようなものだと言った。開くには鍵が要る。そして、出入り口は決して変わらないと。父は天才だった。父親の名はアベル・スタックといった。彼の息子はいま父親が使っていた家の寝室で横になっている。息子の名はアーロン・スタック。父はアーロンに、人とはどのように生きるのか教えてくれた。父は息子に顔と、作法と、表情を与えてくれた。だが目だけは違う。起き上がりアイマスクを外したアーロンの目は、人間のものではなかった。アイマスクを外してアーロンは、眼前にモノリスがあるのを見た。

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 何が起きているのか判らないアーロン。モノリスから呼びかけがあり、彼をX-51と呼ぶ。私の名前はアーロンだと、彼はナンバーで呼ばれるのを拒否する。だが人類の運命を知りたいかと問われ、彼はモノリスに触れる。

 すると突如、アーロンは光輝く地平に飛ばされ、人間そっくりの外装を消される。気付いた時、彼の姿は、メカニックの内装を透明な外装が覆うスケルトンボディに変わっていた。自分の変化に驚き、顔を返してくれと言うアーロン。

 歩いてみて彼は、眼前に地球を見る。そこは月面であった。月面の建物の中を進んだアーロンは、人間のものではない奇妙な建造物を発見する。彼の背後にはモノリスがあり、アーロンは吸い込まれるように中へと入った。

 アーロンは内部の奇妙な廊下を進んで、スクリーンに映った巨大な顔の人物と遭遇する。相手の名はウアトゥ。この世界を観察している異星人、ウォッチャーだ。ウォッチャーはX-51に、自分が彼をここに転移させたと言い、これまで観察してきた地球について教え始める。

 画面に恐竜の姿が見える。これは中生代の映像だ。ウォッチャーは、自分がセレスシャルズの地球への最初の来訪ファーストホストを目撃したと語る。恐竜はセレスシャルズに不適格と見なされ、絶滅させられたのだ。

 その結果、哺乳類の時代となり、猿人が出現した。人類の芽生えにはセレスシャルズの介入があったのだ。セレスシャルズは猿人を捕獲し、進化実験を施す。最初にできた種族デヴァイアンツは悪魔のような姿で攻撃的な性質を付加されており、間もなくセレスシャルズに反抗した。次に創られた種族エターナルズは神々しい姿をしており、人類を守護していく。エターナルズは高い山の上に都市を築き、そこへデヴァイアンツが襲来する。彼らの姿は後に人類に、神や悪魔の物語として伝えられる事になった。

 セレスシャルズとは別の宇宙種族も地球生命に介入した。スクラル人と対立する宇宙国家クリーは、自分たちの尖兵として利用するために、セレスシャルズが人類に植え込んだ変異種子を引き出し超人類インヒューマンズを造りだした。だがインヒューマンズもまた造り手に反抗し、クリーの手を逃れアッティラという都に隠れ住む。

 セレスシャルズは何度か地球を訪れその度に干渉した。二度目の来訪セカンドホストでは反逆するデヴァイアンツを抑えるため大陸を海に沈めた。これはアトランティスの伝説として伝えられる。多数の者が死ぬ光景を見せられたX-51は、セレスシャルズとは悪なのかと問うが、ウォッチャーは善悪とは人間が発明した概念に過ぎないと、客観的な視点を持つ事をX-51に指示する。

 さらにサードホストの際、人類は神話を発展させ、その後様々な時代を経て文明が発達していく。ついに地球最初の人造人間が製作され、それはヒューマントーチと呼ばれるヒーローとなった。第二次世界大戦が起こったが、それは人類の最も大きな前進を引き起こしたとウォッチャーは言う。人類に植えられたセレスシャルズの芽が芽生え、特殊な能力を持つ人間が現れ始めたのだ。キャプテン・アメリカサブマリナーはその能力を使いヒーローとして活動していく。アドルフ・ヒットラーは配下のレッドスカルと共に、優性人種のみを選別しようとした。さらに戦争終結のため作られた原子爆弾が新たな原子の時代を開き、人類や生物が変異していく。一時期は怪獣と化したものが多数現れたこともあった。

 原子の時代は、人類に秘められた変異種子を次々に芽生えさせた。ピーター・パーカー放射能を帯びたクモに噛まれスパイダーマンになったのも、リード・リチャーズたちが宇宙線を浴びファンタスティック・フォーになったのも、ガンマ線爆弾によりブルース・バナーハルクになったのも、放射性廃棄物を積んだトラックの事故でマット・マードックデアデビルになったのも、全てはその変異種子による変化だったのだ。

 ファンタスティック・フォーの一人ヒューマントーチによって行方不明だったサブマリナーが発見され、彼はキャプテン・アメリカ復活のきっかけとなり、数多くのヒーローたちが出現し、アベンジャーズが結成された。またヒーローは地球外からも現れた。クリー帝国を裏切ったキャプテン・マーヴルがその代表だ。ヒーローたちは、同じように人類の中から出現したヴィランたちと戦った。だが、星を滅ぼす宇宙魔神ギャラクタスの襲来は別だ。この時はウォッチャー自身がファンタスティック・フォーに手を貸し、ギャラクタスをも消滅させるアルティメット・ニュリフィアーについて伝えている。ウォッチャーは以前からギャラクタスを知っていたのだ。

 さらに、人類の中の変異種子はミュータントとして芽生え始める。チャールズ・エグゼビアプロフェッサーXとして彼らを集め、X-MENが結成された。インヒューマンズも再び外界で活動を始めた。また、人間により新たな人類の創造も行われた。彼はアダム・ウォーロックとなった。このように、フォースホストの頃には、セレスシャルズにより計画されたすべての進歩が行われていた。この時代はスーパーヒーローの時代であったのだ。

 話を終えて、ウアトゥはX-51に、自分の代わりにウォッチャーとなるように言う。何故だと問うX-51に、ウアトゥは自分が何者かの攻撃により盲目となった事を明かした。ウォッチャーは新たな目を必要としていたのだ。おまえにはその能力があるとウォッチャーは言い、X-51により新たに地球の観察が開始されていく。

 

 マーヴルユニバースを総括しながら未来の物語を展開するという壮大なマキシ・シリーズEARTH Xが開幕。この#0では、ウォッチャー、ウアトゥが自分の目としてマシンマンことX-51アーロン・スタックを入手・改造する展開が描かれている。

 アーロンを召喚するためモノリスが登場するのは、X-51が初めて登場したのが2001: SPACE ODYSSEYのコミックだった事を踏まえているため。アベル・スタックにより人間として育てられたアーロンが人間らしい判断にこだわるところが、このキャラクターを理解して主要人物に起用しているのを見て取れ、ファンとしては嬉しい。

 それに対して、世界の観察のみを行い非干渉を旨とする異星種族ウォッチャーは、非感情的で客観的な判断をすべきだと指摘し続けるのだが、ギャラクタス襲来の時をはじめとしてこれまでかなり人類に手を貸してきた彼を知るファンには、妙に冷酷に映る。

 物語は、ジャック・カービーが’76年に創作したTHE ETERNALSの中の、人類を創造したのは宇宙巨神セレスシャルズであるという設定を基盤に、これまでのマーヴルユニバースを包括して構築されているが、EARTH Xはあくまでマーヴルユニバースを再構成した別の物語であり、本来のユニバースから逸脱・設定改変された部分も多い。他のコミックでは通じない設定もあるので注意が必要である。

 X-51は新たなスケルトンボディに改造されてしまう。前年の’98年に新発売されたiMacがスケルトンボディであり、この時期の流行りのデザインだった。この姿でもこれまでと同じ機能があり、手や目を伸ばすおなじみのギミックが見られる。

 巻末にはマーヴルユニバースを創造したクリエイター、スタン・リー、ジャック・カービースティーブ・ディッコジョー・サイモン、カール・バーゴス、ビル・エベレットへの献辞が記されている。

 このコミックが収録された合本は、

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AVENGERS Vol.3 #3

1998年 APR

by Kurt Busiek George Perez

 

 コーンウォールの森の中に、猛烈な攻撃音が響きわたっていた。雷が木を折り、矢が飛び、ビームが撃ち込まれる。クエーサーワスプのビームを避けきれなかった。そこで、キャプテン・アメリカのストップの声がかかった。モーガン・ル・フェイの城を脱出してきた彼らは、森の中で訓練を行っていたのだ。クエーサーに、悪くはなかったが単独行動ではなくチームワークで当たるべきだと説明するキャップ。自分のパワーには自信があるクエーサーだったが、キャプテン・アメリカはパワーが全てではないと諭し、クエーサーも要点は掴んだと答える。フォトンには能力に頼りすぎないように、ジャスティにはソーの雷をよく避けたと伝えるキャップ。ホークアイはキャップに、森の仲間を率いるロビンフッドのようだなと言う。ワスプから今後の計画を訊ねられ、キャプテン・アメリカモーガン・ル・フェイのミスを待っていると答える。モーガンがミスすると思っているんですかとジャスティスに聞かれ、彼女がミスをしないならばとっくに世界を治めているはずだとキャプテンは言う。

 そう、モーガンはミスをしていた。アスガルドから奪ったトワイライトソードと、それを使うために必要なスカーレットウィッチさえ手中に収めていれば無敵であったモーガンだが、地下牢からスカーレットウィッチの姿が消えていたのだ。牢番の顔を掴み、プリエステス・セレーネ(←ムーンドラゴン)のテレパシーで何があったか記憶を引き出させるモーガン。だが牢番は何も知らなかった。モーガンはあっさりと牢番を殺す。

 そこへモードレッドが、デヴァイアンツの都レムリアからの使者を連れてやって来た。形勢が危うくなったと見た彼は、他国と同盟して危機をしのごうと考えたのだ。だがモーガンは一瞬で使者を消滅させる。驚くモードレッドに、他国など我々が楽しむためだけに存在しているのだと怒りの声を上げたモーガンは、スカーレットウィッチを取り戻す事だけが必要だ、他は二の次だと叫ぶ。モーガンはこれがアベンジャーズの仕業だと考えているのだ。彼女はプリエステス・セレーネに命じ、広域テレパシーでアベンジャーズに伝言を発信する指令を下す。

 森の中にいるキャプテン・アメリカたちに、テレパシーでモーガン・ル・フェイの声が響いた。明日の夜明けまでにスカーレットウィッチを返さなければ貴様ら全てを殺すという脅しの文句に、キャップは敵がミスした事を知った。今夜攻撃をかけると言うキャプテン・アメリカ。敵から脱出したらしいスカーレットウィッチはどこにいるのかとホークアイは考える。

 スカーレットウィッチはティンタジェルから南にある岩場に居て焚き火にあたっていた。彼女を脱出させたワンダーマンが、追加の薪を運んでくる。ワンダーマンが復活したことを不思議に思うスカーレットウィッチ。体が強大なイオンエネルギーに変換された男ワンダーマンは、不死身に近い力を得ていたが、クリー帝国イオン・キャノンの爆発で体のイオンエネルギーが吹き飛ばされ死亡していた。そのワンダーマンが、必死で助けを求めるスカーレットウィッチの能力によって甦ったのだ。だが今はこの事態を打開しなければならない。モーガンの魔法に打ち勝つ方法を考えるスカーレットウィッチだが、彼女の前からワンダーマンが消えていた…。

 陽が沈む頃、モーガンの城にフードを来た一団が入城していた。旅の修行僧を名乗っていた彼らは、キャプテン・アメリカたちだった。

 だがそれはすでにバレており、記憶が戻っていない残りのアベンジャーズたちが突撃してきた! 潜入は失敗した、もはや対決あるのみ。ワスプはビームを撃ちソーはハンマーを振るい、ホークアイキャプテン・アメリカは互いに背中をあずけて戦う。クエーサージャスティスが、そしてフォトンとワスプが飛び交いエネルギー波で相手方を吹き飛ばす。ソーのハンマーとハーキュリースのメイスが激突する。ジャスティスやフォトンは相手の攻撃をうまく避けて飛びまわる。

 剣で戦うキャプテン・アメリカの前に、モーガン・ル・フェイが巨大な姿を現した。まだ彼女は優位な立場にいる。しかしモードレッドはアベンジャーズの攻撃に慌て、破滅だ、アベンジャーズを相手にするべきではなかったと言ったのにと口走り、怒ったモーガンは彼を吹き飛ばす。 トワイライトソードを手に勝ち誇るモーガンだが、その前にスカーレットウィッチが立ちはだかった!

 能力を振り絞り、モーガンに抵抗するスカーレットウィッチ。伝説の剣の力を振るうモーガンの方がまだ圧倒的でありパワーに押されるが、そこにワンダーマンが出現。イオンエネルギーで出来た体を巨大化させ、モーガンと同じサイズとなり大きな姿で拳を打ち込む!

 城内での戦いは激化していた。ジャスティスはサー・マクハイネリー(←マシンマン)やネイブ・オブ・ハーツ(←スターフォックス)をブラストで吹き飛ばすが、プリエステス・セレーネ(←ムーンドラゴン)のテレパシー攻撃を受け苦しむ。だがそこへ棒が飛んできて、セレーネを撃墜した。ワンダーマンの攻撃でモーガン・ル・フェイの力が弱まったことにより、デモリッションマンが記憶を取り戻し、味方についたのだ。だがまだまだモーガンは倒せない。トワイライトソードを握りワンダーマンを押し返すモーガン。もっとパワーが必要だと叫ぶワンダーマン。

 スカーレットウィッチはワンダーマンにパワーを送っていたが、クエーサーが、そしてキャプテン・アメリカが彼女の肩に手を置き、自分のパワーも使ってくれと言う。さらにキャップの肩にアイアンマンが手を置いた。アベンジャーズの記憶が戻ったのだ。一同は次々と手を差し伸べ、スカーレットウィッチは全員のパワーを集めワンダーマンに送った。力を得てモーガンを押し返すワンダーマン。アベンジャーズの力が結集されたのだ! それを知ったモーガンは目から魔力を放ち、アベンジャーズを攻撃する。魔力に打たれ手を放してしまう者がでて、再びパワーが弱まっていく。だが、夫であったビジョンが吹き飛ばされたのを見てスカーレットウィッチは死力を振り絞った。強烈なパワーが送り込まれ、ワンダーマンは叫ぶ。次の瞬間、全てが閃光に包まれ、気が付くと全員が元の姿に戻っていた。

 モーガンの野望は砕かれた。キャプテン・アメリカジャイアントマンアイアンマンにビジョンをみるよう言う。モーガンに下半身を吹き飛ばされビジョンは倒れていた。ビジョンを抱き起こすスカーレットウィッチ。シンセゾイドという人造人間であるビジョンはこれで死ぬことはないが、かなりのダメージを受けていた。エターナルズセルシはビジョンのシステム構造を停止凍結してダメージの進行を抑える。その時、上空に何かのエネルギーが飛んでいくのをビジョンとスカーレットウィッチは感じる。それは、ワンダーマンのイオンエネルギーだった。

 ソーはトワイライトソードを元の場所へ戻し、消えたアスガルド神族を探すため旅立つ。フォトンは各地に置かれているクインジェットの回収へ飛ぶ。ジャイアントマンによるとビジョンのダメージ進行は止まり、あとはアベンジャーズマンションに戻って修理が必要だと言う。事件は解決したが、ビーストは、総勢39人も集まっているアベンジャーズは次に何するんだいと問うのだった。

 

 今回は解決編。でかい風呂敷を畳むための理屈がモーガンのミスなのはやや情けないが、そもそもモーガンが完璧だとこの世界から脱出不能なので、このへんはストーリー上しかたないところか。最後のみんなのパワーを合わせるシーンも定番。

 強力なパワーを持つアベンジャーであったワンダーマンが、スカーレットウィッチの召喚で復活! ワンダーマンことサイモン・ウィリアムズは、スカーレットウィッチの夫であった人造人間ビジョンの人格プログラムのモデルになったという背景があり、スカーレットウィッチにとっては精神的に夫の一部という、複雑な関係である。一方、最後の決め手を、ビジョンがやられてスカーレットウィッチが能力を振り絞るという展開にしていて、ビジョンとの関係も立たせているのが上手いところ。

 マシンマンはと言うと、ずっと敵として動いているので、目立たないのは残念。

AVENGERS Vol.3 #2

1998年 MAR

by Kurt Busiek George Perez

 

 1998年のイングランドコーンウォールの海岸にあるティンタジェル岬に、ここを支配する女王モーガンI世が住む城があった。城下町では酔っぱらいが二人騒いでいたが、井戸のところにいた二人の女性に声をかけようとして、彼女たちが普通の領民ではないことに気付く。それは、ジェイド・ジャイアンテス(←シーハルク)とレディ・マーヴル(←バイナリー)だ。さらに空には、ドナール・ザ・マイティ(←ソー)を先頭に、天翔る騎士たちが飛んでいく。

 その様子を城内で見ているのは、モーガンI世ことモーガン・ル・フェイだ。敵対していたスーパーヒーローたちが自分の配下の騎士になっているこの世界を愉快そうに楽しんでいる。モードレッドは敵であったヒーローたちに危険を感じ殺そうと進言するが、モーガンには不安はないようだ。捕らえたスカーレットウィッチのヘックスパワーを利用し、世界を作り替えることができるアスガルド最強の武器トワイライトソードモーガンが抜いた結果、アベンジャーズのヒーローたちはこのような中世風の装いに変換されモーガン配下の騎士となっているのだった。

 モーガンの前に、ドナールが馳せ参じてきた。ドナールは何やら不安を感じますと女王に訴える。ソーであった意識がわずかに残っているのだ。モーガンは心配するなと笑う。果物のカゴを持った石像が喋るが、それはゴースト・オブ・ストーン(←ビジョン)だ。そこでドナールは急に思い出したように、アスガルドを探さなければと言い、飛び立っていった。記憶が戻ったのではと不安がるモードレッドに、奴が探すアスガルドはすでに無いのだと言い落ちつかせようとするモーガンだが、この世界も全てが彼女の思い通りという訳ではない。モーガンも不安を感じていた。

 城の地下牢には、一人の魔女が捕らえられていた。彼女はスカーレットウィッチことワンダ・マキシモ。拘束された彼女からいまだに力が引き出され、モーガンに利用されているのだ。

 城の外、城下町では、誇り高き騎士ヨーマン・アメリ(←キャプテン・アメリカ)が歩いていた。中世風の装備と剣を持つ姿に変えられた彼だが、唯一元の記憶を失ってはいなかった。彼は弓矢使いのロングボウ(←ホークアイ)に声をかけ、思い出すんだと説得する。相手の意志の強さに、ホークアイも記憶を取り戻し、自分の格好が変わっているのに驚く。二人は馬を駆り、アーサー王の時代に戻ったかのような町を抜け、城へたどり着く。

 指揮官の部屋に行ったキャプテン・アメリカたちは、寝室のトニー・スタークを起こし、記憶を戻させ協力者にしようと考える。すでにワスプフォトンが記憶を取り戻し、仲間になっていた。だがトニーの記憶は戻らず、魔法の兜をかぶって全身を鎧で覆った姿アイアンナイト(←アイアンマン)となり手からブラストを発射。

 下の階へ落下したキャプテン・アメリカらは、それぞれ姿と記憶を変えられたアベンジャーズに取り囲まれる。指揮官であるアイアンナイトも降下し追いつめられる中、キャプテン・アメリカは全員を前にアベンジャーズだった事を思い出せと演説。その言葉を聞いて、スターナイト(←クエーサー)が記憶を取り戻し、他にも次々と記憶が戻りキャプテン・アメリカ側につく者が現れる。だが一方で記憶が戻らない者もおり、ネイモア・ザ・シーロード(←サブマリナー)はパンチを打ち込み、キャップはシールドで防御する。記憶が戻った者と戻らない者の二派に分かれ対立するアベンジャーズ

 モードレッドはアベンジャーズの中で支配から脱した者がいる事をあわててモーガンに報告するが、モーガンはまだ自信ありげだ。だが地下のスカーレットウィッチは、助けを求めて必死に集中しようとしていた。

 城の外壁と共に、ヒーローたちが吹き飛んでいく。アベンジャーズ同士の戦いは激化していた。なんとか皆の記憶を取り戻そうと説得を続けるキャプテン・アメリカだが、攻撃を避けるので精一杯だ。そこで、モーガンの姿が空に浮かぶ。事態はまだ彼女の手中にあるのだ。勝ち誇るモーガンだが、そこへ落雷が起きる。記憶を取り戻したソーが帰還したのだ。だが今のモーガンの力はソーを上回っている。キャプテン・アメリカフォトンに指示し、フォトンは目くらましに閃光を発し、気が付けばキャップたちは撤退していた。

 閃光により敵の逃走が隠蔽されたと言うサー・マクハイネリー(←マシンマン)。皆の前に降り立ったモーガン女王へ、プリエステス・セレーネ(←ムーンドラゴン)は追撃の指示をと申し出るが、女王はその必要は無いと諭す。モードレッドも不安げにモーガンに声をかけるが、モーガンは私がこの世界をコントロールできるのを忘れたか、まだ我が手にトワイライトソードとスカーレットウィッチがあるのだと言う。

 だが地下牢では、スカーレットウィッチが助けを求め必死の呼びかけを続けていた。そして、彼女の召喚に応え姿を現したのは、すでに死んだヒーロー、ワンダーマンだった!

 

 前回アベンジャーズ総登場をやったと思ったら、第2号ではアベンジャーズ全員が中世風の姿で登場するという手間がかかる事をやっていて、圧倒される。各キャラクターのアレンジが楽しいし、記憶が戻るかどうかもうまく選択されている。高貴なヒーローほど記憶が戻りやすく、俗事や怒りに身を任せやすいキャラは戻らない傾向があるようだ。

 マシンマンは、鎧を着たからくり人形のような人物、サー・マクハイネリーSIR MacHINERYになっている(マシンMACHINEというスペルをうまく変えている)。手足が伸びるギミックは相変わらずだ。彼やビジョンのように機械の精神の者は記憶が戻っていない。

 舞台となっているティンタジェル城は、アーサー王の城として知られている。アーサーの仇敵であるモーガンは、変貌させた世界で自分の城にしている。

AVENGERS Vol.3 #1

1998年 FEB

Kurt Busiek & George Perez

 

 マンハッタンのカフェにて、クイックシルバーとその姉スカーレットウィッチ、妻クリスタルと娘ルナの4人が久しぶりの団欒を楽しんでいた。スカーレットウィッチとクリスタルはさきのオンスロート事件でオンスロートのエネルギー体に特攻し消失、だが異空間で生存しており「ヒーローズリボーン・リターン」にて帰還に成功したばかりだった。不在の間を埋めるように会話を楽しむ4人だが、ルナが突然悲鳴を上げる。窓ガラスを割って、鎧を着て武器を持った怪物たちが襲ってきたのだ!

 一方、ニューメキシコアルバカーキ付近にいたボニータ・フアレスは、突然地面を割って出現した怪物に掴まれる。ファイアーバードというヒーローとして活躍してきたボニータは、火炎を発する能力を発動させた!

 また、アフリカのワカンダ国にはドラゴンが飛来し、国王ティチャラことブラックパンサーが立ち向かう。

 さらにニューヨークのイーストリバーではホークアイが、セントラルパークではソーズマンマグダレンが、シンシナティ郊外ではハーキュリースが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の南カリフォルニアキャンパスではリビング・ライトニングが、ラスベガスではムーンドラゴンが、デンバーではスパイダーウーマンが、ヘブリディーズ島ではサブマリナーが、サンフランシスコではシーハルクが、クイーンズではダークホークが、ブロンクスではファイアスタージャスティ(元マーヴルボーイ)が、様々な怪物に襲われていた。それぞれの能力を駆使し怪物たちと激闘するヒーローたち。彼らは皆、世界最大のスーパーヒーローチーム、アベンジャーズのメンバーだ。だが戦いが最高潮に達したその時、突然怪物たちは消失してしまう。驚くヒーローたちだが、これは事件の始まりに過ぎなかった…。

 嵐の日。アベンジャーズの本部アベンジャーズマンションの前で、TVリポーターのミーガン・マクラーレンが報道していた。ここはオンスロート事件でアベンジャーズの主要メンバーが消失したあと使われていなかったが、怪物による世界規模のアベンジャーズメンバー襲撃事件を受け、初期メンバーのアイアンマンジャイアントマンワスプキャプテン・アメリカが集まっていた(ハルクも創設メンバーだったがすぐチームを抜けている)。だが、もう一人の創設メンバーであるソーは、まだこの世界への帰還が確認されていなかった。

 執事のジャービスはお湯を沸かして茶器を整え運んでいく。暖炉がある広間にアベンジャーズの4人が集まっていた。アイアンマンは、こちらの世界に戻った自分が前と同一人物だと証明するため法廷にいたと言う。ジャービスはお茶を入れ、ワスプに、そしてキャプテン・アメリカに渡す。ジャイアントマンには、特大サイズのティーカップだ。アイアンマンは、ストローで飲むには熱すぎるからとお茶を断る。

 ジャービスは退出し、一同はアベンジャーズメンバー襲撃事件について話し合う。襲撃には様々な怪物が現れていたが、みな同じように突然消え去ったと報告するジャイアントマン。この攻撃はすべて関連があると言うキャプテン・アメリカ。アイアンマンは、襲撃してきたのはすべてアスガルドの怪物だったと指摘。まるで裏にロキがいるかのようだが、とキャップが言いかけた時、強烈な風の音で話が遮られる。いや、ただの風ではない、窓を割って広間に飛び込んできたのは、雷神ソーだ!

 血相を変えて危機を知らせるソーに一同は驚く。倒れるソーを受けとめるキャプテン・アメリカとアイアンマン。あまりにやつれているソーを見てワスプはジャービスに連絡。やっと立ち上がったソーは、今回の危機に対決するための仲間が必要だと言い、キャプテン・アメリカは即座に助力を申し出る。汝の勇気を忘れていたなと言うソー。アイアンマンは、我々はアベンジャーズだろう?と右手を差し出し、そこにキャプテン・アメリカジャイアントマン、ソー、ワスプが手を重ねていく。ジャービスは大きいジョッキと骨付き肉を運んで入室すると、5人によりアベンジャーズが再始動した瞬間を目撃するのだった。

 ロープのついた矢が門に刺さり、隣のビルの屋上から弓をロープにかけてホークアイが滑り降りていく。眼下の道路にタクシーが停車し、スカーレットウィッチが降りてきた。彼女より一足先に門のスリットにIDカードを差し込もうとするホークアイだが、一瞬早くクイックシルバーが超スピードでカードを挿入した。門を通った3人を、ジャービスが中へ迎え入れる。

 中の広間には、これまでアベンジャーズの一員として戦った経験のある大勢のヒーローたちが集まっていた。その中にはマシンマンの姿もある。ファルコンブラックウィドウに今回の攻撃は何だと思うと問い、ブラックウィドウはその推測は他の人に任せるわと答える。ハーキュリースはスカーレットウィッチの到着を喜んでエール酒を勧め、スカーレットウィッチは任務のため断る。ブラックパンサー、サブマリナー、ムーンドラゴンの3人は、汚く臭い男が座っているのを見て、あれもアベンジャーなのかと不審に思うが、ジャービスがあれはデモリッションマンですよと言う。ジャスティスは蒼々たるメンバーに気後れするが、きみも攻撃を受けたんだろうとレイジに言われる。アベンジャーズとして戦った経験はほとんどないんだけどとダークホークはファイアスターに相談する。ビーストキャロル・ダンバースミズ・マーヴルと言いかけて今はバイナリーだっけと訂正、バイナリーは、どっちでも変わらないわ、キャプテン・アメリカたちに召集されたのに、私たちは何で時間を無駄にしてるの?と答える。

 司令室では、キャプテン・アメリカたち5人が、アベンジャーズ全メンバーの召集を続けていた。死亡していたり別の時間にいるなどで召集できないメンバーがスクリーンでチェックされていく。キャプテン・アメリカは、ごく短期間アベンジャーズだった事のあるファンタスティック・フォーミスター・ファンタスティックインビジブル・ウーマンザ・シングにも連絡するが、自分たちのチームの務めがあるのでと断られる。また、ハルクからの通信が割り込んできて、トロールに攻撃されたぞ、お前らのパジャマ・パーティーになど出ない!と怒って切られてしまった。連絡を終え、5人は動き出す。

 講堂の壇上で、キャプテン・アメリカは議長として、集めたメンバーに呼びかけていた。世界の危機に、アベンジャーズとして活動した経験を持つ者たちが可能な限り集結している。講堂の席にずらりとヒーローたちが並ぶが、中央に座ったデモリッションマンの周囲は悪臭のため誰も座らず、席が空いている。キャップは、この事件について最も詳しいのはソーだが…と話を続けようとするが、スパイダーマンが手を上げて、他に用事があるからと言う。すぐ横に座っていたソーズマンは、貴様なんぞアベンジャーズには必要ないと怒るが、キャプテン・アメリカは退出を許可。スパイダーマンとの戦いで正義の道へ入りアベンジャーズに参加した経緯を持つサンドマンはソーズマンに凄むが、キャップは制止し、ソーが話を始めた。

 ヒーローズリボーン・ユニバースから帰還する際、ドクター・ドゥームはこの異次元世界を作りだしたほどの超能力を持つフランクリン・リチャーズを狙うが、ソーはドゥームと格闘! フランクリンを彼の父リード・リチャーズに渡したが、ソーとドゥームは組み合いながら次元の狭間へ消える。

 気が付くとソーは故郷アスガルドに倒れていたが、驚いたことにアスガルドは崩壊し建物は瓦礫と化しており、誰もそこには居なかった。アスガルドと地球をつなぐ虹の橋も割れている。ソーは空を飛び誰かいないか捜索するが、父神オーディンや仲間の神々はおろか、巨人や魔物、ノームすら影も形もなかった。ソーは探索を続け、原因と思われるものを発見した。アスガルドで最も強力で危険な武器、巨剣トワイライトソードが無くなっていたのだ。ソーはさらに、虹の橋の破片を発見する。破片に触れると、ソーはミッドガルド、つまり地球の、シカゴに転移された。虹の橋が分断された時、アスガルドとつながる8つの世界への扉も引き裂かれていたのだ。

 そこでブラックナイトが、トワイライトソードについて訊ねる。ソーの説明によると、トワイライトソードは炎の悪魔スルトの燃えさかる世界で鍛えられた剣であり、世界の終わりにおいて全てを破壊すると言われているという。その剣は天地を破壊することも、逆に作り出すことも可能だという。ソーはトワイライトソードを見つける手がかりとして、5つのノルンの宝石がミッドガルドのどこかにあり、それを探すため皆を召集した事を明かした。アベンジャーズは5つのチームに分けられ、5台のクインジェットが探索に発進していく。

 召集に参加しなかったムーンナイトは飛んでいくクインジェットを見上げたあと街へと戻っていく。アベンジャーズマンションではフローティングチェアに乗ったリックと天満に餌をやるジャービスがスクリーンでクインジェットの出発を見送っていた。そして、飛んでいくクインジェットを監視するもう一つの瞳があった…。

 キャプテン・アメリカのチームは、ノルンの宝石の1つがあるイングランドのティンタジェル岬を目指していた。だが突然クインジェットが激しく揺れる。大竜巻が起こり、巻き込まれたのだ。ハーキュリースは自分にぶつかってきたデモリッションマンの悪臭に不平を言う。キャプテン・アメリカの指示で、クエーサーとクリスタルの二人はクインジェットの外へ出た。クエーサーはクァンタム・バンドからの光で揺れるクインジェットを安定させようとし、クリスタルはエレメンタルパワーで風を収めようとする。クインジェットの中のスカーレットウィッチは偶然を操るヘックスパワーを使う。強力な嵐に立ち向かうヒーローたち。

 一同の活躍で機は安定したが、彼らの眼前の大地になんと、探し求めていた巨剣トワイライトソードが突き立っていたのだ。着陸し剣を目指すアベンジャーズ

 そこで待っていたのは、伝説のアーサー王の息子、悪しきモードレッドであった。この悪役の合図で、土の触手が伸び、スカーレットウィッチが地中に引きずり込まれてしまった。さらに、岩石でできた怪物たちが地中から現れアベンジャーズを取り囲む。キャプテン・アメリカはシールドを投げつけ、デモリッションマンが素早い身のこなしで戦い、クエーサーがクァンタム・バンドからビームを放ち、クリスタルは竜巻を起こし、ハーキュリースは剛力で怪物を打ち砕く。クイックシルバーは超スピードでモードレッドの背後に回りぶん殴った! 怒りのクイックシルバーは竜巻のような攻撃でモードレッドの鎧をバラバラにし、相手を押さえつける。

 だが真の敵は別にいた。アベンジャーズの前に、この事件の黒幕、魔女モーガン・ル・フェイがその姿を現した。全ては彼女の計画だったのだ。

 分断されたアベンジャーズの他のチームは、世界各地でモーガンの放った怪物に足止めされていた。ブラックウィドウ率いるチームは南太平洋でミッドガルド・サーペントと交戦。北極ではワスプが率いるチームがフロスト・ジャイアンの群れと戦っている。赤道直下のアフリカではアイアンマンのチームがフォモール族の怪人たちと戦闘。そして最後のソーのチームは中央アメリカでガイコツ剣士たちと渡り合っていた。

 そして、モーガン・ル・フェイは切り札となるスカーレットウィッチを手中に収めていた。現実を歪めるスカーレットウィッチのパワーを、生贄の台に拘束して引き出し、モーガンケルト魔術がアスガルド魔術へ変換され、魔女モーガンはトワイライトソードに手をかける。姉の危機にクイックシルバーが跳び出し、他のアベンジャーズも動くが、時すでに遅くモーガンはトワイライトソードを抜いてしまった。周囲に満ちる閃光。世界を滅ぼすことも作ることも出来るというこの剣を使い、モーガンは何をするのか!?

 

 長い歴史を誇るAVENGERS誌は、オンスロート編でいったん終了し、ヒーローズリボーン編でVol.2が再スタートした。そしてヒーローズリボーン・ユニバースからヒーローたちが帰還するヒーローズリボーン・リターン編を経て、ここにVol.3がスタートした訳だが、何とアベンジャーズメンバーを全員集結させるという大ネタを振っていてとても豪華である。歴代のアベンジャーの中には、すでに死亡していたり、未来世界にいたり、宇宙にいたりして合流できないヒーローもいるが、彼らもモニター上で登場させ、ファンタスティック・フォーのうち3人やハルクなど一時期のみ参加したがアベンジャーズという印象の薄いヒーローは通信の上で断らせたり、スパイダーマンの途中退席やムーンナイトのように合流せずという扱いにしてまで、とにかく全員登場させているのがもの凄い。これまでのユニバースの歴史をストーリーに盛り込むカート・ビュシークの手腕と、多数のキャラクターを一つの画面にパースの矛盾なく巧みに配置するジョージ・ペレスの力量が冴えまくっている。

 帰還し再集結したアイアンマンが「同一人物だと証明してきた」と言っているのは、オンスロート事件の直前にトニー・スタークが死亡し、過去から来たヤング トニー・スタークがアイアンマンになっていたため。

 アベンジャーズとして活躍した事が本当に少ないマシンマンさえも集められているのはファンとして嬉しいところ。ただ、主要メンバーではないので、画面端にいて台詞もない扱いではあるが。5つのチームのうち、マシンマンは縁のあるアイアンマンのチームに入り、フォモール族に伸びるキックをくらわせている。

 アスガルドの怪物を出しソーに事件のあらましを語らせ、これはアベンジャーズ結成時からの宿敵ロキの仕業かと思わせておいて、モーガン・ル・フェイを持ってくるのも意外で良い。

 アベンジャーズは世界最大のヒーローチームのため、多くのキャラクターが描かれたたいへんな労作となっている。ペレスのペンシル画とビュシークの指示文章を掲載したAVENGERS ROUGH CUTという本も刊行された。

 だが次号、もっととんでもない展開が待っているのだった。

MACHINE MAN / BASTION '98

1998年

MIKE HIGGINS & KARL BOLLERS : WRITERS

MARTIN EGELAND : PENCILER

 

 ニムロッドに似た形態となったバスチオンを倒すため、ケーブルはレーザーライフルを撃ち込むが、バスチオンは右手でエナジーシールドを張り防いでしまった。さらに左手からビームが発射され、ケーブルは吹き飛ばされる。バスチオンがむこうを向いた隙に立ち上がったケーブルは再び相手を狙うが、切れたコードが足に巻き付いてきて、足から釣り上げられてしまった。バスチオンはこの部屋の全ての機械にアクセスする事ができるのだ。レーザー砲が宙吊りのケーブルに狙いを付けるが、ケーブルは足に巻き付いているコードをライフルで切断し、なんとかレーザーを回避、だが地面に叩きつけられてしまう。

 ケーブルが戦闘している間、バスチオンの攻撃で胸に穴が開き停止したマシンマンの体内に、バスチオンの体を構成するナノマシンが侵入し、修復が進行していた。まだケーブルが生きのびているのを見て、バスチオンは、右腕をコードの固まりに変えて施設の機械に接続させる。

 S.H.I.E.L.D.のヘリキャリアーの中では、G. W. ブリッジ大佐が、8時間が経過するにもかかわらずケーブルから連絡がないことに焦りを感じていた。ケーブルを使ったことは自分のミスではなかったか? そんな疑念が浮かぶ中、上層部から、何故連絡が無いのか、何か遅れがあったのかと通信が入る。バスチオンに作戦を任せた事が、一転して国家機密への脅威となってしまっている事に、上層部も焦っているようだ。ブリッジ大佐は、今はなき上官ニック・フューリー肖像画をじっと見つめる…。

 そこへ、S.H.I.E.L.D.エージェントの異変を察し、クラッグ将軍が現れた。ブリッジは作戦に投入した将軍の娘の状況ついて説明しようとしたが、将軍は、これは個人的問題ではない、はるかに重大な事が起きていると言う。

 バスチオンが動きを止めている事をケーブルは疑問に思う。バスチオンの手から伸びたコードは、機械に侵入していった。その間にも、ケーブルへ施設内のレーザー砲から攻撃が続く。バスチオンはこの施設のシステムに、未来のセンチネルであるニムロッドのデータをインプットしていく。

 未来世界でニムロッドは、最新技術で改良されたその力でミュータント抹殺の活動を続けていたが、ミュータントたちもしぶとく抵抗していた。ニムロッドたちは過去の時代に自分たちの一体を送り込む計画に出る…。

 バスチオンは、ミュータントハンター・ロボット、センチネルの歴史を振り返り語る。ボリバー・トラスク博士に作られた初代のセンチネルを束ねていた巨大センチネル、マスター・モールドは、初代X-MENと戦い、作り手に反逆したが阻止された事。その後X-MENは多くのメンバーが加わったが、センチネルは彼らとの戦いを続けていった事。だが過去世界へ来たニムロッドはアイスマンエンジェルの活躍により敗北した。マスター・モールドが復活した事もあったが、ハルクにより破壊された…。

 バスチオンの話の間も、ケーブルは戦い続け、テレキネシスで施設の配線を操ってレーザー砲の可動部に巻き付かせ固定し、危機を脱する。だが施設のシステムはすでにバスチオンに掌握されており、ケーブルに呼びかけてくる。通路を走るケーブルの脳裏に、マスター・モールドがサイクロプスと戦っている像が流れ込んできた。この記憶のバックラッシュは、先ほどマシンマンの記憶が見えた時と同じ感覚だった。

 だが気にしている余裕はない。ケーブルは小型パソコンを取り出し、スタンドとアンテナを伸ばし、S.H.I.E.L.D.へ通信する。ブリッジ大佐につながった。バスチオンのため長く通信できないと断ったあと、複合センサーで観測したが人間の脳波は検出できなかった、ヘリはあったのでS.H.I.E.L.D.のエージェントはここへ到達したようだが…と、ケーブルがそこまで言った時、背後にマシンマンの姿が見え、映像が途切れてしまう。驚いてケーブルに呼びかけるブリッジ大佐だが、画面は砂嵐を映すだけだった。

 ブリッジ大佐は、マシンマンについてはアベンジャーズに参加していたという事ぐらいしか知らないがと考えつつ、送り込んだ5人のエージェントの安否は将軍の子も含めて絶望的だという状況を知らせるため、クラッグ将軍に電話し呼び出す。

 その頃ケーブルは、マシンマンの伸びた手に首を掴まれ吊り上げられていた。周囲のモニターからバスチオンの声が響く。ニムロッドがニコラス・ハンターという名の建築作業員に擬装していたように、マシンマンも人間の姿で活動してきた。だが今やマシンマンはバスチオンにより、ミュータントを狩るように修復・改造されていた。ケーブルはテレキネシスでスクリーンを一台飛ばしマシンマンにぶつけようとするが、あっさりフォースフィールドで防がれてしまう。バスチオンの声は続く。過去へ現れニコラス・ハンターとなったセンチネルの最終型ニムロッドは、残されていた最初のセンチネル、マスター・モールドの残骸に触れ、融合した! さらに、X-MENとの戦いの中で次元の門シージ・ペラリスをくぐり抜けたことで、それまでになかった姿、普通の人間にしか見えない姿に変貌する! これがバスチオン誕生の秘密だったのだ…。

 ケーブルは背負っていたレーザーライフルを落とし、テレキネシスでトリガーを引きマシンマンの頭部を銃撃することに成功。たまらずケーブルを吊り上げていた手を放すマシンマン。だが致命傷とはならず、短時間に自己修復してしまう。ケーブルはマシンマンにタックルする。

 …林の中に全裸で倒れていた謎の男を、ローズ・ギルバーティという女性が助け、生活の場を与えてくれた。一時はセンチネルにあるはずのない愛さえ感じられるかと思われた。だが「ミュータントの脅威」という報道を目にした時、男は本来の目的へ復帰する。謎の男はローズのもとを去った。この時、グレイドン・クリード大統領候補が、副大統領候補マイルズ・ブリックマン上院議員と共に、選挙活動中であった。ミュータントの脅威を感じていない一般人たちを守る羊飼いとなるべく、男は彼の持つ過去と未来の知識をグレイドン・クリードに提供し、大統領候補に接近する。それにより、新たなマスター・モールドの製作が開始された。そして謎の男は、人類の敵に対抗する要塞という意味の「バスチオン」という名を名乗るのだった…。

 マシンマンの右フックをかわしたケーブルは、膝蹴りを叩き込みぶっ飛ばす。ケーブルはマシンマンの発する音声が、本来のマシンマンのものではなく、センチネル化した今のバスチオンに似ていることに気付いていた。バスチオンの支配からマシンマンを解放する方法を考えるケーブルの脳裏に、ニムロッドがコロッサスと戦った時の映像がよぎる。

 事態を把握できず焦るブリッジ大佐に、軍上層部から通信が入り、バスチオンを始末するため空爆命令が下された。あそこにはまだケーブルやマシンマンがいるのだ。反論しようとするブリッジだが、上層部の決定は覆らない。

 …バスチオンは障害者施設を訪ね、治療に擬装して人間をプライム・センチネルに改造していった。そして彼はオペレーション:ゼロ・トレランスを開始したが、失敗に終わり、捕らえられる。最初のマスター・モールドをボリバー・トラスクが破壊したように、自分が守ろうとした人間たちは自分を捕らえ、屈辱的な拷問を科した。だが彼はそこから脱出する…。

 バスチオンに操られたマシンマンは再びケーブルを攻撃する。施設のスクリーンが動きケーブル目がけてぶっ飛んでいく。サイ・シールドで防御し、接近したケーブルは、マシンマンと格闘する。

 S.H.I.E.L.D.のヘリキャリアの執務室ではクラッグ将軍が、ブリッジ大佐の無策ぶりについて、肖像画のニック・フューリーを引き合いに出して叱責していた。お前が任務を遂行しないならば私が…と言う将軍に、ブリッジ大佐は決意を固め、部屋から出ていってください将軍と答えるのだった。

 バスチオンは、X-51こそケーブルの死刑執行人として最適だと言い、その言葉通りマシンマンはケーブルと戦う。ケーブルの左目が放つサイ・パワーとマシンマンの手から発射された電磁波が空中でぶつかる。バスチオンはこの施設に潜入したS.H.I.E.L.D.の工作員もカプセルに入れプライム・センチネルに改造していた。ケーブルを始末した後、再びプライム・センチネル軍団を繰り出しX-51に指揮させミュータントを絶滅させるつもりなのだ。機械であるマシンマンには、人の心を読むテレパスであるケーブルの能力は通用しないと言うバスチオン。ケーブルはもう一つの能力テレキネシスで施設の機材を崩しマシンマンにぶつけようとするが、マシンマンは足を伸ばして避けてしまった。バスチオンは、これまでX-51はマシンマンと呼ばれていたが、この任務にはマン=人間らしさは必要ない、彼は今やセンチネル・スプリームだと宣言する。腕を伸ばしてケーブルに巻きつけ絞め殺そうとするX-51。だがケーブルはテレパシー能力を使い、マシンマンの本来の記憶を再生させていく。軍のロボットとして製作されたが、アベル・スタックによって彼の息子として育てられ、父と同じ姓の「アーロン・スタック」の名をもらった事、父が彼を逃がすため自ら犠牲となった事を。バスチオンは同じように大切な人ローズを失ったが、彼はそこで希望と夢を全て捨ててしまった、だがマシンマンは父の思いを胸に、偉大なヒーローの一人となったという事を。ケーブルの必死の声が通じ、マシンマンはやっと自分の意識を取り戻した! ケーブルから腕を放し、両手から火炎を発射してバスチオンが支配している周囲の施設を攻撃する。

 その時、軍の命令で施設に2機の戦闘攻撃機が向かっていた。「サンドマン1」「サンドマン2」というコードネームを振られた2機は、施設を確認した。到達まであと2分だ。

 マシンマンは指を施設のシステムにリンクさせ、バスチオンからシステムを奪う。彼らを止めるため、天井を破りバスチオンが出現。マシンマンがハッキングした施設のレーザー砲がバスチオンを撃ち、バスチオンはエナジーシールドを張って防ぐ。マシンマンはその間にシステムに自爆指令を指示した。 バスチオンはマシンマンに支配されたシステムを奪い返そうとするが、レーザー砲の攻撃に加えケーブルがテレキネシスで配線を操りバスチオンを拘束した! マシンマンとケーブルは脱出し、扉を閉鎖する。

 巨大なきのこ雲が上がる。戦闘攻撃機サンドマン1」のパイロットは、爆撃前に施設が大爆発し消滅した事を本部に報告する。クラッグ将軍はブリッジ大佐に、何か話していなかった事があるのだなと問う。ブリッジは将軍に、何かシステムの故障でもあったか、それとも野放しの大砲が2つほどあったのかも知れませんなと答えるのだった。

 脱出したケーブルとマシンマンは、ケーブルのテレキネシスによる防御で生き残っていた。ケーブルはマシンマンに、この事件でまた時間軸がねじれただけの事なのか、悪夢のような明日が到来するのだろうかと問う。マシンマンは、精神リンクは切れたがきみの気持ちは判る、これを教訓にして、どんな犠牲を払ってもバスチオンが導こうとした憎悪の道を避けるべきだと学ばなければならないと答える。人類は生存を保証するための許容範囲を超えることができるだろう、その可能性はゼロよりも高いと思わないかと言うマシンマン。二人は握手を交わし、マシンマンは自分をアーロンと呼んでくれと言うのだった。

 

 ゼロ・トレランス」編完結。ロボットキャラクターであるマシンマンをバスチオンと対比させて、うまくまとめている。

 この当時、S.H.I.E.L.D.の隊長ニック・フューリーはパニッシャーに殺害されたと思われており(後に殺されたのは身代わりロボットだったと判りフューリーは復活する)、ブリッジ大佐が指揮を取っていた。偉大な指揮官だったフューリーのように判断できるかというブリッジの迷いが展開を盛り上げる。

 クラッグ大佐は今や将軍になっており、ブリッジの上官としてやや融通のきかない立場を振られている。前編ではクラッグの子の性別は不明だったが、この後編で娘と記されている(リック・レオナルディが描いた前編のエージェント・クラッグは女性に見えないのだが、製作時の情報伝達ミスか)。

 バスチオンの正体が、最後のセンチネルであるニムロッドと最初のセンチネルだったマスター・モールドが融合・変異したものだったという驚きの事実が明かされる。それまで人間の姿だっただけに衝撃だが、彼のミュータント絶滅の執念は、ミュータントハンター・ロボット、センチネルだったからというのは理解しやすく、面白い。

 バスチオンに洗脳されていたマシンマンナノマシンにより改造され「センチネル・スプリーム」となる展開は、センチネルもマシンマンもロボットキャラだけに実にしっくり来て、ケーブルとの一進一退の対決も盛り上がる。そして最後にヒーローとして復帰し、長い不在を抜けてマーヴルユニバースで活躍を再開するのだ。

CABLE / MACHINE MAN '98

1998年

MIKE HIGGINS & KARL BOLLERS : WRITERS

RICK LEONARDI : PENCILER

 

 ニュー・メキシコ州にある異様な施設に潜入した特殊部隊は、秘密諜報組織S.H.I.E.L.D.G. W. ブリッジ大佐から通信を受けていた。彼らの眼前には、人間のようなものを入れたいくつものカプセルと、巨大なロボットの頭部があった。

 つい先頃まで、アメリカではゼロ・トレランスという作戦が行われていた。国際的にも公認された、ミュータントの脅威から世界を救うための計画だった。だがこの作戦には、人間を秘密裏に改造したプライム・センチネルというサイボーグたちが投入されており、その非道な事実は次第に明らかとなっていった。ミュータント狩りは中止され、この作戦を主導したバスチオンという謎の男は政府に捕らえられ、刑務所へ送られた。人類をミュータントから守るという彼の野望は妨害された。だが、「オペレーション:ゼロ・トレランス」の悪夢は本当に終わったのか…?

 特殊部隊が発見したのは、プライム・センチネルを製造していた地下室だった。人体改造を受けカプセルに入れられたセンチネルたちは、まだ生存している。部隊のリーダー格、ウィークスはブリッジ大佐に通信する。部隊の一人、クラッグというエージェントは、S.H.I.E.L.D.の上層部に父がいるようだ。だが、彼らは気付いてはいなかった。この施設には番人がいる事を。そう、マシンマンが侵入者に気付き、攻撃を開始したのだ。マシンマンは次々とエージェントを始末していき、通信を切断する。

 独立記念日。ある男が妻のローズと息子を連れ、花火に彩られた自由の女神像を見に来ていた。父は息子に、自由の尊さを説く。子は巨大な像を見て、なぜこれはそんなに特別なの?と聞く。それはな息子よ、これは自由のシンボルだからだよと父は答えるが、二人の目には自由の女神の顔に巨大なミューターントハンター・ロボット、センチネルの顔がオーバーラップする…。

 この二人の意識とは実は、捕らえられ全裸でカプセルに封じられたバスチオンのものだった。ブリックマン上院議員マークス博士に、バスチオンには意識があるのかと問う。博士は限定的な肯定をし、バスチオンは通常の脳波を示さず2進法のコードで意識を現し、既知の遺伝子パターンや指紋も持たないこと、その体は本物の血液や細胞をまったく含まず、ナノマシンで構成されている事を説明する。バスチオンは人間ではないのだ!

 一方、アラスカの宵闇の中、雪上に一人の戦士がたたずんでいた。未来から来たミュータント戦士ケーブルだ。彼は双眼鏡で眼下の屋敷の中を見る。中には「ゼロ・トレランス」を逃れた彼の父母スコットジーン・サマーズがいる。二人の無事を確認したケーブルはその場を立ち去る。

 彼の胸に、これまでの出来事が去来する。致死性のウイルス感染を治療するために未来に送られたこと、テレパスの能力を磨くための訓練を受けた少年時代、アポカリプスストライフとの激しい戦い、そしてシックスパックという傭兵隊の仲間たち…。雪山を進むケーブルだが、突然彼の前にS.H.I.E.L.D.の小型ヘリが飛来してきた。

 S.H.I.E.L.D.の空中要塞ヘリキャリアへと運ばれたケーブル。ブリッジ大佐はケーブルの助けが必要だと言い、バスチオンがカプセルを破り脱走した映像を見せた。警備員に対して手からビームを発射して撃ち殺すバスチオンの姿を見て、普通の人間だと思っていたが…と言うケーブル。最後には施設の外壁が爆発し、バスチオンは外へ出て行った。その超常的な能力を見て、バスチオンはミュータントだったという事か?と訊ねるケーブル。ブリッジ大佐にもバスチオンの正体は掴めていなかったが、バスチオンの目的地は自分の部隊が全滅した施設ではないかとケーブルに話す。その施設では、椅子に座ったマシンマンの頭部へ配線が接続されていた。「X-51ユニットにダウンロード開始…」と音声が響く…。

 すっかり人間離れした外見となったバスチオンは、ニューヨークへと戻っていた。記憶を辿り、ローズがいる家へと来たバスチオンは、彼女に声をかける。ローズはTVを見て彼が戻ってくると思っていた。助けを求めるバスチオンをローズは優しく諭す。だがそこへ狙撃兵が乗ったヘリが飛来、バスチオンをミュータントと誤解し発砲した。バリアで銃弾をはじくバスチオンだが、気が付くと巻き込まれたローズが倒れて死んでいた。その時バスチオンの中の何かが完全に失われた。エネルギーを吹き上げ飛び立ったバスチオンは、ヘリを撃墜し飛び去る。

 ブリッジ大佐から垂直離着陸機を借りたケーブルは、ニュー・メキシコのあの施設の側に着陸した。すぐ側にはS.H.I.E.L.D.のエージェントたちが使ったと思われるヘリが着陸している。レーザーライフルで扉を焼き切ると、中に装備されているガトリング砲や小型ミサイルの迎撃装置が出迎える。テレキネシスのシールドで攻撃を防ぎ、迎撃装置をハンドガンで撃ち壊すケーブル。続いて落とし穴のトラップがあったが、ケーブルはテレキネシスで体を持ち上げ、レーザーライフルで次の扉を吹き飛ばした。

 そこに待ち受けていたのがマシンマンである事に驚くケーブル。だがマシンマンは人間の味方として戦っていたはずだ。マシンマンの方でもケーブルを認識したが、まるで機械のように分析結果を発音し、攻撃を開始。左手を伸ばしてレーザーライフルを掴み、右手のパンチを打ち込んでライフルを奪い突き付けてきた。ケーブルは、マシンマンには人間と同様の会話パターンがプログラムされたはずだ、何を頭に入れられたんだと疑問を覚えつつ、テレキネシスで天井の機械を動かしマシンマンの頭にぶち当てた。倒れたマシンマンだが伸びるパンチで反撃してくる。これをかわしたケーブルはライフルを取り戻し発砲。マシンマンは足を伸ばしてそれを避けたが、突然苦しみだす。不思議に思うケーブル。

 だがそこへ、完全に人間の姿ではなくなったバスチオンが飛来した。何があったんだとケーブルは不審に思う。その隙に、マシンマンは手を伸ばしてケーブルの体に巻き付け拘束してしまった。バスチオンはケーブルには見向きもせず、かつて全てのセンチネルを指揮していた親玉ロボット、マスター・モールドの頭部にアクセスしはじめた。絶体絶命のケーブルは状況を打開するため、自分の体に巣くうテクノ・オーガニック・ウイルスの進行を抑えるのに使っているパワーを解放する。

 その時ケーブルは、マシンマンの記憶に触れた。アベル・スタック博士により人間のように育てられ、政府がプロトタイプを破壊したとき彼を生き残らせるために父が命を犠牲にした事を。父の愛を受けてヒーローとして活動しはじめ、ハルクと戦い、アベンジャーズの一員となった事を。父からアーロン・スタックという名をもらった事を。

 だがケーブルが戦っているその時に、バスチオンはマスター・モールドの目からエネルギーを受け、姿が変化していった。全てをバスチオンへ渡したマスター・モールドの巨大な顔は沈黙する。マシンマンは背後からエネルギー攻撃を受け停止。ケーブルの前に、未来センチネルであるニムロッドに似た姿に変貌したバスチオンが立ちはだかっていた。だが彼は、私はニムロッドではないと言う、私はお前の破滅だ、と。

 

 1996年の「オンスロート」クロスオーバーにて、プロフェッサーXの意識が生み出した凶敵オンスロートによりミュータント以外のスーパーヒーローたちが犠牲となったが、残されたミュータントたちはこの事件の首謀者ではないかと誤解され、ミュータントを危険視する世論は一気に加速する。そんな中登場した謎の人物バスチオンがミュータント弾圧作戦「オペレーション:ゼロ・トレランス」を推進。お尋ね者となったX-MENは逃走する中で、一般人の中に改造人間にされたミュータントハンター・サイボーグ「プライム・センチネル」が放たれている事を知り、この作戦の暗部を明らかにし、バスチオンは捕らえられる。これが1997年のX-MEN系クロスオーバーイベント「オペレーション:ゼロ・トレランス」である。が、この話の謎解きと結末は、クロスオーバー内のタイトルではなく、翌年に刊行された2冊のANNUAL誌で描かれた。それがこのCABLE/MACHINE MAN ‘98と、その続編MACHINE MAN/BASTION ‘98である。この2誌は、ENGINES OF DESTRUCTIONというシリーズ名が付けられている。

 「オペレーション:ゼロ・トレランス」は日本語版も刊行されたが、コミック本編が掲載されたのは途中までで、残りはダイジェストでまとめられ、この2誌についてもあらすじのみが掲載されるにとどまっている。

 この話で突然マシンマンが、しかも敵として出現というのに驚かされる。マシンマンと旧知のクラッグ大佐がこの頃にはS.H.I.E.L.D.上層部にいるという新情報があり、彼の子が登場してマシンマンに殺されたり、マシンマンの旧敵でロボットを危険視する政治家マイルズ・ブリックマン上院議員が再登場したりするのが凝っている。

 マスター・モールドは、1965年という初期のTHE X-MEN #15が初出。THE X-MEN #14-16はミュータントハンター・ロボット、センチネルとの戦いを3連作で描く豪華な話。反ミュータント主義者のボリバー・トラスク博士はミュータントの能力に対応して攻撃・捕獲するロボット、センチネルの軍団を製作するが、センチネルを統括する巨大な親玉ロボット、マスター・モールドは、作り主に反逆し独自に行動を始める。X-MENは次々と捕らえられてしまうが、トラスク博士がロボットの暴走を止めるために設備を破壊し、マスター・モールドと共に爆発に巻き込まれ死亡するという展開だった。初出誌のアートは、レイアウトがジャック・カービー、ペンシルがジェイ・ガービン。

 人間の姿であるが生物ではないことが明かされたバスチオンの謎は、次回で明かされる。

AVENGERS WEST COAST #83

1992年 JUN

ROY & DANN THOMAS : WRITER

HERB TRIMPE : GUEST ARTIST

 

 巨大な交通網の中心部にあるロサンゼルスの街の、ビルの谷間に取り残されたような古びた屋敷の中で、車椅子に座った老人が配下の男と話していた。1947年以降に笑うことがなかったと言う老人だが、ここで久しぶりに大きな口が裂けるように笑う。彼はハイエナという名のヴィランだったのだ。

 夜の人気のない廃自動車が積まれたジャンクヤードで、一人の男がコートを脱ぎ、「ハイエナ! どこに居る?」と叫んだ。その声を聞き現れたのは、武器を手にした荒くれ者4人だったが、男は素早い身のこなしで次々と荒くれ者どもを打ちのめし、最後の敵が撃った銃弾を避けて右フックで打ち倒した。最後の敵の懐に手紙があるのを発見した男は、それを開いて読む。男はゴールデンエイジに活躍した人造人間ヒーロー、ヒューマントーチであり、ハイエナは彼の旧敵であったのだ。この手紙が燃えずに読まれているという事は、お前は発火能力を失っているという事だ、私ならそれを取り戻す助けになれる、また、昔お前の相棒だったトロの行方を捜す手助けもできるぞと書かれてあり、翌日午後5時23分に屋敷に来いと指定してあった。荒くれ者どもを縛り上げた後、ヒューマントーチはいま使っているトヨタ車に乗り込み、巨大な道路網を抜けていった。

 彼が向かったのは、スーパーヒーローチーム、アベンジャーズ・ウェストコーストの本部だった。一同はヒューマントーチからの緊急連絡を受けて集まっていた。中に入ったヒューマントーチは、チームメンバーではなかったティグラがいるのに驚く。また、補充要員のマシンマンの姿もあり、皆にコーヒーをいれて回っていた。ハンク・ピム博士「オペレーション:ギャラクティック・ストーム」にてチームが宇宙へ出る際に、マシンマン、ティグラ、クイックシルバーの3人が基地の維持を任されていたのだと説明する。

 椅子に座ったヒューマントーチは、自分は能力を失い、死んだと思われていたので、「ギャラクティック・ストーム」の時に招集がかからなかったのだろうと言う。マシンマンは彼にコーヒーを注ぎながら、同じアンドロイドのヒューマントーチがコーヒーを飲む事を不思議がる。ヒューマントーチは、自分が1939年に製作された時は、普通の人間と同じくなるように設計された、私の発火能力は設計ミスなのだと言う。彼の発火能力は、最近マスターマンという敵と戦った際に失われていた。ワスプはなぜ緊急招集を連絡したのかと訊ね、ヒューマントーチはハイエナからの呼び出しについて語る。マシンマンは、自分のメモリにはハイエナという犯罪者の記録はないがと訊ねる。トーチは1940年代の事だからと、第二次大戦当時にナチスの手先となり、戦後ハイジャックなどの犯罪に手を染めたハイエナについて語った。最後は’47年にヒューマントーチとパートナーのトロが彼を投獄したと言う。

 だがトーチは、この場合自分一人で行った方が良いと言い、モッキンバードをはじめチームメンバーたちは自分たちの協力は必要ないのかと問う。はたしてヒューマントーチはどういう作戦を考えるのか?

 翌日午後、ラッシュアワーで混雑する高速道路に、車を跳び越えて走るトーチの姿があった。当然のように抗議の声が上がるが、トーチをここまで送ってきたピムは、彼の成功を祈る。トーチは指定された時刻に屋敷へ到着し、中に入り階段を上がる。

 扉の向こうにいたハイエナは、ヒューマントーチについて科学者に調査させたと語る。今はヒューマントーチの体内の免疫機構が発火能力をブロックしているのだと説明したハイエナは、手元にある装置を見せた。この装置はロサンゼルス地区のすべてのコンピューターネットワークとヒューマントーチの脳を繋ぎ、免疫によるブロックを解除できると持ちかけるハイエナ。さらに、FBIやCIAなどのコンピューターにアクセスすることで、トロについての情報も得られるだろうと言う。ハイエナは、その際に得た情報の一部はこちらで利用させてもらうがと条件をつける。ヒューマントーチは旧敵を疑うが、儂がお前を殺す気なら、呼び出した時に銃殺を命じていたと言われ、相手の提案に乗る。トーチは装置から伸びた配線を頭に付け、ハイエナはスイッチを押した。

 時を同じくして、道路で大パニックが起き始めた。ハリウッドではトレーラーの荷台が開いてハイエナの群れが放たれ、野獣たちは他の車に吼えかかる。パサディナでは巨大車輪の特殊車が他の車を踏みつぶして暴走。サンタモニカではセスナ機が道路に墜落し炎上。これは全てハイエナの計画だった。装置に接続されたトーチを前に、自分の計画の成功を腕を振り上げて喜ぶハイエナ。

 専用ジェットで上空にいたアベンジャーズ・ウェストコーストへ、ピム博士から指示が入った。混乱により博士はトーチのトヨタ車を乗り捨てなければならなかったが、なんとか脱出し、指令車コンピューバンにたどり着いていた。彼の指示を受け、飛行するマシンマンクイックシルバーとティグラが捕まり降下、モッキンバードは飛行バイクで飛び出していく。着地したティグラはハイエナの群れを威嚇して追い払う。巨大車両が迫る中モッキンバードは特殊ロッドで車のドアをこじ開け人々を救う。縮小化したワスプは背中の羽根で飛び、巨大車の中へ入ってキーをまわし停止させることに成功。セスナ機の墜落現場ではクイックシルバーが高速で走り竜巻を起こして消火し、マシンマンがセスナの残骸を押して道路から取り除いた。ハイエナが起こした災害は食い止めたが、そこでマシンマンにピム博士から次の指示の通信が入った。

 ヒューマントーチに、発火能力を取り戻せと言うハイエナ。だがトーチはそうせず頭のコードを外し、装置を壁に叩きつけて破壊した。狂ったのかとハイエナは驚く。ヒューマントーチは、ヒョウは住処を変えるがハイエナはそれができないと言い、旧敵がどういう手に出るかアベンジャーズ・ウェストコーストと分析し対策を立てていた事を明かした。それで儂を出し抜いたつもりかとハイエナは車椅子のボタンを押し、手下の荒くれ者を呼び出しトーチに差し向ける。

 だが次の瞬間、床をぶち破ってマシンマンたちアベンジャーズ一同が現れ、あっという間に手下を取り押さえた。何をするつもりだったんだとトーチに問われ、ハイエナはこの街を吹き飛ばすだけの爆発物があったのにと言い、涙を流す。そんな事は聞いていなかったとハイエナの手下まで怒り出すが、ハイエナは意に介さず、自分が刑務所から解放されたのは、希なタイプのガンにかかり死を待つのみだったからだと明かす。トーチは、調査でその事実を知り、自分が永久に苦悩するように計画が仕組まれていることを予想したのだと言う。ハイエナはトーチが能力を取り戻そうとしている事を利用しようとしたが、彼は再びスーパーヒーローになるチャンスを捨ててそれを阻止したのだ。だがハイエナは、たった一つだけ良い事がある、お前は儂を罰することはできないぞ、なぜなら儂はすぐ死ぬからな!と興奮しながら叫ぶ。このドス黒い小さな勝利を得て、ハイエナは気絶する。

 アベンジャーズ一同が見守る中、病床で意識を取り戻したハイエナことヘンリー・モートンソンに、クリグステイン医師が声をかけた。彼のガンは、投獄中の不機嫌さがその大きな要因であり、最近彼が再び笑い始めた事でガンは消失していったと言う。この説明を聞き、ハイエナは出ていってくれと頼む。アベンジャーズは退出し、医師は患者に悪い面だけを見ないようにと「笑いは百薬の長」という格言を授けるのだった。

 

 ハイエナがヒューマントーチに最後の戦いを計画する「HYENA’S LAST LAUGH」というストーリー。’01-’02年のDCのクロスオーバー「JOKER’S LAST LAUGH」を思い起こす方もおられよう。

 ヒューマントーチは1939年のMARVEL COMICS #1が初登場で、ホートン教授の造った世界初の人造人間だが、発火能力を発現し、スーパーヒーローとして活躍した。ファンタスティック・フォーのヒューマントーチことジョニー・ストームとは別人である。

 ハイエナは初出が1977年発行のINVADERS ANNUAL #1。インベーダーズは’69年のAVENGERS #71で初登場したのだが、第二次世界大戦中にキャプテン・アメリカ、ヒューマントーチ、サブマリナーらが組んで戦っていたという後付け設定で描かれたチームで、ストーリーはロイ・トーマスが担当した。今回の話もロイ・トーマスが担当しているため、ヒューマントーチの望みを利用しようとするハイエナの企みから、最後の皮肉な結末まで、実にうまい展開になっている。

 マーヴル最大のスーパーヒーローチーム、アベンジャーズは、この時期東海岸チームと西海岸チームに分かれて活動していた。マシンマンがこの時期までにアベンジャーズの補充要員として活躍するのは、実はこの号のみ。同じアンドロイドヒーローのヒューマントーチとの共演だが、コーヒーを注ぐシーンぐらいしかからみがないのは残念。劇中1コマのみ眼球が描かれたシーンがあって(単純なミスだと思うが)、 マシンマンの絵としては珍しい。

 さらに、この号のあとマシンマンの出番は、ピンナップ画やキャラ解説など限定的なものだけになり、劇中で活躍するのは’98年まで待たなければならない。アベンジャーズメンバーとしては使いにくいキャラクターだったのかもしれない。

THE AVENGERS ANNUAL #19

1990年

ROY & DANN THOMAS ..... WRITERS

HERB TRIMPE ..... PENCILER

 

 究極進化を遂げたターミナスを止めるため、東西のアベンジャーズが動き出した。ターミナスは飛行し何処かへ向かっている。キャプテン・アメリカが、あいつはセント・ルイスへ向かうつもりだと言う。

 だがターミナスに最初に接触したのは東でも西でもなく、どっちにも入れないへっぽこヒーローたちが北で結成したグレートレイクス・アベンジャーズだった。彼らのジェット機モッキンバードが操縦し、ターミナスへ接触するが、あっという間に捕まえられ握り潰された。脱出した一同だが、翼竜のように飛行できるダイナ・ソアーに肥満体のビッグ・バーサがしがみつき、さらにその下にモッキンバードが捕まり、ふらふらと落下し、セント・ルイス市名物のゲートウェイ・アーチの上に着地する。他のメンバーはターミナスの頭にしがみついたが、ミスター・イモータルはよせばいいのにあかんべーをしてターミナスの両手に叩き潰された。彼は死んだの?と嘆くモッキンバードだったが、何をされても無駄に不死身なミスター・イモータルはちゃんと再生していた。

 ターミナスは、ばかげたじゃれ合いはもう良い、我が使命を完成させねばと言って、フォースフィールドを展開しはじめた。自分たちは失敗したと言うモッキンバードに後ろから声がかけられ、振り向くと、それはホークアイで、ウェストコースト・アベンジャーズが到着していた。モッキンバードホークアイに文句を言いはじめるが、そんな事をしている場合ではない。そこへ東海岸アベンジャーズも合流。アンドロイドのビジョンピムの仮説を計算し、ターミナスは周囲のエネルギーを吸収し、鎗で宇宙を走査すると説明し、まだ手遅れになっていない今こそ立ち向かう時だと皆に言う。アベンジャーズ、攻撃!の声と共にヒーローたちが飛び立つ。

 一方、ターミナスに殺されたと思われていたソーは、宇宙空間をただよっていた。だが彼は魔法のハンマー、ムジョルニアをターミナスの体内で奪われていたため、宇宙を飛行することができない。そのうち眼前に小惑星が現れた。重力に引かれてソーは小惑星に激突してしまう。

 ターミナスの発するフォースフィールドにより、アベンジャーズは接近すらできない。また、ターミナスのエネルギーによりセント・ルイスの街に被害が出始めた。崩れてくる瓦礫をシールドで弾きながら、キャプテン・アメリカU.S.エージェントは人々の避難を助ける。ワスプは崩れてきた瓦礫をビームで吹きとばす。シーハルクは倒壊するビルを腕で支える。ヒューマントーチも落ちてきた瓦礫を炎で消滅させた。

 クエーサーは前にターミナスを撃退した方法を使おうと言う。彼はスパイダーマンと共にターミナスと戦った経験があるのだ。クエーサーは腕のバンドから発した光を固体化してターミナスの足の下に一枚の巨大な板を作り、それをアベンジャーズが押して持ち上げようとする。前はこの手でターミナスを宇宙へ放り出すことに成功したのだが、今のターミナスは以前の倍の大きさになっているためか、びくともしない。

 小惑星に墜落したソーは意識を取り戻す。この小惑星にはわずかながら大気があり、声を発することができた。ソーは宇宙へ向けて歌をうたいはじめる。

 クエーサーの作戦が失敗したアベンジャーズは、個別に攻撃を仕掛けていた。アイアンマンがリパルサー光線で目に攻撃したりするが、まったく通じない。キャプテン・マーヴルは全力でターミナスに突撃するが、弾かれてしまった。ワンダーマンはターミナスの指で弾きとばされた。マシンマンは、自分は今まで一人で戦ってきた、またヘビーメタルというチームに入ったこともあったが、アベンジャーズと共に戦うのはとてもスリルがあると感じる。アベンジャーズは恐怖に出会ってもユーモアを忘れない。自分も彼らと共に命をかけようと考え、マシンマンはターミナスに攻撃するが、手で防がれてしまった。

 空を飛べるヒーローたちはターミナスに一斉攻撃するが、その時ターミナスはなぜか空中に引き上げられ、ヒーローたちと共に宇宙へと出ていった。ソーの声がしなかったかと言うハーキュリース。何かが磁石のようにターミナスを引いていったように見えたというピム博士。ハーキュリースは皆に、オーディーンが作った呪文はソーのハンマー、ムジョルニアを引き寄せることができると語り、ルーンの呪文がムジョルニアを取り込んだターミナスを動かしたのかもしれないと言う。

 空を飛ぶヒーローたちはターミナスと共に宇宙に出てしまっていた。小惑星の上にソーがいるのを発見。ソーはアベンジャーズも来ていることに驚くが、時すでに遅くターミナスは小惑星に激突する。

 ターミナスもダメージを受けたようだが、自分たちもこれで終わりなのか。ターミナスの鎗はまだエネルギーを放出していた。クエーサーは宇宙空間でソーを救出。さらにターミナスの鎗を持って空間移動「クアンタム・ジャンプ」を行い、鎗をアルファ・ケンタウリの方角へ投げ捨てた。

 その時、ターミナスに異変が起こった。体内のエネルギーが暴走し、次第に小さくなっていくターミナス。最終的にターミナスは重力崩壊し、ブラックホールと化した。ターミナスの最後だ。

 だが小惑星やターミナスの周囲にあった空気がなくなったため、地球のヒーローたちにも最後が近づいていた。しかしスターフォックスがある一点を指す。ブラックホールの中から、ソーのハンマーが戻ってきたのだ。ソーはハンマーを受け止め、ムジョルニアの力を使って大気を集め、ヒーローたちを連れて地球へと帰還するのだった。

 

 「ターミナス・ファクター」クロスオーバー最終話。ギャグも盛り込まれた陽気な作風だ。ソーがずっと歌ってるのもなんだか凄い。最後の戦いでは、クエーサーのオウンタイトルが開始された時期なので、クエーサーに活躍の場が振られている。

 マシンマンは背景程度に出てくるだけで大して活躍しないのだが、彼がアベンジャーズに混じって戦っているのは、メジャーになったなあという気にさせてくれる。