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AVENGERS Vol.3 #1

1998年 FEB

Kurt Busiek & George Perez

 

 マンハッタンのカフェにて、クイックシルバーとその姉スカーレットウィッチ、妻クリスタルと娘ルナの4人が久しぶりの団欒を楽しんでいた。スカーレットウィッチとクリスタルはさきのオンスロート事件でオンスロートのエネルギー体に特攻し消失、だが異空間で生存しており「ヒーローズリボーン・リターン」にて帰還に成功したばかりだった。不在の間を埋めるように会話を楽しむ4人だが、ルナが突然悲鳴を上げる。窓ガラスを割って、鎧を着て武器を持った怪物たちが襲ってきたのだ!

 一方、ニューメキシコアルバカーキ付近にいたボニータ・フアレスは、突然地面を割って出現した怪物に掴まれる。ファイアーバードというヒーローとして活躍してきたボニータは、火炎を発する能力を発動させた!

 また、アフリカのワカンダ国にはドラゴンが飛来し、国王ティチャラことブラックパンサーが立ち向かう。

 さらにニューヨークのイーストリバーではホークアイが、セントラルパークではソーズマンマグダレンが、シンシナティ郊外ではハーキュリースが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の南カリフォルニアキャンパスではリビング・ライトニングが、ラスベガスではムーンドラゴンが、デンバーではスパイダーウーマンが、ヘブリディーズ島ではサブマリナーが、サンフランシスコではシーハルクが、クイーンズではダークホークが、ブロンクスではファイアスタージャスティ(元マーヴルボーイ)が、様々な怪物に襲われていた。それぞれの能力を駆使し怪物たちと激闘するヒーローたち。彼らは皆、世界最大のスーパーヒーローチーム、アベンジャーズのメンバーだ。だが戦いが最高潮に達したその時、突然怪物たちは消失してしまう。驚くヒーローたちだが、これは事件の始まりに過ぎなかった…。

 嵐の日。アベンジャーズの本部アベンジャーズマンションの前で、TVリポーターのミーガン・マクラーレンが報道していた。ここはオンスロート事件でアベンジャーズの主要メンバーが消失したあと使われていなかったが、怪物による世界規模のアベンジャーズメンバー襲撃事件を受け、初期メンバーのアイアンマンジャイアントマンワスプキャプテン・アメリカが集まっていた(ハルクも創設メンバーだったがすぐチームを抜けている)。だが、もう一人の創設メンバーであるソーは、まだこの世界への帰還が確認されていなかった。

 執事のジャービスはお湯を沸かして茶器を整え運んでいく。暖炉がある広間にアベンジャーズの4人が集まっていた。アイアンマンは、こちらの世界に戻った自分が前と同一人物だと証明するため法廷にいたと言う。ジャービスはお茶を入れ、ワスプに、そしてキャプテン・アメリカに渡す。ジャイアントマンには、特大サイズのティーカップだ。アイアンマンは、ストローで飲むには熱すぎるからとお茶を断る。

 ジャービスは退出し、一同はアベンジャーズメンバー襲撃事件について話し合う。襲撃には様々な怪物が現れていたが、みな同じように突然消え去ったと報告するジャイアントマン。この攻撃はすべて関連があると言うキャプテン・アメリカ。アイアンマンは、襲撃してきたのはすべてアスガルドの怪物だったと指摘。まるで裏にロキがいるかのようだが、とキャップが言いかけた時、強烈な風の音で話が遮られる。いや、ただの風ではない、窓を割って広間に飛び込んできたのは、雷神ソーだ!

 血相を変えて危機を知らせるソーに一同は驚く。倒れるソーを受けとめるキャプテン・アメリカとアイアンマン。あまりにやつれているソーを見てワスプはジャービスに連絡。やっと立ち上がったソーは、今回の危機に対決するための仲間が必要だと言い、キャプテン・アメリカは即座に助力を申し出る。汝の勇気を忘れていたなと言うソー。アイアンマンは、我々はアベンジャーズだろう?と右手を差し出し、そこにキャプテン・アメリカジャイアントマン、ソー、ワスプが手を重ねていく。ジャービスは大きいジョッキと骨付き肉を運んで入室すると、5人によりアベンジャーズが再始動した瞬間を目撃するのだった。

 ロープのついた矢が門に刺さり、隣のビルの屋上から弓をロープにかけてホークアイが滑り降りていく。眼下の道路にタクシーが停車し、スカーレットウィッチが降りてきた。彼女より一足先に門のスリットにIDカードを差し込もうとするホークアイだが、一瞬早くクイックシルバーが超スピードでカードを挿入した。門を通った3人を、ジャービスが中へ迎え入れる。

 中の広間には、これまでアベンジャーズの一員として戦った経験のある大勢のヒーローたちが集まっていた。その中にはマシンマンの姿もある。ファルコンブラックウィドウに今回の攻撃は何だと思うと問い、ブラックウィドウはその推測は他の人に任せるわと答える。ハーキュリースはスカーレットウィッチの到着を喜んでエール酒を勧め、スカーレットウィッチは任務のため断る。ブラックパンサー、サブマリナー、ムーンドラゴンの3人は、汚く臭い男が座っているのを見て、あれもアベンジャーなのかと不審に思うが、ジャービスがあれはデモリッションマンですよと言う。ジャスティスは蒼々たるメンバーに気後れするが、きみも攻撃を受けたんだろうとレイジに言われる。アベンジャーズとして戦った経験はほとんどないんだけどとダークホークはファイアスターに相談する。ビーストキャロル・ダンバースミズ・マーヴルと言いかけて今はバイナリーだっけと訂正、バイナリーは、どっちでも変わらないわ、キャプテン・アメリカたちに召集されたのに、私たちは何で時間を無駄にしてるの?と答える。

 司令室では、キャプテン・アメリカたち5人が、アベンジャーズ全メンバーの召集を続けていた。死亡していたり別の時間にいるなどで召集できないメンバーがスクリーンでチェックされていく。キャプテン・アメリカは、ごく短期間アベンジャーズだった事のあるファンタスティック・フォーミスター・ファンタスティックインビジブル・ウーマンザ・シングにも連絡するが、自分たちのチームの務めがあるのでと断られる。また、ハルクからの通信が割り込んできて、トロールに攻撃されたぞ、お前らのパジャマ・パーティーになど出ない!と怒って切られてしまった。連絡を終え、5人は動き出す。

 講堂の壇上で、キャプテン・アメリカは議長として、集めたメンバーに呼びかけていた。世界の危機に、アベンジャーズとして活動した経験を持つ者たちが可能な限り集結している。講堂の席にずらりとヒーローたちが並ぶが、中央に座ったデモリッションマンの周囲は悪臭のため誰も座らず、席が空いている。キャップは、この事件について最も詳しいのはソーだが…と話を続けようとするが、スパイダーマンが手を上げて、他に用事があるからと言う。すぐ横に座っていたソーズマンは、貴様なんぞアベンジャーズには必要ないと怒るが、キャプテン・アメリカは退出を許可。スパイダーマンとの戦いで正義の道へ入りアベンジャーズに参加した経緯を持つサンドマンはソーズマンに凄むが、キャップは制止し、ソーが話を始めた。

 ヒーローズリボーン・ユニバースから帰還する際、ドクター・ドゥームはこの異次元世界を作りだしたほどの超能力を持つフランクリン・リチャーズを狙うが、ソーはドゥームと格闘! フランクリンを彼の父リード・リチャーズに渡したが、ソーとドゥームは組み合いながら次元の狭間へ消える。

 気が付くとソーは故郷アスガルドに倒れていたが、驚いたことにアスガルドは崩壊し建物は瓦礫と化しており、誰もそこには居なかった。アスガルドと地球をつなぐ虹の橋も割れている。ソーは空を飛び誰かいないか捜索するが、父神オーディンや仲間の神々はおろか、巨人や魔物、ノームすら影も形もなかった。ソーは探索を続け、原因と思われるものを発見した。アスガルドで最も強力で危険な武器、巨剣トワイライトソードが無くなっていたのだ。ソーはさらに、虹の橋の破片を発見する。破片に触れると、ソーはミッドガルド、つまり地球の、シカゴに転移された。虹の橋が分断された時、アスガルドとつながる8つの世界への扉も引き裂かれていたのだ。

 そこでブラックナイトが、トワイライトソードについて訊ねる。ソーの説明によると、トワイライトソードは炎の悪魔スルトの燃えさかる世界で鍛えられた剣であり、世界の終わりにおいて全てを破壊すると言われているという。その剣は天地を破壊することも、逆に作り出すことも可能だという。ソーはトワイライトソードを見つける手がかりとして、5つのノルンの宝石がミッドガルドのどこかにあり、それを探すため皆を召集した事を明かした。アベンジャーズは5つのチームに分けられ、5台のクインジェットが探索に発進していく。

 召集に参加しなかったムーンナイトは飛んでいくクインジェットを見上げたあと街へと戻っていく。アベンジャーズマンションではフローティングチェアに乗ったリックと天満に餌をやるジャービスがスクリーンでクインジェットの出発を見送っていた。そして、飛んでいくクインジェットを監視するもう一つの瞳があった…。

 キャプテン・アメリカのチームは、ノルンの宝石の1つがあるイングランドのティンタジェル岬を目指していた。だが突然クインジェットが激しく揺れる。大竜巻が起こり、巻き込まれたのだ。ハーキュリースは自分にぶつかってきたデモリッションマンの悪臭に不平を言う。キャプテン・アメリカの指示で、クエーサーとクリスタルの二人はクインジェットの外へ出た。クエーサーはクァンタム・バンドからの光で揺れるクインジェットを安定させようとし、クリスタルはエレメンタルパワーで風を収めようとする。クインジェットの中のスカーレットウィッチは偶然を操るヘックスパワーを使う。強力な嵐に立ち向かうヒーローたち。

 一同の活躍で機は安定したが、彼らの眼前の大地になんと、探し求めていた巨剣トワイライトソードが突き立っていたのだ。着陸し剣を目指すアベンジャーズ

 そこで待っていたのは、伝説のアーサー王の息子、悪しきモードレッドであった。この悪役の合図で、土の触手が伸び、スカーレットウィッチが地中に引きずり込まれてしまった。さらに、岩石でできた怪物たちが地中から現れアベンジャーズを取り囲む。キャプテン・アメリカはシールドを投げつけ、デモリッションマンが素早い身のこなしで戦い、クエーサーがクァンタム・バンドからビームを放ち、クリスタルは竜巻を起こし、ハーキュリースは剛力で怪物を打ち砕く。クイックシルバーは超スピードでモードレッドの背後に回りぶん殴った! 怒りのクイックシルバーは竜巻のような攻撃でモードレッドの鎧をバラバラにし、相手を押さえつける。

 だが真の敵は別にいた。アベンジャーズの前に、この事件の黒幕、魔女モーガン・ル・フェイがその姿を現した。全ては彼女の計画だったのだ。

 分断されたアベンジャーズの他のチームは、世界各地でモーガンの放った怪物に足止めされていた。ブラックウィドウ率いるチームは南太平洋でミッドガルド・サーペントと交戦。北極ではワスプが率いるチームがフロスト・ジャイアンの群れと戦っている。赤道直下のアフリカではアイアンマンのチームがフォモール族の怪人たちと戦闘。そして最後のソーのチームは中央アメリカでガイコツ剣士たちと渡り合っていた。

 そして、モーガン・ル・フェイは切り札となるスカーレットウィッチを手中に収めていた。現実を歪めるスカーレットウィッチのパワーを、生贄の台に拘束して引き出し、モーガンケルト魔術がアスガルド魔術へ変換され、魔女モーガンはトワイライトソードに手をかける。姉の危機にクイックシルバーが跳び出し、他のアベンジャーズも動くが、時すでに遅くモーガンはトワイライトソードを抜いてしまった。周囲に満ちる閃光。世界を滅ぼすことも作ることも出来るというこの剣を使い、モーガンは何をするのか!?

 

 長い歴史を誇るAVENGERS誌は、オンスロート編でいったん終了し、ヒーローズリボーン編でVol.2が再スタートした。そしてヒーローズリボーン・ユニバースからヒーローたちが帰還するヒーローズリボーン・リターン編を経て、ここにVol.3がスタートした訳だが、何とアベンジャーズメンバーを全員集結させるという大ネタを振っていてとても豪華である。歴代のアベンジャーの中には、すでに死亡していたり、未来世界にいたり、宇宙にいたりして合流できないヒーローもいるが、彼らもモニター上で登場させ、ファンタスティック・フォーのうち3人やハルクなど一時期のみ参加したがアベンジャーズという印象の薄いヒーローは通信の上で断らせたり、スパイダーマンの途中退席やムーンナイトのように合流せずという扱いにしてまで、とにかく全員登場させているのがもの凄い。これまでのユニバースの歴史をストーリーに盛り込むカート・ビュシークの手腕と、多数のキャラクターを一つの画面にパースの矛盾なく巧みに配置するジョージ・ペレスの力量が冴えまくっている。

 帰還し再集結したアイアンマンが「同一人物だと証明してきた」と言っているのは、オンスロート事件の直前にトニー・スタークが死亡し、過去から来たヤング トニー・スタークがアイアンマンになっていたため。

 アベンジャーズとして活躍した事が本当に少ないマシンマンさえも集められているのはファンとして嬉しいところ。ただ、主要メンバーではないので、画面端にいて台詞もない扱いではあるが。5つのチームのうち、マシンマンは縁のあるアイアンマンのチームに入り、フォモール族に伸びるキックをくらわせている。

 アスガルドの怪物を出しソーに事件のあらましを語らせ、これはアベンジャーズ結成時からの宿敵ロキの仕業かと思わせておいて、モーガン・ル・フェイを持ってくるのも意外で良い。

 アベンジャーズは世界最大のヒーローチームのため、多くのキャラクターが描かれたたいへんな労作となっている。ペレスのペンシル画とビュシークの指示文章を掲載したAVENGERS ROUGH CUTという本も刊行された。

 だが次号、もっととんでもない展開が待っているのだった。