アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

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MACHINE MAN / BASTION '98

1998年

MIKE HIGGINS & KARL BOLLERS : WRITERS

MARTIN EGELAND : PENCILER

 

 ニムロッドに似た形態となったバスチオンを倒すため、ケーブルはレーザーライフルを撃ち込むが、バスチオンは右手でエナジーシールドを張り防いでしまった。さらに左手からビームが発射され、ケーブルは吹き飛ばされる。バスチオンがむこうを向いた隙に立ち上がったケーブルは再び相手を狙うが、切れたコードが足に巻き付いてきて、足から釣り上げられてしまった。バスチオンはこの部屋の全ての機械にアクセスする事ができるのだ。レーザー砲が宙吊りのケーブルに狙いを付けるが、ケーブルは足に巻き付いているコードをライフルで切断し、なんとかレーザーを回避、だが地面に叩きつけられてしまう。

 ケーブルが戦闘している間、バスチオンの攻撃で胸に穴が開き停止したマシンマンの体内に、バスチオンの体を構成するナノマシンが侵入し、修復が進行していた。まだケーブルが生きのびているのを見て、バスチオンは、右腕をコードの固まりに変えて施設の機械に接続させる。

 S.H.I.E.L.D.のヘリキャリアーの中では、G. W. ブリッジ大佐が、8時間が経過するにもかかわらずケーブルから連絡がないことに焦りを感じていた。ケーブルを使ったことは自分のミスではなかったか? そんな疑念が浮かぶ中、上層部から、何故連絡が無いのか、何か遅れがあったのかと通信が入る。バスチオンに作戦を任せた事が、一転して国家機密への脅威となってしまっている事に、上層部も焦っているようだ。ブリッジ大佐は、今はなき上官ニック・フューリー肖像画をじっと見つめる…。

 そこへ、S.H.I.E.L.D.エージェントの異変を察し、クラッグ将軍が現れた。ブリッジは作戦に投入した将軍の娘の状況ついて説明しようとしたが、将軍は、これは個人的問題ではない、はるかに重大な事が起きていると言う。

 バスチオンが動きを止めている事をケーブルは疑問に思う。バスチオンの手から伸びたコードは、機械に侵入していった。その間にも、ケーブルへ施設内のレーザー砲から攻撃が続く。バスチオンはこの施設のシステムに、未来のセンチネルであるニムロッドのデータをインプットしていく。

 未来世界でニムロッドは、最新技術で改良されたその力でミュータント抹殺の活動を続けていたが、ミュータントたちもしぶとく抵抗していた。ニムロッドたちは過去の時代に自分たちの一体を送り込む計画に出る…。

 バスチオンは、ミュータントハンター・ロボット、センチネルの歴史を振り返り語る。ボリバー・トラスク博士に作られた初代のセンチネルを束ねていた巨大センチネル、マスター・モールドは、初代X-MENと戦い、作り手に反逆したが阻止された事。その後X-MENは多くのメンバーが加わったが、センチネルは彼らとの戦いを続けていった事。だが過去世界へ来たニムロッドはアイスマンエンジェルの活躍により敗北した。マスター・モールドが復活した事もあったが、ハルクにより破壊された…。

 バスチオンの話の間も、ケーブルは戦い続け、テレキネシスで施設の配線を操ってレーザー砲の可動部に巻き付かせ固定し、危機を脱する。だが施設のシステムはすでにバスチオンに掌握されており、ケーブルに呼びかけてくる。通路を走るケーブルの脳裏に、マスター・モールドがサイクロプスと戦っている像が流れ込んできた。この記憶のバックラッシュは、先ほどマシンマンの記憶が見えた時と同じ感覚だった。

 だが気にしている余裕はない。ケーブルは小型パソコンを取り出し、スタンドとアンテナを伸ばし、S.H.I.E.L.D.へ通信する。ブリッジ大佐につながった。バスチオンのため長く通信できないと断ったあと、複合センサーで観測したが人間の脳波は検出できなかった、ヘリはあったのでS.H.I.E.L.D.のエージェントはここへ到達したようだが…と、ケーブルがそこまで言った時、背後にマシンマンの姿が見え、映像が途切れてしまう。驚いてケーブルに呼びかけるブリッジ大佐だが、画面は砂嵐を映すだけだった。

 ブリッジ大佐は、マシンマンについてはアベンジャーズに参加していたという事ぐらいしか知らないがと考えつつ、送り込んだ5人のエージェントの安否は将軍の子も含めて絶望的だという状況を知らせるため、クラッグ将軍に電話し呼び出す。

 その頃ケーブルは、マシンマンの伸びた手に首を掴まれ吊り上げられていた。周囲のモニターからバスチオンの声が響く。ニムロッドがニコラス・ハンターという名の建築作業員に擬装していたように、マシンマンも人間の姿で活動してきた。だが今やマシンマンはバスチオンにより、ミュータントを狩るように修復・改造されていた。ケーブルはテレキネシスでスクリーンを一台飛ばしマシンマンにぶつけようとするが、あっさりフォースフィールドで防がれてしまう。バスチオンの声は続く。過去へ現れニコラス・ハンターとなったセンチネルの最終型ニムロッドは、残されていた最初のセンチネル、マスター・モールドの残骸に触れ、融合した! さらに、X-MENとの戦いの中で次元の門シージ・ペラリスをくぐり抜けたことで、それまでになかった姿、普通の人間にしか見えない姿に変貌する! これがバスチオン誕生の秘密だったのだ…。

 ケーブルは背負っていたレーザーライフルを落とし、テレキネシスでトリガーを引きマシンマンの頭部を銃撃することに成功。たまらずケーブルを吊り上げていた手を放すマシンマン。だが致命傷とはならず、短時間に自己修復してしまう。ケーブルはマシンマンにタックルする。

 …林の中に全裸で倒れていた謎の男を、ローズ・ギルバーティという女性が助け、生活の場を与えてくれた。一時はセンチネルにあるはずのない愛さえ感じられるかと思われた。だが「ミュータントの脅威」という報道を目にした時、男は本来の目的へ復帰する。謎の男はローズのもとを去った。この時、グレイドン・クリード大統領候補が、副大統領候補マイルズ・ブリックマン上院議員と共に、選挙活動中であった。ミュータントの脅威を感じていない一般人たちを守る羊飼いとなるべく、男は彼の持つ過去と未来の知識をグレイドン・クリードに提供し、大統領候補に接近する。それにより、新たなマスター・モールドの製作が開始された。そして謎の男は、人類の敵に対抗する要塞という意味の「バスチオン」という名を名乗るのだった…。

 マシンマンの右フックをかわしたケーブルは、膝蹴りを叩き込みぶっ飛ばす。ケーブルはマシンマンの発する音声が、本来のマシンマンのものではなく、センチネル化した今のバスチオンに似ていることに気付いていた。バスチオンの支配からマシンマンを解放する方法を考えるケーブルの脳裏に、ニムロッドがコロッサスと戦った時の映像がよぎる。

 事態を把握できず焦るブリッジ大佐に、軍上層部から通信が入り、バスチオンを始末するため空爆命令が下された。あそこにはまだケーブルやマシンマンがいるのだ。反論しようとするブリッジだが、上層部の決定は覆らない。

 …バスチオンは障害者施設を訪ね、治療に擬装して人間をプライム・センチネルに改造していった。そして彼はオペレーション:ゼロ・トレランスを開始したが、失敗に終わり、捕らえられる。最初のマスター・モールドをボリバー・トラスクが破壊したように、自分が守ろうとした人間たちは自分を捕らえ、屈辱的な拷問を科した。だが彼はそこから脱出する…。

 バスチオンに操られたマシンマンは再びケーブルを攻撃する。施設のスクリーンが動きケーブル目がけてぶっ飛んでいく。サイ・シールドで防御し、接近したケーブルは、マシンマンと格闘する。

 S.H.I.E.L.D.のヘリキャリアの執務室ではクラッグ将軍が、ブリッジ大佐の無策ぶりについて、肖像画のニック・フューリーを引き合いに出して叱責していた。お前が任務を遂行しないならば私が…と言う将軍に、ブリッジ大佐は決意を固め、部屋から出ていってください将軍と答えるのだった。

 バスチオンは、X-51こそケーブルの死刑執行人として最適だと言い、その言葉通りマシンマンはケーブルと戦う。ケーブルの左目が放つサイ・パワーとマシンマンの手から発射された電磁波が空中でぶつかる。バスチオンはこの施設に潜入したS.H.I.E.L.D.の工作員もカプセルに入れプライム・センチネルに改造していた。ケーブルを始末した後、再びプライム・センチネル軍団を繰り出しX-51に指揮させミュータントを絶滅させるつもりなのだ。機械であるマシンマンには、人の心を読むテレパスであるケーブルの能力は通用しないと言うバスチオン。ケーブルはもう一つの能力テレキネシスで施設の機材を崩しマシンマンにぶつけようとするが、マシンマンは足を伸ばして避けてしまった。バスチオンは、これまでX-51はマシンマンと呼ばれていたが、この任務にはマン=人間らしさは必要ない、彼は今やセンチネル・スプリームだと宣言する。腕を伸ばしてケーブルに巻きつけ絞め殺そうとするX-51。だがケーブルはテレパシー能力を使い、マシンマンの本来の記憶を再生させていく。軍のロボットとして製作されたが、アベル・スタックによって彼の息子として育てられ、父と同じ姓の「アーロン・スタック」の名をもらった事、父が彼を逃がすため自ら犠牲となった事を。バスチオンは同じように大切な人ローズを失ったが、彼はそこで希望と夢を全て捨ててしまった、だがマシンマンは父の思いを胸に、偉大なヒーローの一人となったという事を。ケーブルの必死の声が通じ、マシンマンはやっと自分の意識を取り戻した! ケーブルから腕を放し、両手から火炎を発射してバスチオンが支配している周囲の施設を攻撃する。

 その時、軍の命令で施設に2機の戦闘攻撃機が向かっていた。「サンドマン1」「サンドマン2」というコードネームを振られた2機は、施設を確認した。到達まであと2分だ。

 マシンマンは指を施設のシステムにリンクさせ、バスチオンからシステムを奪う。彼らを止めるため、天井を破りバスチオンが出現。マシンマンがハッキングした施設のレーザー砲がバスチオンを撃ち、バスチオンはエナジーシールドを張って防ぐ。マシンマンはその間にシステムに自爆指令を指示した。 バスチオンはマシンマンに支配されたシステムを奪い返そうとするが、レーザー砲の攻撃に加えケーブルがテレキネシスで配線を操りバスチオンを拘束した! マシンマンとケーブルは脱出し、扉を閉鎖する。

 巨大なきのこ雲が上がる。戦闘攻撃機サンドマン1」のパイロットは、爆撃前に施設が大爆発し消滅した事を本部に報告する。クラッグ将軍はブリッジ大佐に、何か話していなかった事があるのだなと問う。ブリッジは将軍に、何かシステムの故障でもあったか、それとも野放しの大砲が2つほどあったのかも知れませんなと答えるのだった。

 脱出したケーブルとマシンマンは、ケーブルのテレキネシスによる防御で生き残っていた。ケーブルはマシンマンに、この事件でまた時間軸がねじれただけの事なのか、悪夢のような明日が到来するのだろうかと問う。マシンマンは、精神リンクは切れたがきみの気持ちは判る、これを教訓にして、どんな犠牲を払ってもバスチオンが導こうとした憎悪の道を避けるべきだと学ばなければならないと答える。人類は生存を保証するための許容範囲を超えることができるだろう、その可能性はゼロよりも高いと思わないかと言うマシンマン。二人は握手を交わし、マシンマンは自分をアーロンと呼んでくれと言うのだった。

 

 ゼロ・トレランス」編完結。ロボットキャラクターであるマシンマンをバスチオンと対比させて、うまくまとめている。

 この当時、S.H.I.E.L.D.の隊長ニック・フューリーはパニッシャーに殺害されたと思われており(後に殺されたのは身代わりロボットだったと判りフューリーは復活する)、ブリッジ大佐が指揮を取っていた。偉大な指揮官だったフューリーのように判断できるかというブリッジの迷いが展開を盛り上げる。

 クラッグ大佐は今や将軍になっており、ブリッジの上官としてやや融通のきかない立場を振られている。前編ではクラッグの子の性別は不明だったが、この後編で娘と記されている(リック・レオナルディが描いた前編のエージェント・クラッグは女性に見えないのだが、製作時の情報伝達ミスか)。

 バスチオンの正体が、最後のセンチネルであるニムロッドと最初のセンチネルだったマスター・モールドが融合・変異したものだったという驚きの事実が明かされる。それまで人間の姿だっただけに衝撃だが、彼のミュータント絶滅の執念は、ミュータントハンター・ロボット、センチネルだったからというのは理解しやすく、面白い。

 バスチオンに洗脳されていたマシンマンナノマシンにより改造され「センチネル・スプリーム」となる展開は、センチネルもマシンマンもロボットキャラだけに実にしっくり来て、ケーブルとの一進一退の対決も盛り上がる。そして最後にヒーローとして復帰し、長い不在を抜けてマーヴルユニバースで活躍を再開するのだ。