アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

昔のアメコミを紹介しています

MACHINE MAN #3

1978年 JUN

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 マシンマンは宇宙飛行士の頭部に手をやり、指から展開した装置によって男の思考を感知し目から映像を投影して、彼がどのようなものを見てきたのかを映し出した。そこには、別の星系の巨大な太陽と、その重力に引かれ捕らえられている異星の宇宙船が見えた。気が狂っていると思われていたこの男は、深宇宙探査で目撃した危機を伝えようとしていたのだ。あの異星宇宙船の主は、太陽に引き込まれる危険から逃れるため、人間の知覚を利用して次元を超えたコンタクトを取ろうとしているのだ。宇宙飛行士の男はマシンマンの能力を知り協力を求める。

 一方、マシンマンを追うクラッグ大佐はマシンマンを探知し、音波砲などの兵器を持ってセントラル・シティへと出動していく。研究所の機械人間の暴走で部下や左目を失った彼は復讐戦に挑む。

 病院ではマシンマンがスパルディング医師に、自分の部品を使って組み立てたアンテナを見せていた。マシンマンはこのアンテナで銀河の向こうとアクセスしようというのだ。と、アンテナはひとりでに起動し、恐ろしい風が起こり次元の壁が開いて向こうへ吹いていく。次元の向こうの宇宙が見え、部屋の家具が流されていく。マシンマンはスパルディングをドア向こうへ避難させ、手足に吸盤を出して体を固定し、アンテナを掴んでなんとか次元の壁を閉じようと操作する。壁は閉じた。スパルディング医師はめちゃくちゃになった部屋に入ってきた。マシンマンは、あの宇宙船の人物にここの位置を知られてしまったと言う。

 病院の外では、クラッグ大佐率いる軍の部隊が展開していた。音波砲を備え付け、戦闘準備を調えた部隊は、大佐の指令を待つ。

 病室ではマシンマンが次元アンテナを設置していた。怯える宇宙飛行士。次元アンテナを起動させると、人型をした影が見え始め、こちらに実体化した。青い金属のボディを持つその怪人は、時空を超えることは我がオートクロンでも高位の者しかなし得ないと言う。登場した機械人を見たマシンマンは、彼も人間のような心を持っているだろうと言うが、しかし相手はオートクロン帝国には心は要らぬと答えた。ベッドに寝ている宇宙飛行士を見た機械人は、この壊れやすい肉でできた生物はコミュニケーション装置として有効だったが、効率が悪いため生かしておいても仕方がないと言う。機械人を止めようとしたスパルディングだが、機械人が目から発したビームを浴びて動きを止められてしまった。機械人はマシンマンに、なぜこの肉袋をそんなに心配するのだと言う。幸い、スパルディングが浴びたのは短時間の停滞光線だった。マシンマンは機械人を危険と考え、次元アンテナで相手を元の銀河に送り返すと言うが、機械人は手からブラストを発射しアンテナを溶かしてしまった。機械人はテン・フォーと名乗り、大量虐殺の1級スペシャリストだと語る。

 そこへ、軍の砲撃が始まった。砲撃のエネルギーを吸収したテン・フォーは外の兵士に反撃しに出向くため、まずマシンマンの頭部に目眩シリンダーを打ち込み行動を妨げた。思考を乱されうずくまるマシンマン。テン・フォーは壁に空いた穴から飛び出していってしまった。停滞光線から回復したスパルディングはマシンマンに駆け寄る。早く目眩シリンダーを除去しテン・フォーを止めねばならない。地球に外宇宙のロボットの危機が到来したのだ。

 

 小さいアンテナで次元の壁を開けたりそこから異星のロボットが到来したりととんでもない話を経て、マシンマンのライバルとして異星ロボットのテン・フォーが登場。全4話にわたって暴れ回る。地球ロボットで心を持つマシンマンとは対比される存在だ。テン・フォーはまだ顔見せで、真の力を発揮していない。この話ではやられっぱなしのマシンマンだが、果たして宇宙ロボットに勝てるのか!?

 このコミックが収録された合本は

https://www.amazon.co.jp/dp/0785195777/

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MACHINE MAN #2

1978年 MAY

 WRITTEN, EDITED, AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 森の中で、マシンマンは悪夢を見ていた。自分の体は拘束され、まわりにはロボットたちが群がり、お前は我々と同じ機械だ、それを拒絶するなと迫り、アーロン・スタックの人工皮膚の顔をはがして素顔を暴き追いつめる。私は一人の人間だ、平和に生きる権利がある!と絶叫しながら目を覚ますマシンマン。彼は精神的に追いつめられていた。さらに、音波攻撃により反重力装置の配線が切断されているため逃亡にも支障が出ている。と、すぐ側の道を軍の車両が通過し、マシンマンは地面に伏せ、この場からも去らなければと思いながら、軍が自分を的確に迫ってくることに疑問を持つ。マシンマンの頭蓋骨に反応する探知機を持った軍のクラッグ大佐だがいまだマシンマンを発見できず部下を叱咤していた。

 マシンマンはガソリンスタンドにやってきて、店員にタイヤを売ってくれと言う。いきなりロボットがやってきてそんな事を言い出すので驚く店員は店主に相談。店主は売ってもいいが買う金はあるのかと訊ねる。マシンマンはその場に落ちていた石を手に取り両手で握りしめ、高圧と高温をかけ、このままでは危ないと急速冷却し、できた物を店主に渡した。ただの石だったものはダイヤモンドに変わっており、店の二人は驚く。マシンマンはタイヤを手に入れた。

 一方セントラル・シティの精神病棟では、看護婦がスパルディング医師に、0号室の患者が目を覚ましましたと報告に来た。病院に向かうスパルディング。患者は宇宙飛行士だったが、目を覚ましてから何かを恐れるように叫び続けるので、ベッドに拘束されていた。スパルディングは患者を落ちつかせようと語りかけるが、患者は狂乱しながら「磁気片にチャージして超次元コンバーターの出力を中断しろ!」「軌道が最大空間時間率を外れている!」と専門用語をわめき散らすため、薬を打たれて眠らされる。不可思議な患者に驚く同僚だが、スパルディングはあくまで冷静で、彼がどうしてこうなったのかはいずれ解明されるだろうと自信を見せ、もっと不可思議な話として機械の男に出会った話をするのだった。

 マシンマンを追う軍の部隊はガソリンスタンドに到着し、店員を無視して店内に突入し窓を破壊したりしながら捜索を開始した。と、壁を崩して登場したのは、買ったタイヤを足に接続し簡易三輪サイクルを作ったマシンマンだった。マシンマン・サイクルは一跳びで軍部隊を跳び越しあっという間に逃走する。軍を振り切ったマシンマンは二人連れのバイクの走り屋を驚かせ、セントラル・シティへ入った。目的地が近くなったので、マシンマンは目立ちすぎるサイクルを分離し徒歩で進む。

 夜。スパルディング医師はあの患者について考えていた。患者は外宇宙へ飛び立った宇宙飛行士だったのだが、彼に何が起きたのだろうか。パイプをくわえライターを手にし火をつけようとするスパルディング、だがその時レーザーが飛び火がついた。マシンマンが訪ねてきたのだ。どうやってここに?と問う医師に、レーザービームで窓枠を切ったと答えるマシンマンは、自分には隠れ家と友人が必要だと打ち明け、スパルディングも友人として助けになろうと請け合う。

 だが突如マシンマンは異星の通信が入ったと騒ぎはじめた。そして目から天井に受信した映像を投写する。それは異星の星系だった。スパルディングは倍率を上げるようにいい、巨大な太陽のプロミネンスの間に異星の宇宙船がいるのを発見する。映像はそこで途切れた。スパルディングはマシンマンに外宇宙へ出た宇宙飛行士の患者がいると話し、マシンマンはその人物があの映像通信の発信源だと答え、二人は0号室へ急ぐ。0号室では目を覚ました患者が恐怖でわめいていた。彼の言う恐怖とは一体何者なのか?

 

 #2ではタイヤを手に入れ三輪サイクルを組み立て逃走するマシンマンがメインだが、#1で登場したスパルディング医師の病院にいる患者を発端にして物語が動き出していく。

 このコミックが収録された合本は

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MACHINE MAN #1

1978年 APR

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 マシンマンは腕を伸ばし、高山の岩壁から落ちそうになっているフレディという男を救おうとする。フレディの友人の登山者たちは、この機械の男の機能を見て驚く。マシンマンの伸びた腕からはシリンダーが何本も飛び出してハシゴのようになり、眼下で危機におちいっている男を掴もうとするが、寸前でフレディは落下してしまった! マシンマンは飛び降り、伸ばした腕で男の足を掴み、重力制御で浮き上がり、登山者たちのところへ戻ってきた。感謝すると同時に、この機械の男を作った高度な技術を驚きの目で見る一同。私のことはマシンマンと呼んでくれと言い、機械の男は垂直な岩壁を歩いて去っていった。

 ブロードハースト博士の研究室に、政府から派遣された官僚が来訪していた。男は博士が研究していた知能を持つ人間型の機械Xモデルについて問いただす。博士は、新たな人類として製作されたロボットたちはアイデンティティ崩壊という共通した病気を持ってしまったと語る。それ故ロボットたちは暴走し警備隊に死傷者まで出てしまっている。そしてその最終モデルは生きた人間のような精神を持つに至ったが、博士はその理由を、アベル・スタックという心理学者がX-51に人工の皮膚をつけて人間の顔を与え自分の息子アーロン・スタックとして育てたためだと説明する。そのため人間の心を持つに至ったアーロンはこの計画の最後の希望なのだと語る博士。だが政府官僚は全てのXモデルには破壊指令が下っていると言い、最後の一体が外の世界をさまよっているのは明白だと指摘、Xモデルのプロジェクトはすでにあなたの管轄から外れていると知らせ、X-51の破壊を発表した。

 森を歩くマシンマンは倒木で道をふさがれ立ち往生しているピーター・スパルディングという男と出会い、巨木を持ち上げ彼を助ける。スパルディングはお礼にマシンマンを自分のバンに乗るように誘う。スパルディングは精神科医で、知性を持つ機械であるマシンマンと会話しながら車を進める。

 街についたところでマシンマンは車から降りる。スパルディングは何かあったらセントラル・シティを訪ねてくれと言って別れた。足に車輪と板を出して両足をつなげスケートボードに変形させ、渋滞する車の間をすり抜けて進むマシンマン。その姿は警官の目にとまってしまい、マシンマンは追われるが、スケートボードモードをやめて超音速で飛び去った。

 だがそれで窮地を脱した訳ではなかった。ブロードハースト博士の研究室には無数の兵士がやって来ており、彼らの指揮を取るクラッグ大佐は、過去のXモデルに部下の警備兵を殺されたことを恨みに思っており、X-51抹殺に執念を燃やす。ブロードハースト博士は科学が産んだ知性という奇跡は貴重だと説くが、大佐は聞く耳持たず、X-51の頭蓋骨に反応する探知機を受け取り去っていった。

 郊外へ退避したマシンマンだが、そこへ軍のヘリが飛来し音波ライフルで攻撃してきた。攻撃を受け反重力装置が機能しなくなったマシンマン。彼は自分に破壊指令が下ったことを知り、フィンガー・ウェポンズ・システムを開き火炎放射で周囲に炎を放つ。展開する歩兵たちは慌てながらもマシンマンを発見し銃撃。マシンマンも指からのブラストで反撃。混乱の中、気が付くとマシンマンの姿はなかった。腕キャタピラで茂みの中を進み脱出したのだ。だが彼には助けが必要だ。マシンマンはピーター・スパルディングのことを思い出し、彼を訪ねようと考えるのだった。

 

 MACHINE MAN #1だが、2001: A SPACE ODYSSEY #8から続いているストーリーのため、実質的には4話目。主人公の名前はミスター・マシンから、よりヒーローらしいマシンマンに変わった。マシンマン内蔵の超装備が次から次へと出てきて読者の心をぐいっと引き込む。

 マシンマンが得た人口知性を重要な技術と考える科学者ブロードハースト博士に対し、破壊しようと動く政府や軍が描かれ、緊張感が高まる。そんな中、マシンマンに信頼できる知人スパルディングが登場し、ドラマは動き出していく。

 このコミックが収録された合本は

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2001: A SPACE ODYSSEY #10

1977年 SEPT

EDITED, WRITTEN + DRAWN BY JACK KIRBY

 

 オリビア、ジェリー、ミスター・マシンの三人は、町の保安官のところへ行き、卵型の飛行機械に襲撃されたことを話す。突拍子もない話に、信じられない様子の保安官だが、ミスター・マシンは現場に行ってみれば残骸が発見できると言う。ジェリーは、ヒドラ党がミスター・マシンを捕まえに来たんだよ、でも大丈夫、ニック・フューリーたちが助けに来てくれるからと言い、オリビアはコミックの話ばかりする弟をたしなめる。保安官は機械人間が実在しているのに驚いている。保安官はこのあとどこへ行くのかと訊ね、姉弟はうちに泊まってとミスター・マシンを招待した。

 一方、地下に隠された秘密基地では、ミスター・ホットラインが部下のクリンジから、カプセル機の残骸の始末が完了したと報告を受けていた。この秘密結社自慢の兵器であるカプセル攻撃機が撃退されたことに恐怖するクリンジ。ミスター・ホットラインは、あれは極秘とされるXモデルだと答える。彼らはハーデス神を信仰する一党であり、全地球をマインドコントロールする計画を立てているのだ。ミスター・ホットラインがモニターの前で祈りを捧げると、悪魔のようなハーデス神の姿が登場。ハーデス神は、そやつの秘密を探ることで全ての者をコントロール下に置く方法を得ることができると言い、そのXモデルを連れてこいと命じた。

 ジェリーの家に滞在するミスター・マシン。オリビアとジェリーの父は機械の男の訪問を驚きつつも歓迎してくれた。ミスター・マシンをコミックの中のスーパーヒーローと思っているジェリーの視線はずっと彼に釘付けだ。家族につれて訊ねられ、彼は自分の父はアベル・スタックで、自分にアーロンという名をつけてくれたと答える。ジェリーの父はミスター・マシンが有名な科学者であるアベル・スタックの息子だと名乗ったことに驚き、アベル・スタックは最近亡くなったはずだがと言う。その言葉に衝撃を受けるミスター・マシン。ジェリーの父は、アベルが爆死したと新聞に出ていたことを伝える。父アベルの死を知ったミスター・マシンを皆はなぐさめようとするが、そこへ武装した戦闘員三人が乱入し、銃を向けて、家族を傷つけたくなければ同行しろと命じる。

 ミスター・ホットラインの前に引き出されるミスター・マシン。戦闘員を一撃し、銃弾をはね返すミスター・マシンだが、怪人物ミスター・ホットラインはあの家族を人質にしていると脅す。怒るミスター・マシンではあったがここは従うしかない。彼は固定具に入れられ研究室に運ばれ、技術者たちにX線透過装置で体の秘密を調べられ、ボディのジョイントを解体され両腕・両足・胴体・頭に六分割されてしまった。ミスター・ホットラインは、X-51の意識をつかさどる頭部のみをマインド・モニターのところへ運ぶよう部下に指示する。ミスター・マシンは敵の一団が地球をアリの巣のような意志のない世界にする目的だと知った。ミスター・ホットラインは別室に退避してからマインド・モニターを起動。ミスター・マシンの前にハーデス神が現れる。邪悪な姿を見て、自分の魂を奪うつもりかと叫ぶミスター・マシン。ハーデス神の目からエネルギーが発せられ、X-51の頭脳部分へ強烈な電流がながされその機構を探りはじめた! だがX-51の防衛機構が発動、頭部からテレビジョン・トランスミッティング・ユニットが飛び出し、送信を開始する。

 電波を受けたミスター・マシンの手足が、離れた別室の中で動き出す。分解した手足が突然活動しはじめたことに驚く技術者たち。手足は技術者たちを叩きのめし、胴体のところに歩いていって自分たちと胴体をつなぎあわせた。異変を知った戦闘員たちが銃やバズーカを手に部屋へ向かい、扉を破ろうとするが、扉は逆に内部からの炎で破られ、頭部がないX-51の体が躍り出て、壁を突き抜けて頭部のある部屋へと到着した。

 ミスター・マシンの頭部は胴体に接続された。彼は眼前の悪魔的な像に立ち向かい、指からのブラストを発射する。ガラスの割れた音がして、そこに残されたのは破壊されたモニターだけだった。あの悪魔は、ただのホログラムだった。このハーデス神教団を支配するために作られたイメージだったのだ。ミスター・マシンは、教団をつかさどるスーパーコンピューターを発見する。彼はコンピューターの画面にジェリーたちの家で爆弾を持って家族を人質に取っている戦闘員を映し出し、コンピューターを操作して爆弾を融解させる。家族は戦闘員が倒れたことに驚き、父はオリビアに保安官へ電話するように言い、戦闘員を縛り上げる。誰が助けてくれたんだろうと言うジェリー。父は、おまえのスーパーヒーローかもなと答えるのだった。

 ミスター・マシンは教団の施設の天井を破って脱出していた。施設は彼がコンピューターを暴走させたことで大爆発を起こした。ミスター・ホットラインはカルト教団を支配する邪悪な天才だった。ミスター・マシンは、人々の自由を守るという自分の運命を初めて自覚するのだった。

 

 この号が、コミック版2001: A SPACE ODYSSEYの最終回だ。モノリスはもはや登場せず、内容は映画を大きく外れ、ロボットヒーロー対カルト教団に偽装した科学結社という、とんでもないストーリーになっている。ハーデス神の名で登場する悪魔は最後に本物ではないと明かされるものの、ミスター・マシンと悪魔の対峙はとても違和感があって面白い。怪人物ミスター・ホットラインの正体は、結局明かされないまま終わる。X-51の腕や足が一本一本独立して暴れまわるシーンはとても可笑しい。

 そして、ロボットヒーローが主人公となったことでこのタイトルは終了し、新たに彼の独立タイトルがスタートするのだ。

2001: A SPACE ODYSSEY #9

1977年 AUG

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 機械の顔をさらしたまま、拘束を脱したX-51は行動を開始する。彼は自分の顔が奪い取られたことに激しく怒っていた。扉のダイヤルを回し、セットされていた音波バズーカ砲の攻撃をかわし、指に仕込まれた火炎放射器で砲を焼き払う。その先の扉を破ったX-51は兵士たちを蹴散らして捕らえ、自分の顔がどこにあるのか激しい調子で聞く。だがその兵士は知らない。兵士を指からの軽いビームで気絶させた彼はヘルメットと銃を奪い、頭部の脳の位置にあるコンピューターで兵士の喋った言葉を組み替え「急ぎ部隊へ伝達せよ、機械は牢から脱出した」と通信。あわてて一部隊が鉄の扉を開き入ってくる。扉の影に隠れていたX-51はさっと外へ出て扉を閉じてしまった。彼は求めるものを探しに向かう。

 一方オフィスでは、クラッグ大佐とブロードハースト博士が衝突していた。大佐がX-51から顔を取り外したことを、彼の唯一のアイデンティティーを奪ってしまったのだと説明する博士。それをはなから馬鹿にする大佐に、博士は考える機械に悲しい偏見があるなと答える。神は彼を助け賜うという博士に、あれはただの機械だ、お前はXモデルの破壊命令を出しただろうと言う大佐。X-51は別だ、彼は損なわれないままであらねばならないと反論する博士。そこへX-51脱出の報告が届く。クラッグ大佐は前と同じく音波兵器を使ってバラバラにすべきだと主張し、ハイネスも同意するが、ブロードハースト博士は拒否し、兵士の抵抗を止めさせろと命じる。そんな事をすれば部下の兵士は虐殺されると大佐は憤り、お前は奴がここを出て行くのを許すつもりだなと言う。博士はその通りだと答え、お互いの信念と信頼をもたらすつもりだと宣言した。

 X-51は兵士たちの抵抗と戦う。鉄の防御壁をひねり潰し、兵士たちを弾きとばし、音波ライフルを持つ兵士に飛びかかって持ち上げた。そこへ別の兵士たちが入ってきた。戦いはやめよう、自分たちは話し合いに来た、あなたがこの施設から出て行く許可が出たのだと言う兵士。彼らの言葉を信じてついていくと、技師は自分が求めていたアーロン・スタックの顔を取り付けてくれた。喜びお礼を言うアーロン。さらに兵士はアーロンが持っていたコスチュームも返してくれた。技師は人間そっくりな言動をするアーロンに驚き言葉をかけるが、アーロンは自分の目だけはロボットにしか見えないけどねと返す。自分のことはミスター・マシンと呼んでくれと言い残し、彼は施設から飛び立っていった。それを見送るブロードハースト博士は、我々はあの鳥を籠に収めておくことはできないと言う。クラッグ大佐は、お前は世界の危険を解き放っただけだと怒る。だがブロードハーストはX-51に発信装置を仕掛ける指示を出していた。X-51の所在は人工衛星にモニターされているのだ。

 飛翔していったミスター・マシンは着地し、無用の危険を防ぐため目立たないように道路を歩こうと考える。その彼の前に、モノリスが現れた。彼に脱出をうながしたモノリスは、次に彼をどのように導くのか。そこへ男の子が現れ、彼をみて驚き、まるでマーベル・スーパーヒーローみたいだと感激して言う。この男の子ジェリーの姉オリビアの車がこの近くでパンクしていて、二人は立ち往生していたのだ。ミスター・マシンは車を片手で持ち上げタイヤを交換する。驚きつつも感謝したオリビアは、彼を車に乗せてくれ、三人は走り始めた。

 一方、怪しい黒い車に乗ったマスクの怪紳士ミスター・ホットラインは、運転手クリンジからXモデルの一体が破壊されずに逃れたと報告を受ける。細かい状況を伝えない運転手に、報告は正確にせよと威圧した怪紳士は、マイクを取って通信を始めた。

 車で走る三人。ミスター・マシンは何らかの信号を受信した。スーパーヒーロー大好きなジェリーは、アベンジャーズファンタスティック・フォーからのメッセージかなあ、ドクター・ドゥームが来るのかもとはしゃぐ。そこへ、卵形のカプセルが三機飛んできて攻撃しはじめた。車から降りたX-51は、足のシャフトを軸に足首を回転させて地面に埋めて足場を固定し、足のシャフトを伸ばして頭からカプセル機に突っ込み一機目を撃破。二機目は着陸し、乗員は音波砲をかまえて狙いをつける。だがそれが発射される前に、X-51の目は相手をターゲットスコープに捕らえ、衝撃波を撃ち込んだ。三機目は、カプセル機に装備された火器で攻撃してきたが、X-51は突撃しカプセル機は粉砕された。やったぜスーパーヒーロー!と喜ぶジェリー。心配するオリビア。ミスター・マシンは二人を巻き込んでしまったことを詫びる。オリビアは、攻撃されたことを警察に言わなくちゃと言い、三人はこの場を去る。だがその様子は、ミスター・ホットラインたちに監視されていた。

 

 X-51は、父が作ってくれた人間の顔を取り戻すために激闘。人間に反逆するのも、機械ではあるが人間として生きたいという彼の目標ゆえであり、彼の願いが強く感じられる。

 X-51を解き放つブロードハースト博士だが、決していい人だからではなく、秘かに発信装置をつけて追跡するなど、人間としての自我を持ったロボットがどう動いていくのか知りたいという科学者としての冷徹な目的があるのがシビアだ。

 ジェリーはミスター・マシンをマーベル・スーパーヒーローの一員ではないかと言う。後には本当にそうなるのだが、ここではコミック狂の少年がコミックと現実をごっちゃにして喋っている風で、マーベルユニバースの世界観とは分けて描かれている。一方、明らかにヴィランな怪紳士が登場し、ストーリーは急速にスーパーヒーローものになっていく。

2001: A SPACE ODYSSEY #8

1977年 JULY

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 兵士たちが、機械人間を取り押さえている。額にX-35と書かれたそのロボットは「私は物ではない! だが私は何だ? 私は何だ!?」と叫び、すさまじい力で兵士を振り飛ばした。兵士は火炎放射器を浴びせるが、ロボットは「なぜ私は作られた!? なぜだ!?」と言いながらなおも暴走を続ける。兵士たちはたまらず退避し、銃撃するが、ロボットは止まらない。

 研究室にも警報が流れていた。この機械人間のプロジェクトを統括する科学者ドクター・ブロードハーストのところへ、ハイネスという男が駆けつけ、X-35の暴走を知らせる。この種の失敗を重ねてきたことに悩む博士に、ハイネスはプロジェクトの中止を進言するが、博士は「彼らは狂ったのではない、彼らは単に、人間の形をした思考するコンピューターに過ぎないのだ」と答える。だがそのコンピューターは、自分をそれ以上のものだと考えているようだ。博士はロボットを止めるために、自爆装置のスイッチを入れた。

 必死でロボットを食い止めようとする兵士たちは、レーザーライフルで銃撃を続けていたが、ロボットの金属の体はこたえず、動きが止まらない。X-35が兵士たちへ迫るその時、自爆装置が発動し、大爆発を起こした。

 研究所内に警報が響きわたる。全職員の退避が指示され、技術者たちはプロジェクトの破棄を惜しみつつその場を去る。作りかけも含めすべてのロボットの自爆装置が起動され、この研究の成果は爆煙の中に消えた。ドクター・ブロードハーストは、プロジェクトの最新モデルであるX-51について語る。X-51は他のモデルとは異なり、ドクター・スタックにあずけられてスタックの息子として育てられているのだ。だがX-51に取り付けられた自爆装置も起動される。ブロードハーストは爆発の時にスタックが近くにいたいことを祈る他なかった。

 アベル・スタック博士の家では、博士が彼の息子アーロンとして育てているX-51に、新しい顔のマスクをプレゼントしていた。今回の顔は人間そっくりで、アーロンはとても気に入り、父にお礼を言う。アベル博士はアーロンの首筋のハッチを開き、自爆装置を引く抜く。そして、ロボットの姿に戻った息子に別れを告げ、自分の写真の画像を目からのビームで走査させて記憶させる。人間とロボットではあるが、二人は本当の父子のようであった。いまアーロンは父の元を離れ、自由を得るため飛び立つのだ。アーロンは父の用意したグリッド板の上に立ち、グリッドは反重力装置を補助して、アーロンを空高く飛翔させた。それを見送るアベル博士。研究成果であるロボットを息子として育て、彼を逃がしたアベルは、息子の逃亡を完全なものにするため、起動した自爆装置と運命を共にするのだった。

 空を飛ぶアーロンはジャンボジェット機と併走しパイロットたちを驚かせ、街へやって来る。ビルの上から人間たちが歩き回るのを見ていると、通報を受けた警官隊が彼を包囲した。その場から飛び去ろうとするアーロンだったが、警官隊は発砲し、さらに軍のヘリまで到着しミサイル攻撃を受ける。飛んで逃げようとするアーロンだが、戦闘機の攻撃があり、岩山に身を隠した。なぜ自分が軍に狙われるのかと考えるアーロン。彼のコンピューターにも「データ不十分」で結論が出ない。その間にも軍の部隊が迫る。音波ビームバズーカの攻撃を受け吹き飛ばされるアーロン。

 気が付くと彼は捕らえられ、拘束され、一人の軍人と対面したいた。その男はアーロンを口汚く罵倒し、もし逃げ出せば眼前のソニックガンを撃ち込んでやるぞと脅す。なぜこんな扱いを受けるのか疑問なアーロン。

 この様子をモニターしていたドクター・ブロードハーストは、その軍人クラッグ大佐の態度に怒りを露わにする。ハイネスは彼は優秀な指揮官だと言い、ブロードハーストもそれは認める。大佐の部下たちにこれまでのロボットの反乱で死傷者が出ているのも事実だが、それにしても酷い事をする。大佐はアーロンから人間の顔のマスクを奪い、機械の顔をさらけださせたまま拘束しているのだ。ブロードハーストとハイネスはクラッグ大佐に会い抗議する。

 拘束されたアーロンはこの境遇に苦しんでいた。彼は自分を機械だ屑だと言った、だが自分は考え、感じ、心が痛む。なぜ自分を兄弟のように扱ってくれない? なぜ皆は私を嫌うのか!? 苦悩するアーロン。その時、彼の前に突如、モノリスが現れた。モノリスからの力でパワーを取り戻したアーロンは、驚くべき力で拘束を破壊し脱出する。モノリスとの出会いは彼に何をもたらすのか?

 

 前号まで続いた、人類がスター・チャイルドに至る話から一転し、ロボットの主人公が登場する。もちろん映画にも小説にもこんなロボットは登場しない。ここまでやってしまうと、これはほんとに『2001年宇宙の旅』なのか?と思いたくなる。ではこのロボットX-51アーロン・スタックはどうして出てきたのか?

 謎を解く鍵は、1972年に出版された、アーサー・C・クラーク著の『失われた宇宙の旅2001(THE LOST WORLDS OF 2001)』から得られる。この本は、映画のストーリーが決定するまでに様々な案を試行錯誤する中で、結局本編では使われなかったシーンを集めてクラーク自身が解説するというメイキング本だ。映画のメインテーマが「高次生命体が地球人類を進化させ、人類は次なる段階へ変化する」になり、それを実現するために多方向の検討が行われていく様を読むことができる。

 例えば初期稿では、地球人に知性を与える高次の宇宙人が、太古の時代の地球に登場する場面がある。続いて、この宇宙人(クリンダーと名付けられている)が猿人を捕らえて進化のために分析や実験を行う様子も描かれている。だが、当時の技術では宇宙人を造ってもありきたりのモンスター映画になってしまうという理由で、結局この構想は捨てられている。完成した映画や小説では、異星人の高次ツールであるモノリスが主体となった。

 そして、映画ではボイスコンピューターであるHAL9000は、初期稿ではソクラテスという名のロボットとして登場する予定だったことがこの本に書かれているのだ。

 ジャック・カービーが直接ここから題材を取ったのかは判らない。まず、ソクラテスは人間型のロボットではあるが、X-51ほどではない。描写されるデザインは、右手は三本指だし、左手は万能工具、そして顔の部分はセンサーの集合から成るフレームワークだ。しかし、ソクラテスが人間と同様の思考ができるように訓練されるシーンがある。また、ソクラテスを見た人が機械人間に反感を抱く展開もある。そして、製作者のブルーノ・フォースター博士は、ソクラテスたちロボットが人間にとってかわる存在になることを確信している。いまはプログラムされるままに「生命とは何ですか?」「宇宙の目的とは何でしょうか?」という答えのない質問を発してくるソクラテスだが、

 こういう質問をきっと自発的に、台詞を付けられることもなしに発するようにはるだろう。さらにすこし待てば、その質問に答えるロボットが現れるにちがいない

と述べられ、

 その日が来ても、彼らがおのれの造り主たちと仲良くしてくれていたら……

と書かれているのだ。これらのテーマは、X-51のその後の展開にも関わってくるので注目してほしい。

 さらに、X-51登場と同時代の'70年代後半にジャック・カービーが始めたコミックを読むと、また面白い符号がある。

 '76年にスタートしたTHE ETERNALSには、人類の他にエターナルズ、デヴァイアンツという、猿人から進化させられた種族が登場するのだが、この3種族に進化実験を行った神のような宇宙種族セレスシャルズが実際に登場する。セレスシャルズの姿は異様で不可解であり、人類が理解できない高次の存在として説得力がある。『2001年宇宙の旅』ではリアルに描写できないからという理由で実現できなかった事に、コミックの表現を使って挑んでいるのだ。

 また、'78年にスタートしたDEVIL DINOSAURは、デビルという真っ赤なティラノサウルスと原始人の少年がコンビで主人公なのだが、少年の名がムーンボーイという、小説『2001年宇宙の旅』に登場する〈月を見るもの Moon-Watcher〉を思わせる名前なのだ。さらに、DEVIL DINOSAUR #4から数話続くストーリーでは、宇宙人のロボットが飛来し、ムーンボーイを捕らえて分析する展開があるのだ。

 ジャック・カービーが'70年代後半にマーベルに復帰してから新たに創作したタイトルは、THE ETERNALS、DEVIL DINOSAUR、MACHINE MANと3つあるわけだが、考えてみればそのどれもが『2001年宇宙の旅』初期稿と類似点がある。カービーが、映画や小説の『2001年宇宙の旅』では結局使われなかったアイデアを発展させることで新たなコミックを展開していったと考えると、とても面白い。

 また、X-51の物語は、イアンド・バインダーの『ロボット市民』と類似点が多いことも指摘しておきたい。

 ともあれ、コミック2001: A SPACE ODYSSEYはあと2号続く。

2001: A SPACE ODYSSEY #7

1977年 JUNE

EDITED, WRITTEN, AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 宇宙飛行士であったゴードン・プルエットは森の中を歩いていたが、宇宙での事故のあと自分がなぜここにいるのか記憶がなかった。何が起こっているのか? 気付くと着ていたはずの宇宙服がなくなり普段着になっている。彼はこの森の風景に安らぎを覚える。岩を背に座り込んだ彼の体は、次第に老い、モノリスが現れプルエットをスター・チャイルドに変えていった。

 誕生したスター・チャイルドは新たな力と思考を得て、モノリスのもとを離れ、彗星より速く宇宙を飛翔していった。様々な世界をまわるスター・チャイルド。原始の惑星では恐竜のような生物が戦いあっていた。対照的に、機械技術が極限に発達し驚くべき巨大な建造物を作り上げた世界もあった。

 そして彼は、文明が崩壊するほどの戦いが行われた世界へとやってきた。瓦礫の上で、兵士はライフルを向けてくるが、スター・チャイルドは炎を発し武器を焼く。逃げ出した兵士を追っていくと、他のも人々がいた。そのうちの一人は、この世界の汚染に耐えきれずに倒れて死んだ。それを宙からながめるスター・チャイルド。

 スター・チャイルドはこの惑星の破壊された文明の跡を見てまわり、銃を手にした野蛮な男たちが女性を襲っているところに遭遇する。男たちは女性を捕らえるが、そこへ一人の兵士が登場し、男たちに向かっていった。集団で兵士をリンチする男たちだが、兵士は逆襲し、鞄から手榴弾を投げつけた。男たちは吹き飛ばされていき、女性は救われた。抱き合う二人。だが男たちが最後の力で男を、さらに向かってきた女を、銃殺してしまう。その場には誰も生き残らなかった。それを見たスター・チャイルドは考える。この惑星は死以外何も生み出さなかったのか? あの二人が最後に見せた勇気と愛を、この星ができた意義として、スター・チャイルドはその力でエネルギー化し、自分の後ろに引っ張って惑星を離れる。そして銀河を横断し、ちょうど生命が誕生する寸前のエリダヌス座イプシロン星へと飛来し、生命誕生のエネルギーとして海へと加えた。別の惑星で生まれた貴重なものは、何万年も後にこの星の生命として開花するだろう。スター・チャイルドは次なる答えを求めて、宇宙の旅を再開するのだった。

 

 人類の次の段階である新たな種スター・チャイルドになった者が、それから何をするかは、映画では語られず、小説版でもわずかに語られるだけだった。コミック版も前号まではスター・チャイルドになるところまでで終わっている。映画の続編として書かれた1982年発行の小説『2010年宇宙の旅』ではある程度語られるのだが、誰しも気になるそのテーマに、本号ではコミック版なりの答えを描いているのが意義深い。愚かさから滅んだ星と、そこにあった人間の美しさが次代へと伝えられるというこの物語は、まるで手塚治虫の『火の鳥』のようだ。

 スター・チャイルドについては本号で区切りがつけられ、次号では別のキャラクターが誕生する。

2001: A SPACE ODYSSEY #6

1977年 MAY

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 宇宙船のスクリーンに、敵の異星人たちの顔が映る。だが相手の言葉は理解できず、何を要求しているのか皆目わからない。焦りながらなんとか翻訳できないかと試みる宇宙船の乗組員二人。だがそこへやってきた三人目の乗組員ハーベイ・ノートンは、異星人の攻撃にこれこそコミックファンの夢だと有頂天で、さらに相手の目的はプリンセスに違いないと断言する。彼にとってカプセルから出てきた女性は自分の相手役のプリンセスなのだ。敵はプリンセスを探知しているに違いないと言うノートン。この緊急事態に浮かれたことを言うコミックおたくにいらだつ二人の乗組員。そこへさらに攻撃が加えられた。急いで宇宙服を着なければとあわてる二人をおいて走り出したノートンは、敵の攻撃のスリルを楽しみながらエアロックを通り抜け、異星宇宙機へ行きプリンセスと会った。だがプリンセスも人間の言葉を理解できないようだ。宇宙船に残された二人は、ノートンの勝手な書き置きを見て怒る。

 異星宇宙機に乗ったプリンセスとノートンは、敵の戦闘艦の追跡をかわそうと宇宙空間を圧倒的な速さで疾走していた。ノートンはプリンセスに名前や故郷を訊ねるが、返事は返ってこない。と、敵艦から攻撃を受け、それを振り切るためにプリンセスは「スター・ドライブ」を起動。あっという間に宇宙機は空間を飛び抜け、人類未到の異星へたどり着いた。驚き興奮するノートン

 だがそれも束の間、スクリーンに宇宙観の姿が現れた。追跡されたのだ。プリンセスの宇宙機は攻撃をかわし岩山をくぐり抜け、建物へと近づいていったが、そこで撃墜されてしまう。ぐったりするプリンセスを抱えて脱出したノートンは、彼女が示す建物へと向かう。敵艦から兵士が降下してきた。プリンセスはノートンに銃を握らせ、それを撃ったノートンは威力に驚く。敵兵士を一掃したノートンはプリンセスと共に建物に向かった。そこにあった装置に登るプリンセス。ノートンが下で見ている中、プリンセスはその物質転送機を起動させて消えていった。自分が置き去りにされたことに気付くノートン。そこで、敵艦の攻撃で建物が崩れる。瓦礫に生き埋めになったノートン。戦闘艦は去っていった。気絶したノートンの上にまるで墓標のようにモノリスが立ち、ノートンの体を変貌させる。

 気が付くとノートンは、再びヒーローのコスチュームを着ていた。今度のはキャプテン・コズミックの衣装だ。彼は自分の街を窓から見おろし、安堵する。彼の体は老いていき、モノリスノートンをスター・チャイルドに変えるのであった。

 

 異星の「プリンセス」のために尽力するノートンだが、彼女に理解されず便利に利用されたに過ぎないことが語られ、なんとも哀れだ。ノートンに彼女を助けさせたモノリスの意図もわからないまま終わるのだが、最後にはノートンはスター・チャイルドに変えられるところをみると、宇宙規模では何かしらの意味があったことなのだろう。

 人類の知らない星系へ行きそこを描写するのは『2001年宇宙の旅』の初期プロットにあった展開なのだが、コミックではカービーがコミックならではの効果を使って人知の及ばぬ風景を絵にしている。

アメコミONLYイベント「TEAM UP 13」にサークル参加します

アメコマー菅野のアメコミ同人誌サークル「アメコミ向上委員会」は、2019年5月25日(土)に蒲田の大田区産業プラザPiOにて開催されるアメコミONLYイベント「TEAM UP13」 にサークル参加します。

 

【追記】【お願い】頒布しました「銀鷹」のうち1冊が18-19ページが抜けた乱丁本であったことが判りました。もし乱丁本をお買い上げいただいた方がおられましたら、次回以降のイベントでお申し出いただければ、対応させていただきます。申し訳ありませんでした。

 

頒布予定の同人誌をお知らせします。

 

銀鷹 【新刊】

:シルバーエイジ・ホークマンの紹介本です。ゴールデンエイジで輝かしい活躍をみせたホークマンをシルバーエイジで再始動するにあたり、ガードナー・フォックスはどんな構成にしたか?を語ります。

 

シェルドン・モルドフのゴールデンエイジ・ホークマン

:ゴールデンエイジ・ホークマンを、シェルドン・モルドフのアートがもの凄い!という視点を軸に紹介しています。10年以上前の同人誌駆け出しの頃に出した本ですので稚拙なのがお恥ずかしいのですが、今回少部数再版します。

 

JKGA

:シルバーエイジのグリーンアローは、一時期ジャック・カービーが描いていた時期があるのです。この時期の魅力をお伝えする本です。

 

ジャック・カービーファンタスティック・フォー -接触篇-

ジャック・カービーが描いた、ファンタスティック・フォーが登場するコミックを、Fantastic Four #21まで御紹介。マーベルのシルバーエイジ開幕を感じていただければ!

 

ジャック・カービーファンタスティック・フォー -発動篇-

:上記の続刊。カービーのアートが加速度的に進化していき、マーベルユニバースも広がっていく醍醐味を是非!

 

たとえ赤狩り人とよばれても 50年代のキャプテン・アメリカ 【委託】

:ラジアクさんの同人誌を委託頒布。あまり知られていない、キャプテン・アメリカが'50年代に復活していた時期について、全てのストーリーと魅力を紹介・解説されています!

 

The Ghost in the Iron Shell '80-90年代のアイアンマンに何が起きていたか 【委託】

:Humanflyさんの同人誌を委託頒布。タイトル通り'80-90年代のアイアンマンをじっくりしっかりみっちり大解説! 個人的にこの時期が大好きなので、お勧めです!

 

当日はよろしくお願いします!

2001: A SPACE ODYSSEY #5

1977年 APR

EDITED, WRITTEN, AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 三つ目で牙が生え四本腕の一つにビームガンを持った恐ろしげな宇宙怪人が迫る。額にその名の由来のマークを印したスーパーヒーロー、ホワイトゼロは宇宙怪人を強襲し、痛烈な右パンチでぶっ飛ばした、この2040年の未来では、コミックの世界は実体を持っている。ホワイト・ゼロはザコの宇宙人悪役たちをすごい早さで片付けていき、抹殺爆弾即死光線の発生装置の破壊に成功した。だがそこで、コミックブックの定石通り、宇宙人の首領デス・マスターがスクリーンに現れ、プリンセス・アドーラは我が手にあるぞとあざ笑う。悪の化身を倒しプリンセスを救うため通路を急ぎ走るホワイト・ゼロだったが、突如眼前に黒い石板が現れ、驚く。彼はそれが、2001年に月で発見されたようなモノリスだと気付いた。その有名な映像はスミソニアン博物館に収められているのを彼は知っていたが、眼前にあるのは実物のようだ。モノリスに触れた時、彼は宇宙を感じるが、突然足下の床が落ちた。デス・マスターの罠だ。地面に向かって落下していき、さらにミサイルまで撃ち込まれるが、ホワイト・ゼロはうまくかわして着地し、デス・マスターのタイムワープ円盤へとたどり着いた。デス・マスターは、もう遅い、あと5秒で発進だと勝ち誇るが、ホワイト・ゼロは切り札の指ビームを発射しデス・マスターを蒸発させる。正義の勝利だ。ヒーローは円盤のドアを開け、中のプリンセスと対面する。ああ、だが何ということだろう。こんなことはスーパーヒーローの歴史上なかったことだ。そこにいたのはコスチュームを着たデブのおばちゃんだった!

 抱きつくおばちゃんを制し、彼は壁のボタンを押して係員に苦情を訴えた。おばちゃんは自分に不満のヒーローに文句を言う。係員は、自分たちのところのモデルはきみの要望を果たせなかったようだが…と反論しようとするが、すっかりしらけたヒーローは、いいからもう出してくれといい、その部屋から出る。ここはコミックの世界を体感できる娯楽施設だったのだ。ホワイト・ゼロはこれからヒーローを体験しようと順番待ちをしている皆に、このコミック村で成功できないような奴はセーターでも編んでなと笑いものにされ、恥をかいたまま部屋を出て行く。

 着替え室で、ホワイトゼロはただの男ハーベイ・ノートンに戻った。マスクを取ったところで支配人が入ってきて、あなたとの契約には登場させる少女についての言及はなかった事は思い出していただきたいと言い訳を始めた。うんざりなノートンは、モノリスの登場に驚かされたから料金はそのままでいいよと答えたが、意外なことに支配人はモノリスなど出していないと返事をする。そして、実際の冒険に憧れるあなたのような方は宇宙計画に参加されてはと支配人は勧め、ノートンは適当にあしらって施設から出ていった。

 ノートンは、魅力的だが実在しないヒーローの世界から単調な現実へと戻ってきた。2040年のニューヨークはドーム都市になっており、公害がひどく破棄された区域も多い。ノートンは地下鉄に乗り自宅へ戻った。ダイヤル一つでできる夕食を食べ、立体テレビの格闘番組を見て、一本15ドルする高山の澄んだ空気を酸素マスクをつけて吸い込みリラックスする。

 翌日ノートンはロング・アイランドのビーチへ泳ぎに行き、海の景色と冷たい水を楽しんだ。だがこの風景も単なるホログラムなのだ。ここに現実はない。自分は何をすれば満足できるのか? 突然彼の前にモノリスが現れ、それに触れたノートンは、唯一の現実的な冒険を求めて宇宙計画に参加することを決意した。

 ここは海王星から100マイルの宙域。ノートンと仲間たちはそこで、異星の宇宙機の捕獲に成功していた。その内部には、未知の文字が書き込まれたカプセルがあった。自分たちの宇宙船からスクリーンを通してそれを調べるノートンたちは、カプセルの中から異星の女が現れるのを見る。明らかに人間とは異なるが、美しい女性の姿に感動するノートン。彼が求めていたものが現れたのだ。だがその時、宇宙船が何者かの攻撃を受けた。窓から宇宙空間をのぞいたノートンは、巨大な宇宙戦闘艦を見る。コミック村では体験できない圧倒的な光景。彼の運命は?

 

 前回までで古代の時間が描かれていたので今回は中世あたりが舞台かと思いきや、さにあらず。タイトルは2001年宇宙の旅だというのに、今回はなんと2040年である。しかもとつぜんコスチュームヒーロー対宇宙怪人のバーチャル娯楽というぶっ飛んだ展開! モノリスとの出会いは未来人ノートンに何をもたらすのか? ラストで登場する異星人女性は、カービーが以前THORで描いたリゲル人そっくりだ。

2001: A SPACE ODYSSEY #4

1977年 MAR

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 戦の用意は調った。マラクは自軍に侵攻命令を出す。新たに発明された車輪を備えた馬車に乗り、大軍団が出発していく! 石器時代を超える技術を得て軍を発展させたマラクは、ナポレオンに先駆けて世界を相手にしていた。進軍の先にある石器時代の部族の武器は新たに作られた金属の武器に粉砕され、対抗しようとする者は切り払われ、マラク軍の通った後には死体ばかりが広がり、動くものといえばハゲタカのみ。マラク軍の進撃は続き、その噂は恐怖とともに広まった。それを聞きつけた伝令が、リレーにより伝達され、女王ジャレッサの国へと伝わっていった。

 知らせを受けたジャレッサの国の臣下は危険が迫っていることを女王に進言するが、女王はおびえる臣下を制し、精神の部屋へとおもむく。部屋の穴からモノリスが出現し、ジャレッサに運命を伝えるのだった。

 マラク軍はその後も進み続けていた。金属の武器は敵を圧倒し、金属の盾は敵の攻撃を防ぎ、馬は圧倒的なスピードをもたらし、車の発明は進軍に必要な食料や物資を大量に運ぶことを可能にしていた。そしてマラクはついに、目的であったジャレッサの国へと到達する。軍勢がその国を取り囲んだ時、城壁が開いて一人の女性が馬に乗り駆けてきた。マラクは軍に動かぬよう命じ、その女性ジャレッサと会う。初対面の二人だが、お互いによく知っていた。兜を取り素顔をさらしたマラクはジャレッサの手を取り、二人は結ばれるのだった。運命の輪のような進軍がもたらした技術の進歩を得て、二人はこれから国を発展させていくのだ。

 時は移り2001年。火星の衛星軌道上にある、巨大な輪のような宇宙ステーション「リバティーI」が、隕石群の襲来を受けていた。宇宙ステーションの司令官ハーバート・マリクは退避命令を下し、部下たちを脱出させていた。一人で宇宙ステーションに残ったマリクは眼前に迫る隕石群をスクリーンに見て死を覚悟するが、黒い石板がいるのを見て宇宙服に着替え最後の探索に向かった。モノリスを通り抜けたマリクは様々な宇宙のイメージを見る。恐ろしげな触手怪物や、巨大な岸壁を通り抜け、彼は古い街の側の草むらに倒れていた。

 彼は宇宙服から半裸の姿となっており、古代の装束に身を包んだ女性が彼の側に待っていた。運命の出会いを感じた二人は、共に街に歩みだす。二人はこのあと人生を共にし、子孫を増やすのだ。モノリスは、スター・チャイルドにならなかった二人を見送る。一方で、スター・チャイルドになった者は星の世界へと旅立っていくのだった。

 

 マラクのストーリー後編。武力による進撃を続けたマラクも、最後には運命の出会いを経て子孫を残し国を繁栄させる。過去編最長のページ数を使った描写は素晴らしい。一方、後半の未来編では、初めてスター・チャイルドにならないエンディングが描かれた。こういう、映画の筋書き以外のエンドもありなのかと驚かされる。

2001: A SPACE ODYSSEY #3

1977年 FEB

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 古代の世界、大きな戦が行われていた。侵略する部族と防衛する部族が激突しているのだ。その中でも、仮面で顔を覆い石斧を振るい戦い続けるマラクという男が戦場を支配している。攻め手の大将格であるマラクは、狂戦士のような勇猛さで防衛する部族を次々と片付けていった。彼は、未来におけるアレクサンダー大王やナポレオンの通る道を拓いているのだ。戦闘は終わり、マラクたちは勝利する。その部落には死屍累々が広がっていた。その時、突如強襲してきた一撃がなんとマラク愛用の石斧を粉砕した! 自分の手には斧の柄しか残っていないことに驚くマラク。次にマラクは岩を持ち上げて叩きつけようとするが、岩も相手の武器に粉砕されてしまった。相手が持つのは、これまで見たこともないほどなめらかで硬い棒で、美しく輝いていた。相手は老人であり、老人の力で自分の武器が破壊されたのに驚いたマラクは、仮面を脱ぎ、老人に掴みかかって棒を奪った。棒の製法を訊ねるが、老人はマラクの脅しにも屈せず、石が語ってくれたと言うのみで、製法を明かさない。マラクは別の手を考え、老人を解放し、あとをつけた。

 老人はモノリスのところへ行き、祈りを捧げる。マラクはそこへ駆け寄り、モノリスに手を差し出した。その時マラクは宇宙を見、宇宙船や宇宙ステーションを見て、最後に自分に語りかける女性の姿を見た。老人はマラクが自分と同じく石と交信したことを知る。この女性を二人はジャレッサと呼び、マラクは侵攻を続け彼女を手に入れようと考える。同じ体験をしたことで老人はマラクに協力することにするのだった。

 イーゲルと名乗った老人は、火を起こし、マラクの武器を鍛え始めた。今ここに、石器時代が終わり、青銅器の時代が始まったのだ。マラクは戦士たちを集め、大きな戦の準備をすると言い、指示を出していく。戦士たちは青銅器の原料となる鉱石を採掘して加工をし始めた。さらに、馬を食料とすることを禁じ、乗り物として飼い慣らしはじめた。組織を強力に統率するマラクは指揮を続ける。そこへ石が投げつけられ、驚いたマラクは石を投げ返すが、その一投は金属の盾で防がれた。お調子者の男が、イーゲルの作った盾を試すためにやったのだ。マラクは素晴らしい出来の盾を手にし喜ぶ。ついにマラクは金属の兜、青銅の剣で完全武装した。部下の志気も高い。マラクはさらに、侵攻のため自分たちや食料を速く運ぶ方法を考案しろとイーゲルに命じる。イーゲルは食料を保存する容器は作っていたが、ジャレッサを手にするためマラクの要求はエスカレート。容器を振り払ってイーゲルに迫った。そのとき偶然、マラクが放った容器の蓋が転がっていった。それを見たイーゲルはあることを思いつく。彼らの運命もまた転がりはじめた…。

 

 猿人、原始人と続いたこのストーリーは、今回古代の青銅器時代まで進む。今回の主人公である古代の武将マラクは、進歩した技術により青銅器の武器を手に入れ、さらにラストで車輪の発明があって、軍団の力が飛躍的に高まる。

 前号までは過去の時代をコミックの前半で描いていたが、今回はこの号すべてが使われていて、描写も迫力たっぷりだ。次号では後編が描かれる。

2001: A SPACE ODYSSEY #2

1977年 JAN

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY: JACK KIRBY

 

 原始時代、ヴィラという女性がいた。頭を動物の牙で飾り、棒につけた燃えさかる髑髏を突き出し、原始人の男たちを威圧している。武器を手にやってきた男たちは、彼女の奇怪な行動に驚き恐れる。彼女は精神の石から死者を司る力を得ているのか? 男たちは威圧されその場を去ったが、ヴィラは自分を守るためさらなる力を必要としていた。

 ヴィラは死した獣の骨が散乱する荒々しい火の山の険しい道を登っていった。彼女の前に現れるモノリス。ヴィラは精神の石が自分に何かを語りかけるのを感じた。啓示を受けたヴィラは、獣の骨が人に死の恐怖の感情をもたらすことに気付くのだった。

 原始人の男たちは燃えさかる火を前に槍を手に荒々しい踊りを踊っていた。そこに、奇怪な叫び声が響く。彼らの前に、巨大な骨をかぶり女悪魔と化したヴィラが現れ、槍を置きひれ伏せ!、さもなくば我に喰われるであろうと叫んだ。この策略は成功し、男たちはヴィラを崇め、石の家を建て捧げ物を献上するようになった。こうして身の安全と地位を得たヴィラ。彼女が人類で最初に得たこの道は、後世の王や議会へつながるものであった。

 時は移って未来。ヴェラ・ジェントリーというNASAの女性宇宙開拓者が、木星最大の衛星ガニメデの基地にいた。彼女はこの地に飛来するというUFOの観測が任務なのだ。ついに飛来したUFOは、基地を攻撃し、ヴェラは宇宙服を着たまま走って逃げる。UFOは基地の生存装置を破壊してしまった。岩山の間に逃げ込んだヴェラだが、そこへ宇宙服を着た異星人が迫り、銃撃される。洞窟の中に逃げ込んだヴェラの前に、モノリスが出現した。迫ってきた異星人に追い詰められたヴェラはモノリスを通り抜け、宇宙や異星怪物を見る。さらに宇宙服から水着になってプールで泳ぎ、椅子に座って眠る。急速に老いたヴェラを、モノリスはスター・チャイルドに変えるのだった。

 

 前半で昔の人類を描き後半で未来を描くという構成は1話と同じだが、第2話の主人公は女性になり、映画から大きく離れた。前半のヴィラ・ザ・シーデビルの話は、第1話の石器を手に入れた猿人という物質的な進歩の次の段階として、死という概念を周囲に示す、精神的な進歩を描いている。

 後半は女性宇宙開拓者が宇宙円盤や異星人兵士に追われるというトンデモ展開である一方、モノリスを通り抜けたあと宇宙を幻視し日常の風景に戻ったあと老いてスター・チャイルド化するという展開はまだ映画に準じている。こうしてこのタイトルは徐々に映画から離れていき、次号は前後編となるのだ。

2001: A SPACE ODYSSEY #1

 1976年 DEC

 EDITED, WRITTEN & DRAWN BY JACK KIRBY

 太古の時代、一人の猿人が木の上に立ち、棍棒を持って獲物を狙っている。彼の同族は今そこにはいない。彼はそれを好ましいと思う。彼は他の者が嫌いであった。他の者は「精神の石」の言葉を聞くことができないのだ。このハンターは、首と足の長いキリンのような動物「ロングレッグ」に狙いを定め、木から飛び降りて獲物の背にしがみつく。驚いたロングレッグは彼をしがみつかせたまま走り出す。

 その騒ぎを聞きつけた他の猿人が集まってきた。自分の獲物を横取りされそうになったハンターは、棍棒で相手を打ち、追い払う。だがその間に獲物も逃げてしまった。ハンターは思う、棍棒ではだめだ! もっと長くて歯のように鋭いものが必要だ。彼は「精神の石」から知識を得るため歩き出す。他の猿人たちは彼の秘密を探ろうとあとを追跡する。彼らはハンターの持つ知識の力に嫉妬し、自分たちもその知識を得て彼を殺そうと考えているのだ。宙に浮く黒い石板モノリスのところへやってきたハンターは、モノリスに触れて啓示を得る。他の猿人には彼がモノリスから得た知識がわからない。ハンターは木の枝を折り、その先に鋭い石を付け、ナイフのような武器を作りだした。そこへ、獰猛なサーベルタイガーが現れた。猿人には到底かなわない相手だ。他の猿人は木の上に逃げるが、新たな武器を手にしたハンターはサーベルタイガーに組みつき、その首を切り裂いて仕留めた! この発明を手にしたハンターは、彼を真似る者たちから「ビーストキラー」と呼ばれることになる。彼が手にした進歩は、未来の彼の種族を宇宙にまでも進出させるものであった。

 場面は変わって2001年。宇宙飛行士ウッドロウ・デッカーは、火星と木星の間にある小惑星帯にやってきていた。そこには何者かの作った遺跡があったが、この大発見にもかかわらず、デッカーは不機嫌で、遺跡の瓦礫を手荒に扱っていた。彼と共にここに来たメイソンはそれをとがめるが、デッカーにとってはもう遺跡などどうでもよかった。彼らの乗ってきた宇宙船は事故で大破してしまい、ここから生還する手段はないのだ。彼らは遺跡の奥へと進むが、突如怪物が現れ触手を伸ばしメイソンをからめ捕る。デッカーは助けようとするがあっという間にメイソンの宇宙服は破壊され、怪物はメイソンの体を穴に引きずり込んでしまった! 同時に遺跡が崩れ始める。彼の行く前には黒い石板モノリスが見えた。必死のデッカーはモノリスに飛び込んだ! 彼の体は光と共に飛翔し、異星の風景や異質な生命が見えた。デッカーは変わっていく。石器を手にしたビーストキラーが人間になったように。デッカーは何になるのか?

 気が付くと彼は草むらに倒れていた。意識を取り戻すと、すでに宇宙服を着てはいなかった。ここはどこなのだろうか。デッカーの前に少年が現れ、自分を知っているようで、ここはホームだよと言う。二人は共に道を歩いていくが、気が付くと少年の姿は消えており、デッカーは次第に老人になっていく。ビーストキラーから始まった歩みは止まることはないのだ。体は重く、ついに倒れてしまうデッカー。その前にモノリスが現れ、デッカーの体を新たな姿に変えていく。スター・チャイルドが誕生し、宇宙へ飛び立っていった。

 

 ジャック・カービーは映画『2001: A SPACE ODYSSEY』をMARVEL TREASURY SPECIALという大判コミックで見事にコミカライズしたが、それだけでは終わらず、今度は連載コミック誌として2001: A SPACE ODYSSEYを創刊する。これは、映画から離れて独自のストーリーを展開するということで、驚くべきことだ。

  連載コミック誌2001: A SPACE ODYSSEY第1話は、まだそれほど映画から逸脱していない。映画とは別のストーリーで、原人が石器を手にする過程が描かれたり、宇宙怪物が登場したりという違いはあるものの、原始時代の原人にモノリスが知識を与え、2001年の宇宙飛行士がスター・チャイルドになるという同様の筋書きだ。ビーストキラーが石器を手にし猛獣を仕留めるのは、進歩の象徴として判りやすい。デッカーが歩む田舎道は、映画のボーマンが到達したホテルのように、モノリスが与えたイメージなのだろう。映画と同じテーマを別の人物、展開に置き換えて語っているのだが、これをベースに第2話からは変貌していく。