アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

昔のアメコミを紹介しています

EARTH X #X

2000年 JUN

JIM KRUEGER : story and script

ALEX ROSS : story, cover and character design

JOHN PAUL LEON : pencils

 

 X-51アーロン・スタックの父、アベル・スタックは息子に、我々はどのような死を選ぶかが重要だと言っていた。それがアイデンティティになるのだと。トニー・スタークはまさにそのように死んでいた。旧友の亡骸を抱えるキャプテン・アメリカ

 地球では多数のセレスシャルズを相手にギャラクタスが対峙していた。X-51は、セレスシャルズが惑星に自分たちの種を植え付けてきた事、それを守るためにその惑星の生物を改造し惑星を守らせることで種を保護させていた事、ウォッチャーはセレスシャルズに協力し種の成長を見守っていた事を語っていく。だが、セレスシャルズの宇宙規模の計画を阻止しようとする存在が一人だけいた。ギャラクタスだ。だがギャラクタスはリード・リチャーズが星に変え消滅したはずだ。ならば、ここにいるギャラクタスは誰なのか。

 月面では、マンウルフに変身してしまったジョン・ジェイムソンがリード・リチャーズたちに襲いかかろうとしていた。リードは必死にジェイムソンに呼びかけようとするが、X-51は話が通じていないぞと言う。ウアトゥも、お前にできる事は何もないぞリチャーズ、お前たちはマンウルフ同様獣にすぎないのだと言う。

 地上でギャラクタスは巨大な装置を持ち出していた。X-51はそれを見ながら、ギャラクタスはなぜ呼びかけに答えたのかと考える。セレスシャルズがギャラクタスに先制攻撃を行うが、巨大なバリアがそれを阻んでいる。

 海中からサブマリナーことネイモアが飛び立った。彼は太古の時代にセレスシャルズがアトランティスを海に沈めた事を知っていたのだ。アトランティス軍を率い、怒りを込めてセレスシャルズと戦うネイモア。だが海底軍の力もセレスシャルズにはまったく通じない。次々と落とされていく海獣たち。X-51はそれを見ながら、ネイモアは自分が負けると判っている、だがどのように最後の時間を使うかを選んだのだ、父さんは正しかったと考える。

 マンウルフはリードに噛みつき、リードは着けていたドクター・ドゥームガントレットで助かる。X-51はモノリスを展開しジョンを地球へ送った。地上の太陽が出ている側なら月光は当たらずジョンは元に戻るはずだ。ジョンの妻クリスはX-51に、地球が破滅するって言ってたじゃないと抗議。リードは彼女に、我々は成すべきことをしているのだと答える。

 ギャラクタスの使いであるシルバーサーファーシャラ・バルがセレスシャルズと戦っていた。だがシャラ・バルは粉砕され、サーファーは打ち落とされてしまう。ギャラクタスはシャラ・バルの破片を手で受けとめる。ギャラクタスには慈悲深い面があるとリードはX-51に語る。ギャラクタスの持つ装置は完成し、彼はそれをセレスシャルズの一体に向けた。

 強烈な閃光が放たれ、太陽かと思うほど巨大な光球となり、セレスシャルズの一体が真っ二つに吹き飛ぶ。はじめて巨神セレスシャルズが破壊された瞬間だ。X-51は、リードがギャラクタスを星に変えたとしたら、いまいるあれは誰なんだと訊ねる。リードは、彼が以前の事を憶えているか判らない、もし憶えていないならば、彼が勝っても負けても地球は破滅すると言う。リードは、セレスシャルズに植えられた変異種子はいったん発芽したあとも変異を続けて、最終的には変身能力を獲得するようになる、それはセレスシャルズに反抗しないための最終安全装置なのだと説明する。ギャラクタスは装置を使いセレスシャルズを破壊していく。セレスシャルズはギャラクタスに反撃を打ち込む。

 ギャラクタスの体が揺らぎ、装置は吹き飛び、ギャラクタスの巨体は海に倒れた。リードとX-51は、ソーたちアスガルド神族が、異星でセレスシャルズの種子を開花させ変身能力が発現し、地球の民衆の思う通りに変身してしまうことでセレスシャルズへの反撃を封じられていた種族なのだと気付く。そのアスガルド神族が飛来し、セレスシャルズに攻撃を開始した。神々は、ロキの行動から自分たちの正体を悟り、セレスシャルズに逆襲に来たのだ。だが神々の力もセレスシャルズには通じない。沢山の神々が落とされ海に没していく。一方、ネイモアがシルバーサーファーを海面まで運びあげていた。なぜ助けてくれたというサーファーに、妻を失い、正気を失うのがどんなものか余も知っているからだと答える。海面から再びシルバーサーファーが飛び立っていく。家族への思いを胸に戦い続ける彼らを見て、リードはラトヴェリアへ行くとアーロンに言う。メデューサが彼女の息子を見つける手助けをしなければ、と。

 インヒューマンズのところへ現れたリードは、ブラックボルトメデューサの息子がブリテンのところにいると言い、共に英国へ出向く。メデューサは自在に操ることのできる髪をブリテン王に巻きつけ、息子は何処と迫る。ブリテン王が育てていたブラックナイトがインヒューマンズの王子だった。抱きしめ、息子が被っている兜を取るメデューサ

 アスガルド神族の攻撃の間にギャラクタスは再び立ち上がり、目から強力なビームを放ち、ビームは数体のセレスシャルズを貫通。その圧倒的な力を見て、セレスシャルズは宇宙へ去っていく。ギャラクタスも消耗したが、回復すれば地球を滅ぼしに戻ってくるとウアトゥは言う。

 自由の女神像の松明に立って、リードはギャラクタスに呼びかけ、もう一度顔を見せてくれと言う。鉄仮面を外したギャラクタスの素顔は、リードの息子フランクリン・リチャーズだった。驚くウアトゥ。ファンタスティック・フォーの息子として生まれ、最強の超能力を備えていたフランクリンは、アスガルド神族がそうだったように変身能力を獲得し、自分をギャラクタスと思いギャラクタスと化していたのだ。もしもギャラクタスが自分をフランクリンだと思い出せば、ギャラクタスは存在しなくなり、地球内部のセレスシャルズの種が発芽してしまう。リードはギャラクタスに、あなたは慈悲深くなったと聞いていると言い、助命を願う。ギャラクタスは、宇宙にフランクリンと呼ぶ声が聞こえたと疑問を持ち、リードはそうしてあなたの注意を引こうとしたのだと言い訳する。ギャラクタスはリードの願いを聞き、地球内部へエネルギーを撃ち込んだ。大地から光が天に向けて発射され、セレスシャルズの種子を引き出したギャラクタスは宇宙へと去っていく。彼が去ったあと、さらばだ息子よとつぶやくリード。

 月面ではX-51がウアトゥと対峙していた。私はおまえがなぜここにいるのか、なぜ観察をしているのか知っていると言うX-51。彼は地面に引かれているケーブルをたどって進んでいく。ウォッチャーはセレスシャルズの配下として、多くの世界を非干渉のまま監視してきた。その星の住人たちが滅ぶのを知っていながら。監視している人々が死ねば、ウォッチャーは自由を得るのだ。だがウォッチャーは良いことをする事もできたはずなのだ。おまえは悪など無いと言ったがウアトゥ、それは存在するぞ、おまえが悪なんだ。おまえは私たちを助け、素晴らしい事や名誉ある事を行うこともできたのに、自分の事しか考えなかったと言い、X-51はケーブルの先にあるウアトゥの弱り果てた本体に到達する。X-51はウアトゥに言う。「必要に直面しながら何もしないこと、それが悪だ。」

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 X-51はウアトゥに接続されたケーブルを引き抜く。ウアトゥはX-51に呼びかけるが、彼はその場を立ち去った。

 X-51は地球へ行き、リードに顛末を語った。彼は私の顔を奪ったと言うX-51に、きみの心の中までは奪えないよとリードは答える。リードは世界中に巨大トーチを建造し、大気中のテリジェンの霧を燃やし尽くす計画を進めていた。各国のヒーローたちがそれに協力していた。だがそれに反対する者もいた。自然の精霊の使いを自認するブラックパンサーだ。だが計画は順調に進んでいた。

 警官になっているルーク・ケイジは、ピーター・パーカーが犯罪との戦いに復帰した事を歓迎していた。警官になるのは断ったピーターは、メイに犯罪と戦う時のポイントを教えてやらないとねと答える。また、ミスターSという指導者となったスコット・サマーズは、新X-MENの訓練を続けていた。彼らの前からバイクで走り去るデアデビル

 リードのところへ、ロバの顔になった人物が息子を助けてくれた事に感謝を伝えに現れていた。彼は変異したJ・ジョナ・ジャイムソンだ。その息子ジョンは太陽エネルギーを発しマンウルフへの変身を止めるスーツをリードからもらっていた。巨大トーチの建設のため力をふるうザ・シングもいる。

 リードはそこで、天から光輝く男が舞い降りるのを見た。かつて死亡したヒーロー、キャプテン・マーヴルだ。マーヴルは夢のようにリードとだけ会話する。ロキに真実を伝え行動させるには、ソーを一時的に冥界へ送り地球から引き離す必要があったのだと彼は言う。そして、これから多くの事が起き、私は帰ってくる、だが彼らは歓迎しないだろうと語る。理解できないリードに、自分の復活を隠す方法が必要だと伝えたあと、彼は煙のように消えていた。リードは死後の世界にいるマーヴルに自分の妻スーについて訊ねる。彼女はきみを恋しく思っているよという声が聞こえた。

 X-51は月へ戻るという。誰かが点火を見ていた方がいいと言うX-51に、リードはウォッチャーと呼んだ方がいいかねと訊ねる。相手は、ウォッチャーは受動的すぎて悪い意味を持っていると答え、地球のために能動的に行動する者としてウォッチマンという名を提案するのだった。

 インヒューマンズがやってきた。サナギの状態になっていたルナが、ついに羽化する。蝶のような羽根を持って現れるルナ。彼女は結婚する相手、ブラックナイトに話しかけるが、ブラックボルトの息子である王子は返事を返さない。わからないわと当惑するルナに、同じ境遇であったメデューサは彼女の気持ちがよくわかり、抱きしめる。

 巨大トーチが完成し、キャプテン・アメリカが皆を前に演説していた。我々にはもちろん変化は必要だが、お互いが必要だという事を忘れてしまっていたと語るキャップ。何が必要なものなのかを見つけていこうと言い、彼は松明を点火する。巨大トーチが燃え上がる。

 キャプテン・アメリカの言葉は続く。我々は人間である事を思い出さなければならない。このトーチによりテリジェンの霧が消えれば、我々は元に戻る。天は我々に人間たれと言っている。もし他の星から襲来する者があれば、この我々の人間の炎(ヒューマン・トーチ)を見せてやろうと、彼は高らかに宣言するのだった。

 

 EARTH X最終話は、#13ではなく#X。全14回の壮大なマキシシリーズがひとまず終結した訳だが、続編としてUNIVERSE X、PARADISE Xが発表され、三部作として完結する。

 全人類が超人能力を持ち、逆にスーパーヒーローだった者がヒーロー性を失っている世界を組み立て、そこから立ち上がるという展開はよく練られており感動的で、とても楽しめる。一方で、この話はマーヴルの長い歴史を素材として構築されたオリジナルな展開をしており、アスガルド神族やセレスシャルズの設定など本来のマーヴルユニバースからは大きく変えられた部分もあるため、切り離して楽しむ必要がある。

 この#Xではセレスシャルズとの最終決戦が描かれ、様々な者が攻め手として登場し、これまで張られてきた伏線も収束していき、実に盛り上がる。

 冒頭から登場してきたX-51アーロン・スタックが、自分を束縛していたウォッチャーと対決するクライマックスは素晴らしい。最後にウォッチマンを名乗り、自分から活動を開始し、あとの二部でも活躍していく。

 このコミックが収録された合本は、

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