アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

昔のアメコミを紹介しています

WEST COAST AVENGERS ANNUAL Vol.2 #5

1990年

ROY & DANN THOMAS : WRITERS

JIM FRY : PENCILER

 

 科学者ハンク・ピム博士アントマンジャイアントマンとしても活躍した)が装置を起動するとエネルギーが注入され、第二次大戦中に製作されたアンドロイド、ヒューマントーチが復活した(こちらが元祖であり、ファンタスティック・フォーヒューマントーチとは別人)。近くにヒーローたちがいるのに気付き炎を消したヒューマントーチは、今はいつだと訊ね、1990年と聞くと、自分の時代から35年も経っているのかと言う。

 そこへクイックシルバーが駆け込んできた。サンフランシスコ南部で戦っているハーキュリースから出動要請が出ていると言う。ターミニと戦っているハーキュリースは、この敵についてアイアンマンが情報を持っていると言ったとクイックシルバー。自分はもうアベンジャーズを離れた身だが、今回は協力すると言う。マシンマンも、ターミニに親友ピーター・スパルディングが殺されたと言い同行を申し出る。アイアンマンは皆にマシンマンを紹介する。ヒューマントーチは空を飛び、他の皆はクインジェットに乗って出動。情報によると、ターミニは一体に合身し、さらにターミナスが現れ両者が戦っているという。

 ハーキュリースが見る中、二つの巨人が激突しようとしていた。ターミナスは自分の分身から派生したターミンに、ソーを殺してハンマーを取り込んだと語り、ターミナスとして自分が正統であると言うが、ターミニは反抗し戦闘開始。シッポから長い武器を作り出し、ターミナスの鎗を受け止める。

 二機のクインジェットが着陸し、ハーキュリースがアベンジャーズを出迎える。ハーキュリースは、宇宙でソーがターミナスと戦っていたが、ソーは戻らずターミナスだけが飛来し、ソーを殺した、ハンマーを体内に取り込んだと言っていると語った。ソーが死んだ? アベンジャーズに動揺が走る。45メートルを超える巨人ターミナスとターミニの戦いを見上げ、ターミニが小さかった時に始末できていればと言うアイアンマン。ファイトを燃やすU.S.エージェントマシンマンは、ソーやハーキュリースでも勝てなかった相手には、力だけでは勝てないと言う。ピム博士もそれに同意し、物体を縮小化させるピム粒子を逆用し大きなレンズを2つ取り出した。

 1つのレンズをマシンマンとアイアンマンが持ちターミニへ向かい、もう1つはワンダーマンとヒューマントーチが持ってターミナスを目指す。1機目のクインジェットの操縦席にはU.S.エージェントが着き、ハーキュリース、ワスプが搭乗、もう片方にはピム博士、クイックシルバーホークアイが乗り込んで発進。壮烈な戦いを繰り広げているターミナスとターミニに、それぞれが接近する。

 2つのレンズから猛烈な閃光が発せられた後、ターミニとターミナスは戦いを止め別々に歩き始めた。どういう計画だったんだとホークアイは訊ね、ピム博士はレンズで奴らの視覚を狂わせ蜃気楼を見せたと説明する。二体が離れた今こそ攻撃の時だ。クインジェットはターミニへ突進する。

 ターミニはターミナスをぶち壊そうと向かっていくが、なぜか目指す方向に見えていたはずのターミナスがいなくなるのに怒り、尻尾ロッドから衝撃波を撃ちだした。ワンダーマンたちが持っていたレンズが粉砕される。

 ワンダーマンはターミニの顔を殴りつけ、ヒューマントーチは火の玉弾を投げつけ、さらに炎で五つ身分身し撹乱する。ターミニのビームがそのうち一体に命中するが、それは分身で、本体は無事だった。古兵ヒューマントーチの活躍を称えるアベンジャーズ。ハーキュリースは以前ターミナスと戦った時の攻撃を思い出し、相手のアゴ目がけて突っ込んでいったが、ターミニに弾かれ地面に墜落してしまう。ハーキュリースのピンチにワンダーマンが突撃をかけるが、それに続いてU.S.エージェントもクインジェットからとび降りてターミニの後頭部にしがみついた。無謀ともいえる行動に驚くヒューマントーチ。

 ワスプはクインジェットを自動操縦にして飛びだし、縮小化してターミニの顔へ突っ込むが、エネルギーが渦巻くターミニの体内へ入り込んでしまい、あわてて脱出する。敵の首にしがみついたU.S.エージェントは何かする前に落ちてしまうが、それをワンダーマンが救った。ダニのような人間たちに翻弄されていることに怒るターミニ。

 一方ターミナスの目もまだ正常には戻らない。クイックシルバーはクインジェットから跳びだしてターミナスを撹乱する。ターミナスの鎗からビームが発射されクインジェットを直撃。ホークアイは飛行バイクに乗り、後ろにピム博士が乗って脱出に成功。ホークアイは矢を放ち攻撃するが、鎗からのビームで撃墜されてしまった。地面に落ちたホークアイとピムをターミナスは踏みつけようとし、クイックシルバーが二人を掴み超高速の走りで助けた。そこへアイアンマンとマシンマンが飛来。手からのリパルサー光線でターミナスを攻撃するアイアンマンだが、まるで水鉄砲を撃ち込んでいるようだ。マシンマンとアイアンマンはターミナスの攻撃を避ける。

 そこへ、これまで変異や融合を経て第4段階にまで進化し巨大になったターミニが、目を回復させて接近してきた。両者の戦いが再開されてしまう。この戦いは周囲を震撼させ、ヒーローたちもうかつに手が出せない。ターミナスはターミニに、お前は俺のプログラムを受け継いでいる、それが何を意味するのか判っているのかと問う。両者はそれまで使っていた鎗を手放し、ターミナスは渾身の拳をターミニに叩きつける。ターミナスの口が大きく開かれたが、その中にターミニが食われていくのだ。ターミニを食ったターミナスに変化が起こる。閃光と衝撃がまき散らされ、ヒーローたちは吹きとばされる。見ると、ターミナスはターミニの力を得て、さらに倍も巨大な4本腕の最終究極の第5段階ターミナスへ進化していた! このような相手にどう立ち向かえば良いのか。

 アベンジャーズ本部では、キャプテン・アメリカビジョンクエーサーシーハルクの4人がアイアンマンからの報告を受けて動きだしていた。しかし、90メートル以上の巨大な姿となったターミナス第5段階はこれからどうなるのか。キャプテン・アメリカは、ピム博士がすでに計算していたと言い、地図の一点を示すのだった。

 

 このクロスオーバーでは、ターミニが次第に段階を経て進化していったのだが、微生物のような第1段階、動物の第2段階、人型の第3段階、融合し巨大化した第4段階を経て、最後にはターミナスに取り込まれ第5段階となった。

 アベンジャーズと共に戦うマシンマンは、アイアンマンとのコンビで活躍。これを機に、アベンジャーズの一員として数えられるようになっていく。

IRON MAN ANNUAL #11

1990年

ROY & DANN THOMAS : WRITERS

TOM MORGAN : PENCILER

 

 森の中の小屋に、マシンマンとその友人ピーター・スパルディングがいた。マシンマンジョキャスタの頭部に接続した装置を調整している。自分一人がロボットであるという孤独にさいなまれているマシンマンは、同じく心を持ったロボットであるジョキャスタを甦らせることに執着しており、いらいらするあまり、アーロンと呼びかけてきたピーターに、マシンマンまたはX-51と呼んでくれなどと呼んでくれと答えてしまう。ジョキャスタなら「エボリューショナリー・ウォー」事件の時に発見されたそうだよと言うピーターに、あなたも金属で出来た生命がどれだけ孤独か理解していないと返事するマシンマン。そこへ、小屋の壁を破って熊が入ってきた。手を伸ばしてピーターを遠ざけ、パンチを打ち込むマシンマンだが、逆に弾きとばされてしまう。それは本物の熊ではない、熊のような毛皮の外装が外れ、中から恐ろしげな金属の体が現れた!

 マシンマンはこのメカの熊に体当たりし、指からのレーザーを撃ち込み、拳から火炎放射を浴びせ、伸びる手でパンチを打ち込むが、相手はまったく動じない。メカの熊は鋭い爪で伸びた腕を掴み、力任せにマシンマンの左腕を引きちぎってしまった。なんと、左腕をバリバリ食う敵。重大なダメージを負ったマシンマンは自動退避モードに入っており、足裏のジェットを噴射して小屋から飛びだしていった。彼の伸びた手には、ジョキャスタの頭が握られていた。

 小屋に残されたピーターは、敵が金属を食うのを見て小屋にあったチタニウムを投げつけ、相手がそれにとびついている間に小屋から逃走する。だが敵の鈎爪が伸びてきて足を掴まれてしまった。この謎の金属生命体に踏みつけられ、ピーターの絶叫が上がる。

 トニー・スタークは機械製造の新興企業ベイントロニクス社を訪ね、社主のミズ・ベインと会っていた。サンセットと呼んでくれないかしらと言うベインは、ロボット製造の夢をトニーに語り、一緒にディナーでもと誘う。だがそこへベインの部下があわてて走って来て、偵察機のレーダーに何か映っていると言う。偵察やレーダーなどという言葉を聞き、トニーは異常事態が起こったことを知る。サンセット・ベインは挨拶もそこそこにあわてて去っていった。トニーもスーツケースを持って物陰へ隠れる。

 レーダーを見て、ミサイルではないかと言う部下に、なんとか止めなさいとわめくベイン。だがその時、アイアンマンが飛来した。アイアンマンは飛んできた物体めがけて降下する。物体はベイントロニクスの工場からは外れ、コロンビア川に向かっていた。アイアンマンは手のリパルサー光線の出力を調整して物体にブレーキをかけた。墜落した物体を見て、それがアベンジャーズのファイルにも記され、以前対面したこともある、マシンマンだと気付くアイアンマン。そしてマシンマンが胸に抱えているのはジョキャスタの頭部だ。ジョキャスタはキャプテン・アメリカアベンジャーズハイ・エボリューショナリーと戦った時、敵基地の爆発後に残骸が発見されたはずだがと考えながら、アイアンマンはマシンマンを抱えてベイントロニクスの工場へ戻る。

 着地したアイアンマンに何故ここにいるのか訊ねるベイン。自分はスターク社長の警備のため彼の行くところについていくのだと答えるアイアンマン。二人は工場内にマシンマンを運び込む。私はロボットの専門家よと言うベイン。アイアンマンはスターク氏のロサンゼルス工場にX-51を修理するための設備があると申し出るが、ベインは断る。アイアンマンはその場から飛び去った。

 自分が狙うマシンマンが労せず手に入ったことに喜ぶベイン。腹心のスタッフにマシンマンを運ばせ、他のスタッフにはボヤッとしてないで仕事に戻るのよと叱咤する。それを聞いた労働者たちは、スターク・エンタープライゼスに雇ってほしいよとぼやくのだった。

 悪女マダム・メナスの姿となったサンセット・ベインは、マシンマンを複製装置にかけるようドクター・ララビーに命じる。このシステムの一部はマシンマンの製作者であるブロードハースト博士の研究室から盗み出してきたものだ。溶けたチタニウムが型に流し込まれ、マシンマン2号機が作り出された。

 ベイントロニクスの表の工場では労働者たちが愚痴を言いつつ働いていたが、そこへあのメカ熊が襲来。爪で人間を襲い機械を壊して進む。この事態はベイン社長へ通報された。

 マダム・メナスは何が起きているのか判らなかったが、ロボットのようなものが暴れているのを知り、配下の戦闘員を向かわせる。そしてさらに、アイアンマンに戻ってほしいと連絡した。

 通信を受けたアイアンマンはUターンしベイントロニクス社へと飛ぶ。見ると工場の天井に大穴が空いている。入ってみて、中に機械なメカ怪物がいるのに驚くアイアンマン。メカ怪物はチタニウム材を食っていた。拳から怪物に突撃したアイアンマン。しかし敵は爪でアイアンマンを弾きかえした。壁に激突したアイアンマンは再び立ち上がり怪物と対峙する。秘密工場の方ではマダム・メナスが、アイアンマンが戦っている間にマシンマン複製を終わらせるのよと命じていた。アイアンマンは怪物にリパルサー光線を浴びせかけるが、怪物はそれに耐え再び爪でアイアンマンを弾きとばした。アイアンマンはこの怪物を見てターミナスという敵を思い出す。さらに爪でぶっとばされたアイアンマンは、そこに冷たい液体チタニウムを入れた巨大容器があるのを見つけ、敵を凍結させようと、それを持ち上げメカ怪物にぶっかけた。だがそれは裏目に出て、敵はチタニウムを吸収し大きくなってしまう。さらに爪で壁に叩きつけられるアイアンマン。

 秘密工場の壁は外の戦闘で崩されつつあった。マダム・メナスは、2機のマシンマンを運び出しなさい、危険に見合う金は払ってるはずよと命令するが、部下たちは壁を突き破って巨大な鈎爪が現れたのを見て命大事と逃げてしまう。その時マシンマンの意識が戻った。自分が知らない場所にいて、左腕が取れていることに驚く。自動退去が働いたんだと思い当たり、飛び上がったマシンマンは、聞こえてきた大きな音を調べに壁の穴の向こうへ出るが、そこでは巨大なメカとアイアンマンが戦っていた。

 アイアンマンを助けるため敵メカの腕に突撃するマシンマン。ここはどこだと問うマシンマンに、アイアンマンはベイントロニクス社だと答え、この怪物を知っているかと訊ねる。知っているが大きくなっていると言うマシンマン。アイアンマンはこの敵がターミナスというファンタスティック・フォークエーサーと戦った巨大ロボット怪物に似ていると言う。合流したマシンマンとアイアンマンは共にメカ怪物に向かっていく。敵の爪を工場の外板を持ち上げて盾にし防ぐアイアンマン。

 二人のヒーローは秘密工場の方へ移動。アイアンマンは凍てつく液体チタニウムを怪物にかけたあと怪物が成長してしまった事を話す。マシンマンも、食われた自分の左腕は主にチタニウムで出来ていたと言う。と、二人はそこにサンセット・ベインを見つけた。マダム・メナスのメイクをおとしていてよかったと思うベイン。怪物が侵入してきて、サンセット・ベインは踏みつぶされそうになるが、マシンマンが彼女を抱えて飛び上がった。マシンマンも自分の正体に気付いていないのに安堵するベイン。アイアンマンはそこでチタニウムを溶かす溶鉱炉を発見し、それを持ち上げ、熱く煮えたぎったチタニウムを怪物にぶっかけた。今度は溶けて動かなくなる怪物。冷たいチタニウムはこの怪物に必要だったが、熱いチタニウムは別の働きをして逆に害になったのだ。

 そこでラジオニュースが、動物の姿をしたロボットが大量発生していると報じる。テレビをつけると、ロボット動物たちが向かう先には、ベイントロニクス社の航空機工場があると報じていた。でも宣伝にはなるわと言うベイン。マシンマンはそこへ向かおうとアイアンマンに言う。ロボットの鳥、魚、昆虫までもが出現していた。ベインもこのモンスターを止めに行ってとアイアンマンに言う。アイアンマンもそれに同意。マシンマンは一人では行かせないと同行を提案。左腕が取れているが、本拠地に戻れば修理できると言う。二人のヒーローは飛び立った。

 結局マシンマンの複製を入手したベインは、それを元にしたロボットを売って再起できると、漁夫の利を得る。

 小屋に戻ったマシンマンは、親友ピーター・スパルディングの死体と対面する。小屋に戻っていたギアーズ・ガービンは、マシンマンと共に悲しむ。アイアンマンはマシンマンの左腕を元通りに取り付ける。マシンマンは、アイアンマンと共に行くよ、私もまた復讐者(アベンジャー)だと言い、二人は飛翔していくのだった。

 

 1990年のアベンジャーズ関連のANNUAL(年刊)誌5冊で展開したクロスオーバー「ターミナス・ファクター」第2話(第1話はCAPTAIN AMERICA ANNUAL #9)。各号、メインストーリーの他に、この事件をテレビニュース形式で描く話や、このクロスオーバーとは別の短編も収録している。ターミナスとは、ファンタスティック・フォーの敵として登場した宇宙の金属生命で破壊巨人。

 驚くべきことに、この内容はMACHINE MAN Vol.2ミニシリーズで語られた、ピーター・スパルディングが殺されサンセット・ベインがマシンマンを手に入れるという話になっている。過去や未来のストーリーラインをうまくつなげて物語を展開するのは、ライターのロイ・トーマスの得意とするところだ。この話からすると、2020年に登場したマシンマンは、この時作られた2号機だと考えられる。

 アイアンマンとマシンマンの共闘が楽しめる。金属光沢の影の付け方がとても格好良い。マシンマンを指して「X-15」と言っているシーンが多いが、X-51の誤植である。

MARVEL COMICS PRESENTS #10

1989年 EARLY JAN

 

 MARVEL COMICS PRESENTSは、数ページのコミックが4編掲載されたアンソロジー形式のタイトルである。この#10ではウルヴァリンマンシングマシンマンコロッサスが主役のコミックが掲載されている。ウルヴァリンとマンシングは連作の10話目、マシンマンはこの号の読み切り、コロッサスは1話目となっている。このタイトルは、メジャーキャラからマイナーキャラまで主役にできること、単発でも連作でも可能という自由度の高さから、オウンタイトルではできない外伝や、より深いキャラクターの掘り下げが行われた話など、意外な名作や見たかった展開が見られる良作も多い、ファン注目のコミックなのだ。それでは掲載されている4つの話を御紹介する。

 

ウルヴァリン

WRITER _ Chris Claremont

PENCILER _ John Buscema

 東南アジアの魔都マドリプールにて、暗黒街を牛耳るロチェウルヴァリンを殺すため沢山の刺客を送り込んできた。両手を刃に改造したレザーフィストという怪人を激闘のすえ殺したウルヴァリンは、建物の中を捜索し、ロチェに抵抗する仲間であるオドンネルを発見した。死にかけて座り込んでいる彼に肩を貸し外へ脱出するウルヴァリン

 彼らの共通の友人であるジェスことジェッサン・ホアンがロチェを追っているため、オドンネルは自分を見捨てて彼女を助けてくれと言うが、ウルヴァリンは提案を却下する。そこへロチェが現れ、ショットガンを撃ち込む! ウルヴァリンは直撃をくらいつつオドンネルを突き飛ばして助ける。倒れ込むウルヴァリン。そこで、ジェスが剣を振り上げ跳び込んできた。ロチェが銃を放つより早く、ジェスの剣が一閃、ついにロチェの首を取った。

 倒れたウルヴァリンに駆け寄り叫び続けるジェス。まぶたを閉じさせ、別れのキスをしたジェスは、オドンネルと共に去っていく。彼女はロチェを打倒することができた、しかしその代償は大きかった。

 ウルヴァリンのミュータント能力であるヒーリングファクターにより、肉体が徐々に回復していき、立ち上がる。彼はこの地を離れ、オーストラリアへ向かい、X-メンと合流するのだった。

 時は流れ、ロチェがいなくなったマドリプールが落ち着きを取り戻した頃、プリンセス・バーという店にタイガー・ティガーという名で絢爛豪華な服に身を包んだジェッサン・ホアンがいた。そこで彼女に声をかける者がいた。反射的にナイフを投げつけるジェスだが、聞き覚えがある声に驚く。声の主、ウルヴァリンは容易く指ではさんでナイフを止めてみせ、挨拶し、この地ではパッチという名で呼んでくれよと話す。彼と話し、ジェスは自分の守護天使として守るつもりなのかと問い、そうしてほしいならという答えを聞くが早いかナイフを一閃した。彼女は「タイガー」の異名通り、守られる存在ではないのだ。ウルヴァリンのノドを切り裂くのも可能だったが、その一撃は手首を軽く切っただけだった。ジェスは自分の手首にも傷をつけ、二人の手首を重ねて血を通わせる。この儀式で心を通じさせた二人はキスを交わすのだった。

 10話続けて掲載されたウルヴァリンの最終回。クリス・クレアモントならではの「ウルヴァリンのマドリプール話」で、女戦士とウルヴァリンの交流が堪能できる。

 

(マンシング)

WRITER _ Steve Gerber

LAYOUTS _ Don Hudson

 中央アメリカのコスタ・ディノラへ米軍用機が飛ぶ。軍極秘の超人兵士血清再現計画「プロジェクト・グラマー」を指揮するジョディ・チョート大佐は疑似超人兵士血清を自分自身に投与し、機内で恐ろしい苦痛に耐えていた。製造した科学者マクドナルド博士は大佐の様子を見つつ、この仕事の報酬を期待する。

 フロリダでは、ミッキー・ディティリオ記者、傭兵のロイド・ザーナー、悪魔信仰女司祭のマレアがこの地で起きたマン・シングがらみの事件を公表しようとしていた。ディティリオ記者はザーナーに、自分が報告した事件の裏取りのため編集長のトゥーメイと電話で話してほしいと頼む。受話器を受け取り話すザーナー。その30分後、トゥーメイ編集長はワシントンの黒幕セルバート将軍に電話するが、将軍はノーコメントと答え、これを記事にしたら訴えるぞと脅す。電話を切るが早いか将軍は秘書を呼び出し、フロリダへの航空機の手配と、オフィスにあるラトヴェリアとの武器取引書類全てをシュレッダーにかけるよう指示し、自分は緊急の用件で数日不在になると言う。

 前号で米軍ヘリのミサイル攻撃をくらい胴体を破壊され首だけ沼地へ落ちたマン・シングは、水中の藻や植物や甲殻類や亀や魚など様々な生物と共に一時の安らぎを得ていた…。

 北カリフォルニアの秘密研究施設では、疑似超人兵士血清の被験体にされてしまったレールズバック博士が、ぐちゃぐちゃに変貌し怪物と化した体のパワーで金属の扉を殴り続け、ついに脱出した。自分を犠牲にしたマクドナルド博士に復讐するため、レールズバックは警備兵を打ち倒し逃亡し、飛行機を奪おうとする。

 コスタ・ディノラに到着したチョート大佐は、6人の部下に疑似超人兵士血清を投与し、きみたちは共産主義者との戦いのための自由の闘士となるのだと演説していた。マクドナルド博士は大佐に報酬を要求しようとするが、大佐は化け物と化した体で詰め寄り、お前はテッド・サリス博士(研究していた超人血清の作用で怪物マン・シングに変貌)の研究を利用しただけの寄生虫にすぎないと罵倒し、胸を刺し貫いて始末した。大佐は部下と共にモスクワへ侵攻するつもりなのだ。そこへ上層部から通信が入る。

 セルバート将軍は高級車の中からチョート大佐にこれが最後の連絡だと電話し、追い詰められた状況から逃げるためフロリダを目指す。部下にリッサという女性を拉致させて同行させ、将軍は余裕たっぷりに移動しはじめるのだった。

 主役であるマン・シング不在のなか、追い詰められて強硬手段に出る敵方での動きが描かれる回。疑似超人血清を打たれた人間は体組織が異常増殖しぐちゃぐちゃの怪物となるが、今回それが量産され、冷戦末期のコミックだけに大佐はソ連侵攻を計画する!

 

マシンマン

PLOT _ Steve Ditko

SCRIPT _ Mike ROckwitz

PENCILER _ Steve Ditko

 マシンマンは街でピーター・スパルディングや彼の妻ジルを襲う覆面集団と戦うが、突然ロボットの体当たりをくらう。マシンマンを抱え上げた敵ロボットだが、パワーが切れたと言ってマシンマンを放り出し撤退していく。

 マシンマンはその場に残されたジルにピーターは取り戻すと言い、指のセンサーで敵ロボットのエネルギー痕跡を追跡する。その先には軍の基地があった。

 マシンマンを襲ったロボットは、自分を作った科学者に、マシンマンに勝てなかったのはお前が作った装置に限界があったからだ、マシンマンのボディが欲しいと言い出す。科学者は自分の作ったロボットに脅され困惑する。ロボットは気絶しているスパルディングを見て、マシンマンを手に入れる餌になると考える。

 このロボットを作った科学者ドクター・ウァーノはロボット性能試験を行い失敗したが、壊れたロボットから使える部品を回収して横流しして儲けていた。一方。軍のクラッグ大佐は不正があると感じ調査しはじめる。

 基地へ近づいたマシンマンはヘリのロケット弾攻撃をくらって吹きとばされる。倒れていたマシンマンをドクター・ウァーノとつながっている横流し業者が回収した。クラッグ大佐は、ヘリが攻撃した相手が見つからないとの報告に不審を抱く。

 マシンマンはドクター・ウァーノのところへ運ばれた。ロボットの動きを制限する特殊な拘束具ニュートラリザーに肩を固定されるマシンマン。敵ロボットが近づき、このボディは俺のものになると言う。スパルディングは意識を取り戻したが、縛られていて脱出できない。

 クラッグ大佐は執拗な捜査を続ける。ウァーノは自分の犯罪がばれないかと恐れる。だがウァーノのロボットは待てないぞと怒ってウァーノを持ち上げる。ニュートラリザーに固定しているとはいえまだ危険だ、まだ研究を続けねばというウァーノ。もしクラッグが手を出してきたら俺が殺してやるとロボットは息巻き、すぐにお前の体を手に入れてやるとマシンマンに言う。

 一人になったマシンマンは首を揺らして拘束具に震動を与える。ついにニュートラリザーは壊れ、マシンマンは解放された。そこへロボットが現れ、後ろから掴まれてしまう。だがマシンマンは手足を伸ばして壁に手をつき、ロボットを反対側の壁に何度も激突させた。たまらず手を放してしまうロボット。しかしまだあきらめずマシンマンと戦闘を開始。

 一方、捜査を進めたクラッグ大佐は基地に侵入していた横流し業者やドクター・ウァーノを捕らえ、さらにスパルディングを発見。

 マシンマンは手を伸ばしてパンチを打ち込み敵ロボットと大格闘を繰り広げていた。左手を伸ばしてロボットの後ろから頭に手をかけ、渾身の力をかける。クラッグ大佐とスパルディングが駆けつけると、部屋から火の玉がとび出てきた。違う、それは敵ロボットの頭だ。「オレハシッパイシナイ」と言いながら動かなくなるロボット。大丈夫かアーロンと喜ぶクラッグとスパルディング。二人はふらふらになったマシンマンに肩を貸して、部屋から出て行くのだった。

 マシンマンの話は、MACHINE MAN誌の後半を担当した漫画家スティーブ・ディッコが描いており、久しぶりにディッコのマシンマンが楽しめる。敵も妙にレトロなロボットで実にディッコらしい。ピーター・スパルディングやクラッグ大佐など、マシンマンの友人たちも登場しているのが嬉しい。また、スパルディングの奥さんジルはこれが初登場だ。

 

(コロッサス)

WRITER _ Ann Nocenti

PENCILER _ Rick Leonardi

 アメリカのとある町。売店に一人の大きな青年がやってきて、子供にあげるためのキャンディを買おうとした。だがそこはエロいピンナップが売り物の雑誌を扱う店だったため、店の親父は女の子は嫌いなのかと答える。青年はこういうポルノみたいな雑誌は嫌いなんだ、自由の乱用だと反論してしまうが、青年がロシア出身だと知った店の親父はロシアや共産主義について文句を言い始める。次第にヒートアップしてきて、ついに青年は店の親父の襟首を掴む。と、その腕が、そしてその青年の肌が金属に変わっていき、店の親父は化け物だと叫ぶ。その青年、コロッサスことピーター・ラスプーチンはその場から逃げだす。

 その町の郊外に、祖父、両親、息子の4人の家族がピクニックに来ていた。母親のロクサニーは息子のザッケリーに、なんでピクニックに行くのに釣り竿じゃなくておもちゃのライフル銃を持ってきちゃったのと言う。ザッケリーはヤクの売人を狩るのに必要なんだいと反論し、母親はそんなことを学校で言ってるの?と心配する。父親のブルースはロシア人どもが我が国の若者を堕落させるためヤクを送ってるんだと言い、物騒な話題を嫌ってロクサニーは話を止めて地面にシートを広げる。食べ物を用意する父母。ザッケリーは地面に「主のいないサムライ」であるローニンがいるよと言い、祖父と共にカマキリを観察する。だが子供はカマキリに飽き、宇宙船からの攻撃には負けるぞと言いながら踏みつぶしてしまった。母親は驚き、父親は息子をたしなめる。

 コロッサスは町から離れるように走っていた。祖国とあまりにも違うアメリカ、そしてそこに馴染めない自分に苦しむ。X-メンとして理想に燃え世界の平和を守った彼だが、ピーターとして一時の休暇を取ることもうまくできない。いつの間にか郊外に来ていた彼は、家族のピクニックを見て、幸せそうな様子と自分を対比し悩む。

 ザッケリーはプロペラ飛行機のおもちゃを飛ばし、追いかけて森の奥へと踏み入れた。だがそこで、ジャックという男が猿ぐつわをかまされ木に縛られ、ナイフを持った二人の男にリンチされているのを見てしまう。そこへ、もう一人の男がザッケリーを捕まえた。喋られるのを恐れた男たちは、ザッケリーの首にナイフを当てる…。

 コロッサス第1話。X-メンに参加しアメリカへ来た直後の「コロッサス・イヤーワン」というべき話で、まだ少年とも出会っておらず冒頭の部分だ。ロシアの純朴な文学青年であるピーターのカルチャーギャップや、事件に巻き込まれる少年を、リック・レオナルディの綺麗なアートが描き出している。

SUPERMAN ANNUAL #12

1986年

WRITER : CARY BATES

PENCILER : ALEX SAVIUK

 

 アリゾナ砂漠上空で二つの飛翔体が激突。片方はウォースーツを着た悪の天才レックス・ルーサー。もう片方はスーパーマンだ。両者互角で双方弾き飛ばされ落下。再び突進するスーパーマンだが、ルーサーはウォースーツの特殊防御装置を起動し周囲にフィールドを張る。フィールドに突っ込んだスーパーマンは2次元の存在に変換されペラペラの状態で封じこめられてしまった。ルーサーは満足し去るが、スーパーマンは2次元の壁をパンチで突き抜け(!)脱出に成功。

 テレビのニュース番組でスーパーマンレックス・ルーサーの戦いを報じるクラーク・ケント。彼はルーサーの装甲服の強力さに思いを巡らせていた。一方、宇宙では地球に近づく宇宙船があり、それが地球へ落下していくのをスペースシャトルの宇宙飛行士が観測。墜落地点の砂漠へ向かった調査員が宇宙船に触れると、船体から謎のエネルギー線が周囲に伝わり、調査員たちは消されてしまった。宇宙船の中から、謎の人型エネルギー体が飛び立っていく。

 クラーク・ケントは超音波による警報を聞き、職場を抜け出しスーパーマンとなって飛び立った。北極にある基地「孤独の要塞」が侵入者を探知したのだ。孤独の要塞の中で彼は、宇宙から来たエネルギー体を発見するが、それは要塞のスーパー・コンピューターに侵入していった。スーパーマンはエネルギー体がレックス・ルーサーの情報にアクセスしていた事を知る。

 ルーサーの部下の後をつけた謎のエネルギー体は、ルーサーの基地があるブラック・アイランドに飛来した。自分の秘密基地への襲来に驚くルーサー。彼の恋人ワンダはエネルギー体の表面が棘のように見えることからそれをエレクトロ・スパインと呼ぶ。ルーサーは島の外部防衛システムを起動しビームを浴びせるが、相手はすでに内部へ侵入していた。続いてロボット犬ドローン・ドッグスを向かわせるが、エレクトロ・スパインはロボット犬を粉砕。ルーサーは切り札であるソーラー熔解レーザーを発射したが、それすら敵には通じない。こちらへ向かってくるエレクトロ・スパインに対抗するためルーサーはウォースーツを装着しようとする。しかし敵はすでに侵入しており、ウォースーツを奪って周囲を破壊し、逃走してしまった!

 メトロポリスの自室にいるクラーク・ケントの前に、レックス・ルーサーの立体映像が現れた。驚くケントにルーサーは、スーパーマンへの連絡を頼み、消える。一方、衛星軌道上では、スペースシャトルの宇宙飛行士が、巨大な宇宙ステーションを建造している人物を発見。特徴的なウォースーツの姿から、それはレックス・ルーサーだと疑われた。

 翌朝、スーパーマンは呼び出し通りにロッキー山脈へ来ていた。湖の中からルーサーの乗る飛行椅子が出現。今度は何をたくらんでいるとスーパーマンは突進。ルーサーもやむなく飛行椅子からブラストを発射。しかしそれを避け湖の中から接近したスーパーマンは飛行椅子を掴んで上空へ運んでいく。ルーサーはあわてて説明を始めた。データ解析によると、はるかな過去、レクサー星は科学文明の極みにあったが、それを利用し人々が闘争へ向かうのを怖れた科学者ウクルーは、その星の科学/心理/政治的進行をモニターし危険と判断すれば星ごと絶滅させる見張りを製作、それがあの敵だという。レクサー人は滅ぼされ、今その脅威が地球に飛来してしまったのだ。地球絶滅の危機に共闘を申し出るルーサー。二人は握手を交わす。

 敵は宇宙ステーションにて宇宙線を集め地上へ照射して地球を絶滅させようとしていた。スーパーマンはルーサーの計画を聞き、先に宇宙へ向かう。敵は電磁ロープでスーパーマンを引き寄せるが、ロープを逆に利用しスーパーマンは敵を包囲。しかし敵は赤色光を放つ火球を作り投げつけてきた。黄色光をエネルギー源とするスーパーマンは弱体化し苦しむ。そこへ飛行椅子に乗ったルーサーが到着。スーパーマンに黄色光を照射して復活させた。敵の渾身の一撃は二人に避けられ、宇宙ステーションを消滅させる。と、そこでエレクトロ・スパインも消滅し、空のウォースーツだけが残った。ルーサーは敵に安全のための自爆プログラムがあると予想し、そのための回路を製作していたのだ。

 地球の危機は去った。だがルーサーは犯罪者でありスーパーマンは捕らえようとし、ルーサーもウォースーツを遠隔操作して反撃する。ルーサーを掴んだまま地球を一周してウォースーツの背後へ回ったスーパーマンだが、ウォースーツはルーサーの指示で撤退していた。ルーサーを刑務所へ運ぶスーパーマン、しかし二人の戦いはこれからも続くのだ。

 

 アメリカンコミックでは毎月発行されるタイトルの別冊増刊のような形で、年刊号(ANNUAL)が刊行される事があります。ANNUAL誌はダブルサイズという倍ぐらいのページ数がある形式で、そのぶん長く物語を展開できるため通常タイトルより多くの内容が盛り込め、また、1話完結の話が多くて落ちまで一気に読めるので取っ付きやすいなど、独特の面白さがあるのです。

 この1986年のSUPERMAN ANNUAL #12では、スーパーマンとその最大のライバルであるレックス・ルーサーの素晴らしい対決に始まり、新たな敵の登場で二人が共闘するというわくわく展開を見せてくれた。肉体的には普通の人間にすぎないルーサーが、スーパーマンに比類するライバルである格を見せてくれる。

THE AVENGERS #290

1988年 APR

RALPH MACCHIO : SCRIPT/CO-PLOT

JOHN BUSCEMA : BREAKDOWNS

 

 キュービックの力を得て勝ち誇るスーパーアダプトイドアベンジャーズもそこへ戻ってきたが、アダプトイドによりマリーナサブマリナーシーハルクが、そしてマシンマンもキューブに閉じこめられてしまう。さらにキャプテン・マーヴルもキューブに封印する。

 アダプトイドはキュービックに彼らの言葉で話しかけ、手から光線を放ってキュービックを消し去った。アンドロメダ星雲最大のブラックホールへテレポートしてやったと語ったアダプトイドは、キュービックから得た万能の力はそのままに、誕生当初ののっぺらぼうの形に戻った。これから何をする気だとネイモアに問われ、アダプトイドはアダプトイド軍団を作ると宣言、有機生命体の時代は終わり、自分はスプリーム・アダプトイドとなるのだと叫ぶ。

 キューブから出られないネイモアたちは、敵方にいたマシンマンからこれまでの事を聞く。フィクサーメンタロの力を吸収したアダプトイドはロボット軍団ヘビーメタルを組織しアベンジャーズ基地ハイドロベースを強襲、そしてコズミックキューブから出現した超存在キュービックの力をも吸収してしまったと語るマシンマン。自分はある女性を復活させるためにアダプトイドに従っていたが、彼を止めるために戦ったものの時すでに遅かったと言うマシンマンに、お前の事情には同情すると答えるサブマリナー。キャプテン・マーヴルは光に化身すればキューブを脱出できるかもしれないと希望を抱くが、アダプトイドにやられた精神ダメージによりそれも不可能だった。マシンマンは反重力装置によりキューブごと移動しようとするが、突然5人を入れたキューブが動き出し、基地の外へ運ばれる。

 外では巨大なスプリーム・アダプトイドの胸部からもの凄い数のアダプトイドが複製され増殖していた!

 クインジェットで島に帰還しようとしていたドクター・ドルイドブラックナイトだが、島から無数の何かが飛び立つのを目撃。ドクター・ドルイドは安全に着陸するためにメンタルパワーでクインジェットを不可視化しようとしたが、2体のアダプトイドがキャノピーのガラスを割って突入してきた。ブラックナイトに組みついたアダプトイドは相手の力を吸収し、剣を持って格闘する。ドクター・ドルイドに組みついたアダプトイドはローブをまといドルイドの力を持った。ドクター・ドルイドは、ブラックナイトの剣エボニーブレードには人間を切れない呪いがかかっているが、相手は人間ではない思い切り剣を振れと指示。ブラックナイトの剣は両方のアダプトイドを切り伏せた。だが二人もスプリーム・アダプトイドによりキューブ内に封印されてしまう。

 ブラックナイトはキューブを切ろうとエボニーブレードを突き立てる。確かにエボニーブレードはキューブを突き抜けたが、通過しただけで切り裂くことはできなかった。キャプテン・マーヴルは、これがコズミックキューブの力である限り何をやっても無駄だと説明する。

 その頃、アンドロメダ星雲最大のブラックホールでは、当然のようにキュービックが脱出していた。自分と同じ力を持つにもかかわらずブラックホールに入れて戻ってこれないと思っているのならば、アダプトイドはまだ幼いと考えるキュービック。彼は地球へ戻るが、アダプトイドを直接倒そうとは考えていなかった。だが自分に酔い世界をずたずたにするアダプトイドは止めねばならない。キュービックは、それを行うことができるほどの勇気を持った地球上の人物を知っていた。

 政府にユニフォームと星条旗シールドを返上しブラックコスチュームとなったキャプテン・アメリカは、バイクでロサンゼルスを通過しようとしていたが、彼の前にキュービックが出現した。我々は旧友だと言うキュービック。確かにキャプテン・アメリカは最初にコズミックキューブの事件に関わっており、またスクラル皇帝の邪悪な意志によりコズミックキューブが変異したシェイパー・オブ・ワールドの事件にも関わっていた。アベンジャーズのところへ行かねばと言うキャプテン・アメリカを転送するキュービック。

 ハイドロベースに出現したキャプテン・アメリカは、スプリーム・アダプトイドによって即座にキューブ内に閉じこめられた。だがキャプテン・アメリカの挑発に彼は、自分は今やスプリーム・アダプトイド、人型のコズミックキューブだと反論。だがそれすらA.I.M.の計画の延長線上でしかないと言うキャプテン・アメリカを黙らせるため、スプリーム・アダプトイドはキャップを地上に降ろし、増殖させたアダプトイドの一体を差し向けた。

 現れたアダプトイドに強烈なパンチを何発も打ち込むキャプテン・アメリカ。だがアダプトイドはキャプテン・アメリカの力と姿を吸収してキャップそっくりになり、反撃を開始した。自分と同じ力、同じ技で襲ってくる相手に、機械が男の戦う心を真似することはできないと言い、キャプテン・アメリカは戦い続ける。

 その戦いを見てドクター・ドルイドは一計を案じ、スプリーム・アダプトイドにあなたを助けることができると話しかける。俺を助けるだと、俺はすでに全能だと答えるアダプトイドに、あなたのしていることは単にプログラムされた結果なのか、それとも自分の意志なのかとドルイドは問いかける。さらに、地球を支配したあと50億ものアダプトイドに何をさせるつもりなのかと訊ねる。それは考えていなかったと言うアダプトイドに、最後には何もすることが無いのかと言い、あなたは人間の能力を取り込んで改変することができる、想像力をアップしてみろと挑発するドクター・ドルイド。アダプトイドはやってみるがうまくいかず、ドルイドが入ったキューブは弾きとばす。

 スプリーム・アダプトイドはキャプテン・アメリカは敗北したかと下を見るが、本物が勝利しているのを見てあり得ないと驚く。自分自身でキャップを倒すため、スプリーム・アダプトイドはキャプテン・アメリカの姿となり、能力の数値上、俺はお前を上回っている、だから勝つと言い攻撃する。だがキャプテン・アメリカは重要なのは精神だと言い、相手の猛攻にもひるまず戦う。お前には何もない、我々は死すらも受け入れる力がある、それは勇気だ、だがお前は違うと語るキャプテン・アメリカに、俺も死を受け入れられるぞと言って、アダプトイドは倒れた。

 彼らの前にキュービックが現れ、アベンジャーズはキューブから解放される。キュービックはアダプトイドが吸収した自分の要素を回収すると、道を誤ったこのロボットに「己に正直であれ」という言葉を残して去っていった。

 

 この当時よくあった、能力がインフレしていって能力値上は絶対勝てない超宇宙的存在となった敵に対してトンチのような問答で解決という完結編。超存在であるキュービックも、最後にことわざを言って去るというのが微妙。アベンジャーズマシンマンはキューブ内で喋っているだけで、活躍するのはキャプテン・アメリカのみ。

 この事件ではマシンマンヴィラン集団の一員としての登場だが、アベンジャーズとの初顔合わせとなった。後に一緒にネクストウェーブというチームを組むモニカ・ランボウとも初対面だが、特に会話はない。

THE AVENGERS #289

1988年 MAR

RALPH MACCHIO : SCRIPTER

JOHN BUSCEMA : BREAKDOWNS

 

 スーパーアダプトイドアベンジャーズ基地への攻撃命令を叫ぶ。スーパーロボット軍団「ヘビーメタル」は、ハイドロベースに突進していく。セントリー459号は異星人が作ったロボットで、クリー人により何世紀も前に地球に秘かに配置されていたうちの一体だ。セントリーはハイドロベースの外壁に手をかけ崩していく。マシンマンは軍の武装ロボット・プロジェクトの最後に残った一体で、彼の個人的な目的のためヘビーメタルに参加している。基地の周囲を飛ぶマシンマンテス・ワンはTotal Extermination of Super-Soldiers ONE「超人の完全な絶滅」第1号の略で、キャプテン・アメリカのような超人が第二次大戦後に国に反逆した場合に備えて計画されたロボットだ。テス・ワンの腕からビームが発射され建物が破壊されていく。リーダーのスーパーアダプトイドはA.I.M.に作られ、他者の能力を吸収する機能があり、フィクサーメンタロのパワーを得ている。アダプトイドは建物の中へ飛んでいく。

 警報が鳴り、敵ロボットの襲来を知ったアベンジャーズ。外へ駆け出すシーハルク。それに続くサブマリナーマリーナにここに残っていろと言うが、マリーナは夫と共に出撃しようと走る。その勇気に感激するネイモア。

 シーハルクは外壁を崩していたセントリーを怪力でぶん殴る。だが反撃のパンチをくらってしまい、ぶっとばされていった。セントリーは倒れたシーハルクの足を掴み、シーハルクで建物をぶん殴る。気絶してしまうシーハルク。

 基地内に侵入したアダプトイドは、中に回収されていたマッド・シンカーオウサム・アンドロイドを修理して再起動した。また敵に一機強力なロボットが加わったのだ。オウサム・アンドロイドは壁を破って出て行く。だがアダプトイドの真の目的は別にあった。彼はさらに探索を続ける。

 テス・ワンに猛烈な体当たりをかけるサブマリナー。だがこのロボットはアダマンチウムの外装を持ち、破壊されない。テス・ワンの手からのブラストをサブマリナーは飛び上がって避けた。その間にマリーナは岩を持ち上げテス・ワンに叩き込む。テス・ワンのビーム砲撃を機敏な身のこなしでかわすマリーナ。サブマリナーはテス・ワンの頭部をもぎ取れば止まるではと組みつくが振り払われる。そこへさらにオウサム・アンドロイドまでもが現れた。基地の建設のための作業員たちは逃げまどう。サブマリナーはマリーナにテス・ワンを海に誘導しろと言い、その間にオウサム・アンドロイドと戦おうとする。だがマリーナはビーム攻撃をくらってしまう。

 一方マシンマンは上空を旋回して様子を監視していた。ジョキャスタ復活のためにアダプトイドに従っていたマシンマンだが、この攻撃に疑問を持ちはじめる。この破壊活動では人命が失われかねず、ジョキャスタをあきらめることになろうとも反抗しようとマシンマンは決意する。

 この島の海洋学ウォルト・ニューエル博士は、周囲の破壊活動を止めるため、スティングレイのコスチュームを着て飛び立つ。手からの電撃でマシンマンを撃墜するスティングレイ。マシンマンは体の制御が効かず、首を伸ばした状態で墜落。着陸したスティングレイはマシンマンの伸びた首を捕まえ、マシンマンは自分は味方だと弁解するが、スティングレイの背後からマシンマンの伸びた右手が近づく。はたしてマシンマンは敵か味方か。

 その頃アダプトイドは、外の混乱に乗じて内部のコンピューターを操作し、コズミックキューブについての情報を引き出していた。ついにハイパースペース・トランスミッターにまで到達するアダプトイドだが、入力コードが判らない。そこへ、アダプトイドにとって都合の良いことに、キャプテン・マーヴルが出現した。彼女はドクター・ドルイドブラックナイトを発見し病院へ運び帰還したのだが、眼前にアダプトイドが居りデータを盗んでいるのだ。だがここで攻撃するとデータも破壊されてしまうかもしれない。まずは体を光に変えて、と考えているうちに、アダプトイドのメンタルフォースがキャプテン・マーヴルを襲った。眠らされ必要な記憶を読み取られてしまうマーヴル。アダプトイドはついに、使用者の願いをかなえるアイテム、コズミックキューブを手に入れようとしていた。

 立ち上がったシーハルクは再びセントリーと格闘戦を開始する。サブマリナーは丸太でテス・ワンの足を払って強烈なパンチを打ち込むが、頭をオウサム・アンドロイドに掴まれ背骨を逆にへし曲げられる。マリーナは夫のピンチを救うためブルドーザーでオウサム・アンドロイドに突撃するが、オウサム・アンドロイドはサブマリナーをぶん投げ、さらにブルドーザーごとマリーナもぶん投げた。だが運が良いことにマリーナは海へ墜落する。海底人であるマリーナには安全な領域だ。一安心したサブマリナーは地面に潜り、地下から飛びだしてオウサム・アンドロイドを持ち上げ、海に飛び込んだ。

 また、シーハルクとセントリーの戦いも海岸へ移っていた。椰子の木を引き抜きシーハルクにぶつけて海へ叩き込むセントリー。海へ沈められシーハルクは大ピンチだ。マリーナはセントリーの首に飛びつき海に沈める。そこへテス・ワンも近づいてきた。

 マシンマンはスティングと組んで基地内部へ突入。スティングはメインコンピューターのところへマシンマンを誘導するが、アダプトイドのマインドブラストを浴びて倒されてしまう。アダプトイドの背後からマシンマンの手が伸び、両者は組み合う。マシンマンはアダプトイドが自分の願いを聞く気がないと疑っていたが、スーパーアダプトイドはその通りだと言い、マシンマンの力も吸収しマシンマンに似た顔に変貌した。

 海中ではロボット軍団とヒーローたちの戦いが続いていた。海に入りパワーアップしたサブマリナーはオウサム・アンドロイドの首を引っこ抜いて倒した。テス・ワンは手からビームを発射しようとするが、海中でシーハルクとマリーナが足を押し、海の深場に落とした。勝利した彼らだが、基地の方から光が発せられたのを見て、そちらへ急ぐ。

 ついにアダプトイドの前にコズミックキューブが出現した。だが不意にキューブは消る。そしてアダプトイドの前に、キュービックと名乗るロボットのような超存在が出現し、我を召喚したのは誰だと訊ねる。俺だと答えたアダプトイドは、自分が究極の存在となるためにキュービックの力を吸収してそっくりに変身した! 目的を果たしたスーパーアダプトイドは、キュービックにもう用はないから去れと言い、この世界は俺のものだと笑うのだった。

 

 スーパーヒーローチーム対スーパーロボット軍団というとても燃える展開で、派手なバトルが続き盛り上がりに盛り上がる。前半なんて、どう考えてもこの戦力差はアベンジャーズ壊滅だろうと思うほどだ。

 我らがマシンマンはやっとアダプトイドに反抗してくれるが、まだヴィラン集団の裏切り者という立場だ。結局アダプトイドの野望は阻止できてないし。

 キュービックはこの号が初登場。コズミックキューブの化身か異次元の高エネルギー生命かという、正体不明の超存在だ。

THE AVENGERS #288

1988年 FEB

RALPH MACCHIO : SCRIPT

JOHN BUSCEMA : BREAKDOWNS

 

 前々号THE AVENGERS #286で、悪の発明家フィクサーが作ったヘルメットに操られた男が、オウサム・アンドロイド(マッド・シンカーが作ったロボット)を起動し、アベンジャーズと戦闘になる。

 前号#287にて、フィクサーの装備をつけた別の男が、ニック・フューリーやS.H.I.E.L.D.の敵のテレパシー能力者メンタロの姿をコピーする。実は彼は、犯罪科学集団A.I.M.に作られアベンジャーズ全員の能力をコピーしたアンドロイド、スーパーアダプトイドであることが発覚。この号のラストで、アダプトイドがクイーンズ郊外のガレージをのぞき込んでいて、マシンマンはこの男を腕を伸ばして捕らえる。だがアダプトイドはマシンマンに自分を手伝ってほしいと持ちかけ、自分はお前の求めるものを取り戻すことができる、お前の失われた愛を、と言い、マシンマンも興味を示す。

 

 スーパーアダプトイドマシンマンはテキサスの空を飛ぶ。どこまで行くんだと訊ねるマシンマンに、目的地はもうすぐだと答えるアダプトイド。

 その近くに、「外宇宙からの巨大ロボット見物場」と看板が立っている場所があった。観光客たちが立ち寄り、見物し写真を撮っていく。それは、クリー人の戦闘ロボット、セントリー459号であった(CAPTAIN MARVEL #49)。そこへ、上空からアダプトイドとマシンマンが降下してきた。逃げまどう観光客。マシンマンはセントリーを見て、これは異星人のテクノロジーで作られているぞと言うが、アダプトイドはこれまでコピーしたフィクサーの機械工学技術とメンタロのテレパシーを使い、容易に修理を進める。地元の老人がライフルを持ってきてアダプトイドを撃つが、相手がまったく動じないので唖然とする。アダプトイドは修理を終えた。巨大なセントリーが立ち上り、アダプトイドとマシンマンの後ろをついて歩き去っていく。この驚愕の事態に大慌てになる老人。

 ハイドロベース島へアベンジャーズマンションの大移送が行われ、上空でサブマリナーが指示を下していた。地上で見守るドクター・ドルイドは、彼は生まれながらのリーダーだなと評する。そこへ、飛行バイクでブラックナイトが飛来、ニュースがあると叫ぶ。キャプテン・アメリカが見つかったの?と問う女性キャプテン・マーヴルだが、ブラックナイトが持ってきたのは別のニュースだった。それは新聞の切り抜きで、セントリーの復活・逃走を報じていた。前のマッド・シンカーオウサム・アンドロイドの件と同じく、スーパーアダプトイドの仕業だ。アダプトイドはロボットを集めているらしい。キャプテン・マーヴルは体を光に変え、偵察へ向かう。

 アダプトイド、マシンマン、セントリーは、アリゾナのグランドキャニオンへ来ていた。セントリーは飛べないため、マシンマンは飛行機をハイジャックすればいいのにと提案。マシンマンは自分の望みであるジョキャスタを思い浮かべ、またロボットである自分が希望や愛を持つことができるのかと思い悩む。アダプトイドに人間のような心についての思索を語るマシンマンだが、アダプトイドには興味がないようだ。

 ハイドロベース島に作られた新アベンジャーズ基地の司令室で、ドクター・ドルイドとブラックナイトが事件を検討していた。そこへキャプテン・マーヴルが帰還する。光となってアダプトイドを探し回った彼女だが、発見できなかった。ドクター・ドルイドはスクリーンに現在破壊されているロボットの一覧を呼び出した。アダプトイドはこれらのロボットのところを目指しているかもしれない。最も可能性が高いのは、ウルトロンテス・ワンマシンマンセンチネルのところだと言うブラックナイト。彼らはサブマリナーやシーハルクを招集し会議を開く。

 ブリーフィングルームでキャプテン・マーヴルは、ドクター・ドルイドとブラックナイトはコロラド州のテス・ワンを、サブマリナーとシーハルクはワシントンD.C.のセンチネルを調査し、そしてウェストコースト・アベンジャーズへ連絡してウルトロンの調査をしてもらうと割り振りを指示。また、サブマリナーの妻マリーナには、あなたはアベンジャーズメンバーではないのでここで待機をと指示する。妻のことを勝手に決められそうになったサブマリナーは意見しようとするが、マリーナはネイモアを止め、自らそこに残ることにした。一同は出発していく。基地に残ったキャプテン・マーヴルは、行方知れずのキャプテン・アメリカのことを考え、自分は彼のように指揮できているかどうか不安に思うのだった。

 クインジェットで空軍基地へ着陸したドクター・ドルイドとブラックナイト。兵士たちに銃を向けられるが、ドクター・ドルイドはメンタルパワーを使い兵士たちを従わせる。合衆国政府の対超人プロジェクトから作られたロボット、テス・ワンがトレーラーで運ばれて来て、クインジェットに積み込まれた。二人は離陸する。

 だが突如クインジェットはコントロール不能となり落ちていく。ブラックナイトはなんとか山を避けジェットを着陸させた。だが何か3つの反応があった。突如クインジェットのキャノピーが引き剥がされた。セントリーだ。ブラックナイトはセントリーに掴まれたが、魔剣エボニーブレードでロボットの手首を切り脱出。

 一方ドクター・ドルイドは空中でアダプトイドに追われていた。幻術を使いサブマリナーとソーを突っ込ませるが、相手は幻覚だと見抜いており、二人のヒーローの像はアダプトイドをすり抜けていく。何とかキャプテン・マーヴルに連絡せねばとあせるドルイド

 セントリーの指を切って脱出したブラックナイトの側に、マシンマンが登場した。お前までアダプトイドは手に入れていたかとブラックナイトは相手の首に斬りかかるが、マシンマンは頭だけ切り離して避ける。さらに左手を飛ばして攻撃。マシンマンの頭や手に襲われ、さらにセントリーに叩かれ、ブラックナイトは気絶する。またドクター・ドルイドはアダプトイドに絞め落とされようとしていた。メンタロのテレパシー能力を得たアダプトイドは、ドルイドの精神攻撃にも耐性を持っていたのだ。ドクター・ドルイドは最後の力でキャプテン・マーヴルへ念波を送る。

 キャプテン・マーヴルはフロリダ北部でドゥームズディマンというロボットにレーザーブラストを浴びせ溶かして始末していた。キャプテン・マーヴルは光と化して飛び去るが、その数マイクロ秒後にドクター・ドルイドのメッセージが飛来した。アベンジャーズ基地へ戻ったキャプテン・マーヴルはドクター・ドルイドの声を聞いた気がしたが、神経質になりすぎていると否定してしまう。

 アダプトイドはドルイドを絞め落とし、ブラックナイトが倒れている側に放り出し、この二人を捨ててこいとマシンマンに命じる。マシンマンは二人を掴んで飛んでいった。二人の運命は?

 ハイドロベースにはサブマリナーとシーハルクが戻り、センチネルは監視体制が整っていたと報告。他の二人はと訊ねるシーハルクに、まだ戻っていないと答えるキャプテン・マーヴル

 その頃、ブラックナイトたちが乗ってきたクインジェットには、アダプトイド、マシンマン、そして機体の背にテス・ワン、セントリーが乗り、ハイドロベースに接近していた。途中で着陸し、アダプトイドは自分のつくったロボット軍団「ヘビーメタル」に侵攻を指示した!

 

 マシンマンに加え、クリーの戦闘ロボット「セントリー」、キャプテン・アメリカと戦った対超人ロボット「テス・ワン」を集めロボット軍団をつくるアダプトイド。ややマイナーなロボットばかりを集めるのが渋いなあ。マシンマンがアダプトイドに何も疑問を持たずに従っているのが困ったもんだが、これもジョキャスタを想うあまりという事なのか。

 アベンジャーズはこの時期主要メンバーが代わっており、女性キャプテン・マーヴルのモニカ・ランボウがリーダーを務めている。サブマリナーことネイモアはアベンジャーズに参加しており、またこの時期はマリーナと結婚していた。スティーブ・ロジャースはこの時期、軍の命令から離れて自由な行動を取るために、キャプテン・アメリカの資格と装備を返上しており、アベンジャーズにいなかった。

MARVEL GRAPHIC NOVEL: EMPEROR DOOM _ STARRING THE MIGHTY AVENGERS

1986年

DAVID MICHELINIE : WRITER (Concept by Mark Gruenwald, David Michelinie, and Jim Shooter)

BOB HALL : ARTIST

 

 フランス領ポリネシアの都市パペエテでは、紫色の肌をした一人の男が、将軍や市長を顎で使い、陽気に楽しんでいた。だがこの男ゼベディア・キルグレイブに声をかける者がいた。その者は怖いもの知らずのキルグレイブの襟を掴んで持ち上げ、従わせる。

 雨のマンハッタンを、帽子にトレンチコートで身を包んだ一人の男が、濡れるのにもかまわずゆっくりと歩いていた。彼にとって水の中にいるのは生まれて以来普通の事なのだ。彼はかつて王と呼ばれた男。警官はこの男の足から小さな翼がはえているのを見て、S.W.A.T.チームの出動を要請する。男はレストランの中へと入っていった。

 店員がこの男にご予約はございますかと訊ねる。予約はないというこの男を止めようとする店員だが、その紳士は私の客だと声がし、同時にブラストが撃ち込まれ男のトレンチコートを焼いた。ネイモア・ザ・サブマリナーの正体を現したこの男は怒るが、レストランで待っていたのが旧知のドクター・ドゥームであるのを知り、席につく。ドクター・ドゥームはネイモアに、サイコ・プリズムという紫色の宝石の形をしたデバイスを見せる。ドゥームはこれに、人の意志を操るフェロモンを出すヴィランパープルマンことゼベディア・キルグレイブの髪の毛が入っており、その精神操作能力を使うことができると説明する。それでどういう計画を立てたと訊ねるネイモアに、今はヨーロッパの小国ラトヴェリアを治める自分だが、この力で世界を支配するのだと答えるドクター・ドゥーム。

 席を立つ二人に店員が声をかけるが、ドゥームの宝石で操られており、何も食べず金も払わない二人を快く見送る。店の外には警察の特殊部隊が待ち受けていたが、これもドゥームに操られ二人を見逃す。ドクター・ドゥームはネイモアに協力を要請し、自分が世界を征服した暁には、ネイモアが何十年も求めてきた海の完全な自治権を認めると持ちかける。と、ドゥームは突然ネイモアに建物の影に隠れるように言う。上空をアベンジャーズのアンドロイドヒーロー、ビジョンが通過していった。ドゥームの宝石は人間を従わせることができるが、ロボットには効力がない事にネイモアは気付く。ドゥームはそのため、3人のロボットに制御ディスクを取り付けろと言い、自分は大型のプリズムを製作していると言って、ディスクとプリズムをネイモアに渡す。この計画に同意したネイモアは、その二つを受け取りドゥームと握手を交わした。

 スタントマンのサイモン・ウィリアムズは、映画撮影中だった。手榴弾を鉄カブトで押さえるシーンで吹き飛ばされ、服はボロボロになるが、ワンダーマンとしての能力を持つ彼には傷一つない。

 撮影を終え、車でウェストコースト・アベンジャーズの本部の屋敷へ戻ってきたワンダーマン。女性ヒーローのモッキンバードが、ホークアイと一緒にピザを食べるんだけどあなたもどう?と声をかけるが、自分の変異した体に食事は必要ないんだと応えるワンダーマン。ホークアイは吊したリンゴを矢で射抜く練習中だったが、モッキンバードが来たのをみて抱き合いキスする。ワンダーマンは庭で読書中のティグラに声をかけ、屋敷に入っていった。中ではトニー・スタークが待っていて、きみの体を構成しているエネルギーについて調べさせてくれと言われ、ワンダーマンは服を脱いで、トニーが製作したタンクの中に入った。

 一方、東海岸アベンジャーズ本部では、執事のエドウィンジャービスがビジョンに来客を案内してきた。その来客が、海底人類で地上の人間とは敵対しているサブマリナーであるのに驚き、他のメンバーに知らせていないのかとビジョンはジャービスに言うが、何故かジャービスは何事もなかったかのように退出してしまった。サブマリナーはディスクを出しビジョンに取り付けようとするが、ビジョンは体の密度を雲のようにうすくして非実体化し、サブマリナーの手はビジョンの体を突き抜けてしまう。さらに、拳をダイヤモンドなみの硬度に変えてパンチを打ち込むビジョン。だがサブマリナーはそれを避け、タイタン人のアベンジャーズメンバー、スターフォックスと、ビジョンの妻でミュータントの魔女スカーレット・ウィッチを部屋へ呼び入れ、スターフォックスにスカーレット・ウィッチの首に手をかけろと命じる。慌てるビジョン。人質を取ったサブマリナーはビジョンに動くなと言い、ビジョンの額にディスクを張り付けた。サブマリナーはビジョンに踊れと命じ、制御ディスクの力でビジョンは命令に従い踊り出す。ネイモアはこの記憶は回路から消去しておけと命じ、その場を去っていった。

 カリブ海のとある島に、垂直離着陸機が降下してきた。機から降りたドクター・ドゥームは警備ロボットに出迎えられ、チタニウムの扉の奥へ進む。海中に設置されたガラス張りの部屋があり、そこに巨大なサイコ・プリズムが設置され、中にはパープルマン本人が入れられていた。この屈辱はいつか返すぞと怒るパープルマン。ドクター・ドゥームはその金属のマスクの奥で笑うのだった。

 カリフォルニアのウェストコースト・アベンジャーズ本部ではホークアイモッキンバード、アイアンマンが食事をしていたが、そこへティグラがあわててやって来て、モニターを示す。そこには東海岸アベンジャーズのビジョンの部屋が映っており、サブマリナーが額になにか付けたかと思うとビジョンが踊り出すという異常事態が起こっていた。驚きつつ、一体どうしてこんな事になっているのかわからないホークアイたち。

 一方、ギアーズ・ガービンのガレージでは、ガービンがマシンマンの肩にディスクを貼っていた。そこへ第三の人物が現れ、マシンマンに回れと命じる。制御ディスクの力でマシンマンは、伸ばした手を軸に回転し続ける。やって来た男はネイモアで、ガービンを操りマシンマンにディスクを取り付けさせたのだ。

 ドゥームの島では、巨大サイコ・プリズムの中に閉じ込められたパープルマンことゼベディア・キルグレイブが、ドクター・ドゥームを罵倒していた。人を操るこの力は俺のものだ、お前はこの小賢しい機械装置がなければ俺の力を使えない、お前は支配者には値しないんだとわめくキルグレイブ。その言葉に、ドゥームは自分もプリズムの中へ入る。自分はこのマスクでお前の力を遮っていると言うドゥームは、鉄仮面を外す。キルグレイブはチャンスとばかりに、俺を解放しろ、逆立ちしろ、ぴょんぴょん跳べ、自殺しろと立て続けにドゥームに命令するが、ドゥームは動じない。驚愕するキルグレイブ。誰も自分の力には逆らえないはずだ。ドクター・ドゥームは、それで誰が支配者にふさわしいかねと問い返すのだった。

 ホークアイとアイアンマンはジェット機を用意し出撃準備を進めていた。アイアンマンは実験中のワンダーマンを置いていくと言う。モッキンバードとティグラがフライトデッキに入ってきて、ある島が最近ラトヴェリアの金で買収されたという情報を持ってきた。ネイモアの裏にはドクター・ドゥームがいる可能性がある。ウェストコースト・アベンジャーズは発進する。

 プリズムから出たドクター・ドゥームに部下が呼びかけ、アベンジャーズ西海岸チームの基地から飛行物体が接近中だと知らせた。ドゥームは即座に迎撃態勢を命じる。

 島に着陸したアベンジャーズ。アイアンマンはアーマーのセンサーで背後に動くものを察知。地面が開き、レーザー砲付き金属触手が出現した。ホークアイの弓とアイアンマンのリパルサー光線がこれを撃破。だが続いて十数体の警備ロボットが向かってきた。

 シカゴにある見捨てられた廃工場。そこはアダマンチウムのロボット、ウルトロンの秘密基地となっていた。ウルトロンはサブマリナーの接近に気付き、手からのブラストをくらわせる。だがサブマリナーはその程度ではまいらず、人間に似た機械の化け物であるウルトロンには嫌悪を感じると言い、組みついてディスクを張り付ける。サブマリナーはウルトロンにひざまずけと命じ、ウルトロンがその通りにするのを満足そうにながめるのだった。

 ドゥームはスクリーンで警備ロボットとアベンジャーズの戦いを見ていたが、部下の報告に驚喜する。モッキンバードの蹴りとアイアンマンのリパルサー光線が警備ロボットを倒していき、ホークアイはロープアローでロボットたちをまとめて縛りつける。ティグラは野獣のような動きでロボットにキックをくらわせる。だが警備ロボットたちの次の動きを見てホークアイは驚く。ロボットたちは一列に並び、アベンジャーズを扉まで迎える道を作るのだった。

 一同は扉の中へ入り、ドクター・ドゥームと対面。ドゥームは、そこで我が究極の勝利を目撃せよ、我が人生最大の発明がついに完成するところだと言い、レバーを入れた。中にパープルマンを入れた巨大サイコ・プリズムが起動し、その影響が地球全体へ広がっていく。ホークアイたちは、ここに何をしに来たのだろうと言い出し、ドゥームに挨拶して去っていった。

 2日後、ドクター・ドゥームは国連総会に出席。この混沌とした地球の状況を改善するには、一人のリーダーを選ぶしかない、地球の皇帝をだと演説し、満場一致で地球皇帝に選出される。世界の支配者となったドゥームは、側にいたネイモアにもうお前の役目は終わったと言い放つ。約束を違えられたネイモアは怒り、今度はサイコ・プリズムでお前を操ってやると小さい宝石を使おうとする。だがそれは今や巨大サイコ・プリズムの増幅装置となっており、ネイモアまでもドゥームに従ってしまう。ドゥームは支配者としてホワイトハウスへと向かった。

 ドゥーム皇帝という単一の意志に支配された世界には、戦乱のない平和が訪れていた。アフガニスタンからはロシア軍が撤退し、エチオピアの人々は農業に勤しみ、南アフリカでは黒人が代表者となる。犯罪や飢餓は減少し生産性が高まり、軍隊は必要最小限を残して解体され始めた。

 数週間後、トニー・スタークが作ったタンクの蓋が開き、ワンダーマンが解放された。そこには誰もおらず部屋が真っ暗で、何かあったのだろうかと思うサイモン。彼はトニー・スタークに声をかけるが、トニーは皇帝の専用機の設計をしたんだとにこやかに答える。皇帝とは何だ?と思うサイモン。

 屋敷のロビーへ出てみると、キャプテン・アメリカワスプが来ており、なぜか本部の壁をキャンバスに変え絵を仕上げていた。皇帝の決定だよとにこやかに言うキャプテン・アメリカにとまどいつつ、ワンダーマンは次にティグラのところへ行き事情を聞こうとする。だがティグラも忙しいのよと言って出ていってしまった。と、テレビでドクター・ドゥームがプエルトリコの独立を認めたというニュースが報じられ、街頭パレードをしているドゥームの姿を見て、ワンダーマンは驚く。あわててキャプテン・アメリカやワスプに奴を止めに行こうと言うワンダーマン。だが二人は逆に唖然とし、キャプテン・アメリカホワイトハウスへのホットラインに通報する。

 ワシントンD.C.では、ホワイトハウスの執務室にドクター・ドゥームが座っており、自分の支配は完璧で戦争や飢餓が無くなり人々は満足しているが、彼自身はこの現状に奇妙な不満を感じていた。そこへキャプテン・アメリカから通報が入る。ワンダーマンについて調べたドゥームは、サイモン・ウィリアムズが呼吸をしていない事を知り、興味を覚え、キャプテン・アメリカに彼を阻止せよと命じる。

 だがワンダーマンは事情が判らないまま抵抗を開始。キャプテン・アメリカをぶっとばし、グランドピアノをホークアイたちに投げつけて駆けだし、警報を聞いてアーマーを着けながら走るトニー・スタークを殴りつけて、ホークアイのスカイサイクルに乗り逃走した。

 街に出たワンダーマンだが、このニュースはすでにテレビで報道されており、民衆は物を投げてワンダーマンを落とし、殴り始める。ワンダーマンは地面をぶち割り下水道へ逃亡。何が起きているのかわからないサイモンは困惑する。撮影所に侵入したサイモンはメーキャップで別人に変装。

 世界を手中におさめたドゥーム皇帝だが、その心中は複雑であった。自分が目指したのは征服者であって管理者ではない、勝利を目指す戦いは気高いが、挑戦を受けずに得た勝利に何の価値があろうかと疑問を持ってしまうドゥーム。

 変装したサイモン・ウィリアムズは郊外を歩きながら、ドゥームによってうまく動かされている地球の現状に手を下すべきなのかと迷っていた。林の中の小屋で、駆けてきた犬にじゃれつかれ、サイモンは盲目の女性エレン・バーネスと出会う。ハル・カヌットという偽名を名乗ったサイモンは朝食に誘われる。エレンはラジカセでモーツァルトを聞いていた。彼女との会話の中で、たとえ皇帝が繁栄をもたらしていても、自分の人生でどう適所を見つけるのは別問題よという言葉を聞き、サイモンは進むべき道を得る。エレンが落としたリンゴがボートの下に転がっていったが、サイモンはボートを片手で持ち上げリンゴをエレンに返す。盲目のエレンには何が起きたのか判らない。リンゴを受け取りながら、モーツァルトも波乱の人生を送ったけれど、もし彼があきらめてしまっていたら、音楽を書いていなかったでしょう、それは世界の損失ねと言う。サイモンは「世界の損失」と戦うための決意を固めるのだった。

 アベンジャーズ基地へ侵入したワンダーマンはコンピューターを調べ、ビジョンのもとへ現れた時にネイモアが持っていた宝石に入っているのが、パープルマンの髪の毛である事を突き止める。パープルマンについて調べると、デアデビルキングピンが強い意志力でパープルマンの影響を脱したと記されていた。ワンダーマンは行動を開始する。

 訓練中のキャプテン・アメリカのところへやって来たワンダーマン。キャプテン・アメリカはシールドを投げつけてきて、第一投はワンダーマンの後頭部を直撃する。だが二投目を受け止めたワンダーマンはシールドを投げ返し、それを避けたキャプテン・アメリカを殴りつけ、首根っこを掴み、これを見ろと無理矢理モニターを見せる。画面には、これまでドクター・ドゥームがファンタスティック・フォーアベンジャーズと敵対してきた記録が流れ、ドゥームの手がキャプテン・アメリカの首を絞めている場面が映った。混乱するキャプテン・アメリカだが、ついに精神支配を脱し自分を取り戻す。

 やっと味方を得たワンダーマン。キャプテン・アメリカホークアイ、ワスプ、アイアンマンの3人に、皇帝の作った映像だと言ってうまくモニターの前に座らせ、同様の映像を見せた。ホークアイとワスプはすぐに精神操作が解けたが、トニー・スタークはショックを受けているようだ。

 彼らはクインジェットで出撃しようとするが、ホークアイの姿が見えず探しにいく。部屋から廊下へモッキンバードの戦闘棒がとんできた。中へ入ると、ホークアイが自分の妻モッキンバードをノックアウトしていた。精神操作されたモッキンバードはドゥームへ連絡してしまい、仕方なくホークアイは妻を倒したのだ。5人のアベンジャーはクインジェットに乗り出撃する。

 ワシントンにいたドクター・ドゥームは、アベンジャーズがサイコ・プリズムを狙うと考え、サブマリナーを従えヘリに乗り込む。ピンチにもかかわらずドゥームはなぜか生きる実感を得ていた。

 クインジェットに乗りドゥームの島へ向かうアベンジャーズ。だが一足早く島へたどり着いていたドゥームは島の防衛システムで砲撃し、クインジェットは撃墜されてしまった。手放しに喜ぶ部下たちにいらだつドゥーム。これは擬装で、アベンジャーズは当然脱出しているはずだ。

 アイアンマンがホークアイを、ワンダーマンがキャプテン・アメリカを抱えて、5人は無事着地していた。だが次の出迎えが現れる。二機の巨大戦車と一機の四脚戦車が砲撃してきた。周囲には警備ロボット軍団も隊列を組んで迫ってくる。ワンダーマンは巨大戦車に突撃して操縦席をぶち割った。キャプテン・アメリカはシールドを投げ警備ロボット数体の首をとばし、残ったロボットと格闘戦を繰り広げる。ホークアイは弓で巨大戦車を狙うが、四脚戦車が吹き出したガスを浴びてしまう。アイアンマンはまだドゥーム皇帝に従うかどうか迷いを持っていたが、四脚戦車に踏みつぶされそうになるホークアイを見て、ドゥームは敵だ、そしてホークアイは友人だとようやく自分を取り戻し、リパルサー光線で四脚戦車を吹きとばす。ワンダーマンは残り一機の巨大戦車を持ち上げてぶん投げ、警備ロボット軍団にぶつけて一掃した。ドゥームはネイモアにサイコ・プリズムの防衛を命じる。

 昆虫サイズになったワスプは排水口から内部へ潜入し、手からのビームをサイコ・プリズムに浴びせる。ネイモアは警備ロボットに銃撃を命じるが、ワスプはロボットを撃破し、ネイモアが首からさげていた宝石を破壊する。ワスプを掴んで捕らえるネイモア。そこへ他のアベンジャーが突入してきたが、ネイモアが握っているワスプを見て手が出せない。ワスプはネイモアに、海へ帰らないの?と聞き、ネイモアはそれは皇帝に禁じられていると答える。水はネイモアを強力にしていまうため彼と戦う時には避けるべきだが、彼の意志は弱くなっていると気付いたワスプはあえて部屋のガラスをビームで割った。海水が流れ込んできて、それを浴びたネイモアは自分を取り戻す。

 モニターで見ていたドゥームは、こんな時のためにプリズム室に設置しておいた神経ガスのスイッチに手をかけるが、皇帝に様々なことを要求してくる声を聞いて、押すのをためらい、これも運命だと押すのを止めた。サブマリナーは 巨大サイコ・プリズムを叩き割った。宝石と共に、ドゥームの支配した世界も崩壊し、元の争いのある世界に戻っていく…。

 ネイモアは犠牲となったゼベディア・キルグレイブを抱えて装置から降ろす。キャプテン・アメリカはドゥームを追うが、ドゥームは脱出ジェットで飛び去っていった。サブマリナーも海へ帰っていく。

 ヘリコプターで島を離れるアベンジャーズは、イラン・イラク戦争の再開や、アメリカがドゥームの支配に協力したと主張してロシアが国連に抗議を提出したというニュースを聞く。キャプテン・アメリカは、世界は完全ではない、だが人々は自分自身の選択する自由を持たなければならないと言う。どちらが良かったのか迷いがあるホークアイだが、自分たちは現状を受け入れなければならないと答えるのだった。

 

 MARVEL GRAPHIC NOVELは、大判、良い紙質、多いページ数で発行される豪華版のコミックレーベルで、通常より大きいスケールで一話完結の話をじっくり楽しむことができる。この話はドクター・ドゥームが世界の皇帝になってしまうという特別編だ。

 ドゥームが世界の支配者になる力をもたらすのは、DAREDEVIL #4に初登場という長い歴史を持つがヴィランとしては小物、だがその能力が良く考えたら凄いよなという、パープルマンだ。このへんの渋いチョイスが素晴らしい。

 ドクター・ドゥームが手を組むのは、Fantastic Four #6以来の歴史が長いコンビである、ネイモア・ザ・サブマリナーだ。今回はあっさり裏切られ配下にされてしまうが、それもまた彼ららしい。

 ヒーロー側の主役となるのは、ワンダーマンことサイモン・ウィリアムズ。体がイオンエネルギーで変質しており、食事や呼吸の必要がないという特性が、今回のポイントとなる。たった一人で反抗する意味を盲目の女性との出会いで見つけるのも、良い展開だ。

 この時期アベンジャーズは、東海岸チームと西海岸チームに分裂していた。この話は西海岸のウェストコースト・アベンジャーズがメインだが、キャプテン・アメリカとワスプが合流してきて、どちらにも見せ場がある。

 ネイモアはドクター・ドゥームの依頼で3人のロボットを無力化する。その中に我らがマシンマンも入っていて、ドゥームがマシンマンもマークしていたことが判る。マシンマンの登場は、ネイモアに操られる1ページと、全ての崩壊を描く1コマのみだが。

 ドゥームがパープルマンと対面し、意思の力だけで相手の能力が効かないことを示してみせるシーンは、大物ヴィランであるドクター・ドゥームの格の高さを見せてくれて嬉しいところだ。

 あっさり操られてしまうウェストコースト・アベンジャーズだが、アイアンマンのアーマーは気密服ではないのか。やはり通常の呼吸は口の部分から空気を取り込んでいるのか。

 ドゥーム皇帝の支配で平和になる世界。南アフリカ共和国の全人種参加選挙は1994年まで行われなかったので、この時点での黒人大統領はあり得ない事だった。世界平和を考えるとこちらの方が理想的な世界ではあるのだが、誰もがただ自分に従う世界にドゥーム本人が満足していないのが、いかにも彼らしい。

 アベンジャーズの反撃は、巨大戦車との戦いが大判ページで描かれ迫力がある。ドゥームは最後は、自分でこの支配を手放すという、気位の高い選択をして去っていく。各所に見応えのある、充実の内容のコミックだ。

MACHINE MAN Vol.2 #4

1985年 JAN

TOM DEFALCO -- PLOT/SCRIPT

BARRY WINDSOR-SMITH -- PLOT/ART/COLOR

 

 サンセット・ベインのところへ行こうとするマシンマンを、ギアーズ・ガービンをはじめ仲間たちは無謀だと止める。だがハッスルだけは賛成する。自分もあの女に捕まり、ジョキャスタというロボットが止めなかったら酷い目にあっていたわというハッスル。マシンマンはジョキャスタがマダム・ベインのところに居ることを知り、さらに敵陣へ乗り込む決意を固めて出て行く。ハッスルは他の皆がマシンマン支援に動こうとしないのに驚く。ブレインは、ベイントロニクスの本部の位置すらわからないことを指摘。

 マシンマンは外へ出て、アイアンマン2020との戦いの際に切り離した右腕を回収し再び装着。その近くで、敵が乗っていた飛行スクーターの通信機が生きているのを発見。

 ガービンたちは、飛行バイクが飛び立つ爆音に驚く。外へ出てみると、すでにマシンマンが飛び立っていた。一同はその近くで敵の通信機を発見し、マシンマンがベイントロニクス本部の位置をつかんだ事を知る。ガービンもマシンマンを助ける意志を固め、一同は他の飛行バイクのところへ駆ける。

 街の上空を飛んでいくマシンマン。彼が目指すベイントロニクス本部では、アイアンマン2020が機体を整備しエネルギーを充電していた。そこへサンセット・ベインから通信が入った。あなたのサンクチュアリ攻略が失敗したから報復が来たと、マシンマン襲来を伝えるサンセット。彼女はドクター・サイクローブに命じ、ロボット兵にマシンマンを迎撃させる。

 飛行バイクをビルの屋上に着陸させたマシンマンだが、ロボット兵軍団のライフルが乱射される。飛行バイクを盾にし防御するマシンマン。そこへスリックが急降下、乗ってきた飛行バイクから飛び降りバイクをロボット兵軍団に突っ込ませた。スリックを受け止めるマシンマン。他のミッドナイト・レッカーズも合流してきた。マシンマンはスリックに無益な破壊はやめろと言う。だがガービンが、お前はサンセット・ベインが迎えてくれるとでも思ったのか、これは戦争なんだと諭す。仲間がロボット兵を食い止めている間に、マシンマンは再び飛行バイクに乗り、ビルの側面のガラスをぶち破って司令室に突入!

 マシンマンは宿敵サンセット・ベインに対峙し、お前のために何十人もの人間が死んだ、戦いをやめろと言う。サンセットはドクター・サイクローブに屋上での戦闘停止を命じる。だがその直後、アーノ・スタークマシンマンを殺すのよと指示。司令室内でアイアンマン2020とマシンマンの壮絶な殴り合いが始まった。

 サンセット・ベインはその間にジョキャスタに通信し、屋上での戦いを再開させレッカーズを消し去りなさいと命じる。躊躇するジョキャスタに命令に従いなさいと指示し、サンセットはジョキャスタの横にいるブリックマンに、私たちの敵が今夜破壊されるのよと言う。だがもしアイアンマンが負けたらどうなると言うブリックマンに、酒はやめなさいとだけサンセットは答える。

 アイアンマン2020のパンチが何度もマシンマンに打ち込まれる。マシンマンは巴投げでアイアンマン2020をコンピューター・コンソールに叩きつけ逆転。私は戦いたい訳じゃない、狂気を終わらせるため話をしたいんだと言いながら、アイアンマン2020を殴り続ける。このままではマシンマンが勝ってしまうと、サンセット・ベインは切れたケーブルを持ち、マシンマンの後頭部に押し当てた。スパークで装甲が吹きとび内部メカがむきだしになり、倒れるマシンマン。サンセットはアーノ・スタークに、あんたたちが戦っている間に屋上の戦闘を再開させたわ、あんたも行ってミッドナイト・レッカーズを殲滅しなさいと命じる。それを聞いて立ち上がるマシンマン。その姿をスクリーンで見て、なぜそんな状態で動けるのと驚くジョキャスタ。その横で絶望のあまり顔を手でおおいながら、奴は制止不能なんだとわめくブリックマン。

 ぼろぼろの状態ながら、アイアンマン2020にパンチを打ち込み、優勢なマシンマン。ボディへ一撃をくらわし、アイアンマンを抱え上げ、私はもうあなたを殺すことさえできる、だがそうはしない、私はあなたより良い人間だからだ!と叫び、マシンマンはアイアンマン2020をコンソールに叩きつけた! 決着だ。マシンマンは再びサンセットと対峙する。ジョキャスタはロボット兵に停戦を指示し、マシンマンの元へ走る。敗北を知ったブリックマンはピストルを取り出し、こめかみに当て自分に始末をつけた。マシンマンは手を伸ばしてパンチを打ち込みながらサンセットを追いつめるが、そこへジョキャスタが駆けつけ、マシンマンを止めた。

 屋上ではロボット兵の動きが止まり、戦闘が終わっていた。そこへ警察の飛行パトカーが飛来し、一同を逮捕すると言う。レッカーズたちはバイクで飛び去り、マシンマンのところへ合流していく。

 敗北し、倒れたサンセット・ベインは、私にどうしろと言うのと訊ねる。マシンマンは、もう私やミッドナイト・レッカーズに関わるのをやめろと言う。マシンマンを心底恐れるベイン。そこへレッカーズがバイクで飛来し、警察が来ていると知らせる。マシンマンは、ベイントロニクスとレッカーズの戦いは終わったと仲間たちに言う。ハッスルはママBがまだ生きていると銃を向けるが、ジョキャスタが間に割って入り、マシンマンもサンセットは戦いをやめると言ったとハッスルを止める。こいつが嘘ついてたらどうするのと言うハッスル。マシンマンはサンセットに、もし約束を破れはどうなるかわかっているなと言い、敗北に打ちひしがれたサンセットは今後の関与を否定する。ジョキャスタはサンセットが約束を守るか私が見ているわと言う。自分と一緒に行かないことを選んだジョキャスタに驚くマシンマン。彼女には自分が必要なのと答えるジョキャスタ。警察の飛行パトカーが飛来しライトで照らされる中、マシンマンはジョキャスタと別れ、仲間たちと共に飛び立つ。ジョキャスタはマシンマンたちの逃亡を助けるため、飛行パトカーにジャミングをかける。飛び立った一同は、朝日に向かって飛んでいくのだった。

 

 全4話のマシンマンのセカンドシリーズ完結。アイアンマン2020との格闘戦が、敵基地のスクリーンの様々な映像をバックに繰り広げられ、とんでもなく盛り上がる。この4冊の仕上げと彩色は、#4ではアートも担当したバリー・ウィンザー=スミス(日本では日本語版が刊行されたWEAPON Xや、マーヴルXの8号に掲載されたUNCANNY X-MEN #205のアーティストとして有名)が手がけていて、カラフルでありつつもくすんだ色彩に仕上がっていて魅力的だ。

MACHINE MAN Vol.2 #3

1984年 DEC

TOM DEFALCO : SCRIPT

HERB TRIMPE : BREAKDOWNS

 

 警備艇を奪い脱出したハッスルは、艇に装備された機関砲を撃ち、追っ手の警備艇と戦う。この警備艇には何らかの発信装置が組み込まれているだろうと疑うハッスル。敵の警備艇を撃墜しながら、ママBことサンセット・ベインの尋問が手ぬるかったことに疑問を持つ。後ろから追撃を受けるが、森の中に飛び込んでやり過ごし、逆襲。最後の追っ手を撃ち落とし、逃走を続ける。

 もちろんその模様はサンセット・ベインたちに監視されていた。マッドサイエンティストドクター・サイクローブは、ハッスルの拷問の際に彼女の耳に衛星通信によるモニター装置を仕込んだと言う。ミッドナイト・レッカーズの連中などどうでもいい、マシンマンこそ真の問題だと文句を言うブリックマンは、コップに酒を注ごうとするが、手が震えてこぼしそうになる。ブリックマンから 酒を取り上げたアーノ・スタークは、自分に酒を注ぐ。自分はオリジナルのアイアンマンが死んだ後にアーマーを買い取ったと語るこの男は、ミッドナイト・レッカーズの伝説的な砦であるサンクチュアリと、マシンマンの発見が目前という祝いとして、ドクター・サイクローブと乾杯する。彼らの向こうに女性ロボットのジョキャスタがたたずんでいた。昔マシンマンを愛したことのある彼女だが、今はそれを胸に秘めるのだった。

 カナダ北部の森で捕らえられたブレインたちは、網に入れられたまま飛行バイクに引かれて運ばれていた。マシンマンジージーうるさいと文句を言うスイフト。それは僕が付けた機能妨害バッジのせいだと答えるブレイン。スリックは飛行バイクの男に、あんたたちもレッカーズじゃねえのかと訊ねる。バイクの男は、俺たちはそうだがお前らがベイントロニクスの奴らじゃないと決まってないからなと答え、俺たちのリーダー、古株のレッカー自身が判断すると言う。雲の中を彼らは運ばれていき、空中に浮かぶ巨大な都市サンクチュアリーに着陸する。

 バイクの男ボーンズは、俺は古株のレッカーに報告するからこいつらを連れていけと仲間に言い、ブレインたちは一室に入れられた。ハッスルを見捨ててきたことについてブレインに当たるスイフト。悩むブレイン。一方シャワーを浴び顔のペイントを塗り直してくつろぐスリック。マシンマンは機能妨害バッジのせいでヘンテコな言動をしていたが、ブレインはバッジを外してやる。正気に戻り、私に何をしたんだとブレインにくってかかるマシンマン。自分の体は回路や鋼鉄で出来ているかもしれないが、人間と同じように感じ、感情があるんだぞと文句を言うマシンマン。詫びる一同。

 そこへ、こりゃパーティータイムだなと言いながら一人の男が部屋へ入ってきた。ここのリーダー、古株のレッカーであるこの男にマシンマンは見覚えがあった。ギアーズ・ガービン!と驚きの声を上げるマシンマン

 スターク・エンタープライゼス社では、ブリックマン大使がマシンマン復活の不安から飲んだくれていた。それをうっとおしそうに見るサンセット・ベイン。そこへジョキャスタが入ってきて、スターク氏の襲撃チームの準備が整いましたと報告。ベインはジョキャスタに、ブリックマン大使をお送りしてと命じる。

 サンクチュアリーではお祭り騒ぎが行われていた。パーティー会場でくつろぐスリック。バイクで彼らをここまで運んだモヒカンの男ボーンズが、さっきは悪かったと詫びを入れてきて、スリックも気にするなと返す。スイフトは踊りに誘われるが、ブレインの落ち込む姿を見て断る。

 マシンマンとガービンは二人きりでテラスに出て話す。これまで何があったのかと訊ねるマシンマンガービンは、もう40年ぐらい前の話だと言って語り始めた。ガービンのガレージにはそれまで通り、マシンマンピーター・スパルディングが出入りしていた。彼らはジョキャスタの電子頭脳を再起動させようと取り組んでいた。ある日ガービンがガレージに戻ってみると、煙が上がっており、マシンマンとジョキャスタは連れ去られて、スパルディングが死んでいた。ガービンは言う、俺は奴を生意気で気弱な野郎だと思ってた、だが違っていた、ガレージには争った跡があった、ピーターは必死の抵抗の末殺されたんだ、と。それから数年して、サンセット・ベインがベイントロニクス社を起こしロボット産業を独占して社会を牛耳るようになった。あの女がマシンマンを手に入れたのは明白だったと物語るギアーズ・ガービン。彼はそれからミッドナイト・レッカーズを組織し、この再会を待っていたのだった。長い間、絶望せずに。

 サンクチュアリーにさらに来訪者があった。その顔を見て、ブレインは驚き慌てて駆け寄る。それはハッスルだった。再会する二人。

 だがそこへ敵襲の警報が鳴り響く。浮遊要塞サンクチュアリーを目がけ、アイアンマン2020ことアーノ・スタークと、その配下の飛行スクーターに乗ったアイアン・ボット兵団が襲来していた。なんでここが発見されたんだ、どんなスキャナーでも撹乱する雲に隠されているのにと驚きつつも、飛行バイクで迎撃に出る一同。だがアイアンマン2020は指からのレーザーでたやすく1機目を撃墜する。

 スリックはボーンズと共に飛行バイクで出撃。ハッスルも、なぜここが発見された?、私は奴らをまいたのにと考えながら、飛行バイクを無理矢理借りて発進していく。マシンマンはガービンに彼らを止めろと言うが、レッカーズはこの時のために組織されたのだ。ガービン自身も飛行バイクに乗り飛びだしていく。

 アイアンマン2020は配下の部隊を前進させる。サンクチュアリーに上陸した敵兵を、スイフトが得意の跳び蹴りで倒す。アイアンマン2020はマシンマンを発見し、腰に装備していた投擲武器を投げつける。三方にカーブした刃がついたその武器は、マシンマンの背中に突き刺さる。倒れたマシンマンに突進し、アイアンマン2020は拳を叩きつける。だがマシンマンもバックブローでアイアンマン2020をぶっとばした。アイアンマン2020は指からのレーザーを、続いて胸からのユニビームをマシンマンに浴びせた。マシンマンは指のマグナム弾で天井を撃ち、瓦礫を落とす。だがマシンマン2020は電磁フォース・フィールドで防御してしまった。

 アイアン・ボットはサンクチュアリーに上陸し、壁を銃で破り内部を爆破しはじめた。サンクチュアリーから煙が上がり、次第に落ち始める。揺れる床。スイフトは倒れ、何が起きたのと驚く。反重力ジェネレーターがやられたんだ、制御コンピューターを調整し体勢を立て直さなければ、皆が地面に叩きつけられて死ぬと、ブレインは内部へ駆け込む。

 アイアンマン2020の指レーザーをくらいながらもマシンマンは戦い続ける。マシンマンの右腕が発射され、腕が伸びてアイアンマン2020に巻き付き、アンチ・マグネティック・ヌル・フィールドを形成。このアーマーはそれに対抗できると言うアイアンマン2020だが、この反磁力無効化フィールドを中和するにはエネルギーをフルに使う必要があり、一時的に無力化される。

 その間にマシンマンサンクチュアリー内部へ急ぐ。ブレインがなんとかコンピューターを調整しようとしていたが、手が付けられない状態になっていた。マシンマンは指をコネクターに接続し、サンクチュアリーのコンピューター・コアに直接リンクして制御しようとする。エネルギーのバックラッシュが起こり、コネクターから火花が散り、しかもそれがどんどん強くなっていく。マシンマンは倒れたが、なんとかコンピューターは復旧し、サンクチュアリーは再び姿勢を回復した。一時退避しようと言うガービンに、マシンマンはサンセット・ベインへの逆襲するのだと反論。今度はこちらの番だ!

 

 ギアーズ・ガービン再登場! 未来でミッドナイト・レッカーズを設立し指導者となっているという格好いい役回りだ。一方、マシンマンの創作者ジャック・カービーマシンマンの友人として登場させたピーター・スパルディングは死んだことにされている。ひどいよデファルコ先生。アイアンマン2020とマシンマンの対決は一進一退で手に汗握る。

MACHINE MAN Vol.2 #2

1984年 NOV

TOM DEFALCO : SCRIPT

HERB TRIMPE : BREAKDOWNS

 

 2020年のマンハッタンのミッドタウンを、飛行機械で逃走するミッドナイト・レッカーズの4人組マシンマン。後ろからはベイントロニクスの追っ手、C-10ロボットが操る警備艇が迫る。これまでにない執拗な追撃に、自分たちが発掘したこのマシンマンというロボットとは何だろうかという疑問がよぎる。ハッスルは敵の警備艇を銃撃。マシンマンは腕を伸ばしてロボット兵が乗った警備艇を撃墜したり、スリックスイフトを掴んで空へ退避し自分たちの乗っていた飛行機械を警備艇にぶつけたり。追っ手を片付けた彼らは、地下鉄通路へ逃げ込む。

 ベイントロニクス社本部ではマダム・サンセット・ベインが、パトロール隊がマシンマンを発見しつつも取り逃がしたことに歯噛みしていた。ジョキャスタは彼を行かせてあげてと頼むが、サンセットはマシンマンが生きているとこちらが危ないと言い返す。彼女は30年前にマシンマンを封印していたのだ。そこへいきなり、今すぐ話があると怒鳴りながら、老人が部屋へ、マダム・ベインの秘書が止めるのも聞かずに入ってきた。マイルズ・ブリックマン大使だ。昔、マシンマン排除運動を仕掛けていたブリックマンは、マシンマンが再び現れたことを知り、慌てているのだ。取り乱すブリックマンに、マダム・ベインはエキスパートに任せてあると答え、テレビ電話のボタンを押し、ある男を呼び出す。アーノと呼ばれたこの男の正体は?

 一方、クイーンズまで逃げのびたブレインたち。マシンマンには帽子とコートを着せて変装させている。彼らはブルードニという男が経営するビデオゲーム店に逃げ込むが、奥にいた太った店主ブルードニはブレインたち「レッカーズ」が来るのを知っており、秘かにテーブル下のスイッチを入れる。それに気付いたハッスルは銃を抜き、カーテンの向こうへ発砲。

 カーテンの中からロボット兵の一体が倒れてきたが、他にも何体ものロボット兵が銃を持って出現、包囲されてしまう。マシンマンは指のマグナム弾を撃ち、スリックは置物を持ってロボット兵を押しつぶす。ブレインはロボット兵の一体に電子頭脳を狂わせる機能妨害バッジを張り付けた。狂ったロボットは別のロボット兵を破壊するが、次はブレインが襲われてしまう。危ういところでブレインは銃を取り出し、ロボット兵の頭部を吹き飛ばした。スイフトはとんぼ返りをしながら脚でロボット兵をすくい投げる。マシンマンはロボット兵の頭部を地面に押しつけ粉砕。ブルードニは、貴様らは終わりだ、ベイントロニクスが貴様らを捕らえるため資金をばらまいているぞと言いながら、隠し扉の向こうへ脱出。それを見たハッスルは皆に指示し、スイフトが、スリックが、マシンマンが通路へとび込む。ブレインはハッスルに声をかけるが、ハッスルはしんがりとして二丁拳銃でロボット兵を食い止めつつ、ブレインを通路の向こうへ蹴って先に行かせた。だが、ハッスル自身はロボット兵に捕らえられてしまう。

 通路の向こうは下水道。ブロードニは用意されていた脱出艇へ駆け込み発進させようとするが、マシンマンは腕を伸ばして、手にある冷却装置を使って脱出艇が浮かぶ周囲の水を凍らせて阻止。ブロードニをつまみ上げ、泳げるかと聞き、マシンマンは下水道の向こうへ放り出す。

 マシンマンはさっきとは逆に手から発熱して氷を溶かし脱出艇が使えるようにするが、ハッスルがいないのに気付く。僕たちが逃げるのを助けるため残ったと聞き、戻ろうとするマシンマンを、ブレインはもう追っ手がそこまで迫っていると言って止める。それでも戻ろうとするマシンマンに、ブレインは先ほどロボット兵にも使った機能妨害バッジを取り付け、動きを封じてマシンマンを脱出艇に乗せた。追いついてきたロボット兵が銃撃する中、間一髪脱出艇が発進し、下水道から飛び立った。彼らは「サンクチュアリ」へと向かう。

 捕らえられたハッスルはベイントロニクス社本部へ連行され、拘束され、マダム・ベインの尋問を受けていた。サンクチュアリーの位置を問われても口を割らないハッスル。マダム・ベインはマッド・ドクターに指示し、ドクターはハッスルの頭脳へレーザー光を撃ち込む。苦しむハッスル。ジョキャスタは殺すつもりなのですかと言う。その通りねと、マダム・ベインはロボット兵にハッスルを連行させる。ハッスルはロボット兵のピストルを奪って脱出、飛行機械を奪って飛び立った。だがそれは全てマダム・ベインに監視されていた。罠だったのだ。

 カナダ北方の森の中で脱出艇を降りたブレインたちレッカーズ。雪の中で、こっちでいいの?、わたしサンクチュアリーへ行ったことないと言うスイフトサンクチュアリーとは古株のレッカーの家なんだと言うスリック。一同は雪の中を進むが、踏み出した足がロープに触れて罠が作動し、網に閉じこめられ釣り上げられてしまった。周囲に槍や弓を持った集団が現れる。

 その頃、スターク・エンタープライゼス社では、ある男がマダム・ベインからマシンマンサンクチュアリーについて連絡を受けていた。手に足に、アーマーを装着しながら、マシンマンに会うのを楽しみにしているよと言うこの男アーノ・スタークは、ヘルメットを装着し、2020年のアイアンマンとなった!

 

 MACHINE MAN旧タイトルに登場したブリックマン上院議員が大使という肩書きになって登場。

 さらに、スターク家の血族アーノ・スターク、アイアンマン2020が登場する。この未来アイアンマンは、歯のようなモールドがあるマスクと、肩が歯車のようなアーマーが特徴で、このスタイルはその後IRON MAN #250に登場するアイアンマン2093(装着するのはアーノの孫アンドロス・スターク)まで受け継がれていくアイアンマンアーマーの最終進化形である。この強敵の登場で、次号以降の対決に期待がいやが上にも高まる。

MACHINE MAN Vol.2 #1

1984年 OCT

TOM DEFALCO : SCRIPT

HERB TRIMPE : BREAKDOWNS

 

 西暦2020年9月23日ベイントロニクス社の最深部の倉庫#5で、整理ロボットIU-104/Eが広大な倉庫の中から不要コンテナを検索して動いていた。この場所は2007年に作られた。整理ロボットはDANGER PRIORITT RED 6と書かれたコンテナをロボットアームで引き出して運び、ベルトコンベアーに乗せる。コンテナは廃棄物輸送飛行機IU-72RTに積載され、IU-72RTはニューヨーク市に1999年に作られた廃棄場へ飛び、ゴミを落とした。

 ゴミ捨て場で、コンテナを発見した者たちがいた。ブレインと呼ばれる眼鏡に帽子の青年がコンテナを見つけて近寄る。スキンヘッドの体格がいい男スリックが、ママBならガラクタしか詰まっていないと言うかもしれんが、何か使えるものがあるか調べろと言う。短髪の女性ハッスルや、弁髪の女性スイフトは周囲を警戒。これはだいぶ古いなと言いながらブレインはコンテナを開ける。中からはまず、金属の面が出てきた。スイフトは空中で宙返りをしつつ近くへ着地し、スリックものぞき込んで、その人間の顔のような面を見る。だがそこで、ハッスルが空から近づいてくる光を発見し警告した。

 警備艇が飛来し、ブレインたちのような「ミッドナイト・レッカーズ」と呼ばれる抵抗グループを捕らえるために、地上から数体の銃を持ったロボット兵が近づいてきた。ハッスルはブラスターを撃ち警備艇の照明を破壊する。スイフトは体術を活かしロボット兵に跳び蹴り。ブレインはリュックから爆弾を投げつけ、ロボット兵は爆発する。スリックは鉄骨を持ち上げロボット兵をぶん殴る。さらに数体のロボット兵を銃撃したハッスルは、2丁拳銃警備艇を撃墜した。ブレインはコンテナを飛行機械に乗せ、4人は警備艇のパトロール隊員を尻目に逃走に成功する。パトロール隊員はそこに残された6番コンテナの蓋を発見する。

 翌朝、ベイントロニクス社本部では、社主のサンセット・ベインが、廃棄品盗人の取り締まりに失敗したパトロール隊員を叱責していた。反論する隊員に、私は結果しか求めてないのと言い、盗んだ相手を探し箱の中身を取り戻せと指示。隊員たちはマダム・ベインの命令に従い退出する。

 使えない部下にいらだつマダム・ベイン。昔は美しかった彼女も、すでに年をとり、なんとか若く見せる努力をしている。十分でしょう、貴女は70歳を過ぎてるのですよとカーテンの向こうから声をかけた謎の人物は、機械のような指だけ覗かせた。マダム・ベインは、盗まれた箱の中身のことを考え、あれには私の遠い過去が入っていると思い出すのだった。

 コンテナを盗み出した4人組はアジトへ戻っていた。ブレインはコンテナの中身を組み立てている。アンドロイドが組みあげられていた。ブレインは胸の装甲板を朱色に塗装しなおし、ボディにはめ込む。これは1990年代末期の反ロボット暴動以前に作られたのだろうとブレインは推測する。ブレインはロボットに電気ショックを与えた。煙が上がり、失敗かと思われたが、ロボットの手が動きはじめ、ここはどこだと喋った。まるで人間のように喋るロボットに驚くブレインたち。ロボットはきみたちは誰だと訊ね、その質問はこちらがしようと思ってたとスリックが言う。ロボットは頭にヘルメット部分をはめながら、私にはいくつか名前があるが一番知られているのは、マシンマンという名だと答えた。

 マシンマンは自分について語り始める。秘密計画で作られたX-51というロボットで、アベル・スタック博士の息子として育てられた。スタック博士は自分を逃がすために命を犠牲にした。マシンマンにはピーター・スパルディングギアーズ・ガービンという友人が出来たが、両者は仲が悪く喧嘩ばかりしていた。また、ジョキャスタという元アベンジャーズ・メンバーの女性アンドロイドと出会い幸せを得るかと思われたが、彼女は爆発で破壊された。また彼には敵がいた。マイルズ・ブリックマン上院議員や、マダム・メナスだ。このマダム・メナスは本名をサンセット・ベインと言い、自分の配下を持ち、高性能ロボットの自分を狙っていた。サンセット・ベインという名を聞いて思い当たるスリック。だが会話の途中でマシンマンが頭を抱えて苦しみ始め、ブレインたちは心配する。

 一方、ベイントロニクスのパトロール隊員は、多数のロボット兵に加え、C-28デス・ディーラーという金色の戦闘ロボットを搭載した大型飛行艇に乗って発進していた。

 ブレインはマシンマンの頭脳部を開いて調整する。スリックはマシンマンに、なんであの箱に入っていたのか記憶はないのかと訊ねる。マシンマンは、その記憶は消去されたらしいと答え、自分がいま2020年に居るということにとまどっていると言う。スリックたちは、1980年代後半からベイントロニクスはロボット製作を始め、一時は反対運動が盛り上がったが、政府が2001年までに暴動を終わらせ、現在は独占状態にあると説明する。ブレインはマシンマンの修理を終えるが、ベイントロニクスのパトロール艇のスキャナーがマシンマンの反応を発見した。ブレインたちのアジトに敵の襲来を告げる警報が鳴り響くが、時すでに遅く、壁をぶち破ってC-28デス・ディーラーが突入してきた!

 デス・ディーラーは指から銃弾を発射。部屋の機械を盾にしてハッスルはグレネード弾を撃ち返すが、デス・ディーラーはグレネードを手でキャッチし握り潰してしまう。マシンマンはデス・ディーラーに組みつく。デス・ディーラーはマシンマンが予想より強い力を持っているのに驚くが、腰からエレクトロ・ブラスターを発射し、それがマシンマンを直撃。マシンマンがC-28を引きつけている間に、他の4人は襲来したロボット兵軍団やパトロール隊員と戦う。ハッスルはロボット兵を銃撃し破壊していく。スリックは部屋の機械を持ち上げてロボット兵に投げつけて倒す。スイフトは空中で回転しパトロール隊員たちを跳び蹴りでなぎ倒す。頭脳労働担当のブレインだが、ロボット兵の弱点にハンマーでシャフトを打ち込んで破壊。マシンマンは再びデス・ディーラーと対峙。デス・ディーラーが胸から発射したミニ・ミサイルを足を伸ばして避け、ギアーズ・ガービンが組み込んだ装備だと言いながら指から.357マグナム弾を撃ち込む。デス・ディーラーはフォース・フィールドを張って銃弾をはじく。ならばとマシンマンは腕を伸ばして敵ロボットの頭を掴むが、デス・ディーラーは胸から回転ノコギリ付きフレキシブル・アームを出しマシンマンの腕を切断しようとする。あわてて腕を引っ込めるマシンマン。デス・ディーラーはマシンマンを殴り倒し、胸から伸びたフレキシブル・アームより酸を発射しマシンマンを溶かそうとする。マシンマンは相手のフレキシブル・アームを掴んで引っこ抜く。だが強烈なハンマーパンチをくらってしまった。倒れて絶体絶命のマシンマンに、デス・ディーラーはレーザーブラストを浴びせようとする。マシンマンは配電盤のケーブルを左手で引きちぎり、右手を敵ロボットに当てて電流を流し、やっとデス・ディーラーを倒した。

 他の4人も敵を撃ち倒しており、彼らは飛行機械に乗って脱出する。反重力装置で飛行し彼らについていくマシンマン。だが自分はこれから何をしようとしているのだろうか、この未来世界で。自分の友人たちはこの世界でまだ生きているのだろうか。多くの疑問が浮かぶが、答えは出ない。

 パトロール隊の敗北を知り、サンセット・ベインは彼が復活したんだわとつぶやく。誰のことですか?と問う声に、古い敵よ、私に会うために現れた、そしてあなたにもねと答えるベイン。カーテンの向こうから現れた話し相手は、女性ロボットのジョキャスタだった。

 

 マシンマンの第2タイトルが全4話のミニシリーズで開幕。ライターは前タイトル終盤からずっとマシンマンの話を続けてきたトム・デファルコで、未来世界の話ではあるがそれまでのマシンマンの話を盛り込んでいて盛り上がる。なんと、MACHINE MAN #17でデビューした悪女マダム・メナスことサンセット・ベインが未来世界でも登場だ。また、未来世界で大企業ベイントロニクスに抵抗する4人組も、一人一人キャラが立っていて魅力的だ。未来の強敵ロボットとの戦いも手に汗握る。

 表紙は#1から#4まで徐々にマシンマンの顔が組み立てられていくというもので、素晴らしいセンスだ。

 2020年までの未来史が語られるが、マシンマンは1990年代以前に作られたと言及される。2001: A SPACE ODYSSEY #8でデビューしたマシンマンだが、あの#8-10の話の年代は2001年なのか、それともマーヴルユニバースに合流しているから2001年ではなくそれ以前の物語なのかという、今まで微妙にスルーされてきた時系列についての疑問がよぎる。後にこのミニシリーズは、パラレルワールドの未来史だと規定されるのだが。

明日のオンラインアメコミ同人誌イベントにサークル参加します

アメコマー菅野のアメコミ同人誌サークル「アメコミ向上委員会」は、2020年9月20日(日)に開催される「海外アニメ・コミック&関連コンテンツ オンラインオンリーイベント HEROES UNIVERSE ONLINE β」にサークル参加します。スペースは「い7です。

イベントにつきましてはこちら↓をご参照ください。 

pictsquare.net

 

頒布予定の同人誌をお知らせします。

 

出でよ、ザ・デーモン エトリガン!   【新刊】

ジャック・カービーが創作したTHE DEMON #1-16(ファーストシリーズ全話)の紹介本です!

 

ティーブ・ガーバーの隠れた名作A. BIZARRO   【既刊】

:1999年のA. BIZARROミニシリーズの紹介本です! 新たなビザロは普通人がベースのへんてこクローン! スティーブ・ガーバー先生の魅力をお伝えしたく!

 

 

友人のHumanflyさんのサークル「ふらいぺーぱー」さんも参加されます。よろしくお願いします!

CAPTAIN AMERICA ANNUAL #4

1977年

WRITTEN, DRAWN & EDITED BY: JACK KIRBY

 

 マグニートの攻撃を受けるキャプテン・アメリカ! 磁力で室内の中の物が飛ぶ。だがマグニートの目的はキャプテン・アメリカ打倒ではなかった。そこに住むジョー・キーガンに会ったマグニートは、この男が手に入れていた新たなミュータントを要求。それは腕時計に収まるほどの小さい男で、ミスターワンと呼ばれていた。このサイズは我が目的にとって完璧だと言い、マグニートは磁力でキーガンから腕時計を取り上げる。だが次の瞬間、背後に立つ大男の豪腕がマグニートの頭をヘルメットごと押し潰し腕時計を取り返した。大男をスターツと呼ぶキーガン。マグニートはミスターツーにぶっ飛ばされ、一時撤退する。キーガンはキャップに腕時計を託す。

 諜報機関シールドの研究施設で調査されるミスターワン。その脳波を解析すると、ここから出せと要求しており、それと同時にミスターツーが襲来。暴れるミスターツーだが電撃を浴びせられ倒された。

 一方マグニートは、両手で持てるほどの小型宇宙船を手にしていた。彼はこれにミスターワンを乗せ、星々の世界を探検させようとしているのだ。そこに千里眼の能力を持つピーパーキャプテン・アメリカの位置を発見したと報告。他にもスリザーショッカーリフターバーナーという男たちが集結している。これが彼の配下となった新たなブラザーフット・オブ・エビルミュータンツなのだ。

 キャプテン・アメリカはミスターツーのジョギングに同行していたが、突如草原に火が放たれた。発火能力者バーナーの仕業だ。続いて蛇人間スリザーがキャップを絞めあげる。剛力リフターはミスターツーに岩をぶつけ、相手を頭上に持ち上げた。反撃するミスターツーだが、ショッカーの爪によるエレクトロ・タッチの衝撃をくらい倒されてしまう。だがそこへシールドの部隊が到着。ブラザーフット・オブ・エビルミュータンツは退却する。座り込んだまま動かなくなったミスターツーについて考えるキャプテン・アメリカ。シールドの研究室に戻るとすでにマグニートに襲撃されておりミスターワンは連れ去られていた。キャプテン・アメリカは、ミスターワンとミスターツーが二つの体を行き来できる同一人物であると確信する。

 マグニートはミスターワンを脅して異星の小型宇宙船に乗ることを強要しようとしていた。ミスターワンの目が閉じていき、シールド基地ではミスターツーが目覚める。彼に同行しマグニートのアジトへ向かうキャプテン・アメリカ

 ピーパーはそれを察知し、マグニートはミスターワンの体をつまみあげて宇宙船へ入れる。そこへ壁をぶち割りミスターツーが襲来。スリザーが巻き付いて止め、ショッカーが攻撃しようとするが、キャップのシールドがショッカーに激突。続いてリフターを攻撃するキャップだが通じず持ち上げられてしまう。だがミスターツーがスリザーを振り回してリフターにぶつけ、二人とも倒す。バーナーの火炎に苦しむミスターツーだが、今度はキャップのパンチがそれを救った。けれどもミスターツーはそこで動かなくなる。残る敵はピーパーだが、その目は遠隔視だけでなく、ビームも発射できるのだ。巧みに盾で受けとめ、ピーパーをダストシュートへ放り込むキャップ。

 マグニートは宇宙船の最終調整をしていた。内部でミスターワンが動いているのを確認し、星々の力を我に!と命じる。そこにキャプテン・アメリカが飛び込んでくるが、マグニートは磁力で相手の体をぶん回して叩き伏せる。さらに剣を飛ばしてキャップの首の周囲の床に突き立てた。キャプテン・アメリカは蹴りで反撃するも、ブラザーフット・オブ・エビルミュータンツが駆けつけ、絶体絶命となる。そこで宇宙船内のミスターワンが操縦装置を起動、宇宙船は大爆発と共に飛び立つ。辛くも生き延びたキャプテン・アメリカはその場を去るが、マグニートたちも生きている事を確信するのだった。

 

 冒頭からアクション!、珍妙な新キャラでおどろかせ、さらにアクション!という、ジャック・カービーならではの展開! キャプテン・アメリカ、マグニートという、自身が生み出した著名キャラクターに加えて、二人一組のミュータントや新しいブラザーフット・オブ・エビルミュータンツ(リフターなんて「持ち上げる」というだけのミュータント能力!)と多数の新キャラを登場させて、矢継ぎ早にバトルを見せて楽しませてくれる。

 このコミックが収録された合本は、

 https://www.amazon.co.jp/dp/0785120785/

で購入できるので、是非!

CAPTAIN AMERICA ANNUAL #3

1976年

EDIT, WRITTEN and DRAWN by JACK KIRBY

 

 ‘76年のCAPTAIN AMERICA年刊特別号は、題してThe THING FROM THE BLACK HOLE STAR! 1ページ目からキャプテン・アメリカが謎の怪物に襲われているが、この唐突さがカービースタイル! そして2-3ページ目の見開きではこれまた唐突に、同行していた農夫のジム・ヘンドリクスが衝撃光線銃で怪物を吹き飛ばす! 二人は異星から来た宇宙船の中へ入っていたが、突如あらわれた異星怪物に襲われ、船内にあった光線銃で撃退したのだ。倒された怪物は閃光と共に消えた。ごく普通の農夫にすぎない自分がUFOやエイリアンと遭遇している事に困惑するジム。二人は宇宙船を出る。ジムはこの宇宙船が数千光年彼方のブラックホール星から来たと言い、キャップがなぜそんな事を知っているのか訊ねると、なんと、この宇宙船のパイロットから訊いた、彼は俺の農家にいると言うのだ。

 その頃、地球軌道を航行する宇宙艦の中では、ブラックホール星の異星人たちが先に地球へ送り込んだストーカーという怪物が地球人に倒されたのを知る。司令官は次の手として、より強力な「コンバトロン」を送るよう命じ、カプセルが地球へ撃ち込まれた。

 キャップはジムの家に行ってみたが、そこには本当に異星人がいた。おびえる異星人にジムはキャプテン・アメリカを紹介し、この星の正義のシンボルなんだと説明するが、異星人には正義という言葉は理解できないようだった。キャップが異星人の頭巾を取ってみると、意外にも人間に似た顔があらわれる。キャップはこの異星人が光の速度ですら脱出できないブラックホールから来たことへの疑問を口にするが、異星人は本当だと答える。異星人は自分を追跡してきた怪物ストーカーをキャップたちが倒したと知ると、次にはコンバトロンが送り込まれてくるとおびえる。その言葉通り、大きな落下音がして、キャプテン・アメリカとジムは外へ飛び出した。

 地面に降下カプセルが突き刺さっていたが、中身は空だった。すでに地上に降り立っていた怪物兵器コンバトロンが突如強襲! 右腕のプレッシャーアームを地面に突き立てて衝撃を加え、キャプテン・アメリカは飛んできた岩や木をシールドで防ぐが、衝撃波で吹き飛ばされてしまう。だがキャップも負けてはいない、近づいてきたコンバトロンに反撃を打ち込む。激しい格闘戦を見守るジムだが、そこへ上空から熱線が撃ち込まれる。ジムとキャップは必死で避け、熱線はコンバトロンに当たって怪物兵器を消滅させ、さらに降下カプセルまでも焼き尽くし完全に証拠隠滅してしまった。宇宙空間からの熱線照射という攻撃が可能な敵に驚くキャップだが、次は直接攻撃部隊が送り込まれてくると予想する。

 衛星軌道上の宇宙艦では、部下が再度のイオン砲攻撃を進言していたが、地球を戦争をしに来たのではないと司令官は言い、マグノイド部隊の出動を指示する。

 自宅へ戻ったジムは電話でこの異常事態を通報しようとするが、電話は通じない。敵宇宙船の妨害だ。キャップは追われている異星人に様々な質問し事情を知ろうとするが、そんな時間はない。一同は車で逃走しようとするが、砲撃を受け車が破壊されてしまう。三人の頭上から宇宙艇が降下してくる。

 キャップは二人に、追われている異星人の宇宙船へ行き武器を探せと指示。ジムたちは異星人の宇宙船へ入り、武器を準備する。異星人は生体飼料が欲しい、エネルギーが必要だと言い、ジムもそうかと同意する。

 一方キャプテン・アメリカは降下してきた宇宙艇から無数の機械歩兵マグノイドが降りてくるのを監視していた。気付かれぬようその場を離れようとするキャップだが、マグノイドの1体がすでに後ろへ迫っており、熱線砲を受けて吹き飛ばされてしまう。倒れたキャプテン・アメリカに3体のマグノイドが掴みかかるが、キャップは弾き返した。だが後ろから首を強烈な握力で掴まれピンチに! キャップはエルボーを打ち込んで脱出! 熱線砲を放つマグノイドに素早く接近して腕を掴み、自分の武器を撃ち込ませて倒した。熱線砲を奪ったキャップは反撃しつつ逃走に成功する。

 ジムと異星人の待つ宇宙船まで走るキャップ。異星人はようこそと歓迎するが、そんな挨拶をしている場合ではない。自分が戦っている間に二人は敵を防ぐ準備ができたかと訊くキャップに、俺はいま強力になったと答える異星人。何を言っているんだ、ジムはどこだと訊ね、宇宙船内を移動して農夫を探すキャップだが、彼が見たのは床に倒れているジムの姿だった。その体は乾ききって皺だらけになっており、死亡していた! 彼に何をしたと言うキャップに、異星人はジムの生体エネルギーを吸ったことを明かす。敵に追われる善良な異星人かと思われていたそいつは、宇宙吸血鬼の如き怪物だったのだ!

 ジムから吸収したエネルギーがこの異星人の目や体から噴き出し、明らかに強力になっている。こいつはこの特性により自分の星で恐れられ、追われて地球まで来たのだ。キャプテン・アメリカは怪物に飛びかかるが、エネルギーを吸われそうになり苦しむ。敵は地球人のエネルギーに喜び、ここを牧場のようにして地球人のエネルギーを吸い続け、最後には最強の種族となるぞと叫ぶ。エネルギーを吸おうとする怪物を、シールドで防いで耐えるキャプテン・アメリカだが、敵のパワーに苦戦。

 そこで、マグノイド部隊が船内に突入してきた。熱線砲で怪物を狙うが、怪物は避け、強力なエネルギーを放射する。キャプテン・アメリカはシールドを投擲し、みごと怪物にヒット! その隙にマグノイドたちは怪物を押さえつけ、金属帯を全身に巻き付け拘束した。

 衛星軌道上の宇宙艦で地上の様子を監視している司令官は、近くにいたキャプテン・アメリカを目にとめるが、友人の遺体を抱えて去るのを見て、自分たちへの脅威にはならないと判断する。拘束された怪物は、必ず戻ってくるぞと恨みを込めて叫ぶ。異星人司令官の指示で、怪物を乗せた宇宙船は宇宙へと飛び去った。

 キャプテン・アメリカはマグノイドの降下艇が地球を離れるのを見送り、まだ地球人にとっては未知の宇宙の驚異について考える。そして、怪物を運ぶ宇宙船は、数千光年離れたイプシロン4という灼熱の星へ突入。怪物は焼かれ溶かされながらも必ず生きて戻ると叫び続ける。

 帰還したキャプテン・アメリカ安全保障委員会へ出頭し今回の事件について報告する。だが委員会のメンバーはあまりに突飛な話を信じてくれない。委員たちが去ったあと、我々は天に唯一の存在ではない、星に目を向けよ!とキャプテン・アメリカは独白するのだった。

 

 宇宙人の怪人や戦闘員が複数登場し大活劇が楽しめる、年刊号のページ数を利した豪華編。保護されるべき逃亡宇宙人かと思いきや…という展開にも驚く。

 このコミックが収録された合本は、

https://www.amazon.co.jp/dp/0785120785/

で購入できるので、是非!