アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

昔のアメコミを紹介しています

MARVEL TREASURY SPECIAL CAPTAIN AMERICA'S BICENTENNIAL BATTLES

1976年

EDITED, CONCEIVED AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 このコミックは、1976年のアメリカ合衆国建国200周年の時に、MARVEL TREASURY SPECIALという大判装丁のレーベルで発行された。CAPTAIN AMERICA BY JACK KIRBY: BICENTENNIAL BATTLESという名称でTPB化もされている。編集/創作/作画はもちろんJACK KIRBY、インクはH. TRIMPEJ. ROMITAB. SMITHが担当している。

  序文は「歴史とは人々だ!」という力強い宣言から始まる。これからアメリカ合衆国の歴史を旅することになるキャプテン・アメリカだが、それはミスター・ブダという剃髪の謎の人物がいきなり出現したことによる。カービー得意の、1ページ目から事件が始まっている構成! このミスター・ブダという人物は、その後エルダーズ・オブ・ユニバースコレクターグランドマスターと同類ですね)のコンテンプレイターがその正体と設定されるが、これが初登場。霊体として現れたミスター・ブダは、装飾の施されたピラミッド状の座具の中に入ると受肉し、座禅を解き扉を開けて座具から出てきた。アストラルボディからピラミッドパワーによって肉体を現出させたと説明するミスター・ブダだが、突飛すぎてキャプテン・アメリカは信じない。ミスター・ブダは手を合わせて挨拶するが、相手の宗教的な物言いにキャップは自分には必要ない、国のための仕事が待っていると歩き去る。だがミスター・ブダはキャプテン・アメリカが知らないうちに力を使い、時空ゲートを超えさせた。

 キャプテン・アメリカはいつの間にか迷路のような場所を歩いており、床が抜けて落下。うまく着地するが、そこはあり得ない場所だった。背後の壁にはハーケンクロイツが掲げられ、目の前にいる兵士はどう見ても第二次大戦中に見たナチスの警備兵だ。素早い動きで警備兵を捕らえ黙らせたが、キャップは混乱する。これはミスター・ブダのトリックか? しかし、かつて体感した’40年代にしか見えない。物音を聞いてドアを開けてみると、三人の男が誰かを拷問している。三人が振り返った瞬間、キャプテン・アメリカは驚愕した。アドルフ・ヒットラーナチス親衛隊が、捕らえたバッキーを椅子に縛りつけ尋問している! この時期はウインターソルジャーの設定はなく、キャプテン・アメリカはバッキーを失ったことを永遠に後悔していたので、この驚きたるや凄まじいものだろう。バッキーに駆け寄ろうとするキャップを、ドアの陰に潜んでいたレッドスカルが狙うが、シールドを叩きつけてあっさり倒し、親衛隊と戦闘開始。敵を殴り飛ばし、シールドを投げてピストルを弾き、逃げるヒットラーを掴んで顔を親衛隊と鉢合わせにぶっつけて倒した。

 キャップは目の前のバッキーに感激し声も出ない。だがバッキーはキャップがすぐに縄を解いてくれないのに不満を言う。あわててほどきにかかるキャップ。ナチス兵が駆けつけ、機関銃を撃ち込んできた! 間一髪、窓から脱出するキャップ&バッキー。キャップはバッキーにきみは最高のパートナーだと話すが、そんな場合ではない。木の枝を掴んでうまく着地し、バッキーは藪を抜けて先へ駆けていく。キャップも続くが、バッキーの姿が見えなくなる。バッキーの名を呼びながら走るキャップは時空ゲートを抜け、再びミスター・ブダの前に現れた。古傷をえぐるようなまやかしを見せたミスター・ブダに怒るキャプテン・アメリカだが、ミスター・ブダはあれは現実だと答え、これは痛みしかもたらさなかったかと問う。内心、バッキーと再会できたことを嬉しく思ったと認め、キャプテン・アメリカはミスター・ブダと握手し立ち去った。だが彼の旅はこれから始まるのだ。ミスター・ブダはキャプテン・アメリカの手に秘かに護符を付けていた。

 ミスター・ブダの館の中を歩いて行くと、壁や天井に戦場が映されている。あまりに生々しい兵士たちの姿に動揺したキャップは扉を開けて外へ出る。ミスター・ブダの影響から逃れるためその場からすぐ立ち去ろうと考える。

 キャップはタクシーを止め乗り込んだ。運転手は子供が持ってるマーヴルコミックにサインをいただきたいねえと話しかけ、運転しながら、誰かがこの国の全てを見るとしたらそれはあんたじゃねえかなあと言う。ふと右の手のひらを見ると、○と△を組み合わせた徴が付けられていた。まだミスター・ブダの影響下にいることを悟るキャップ。見れば、タクシーに乗っていたと思っていたらそこは馬車の中だった。

 馬車から降りると、そこは200年前のフィラデルフィアだった。誰もが奇異の目でキャプテン・アメリカを見て、噂する。UFOを見たような反応だなとキャップは呟くが、UFOって何だと返される。野次馬のような人たちの話題になる中、僕の雇い主がお話ししたいと言っていますという少年がいた。ついていったキャップは、驚くべき人物と会う。ベンジャミン・フランクリンだ。彼はキャプテン・アメリカを出迎え、新聞を出版している者ですと自己紹介し、店に招いた。合衆国建国の父の一人を驚きの目で見つつ、招待を受けるキャップ。フランクリンは従業員に椅子を出させ、飲み物を出してもてなし、ベッツィー嬢を見つけてこいと命じる。キャプテン・アメリカカップを少年に返して礼を言う。少年はジョン・ステイシーですと名乗り、あなたのコスチュームは本当にいいですねと話す。部屋へベッツィーという女性が入ってきた。ベンジャミンは、凄いインスピレーションをくれる人物を迎えているぞとキャップを紹介する。ベッツィーはキャプテン・アメリカを一目見るなり驚き喜び、この衣装を作った人を賞賛するわと感激する。フランクリンは、彼女は優秀な裁縫師なんだと紹介する。フランクリンはキャップの服をスケッチしはじめ、ベッツィーはコスチュームを調べ始めた。昔のアメリカの人々の熱意を感じるキャプテン・アメリカ。フランクリンはスケッチに色をつけ、キャプテンに見せ、自由のための愛国心を呼び起こすデザインだと話し、これを旗にしたらと提案。気づき、驚くキャップにフランクリンは、ベッツィー・ロス嬢は大陸軍の旗をデザインするんだ、ワシントン将軍に乞われてねと話す。ベッツィー・ロスはアメリカ合衆国国旗を作ったとされる人物だ。自分は歴史に干渉したのか?と驚き、店を飛びだし走り去るキャプテン・アメリカ

 壁にもたれかかっていると、後ろから肩を叩かれた。先程の時代とは違う感覚があった。キャップに話しかけてきた紳士は、酷い時代だよな、貧民用の無料食堂に案内するぜと言う。それは断り、新聞売りの少年に声をかけて新聞に書かれた年を見せてもらう。新聞売りの少年は、誰も新聞を買ってくれない、売れなきゃ今週は石鹸食わなきゃならないよと話す。今は1930年代、大恐慌時代なのだ。ギャングの乗る車が止まり、新聞をよこせと声がかかる。少年が新聞を渡すとギャングは少年の顔を押しのけ、代金を払わず走り去ろうとした。キャプテン・アメリカはドアごとギャングを引き出し、代金を払うんだと叫ぶ。ギャングたちは発砲し、キャップは盾で少年を守る。警官が駆けつけるがギャングの車は走り去ってしまった。キャップに引き抜かれたギャングは警官に逮捕されるが、文句を叫ぶ。新聞売りの少年も叫び返す。この子供は「俺がコミック描きになったら…」と話す。これはカービー本人ですね。キャップの右手の徴がまた働き、荒れ地に出現した。

 強い日射しを避け、岩場へと歩くキャップ。岩場にはアメリカインディアンの部隊が身を隠していた。酋長に配下が、白人の歩兵だろう、殺すかと訊ねるが、酋長は何者かわからん殺すなと命じる。キャプテン・アメリカの背後から、気配を消したインディアンがライフルを突きつけた。キャップは前転しながら蹴りを撃ち込み逃れる。インディアンたちの銃撃が始まり、キャップは飛び退くが、左足を投げ縄で捕らえられた。しかしそこはキャプテン・アメリカ、縄を引く力に負けずに立ち、両腕で二人の相手を倒した。酋長はライフルをかまえる部下を制し、キャップと話をする。キャップは「相手が戦わぬ者を殺すジャッカルなら撃て」と答え、二人はわかり合う。キャップには相手がジェロニモだと判っていて、自分は平和を守ることを求める男だと言う。ジェロニモはキャップの中に偉大な魂を見る。だがいま白人がインディアンを狩っており、自分たちも対抗してここで待ち伏せをしている、死か自由かだと話す。キャプテン・アメリカは、自由か死かとはアメリカ人としての言葉だ、我々は兄弟でありつつ異人だが、一つの人民になるんだと理想を語る。だが戦闘は近づいており、この場で何が真実か決めるのは銃弾だとジェロニモは答える。ついに銃弾が届くようになり、インディアンたちは馬に乗って配下を連れ走り出した。キャプテン・アメリカは白人の騎兵隊めがけて走る。必死で止めようとするが、この戦いは歴史の一部であり、スーパーヒーローにも止められない。キャップは「別の道がある!みんなアメリカ人なんだ!」と絶叫する。だが右手の徴がキャップを別の時代へと飛ばした。

 気づくとキャップは地面に埋まっていた。男たちが力を合わせ、彼を引っ張り出してくれる。だが話を聞くと、坑道で落盤が起こり、全員生き埋めで死を待つのみという状況だという。皆があきらめ、錯乱して叫びだす者も出る。さらに、岩の間からガスまで噴き出してきた。絶体絶命! キャプテン・アメリカは全力で岩を押し、死力を振り絞って押し続け、最後には脱出口が開けた。九死に一生を得た鉱夫たちは助け合いながら脱出する。頭上に地上へ通じる穴が見えた。鉱夫たちは、自分たちを助けてくれた謎の男を見つけようとするが、もうどこにもいなかった。

 気づくとキャプテン・アメリカ複葉機に乗りドイツ機に狙われていた。敵はエース級の腕を持ち、機関銃弾が操縦席をかすめる。第一次世界大戦だ。塹壕から歩兵たちが空中戦を見て応援している。キャプテン・アメリカといえども、これほど古い複葉機は不慣れだ。宙返りをしても敵機は追いすがってくる。機体を横にして木と木の間をすり抜けるという荒技で、敵機はついて行けず木に激突した。だが後方から前方に目を戻したとたん、眼前にドイツの観測気球があり、激突寸前に飛び降りる。時空ゲートが開き、キャップは再びミスター・ブダの前に出現させられた。自分をもてあそぶ相手に怒り、すぐに徴を取れと要求するキャップだが、ミスター・ブダは得るものは無かったのか、そして悲劇のない歴史はないぞと言い、まだこれをやめるつもりはないようだ。反論するキャップだが、またも時空転移されてしまう。

  背後から強烈なパンチを浴び、倒れるキャプテン・アメリカ。口髭が特徴のこの相手は、アメリカボクシング界伝説の男、ジョン・L・サリバンだ! 観客たちは盛り上がり、口々に声援を叫ぶ。サリバンの左ストレートを避けカウンターで右パンチを打ち込むキャップ。超人兵士の力で打ち込んだパンチにも耐える相手に驚くキャップだが、二度三度のパンチでついにサリバンは倒れ込んだ。そこに警官隊が突入。この当時、まだボクシングは合法ではなかったのだ。大混乱になる会場。キャップはサリバンの体を引きずって避難させる。

 が、気づくとまた時空が変わっており、銃を突きつけられていた。キャップは黒人をかばっており、何人かに取り囲まれている。この奴隷制度廃止論者を殺して賞金を得ようぜという賞金稼ぎたち。南北戦争の時代だ。黒人は、ここでは奴隷制度は廃止されたと主張する。キャプテン・アメリカは法を犯している賞金稼ぎたちに反論する。だがそんな説得は通じず、相手はキャップを縛り首にしようとまで言い出す。その時、離れたところにいた若いガンマンがライフルで狙撃。それをきっかけとして黒人とキャプテン・アメリカは反撃を開始した。超人兵士の怪力で、賞金稼ぎたちは次々と空を飛ぶようにぶっ飛ばされていく。これには援護の狙撃をした若者も驚いた。最後の一人を殴り倒したあと、キャップは黒人の男にも仕返しはやめるよう諭す。黒人の男は自分に友人や兄弟と呼びかけるこの白人の男を信じ、挨拶を交わして別れた。それを遠くから見ている若者。彼の父親がやって来て、息子が奴隷商人を倒す手助けをした聞いて誉める。この父親こそ、奴隷廃止活動家ジョン・ブラウンだ。

 馬に乗り、夕陽の中、歩を進めるキャプテン・アメリカ。途中で馬がトカゲに驚き暴れ、落馬してしまう。馬は走り去り、立ち上がったところに、ジープがやって来た。また時空が移動したのだ。警備兵に話しかけ、同乗して砂漠地帯を進む。途中で待っていた兵士がジープを止め、キャプテン・アメリカは中に招かれる。キャプテン・アメリカにはここで何が起こるのか判っていた。指揮官の将軍はキャプテン・アメリカの参加を歓迎し、閃光防御用のアイマスクをつけるように言う。科学者・軍人・官僚が並び見守る中、カウントダウンが行われ、巨大な火球が砂漠に立ち上がった。人類は原子爆弾を手にし、新たな時代が幕を開けたのだ。軍人たちがふと見ると、すでにキャプテン・アメリカはおらず、アイマスクだけが落ちていた。

 炎の前に立つキャプテン・アメリカ。だがこちらは原子爆弾ではない。大火事が街中に広がっていた。逃げまどう人々。一人の男が火の回っているビルに入ろうとしていた。キャプテン・アメリカはその男に組み付いて止める。話せ、重要な物を持ち出さないとと暴れる男に、命の方が大事だとキャップは言い、ビルの前でもみ合う。と、ビルの壁が崩れてきた。キャップはシールドで防御し、男を救う。助かったと言う男に、生きることを考えてくれて良かったとキャップは答えるが、さすがにダメージを負っていた。男からここがシカゴだと聞き、1871年シカゴ大火なのだと知る。街が全て灰になってしまうと言う男に、新しい街として生まれ変わるよと答えるキャップ。道路は避難民であふれ、火から逃れるために川の橋に人が殺到していた。と、誰かが川に落ちたと声が上がる。キャプテン・アメリカはすぐさま飛び込んだ。水中は暗く何も見えない。さらに、またも別の時空に転移される。

 水中に突然、サメが現れ、襲いかかってきた。水中で思い切りのけぞって反転しサメに一撃をくらわせるキャップ。だが息が続かず絶体絶命だ。そこへ、潜水服の人物二人が現れてキャップを救い、海底基地へと運ぶ。中に運び込まれ、酸素ボンベから呼吸をすると、キャップは蘇生した。中にいた男はキャップにあなたはスーパーヒーローだねと言い、ここで研究されていることが世界の食糧問題を解決するかもしれないと話す。キャップの手の徴が働き、時空転移しまたもミスター・ブダのところへ運ばれた。

 ミスター・ブダは逆さ吊りになりヨガに励んでいた。キャップはこの旅はいつ終わるのか、アメリカはどの時代も私の知るアメリカだったと話すが、ミスター・ブダはまだ結論にたどり着くには早いと考えているようで、次なる舞台へとキャップを送り込む。空に地球が見え、岩だらけの月面にキャプテン・アメリカは時空転移していた。

 宇宙服を着たキャプテン・アメリカは、意外にも月面で爆発が起き、飛んで来た破片を受け体勢を崩す。向こうから、兵員輸送機が飛んできて、何かと交戦し重火器を撃ちまくっていた。未来では、人類は月面でも戦争を繰り広げているのかと驚くキャップ。月面を進むと、何人もの歩兵が戦っていた。月面戦車の残骸を発見し、中に生存者がいないかとガラス面をのぞき込むが、誰も見えない…。ガラス面に写ったキャップの姿が変化していき、そのガラス面は月面戦車のキャノピーではなく、カメラのレンズになった。

 時空転移し、キャプテン・アメリカは昔の映画の撮影現場に居た。監督やカメラマンや俳優たちが沢山おり、キャップはその中を歩くが、メルビン・グラバーという映画業界人の目にとまり、映画に出ることになってしまう。兵隊コスプレのダンサーたちに囲まれ、華々しいプロパガンダ映画の中心人物にされてしまうキャップ。戸惑っていたキャップだが、あわてて「やめろ!」と叫び撮影を止め、さらにミスター・ブダに怒鳴る。

 周囲のダンサーは消え、ミスター・ブダの声がしはじめた。キャップはこれで真実のアメリカを見せたつもりなのか、アメリカ人たちが立ち上がる時の原動力という本質は何だというのかと怒鳴る。これまでキャプテン・アメリカを翻弄してきたミスター・ブダだが、最後の転移に同行するという。見ればキャップの手のひらの徴が消えかかっていた。キャプテン・アメリカアメリカの本質を見つけミスター・ブダに示せるのか?

 二人は田舎町に現れる。カントリーミュージックが聞こえてきた。老人が庭先でフィドル(バイオリン)を弾き、仕事の疲れを離れて安らぎを得ていた。それを聞かせてもらいながら、キャップの心も和らぎ、これもアメリカなんだとブダに言うが、ブダはまだ満足せず、最後の転移を行う。二人は貧民窟(ゲットー)で懸命に勉強している青年のところに現れた。キャプテン・アメリカは、不遇な境遇にもかかわらず努力することを選んだ青年の姿に、これこそ本質だと確信する。この結論にたどり着いたキャプテン・アメリカを見て、ミスター・ブダは合掌し消えていった。唐突な離別に驚くキャップだが、いま二人のどちらにも真実は共有されていた。

 そこで子供の声が聞こえる。キャプテン・アメリカを見つけた子供たちが駆け寄ってきたのだ。子供たちは憧れのヒーローを前に口々に話をし質問する。スーパーヴィランがこの通りに隠れていてそれを探しに来たの?と言われ、僕はどんなスーパーヴィランよりもでっかい何かを探していたが、ここでそれを見つけた、きみたち若者だよと答えるキャップ。全てのアメリカ人が、自分が抱える問題に打ち勝てるよう十分に強く賢くなるということが最も大切だと話すキャプテン・アメリカ。まだまだ子供たちが集まってきた。沢山の子供たちに囲まれ、皆を励ましながら、キャプテン・アメリカはついに長かった旅の終着点に行き着くのだった。

 

 ジャック・カービーによる、子供たちへの明確なメッセージが込められた快作。キャプテン・アメリカによるアメリカ合衆国の歴史巡りで多くの場面が楽しめ、描かれたキャラクターの意思と、最後の到達点が胸を打つ。もちろん、ジャック・カービーならではのアートも堪能できる。是非お勧めしたい。

 アメコミビブリオバトルというイベントに参加しこのコミックを紹介したので、音声がアップされたYouTubeも御案内します(マイクを使わずに喋ったので音声を上げて聞いてください)。アメコミビブリオバトルは非常に楽しかったので興味がある方は是非御参加を。

www.youtube.com

 このコミックが収録された合本は

https://www.amazon.co.jp/dp/0785117261/

で購入できるので、是非!

SILVER SURFER #18

1970年 SEP

SCRIPT : STAN LEE

PENCILLING : JACK KIRBY

 

  シルバーサーファーを突然襲う、覆面の飛翔者、鎖鉄球を使うケンタウロス、鉄の爪の獣人! 超人種族インヒューマンズだ。飛び去ろうとするサーファーだが、覆面男エレオが恐るべき飛翔で追いつき、組み付かれ、投げ飛ばされる。落下するサーファーを受け止めるサーフボード。続いてスタリアーというケンタウロスの鎖鉄球がぶち込まれる。地面に落ちたサーファーに獣人が鉄の爪で追い打ち。サーファーは相手の腕を掴んで投げ、さらに獣人の背後からサーフボードがぶち当たり倒した。そこへ第4の敵、ティンベリウスという樹人が現れ、木を伸ばしてサーフボードを捕らえ、沢山の枝を放ってきた。だがシルバーサーファーはパワーコズミックを使って枝を原子分解し、ブラストを撃ち込んだ。サーファーの強大なパワーに4人のインヒューマンズは敗走する他なかった。ボードを取り戻したサーファーは、たまたま迷い込んだインヒューマンズの隠れ家を探索することにする。

 敗走した4人は空中母艦に帰還。彼らの主は、ブラックボルトの弟マキシマスだ。兄の王位を狙う彼はマキシマス・ザ・マグニフィセントを名乗り、シルバーサーファーをこの地へ誘い込み、インヒューマンズから攻撃を受けたと思わせ兄の仲間たちへぶつける計画を立てたのだ。高笑いをするマキシマス。

 その思惑通り、サーファーはインヒューマンズの都へ入っていく。山中だというのに驚くべき都市があるのに驚くサーファー。警報が響き、ブラックボルトが飛来した。巧みな機動で背後へ回るサーファーだが、赤い髪が伸びてきて絡みつかれてしまった。女王メドゥーサだ。さらに拳法使いカーナックがチョップで建物の一部を飛ばしサーファーにぶち当てる。撃墜されたサーファーを半魚人トリトンが受け止めた。

 王の前にサーファーを運ぶトリトンたち。メドゥーサはこれがマキシマスの罠だとブラックボルトに伝える。そこへゴーゴンが、マキシマスの空中母艦を発見したと報告。スクリーンに映る敵母艦に注目するインヒューマンズだが、そこでシルバーサーファーが意識を取り戻した。トリトンを一撃するサーファー。トリトンは必死に組み付くが、恐るべき力で反撃された。メドゥーサは再び髪でサーファーを捕らえようとするが、サーファーはブラストで振りほどく。しかしそこへゴーゴンが地面を踏み鳴らして衝撃波でサーファーをぶっ飛ばした。そこへカーナックが飛びかかり、取り押さえようとする。

 そこでマキシマスの空中母艦が都市に砲撃を始める。ブラックボルトは迎撃に飛び立ち、メドゥーサたちも対空砲火を放つ。インヒューマンズに二つの勢力があるのを知ったサーファーは「ボードよ来たれ!」と叫ぶが、なぜかボードが来ない。探すと、テレポート犬ロックジョウがボードをくわえていた。なかなかはなさないロックジョウをブラストで脅し、ボードを取り返して飛び立つシルバーサーファー。

 だがサーファーをマキシマスの味方と誤解したメドゥーサたちは対空砲を撃ち込む。かわしながら進んでいくと、空中母艦はダメージを受け煙を上げながら逃げていくのが見えた。地球で暴力と争いを見てきたサーファーはインヒューマンズも同じなのかと悩むが、街へ潜入していたマキシマスのスパイたちが銃撃してくる。それをかわし、追ってきたブラックボルトからも逃げ、パワーコズミックの超スピードでその地を離れたシルバーサーファーは、荒野に一人降り、膝を抱える。地球に閉じ込められて以来、地球人の争いを見続けてきたサーファーは、愛や慈悲はないのかと悩み絶望し、地球人類への怒りで吠えるのだった!

 

 シルバーサーファーはジャック・カービーがFantastic Four #48 (MAR ’66)で創作したキャラだが、1968年に出た初の単独タイトルTHE SILVER SURFERではジョン・ビュシーマが担当し、#7まではページ数が通常の倍という力の入った重厚なストーリーでキャラクターに肉付けされていった。このタイトルは#18で打ち切られたが、その#18で突然アートがジャック・カービーになり内容もアクションものになって締めくくられている。

 1ページ目からアクションシーンというカービー節炸裂の内容で「コミックは子供が楽しめるアクション重視」というカービーのポリシーがうかがえる。

IRON MAN #168

1983年 MAR

DENNY O'NEIL : WRITER

LUKE McDONNELL : PENCILER

 

 マシンマンは手足を伸ばしたままタクシーから降り、スターク・インターナショナル社アンソニー・スタークを訪ねる。突然変なロボットに来訪され警備員たちは驚くが、誰もスターク社長がどこにいるのか知らなかった。

 スターク・インターナショナル社の物理学研究室では、試作した機械のテストに立ち会うスターク氏を研究員が待っていたが、そのスタークは酒びたりで個人研究室に籠もっていた。妙なロボットが訪ねてきておりますと通信が入り、スタークはゲートの警備員にろれつが回らない声で、そのロボットに私は興味がないと言えと指示。だがマシンマンは、自分で会いにいくよと、金網を飛び越え中に入っていく。スタークは警報を聞きロボットが侵入したことを知る。朦朧とした状態でシャワーを浴びるスタークだが、服を着たままだったのでかえって気持ち悪い。アイアンマンアーマーを装着しようとするが、腕アーマーをとり落としてしまい、自分は病気だとうずくまって嘆く。

 マシンマンは足を伸ばして3階の窓ガラスを叩き、中にいるスタークの秘書ミセス・アーボガストを驚かせる。窓から中へ入ったマシンマンが、スターク氏かもしくはそのボディーガードのアイアンマンと会いたい、もしアイアンマンが私の同類なら…と言いかけたところで、その場にアイアンマンが現れた。マシンマンは友好的に話しかけるが、アイアンマンはステインの回し者かと突進し、壁を壊してしまう。回路がうまく作動せずよろめいているぞと思うマシンマン。アイアンマンは再度マシンマンにタックルを敢行、二人は窓ガラスを破って外へ落ちるが、マシンマンは空中でうまく体をかわして着地。

 アイアンマンはマシンマンの右腕をもぎ取り後ろへ放り投げるが、マシンマンは腕をコントロールしてブーメランのようにアイアンマンの後頭部へぶつけ、右腕をつけ直す。ならばとアイアンマンは街灯を引き抜いて殴りつけようとするが、うまく手が振れず街灯が外にいた社員に振り下ろされる。マシンマンは手を伸ばして社員たちを救った。アイアンマンのプログラムは故障しているのか、殻は私を殺そうとしていると疑ったマシンマンは、空を飛んでアイアンマンに突進。

 スコットランド郊外の飛行場では、ステインの部下がスタークの飛行機を見張っていた。そこへ、掃除用具を運んで黒人の男が近づいてくる。ステインのスパイは銃を抜こうとするが、この男ジム・ローデスはホウキでスパイたちを叩きのめし気絶させ、銃を拾って飛行機に乗り離陸する。

 マシンマンとアイアンマンは空中で激突していた。スターク・インターナショナル社の警備主任マーチネリーはそれを見守る他ない。マシンマンは伸びるパンチをアイアンマンに打ち込む。アイアンマンは反撃しようとするが、マシンマンは手を伸ばして建物を掴み素早くその場から退避、建物の中へ入る。アイアンマンはそれを追うが、また建物の壁をぶち壊してしまった。マシンマンは伸ばした手でアイアンマンに触れ10万ボルトの電流を流し止めようとするが、アイアンマンのアーマーはそれを吸収する能力があるのだ。アイアンマンは手強いと感じたマシンマンは、その場にあった発電機を投げつけ、電気が消えて真っ暗な中を赤外線アイをいかして走り去る。

 隣の研究室では研究員たちが、4年の歳月と8千万ドルの費用をかけてようやく完成した装置のテストにスターク社長がいつまで待っても現れないことに気をもんでいた。そこへマシンマンが入ってきて部屋を通過し走り去り、その後からアイアンマンが突っ込んできて研究員にぶつかって気絶させ、せっかく作った試作装置にもぶちあたって粉砕してしまう。

 再び外へ出た両者は空中戦となる。アイアンマンは両手のリパルサー・レイを発射したが、マシンマンは電磁フィールドを展開して防ぐ。マシンマンは手を伸ばしてアイアンマンの頭を掴み、指から電磁波を発射してアイアンマンのシステムを止めようとする。この攻撃でアイアンマンは落下していくが、ここでマシンマンはアイアンマンが自分のようなロボットではなく人間であることに気付く。人を殺すわけにはいかないとあわててマシンマンは腕を伸ばし、地面に激突寸前にアイアンマンを止めた。アイアンマンが自分の同類ではないと知ったマシンマンはその場を跳び去る。

 起き上がったアイアンマンにマーチネリーが駆け寄ったが、アイアンマンは返事もそこそこに歩き去る。また、研究員を殴り装置を破壊したことで責められるが、簡単に謝っただけで去ってしまう。個人研究室へ戻ったスタークはヘルメットを脱ぎ、ぼろぼろな自分に頭を抱える。そこへ秘書から電話があり、オフィスはメチャクチャ、研究室は壊され、そのうえ銀行からの客が会わせろと言ってますと伝えられる。スタークは、そのどれも相手にしている暇はない、車をまわしてくれと答えた。髭を剃りアーマーを脱いでスーツに着替えた彼は、他人の話を聞かず車で外出してしまった。

 街へ出たスタークは、酒を飲むためにペントハウスで一泊する。翌日そこを出たスタークにドアマンが話しかけるが、スタークはもう何もかもどうでもよくなっていた。

 

 この時期のIRON MANでは主人公のスタークがヒーローと社長業の重圧からアルコール依存の末期になっており、ボロボロの状態である。この話のすぐ後の#173にてスターク・インターナショナルはオバディア・ステインに乗っ取られ、スタークはすべてを失ってスラム街に堕ちる。

 この号で再登場したジム・ローデスは次号#169でスタークと再会し、まともに活動できないスタークに代わってアイアンマンアーマーをつけて活躍していく。

 そんな時期なだけにこの号のスタークの行動はめちゃくちゃで、まわりに迷惑かけまくりだし、マシンマンとの対決もやみくもに突っ込んで物を壊すばかりだ。一方マシンマンもアイアンマンをロボットだと思って訊ねてくるというちょっと間抜けな展開(ジョキャスタと出会ったことで同胞を求めようという気になったのか?)だが、アイアンマンに対抗するのにこれまで登場した能力をいろいろ披露してくれるのは嬉しいところだ。ここでアイアンマンと初対決したマシンマンだが、両者の対決は翌年、別の形で再登場することになる。

 このコミックが収録された合本は

https://www.amazon.co.jp/dp/B073V9SDTH/

で購入できるので、是非!

MARVEL TWO-IN-ONE #93

1982年 NOV

TOM DEFALCO : SCRIPT

RON WILSON : PENCILS

 

 この号は前号ラストから続いてザ・シングVSマシンマンで、両者の格闘シーンから始まる。復活したウルトロンに操られたザ・シングが、強烈なパンチを打ち込んできた。伸びきって一部が壊れた足を引きずりながら、なんとか攻撃をかわし続けるマシンマン。ウルトロンはジョキャスタに、我に従い、我に愛を捧げよと持ちかけるが、ジョキャスタは拒否。それを聞いて、マシンマンはこの女アンドロイドを救おうと思う。基地の電源に右手を突っ込み、左手をザ・シングに巻き付けて電流をながしシングを気絶させる。そこへウルトロンがブラスターを撃ち込みマシンマンはなんとか避け、運良く壁に大穴が開いた。マシンマンは両手を合わせ磁場フィールドを発生させてウルトロンを弾きとばし、ジョキャスタを連れて外へ脱出。ザ・シングの乗ってきたファンタスティ・サイクルに乗り、指先を抜いて指にあるコネクターを接続しシステムを操作、離陸した。ここでザ・シングの催眠術が解けかけたため、ウルトロンは再催眠をほどこし、マシンマン追撃ではなく自分の計画を開始する。

 マシンマンギアーズ・ガービンのガレージにやって来ていた。足を修理してもらいながらジョキャスタの話を聞く。操られていたとはいえウルトロンを復活させてしまった彼女は、自分がウルトロンの道具にすぎないのではないかと悩み、敵の強大さに恐怖し走り去ろうとする。腕が伸びてきて彼女を止め、私たちはウルトロンを倒せるよと言い、マシンマンはジョキャスタを抱き寄せる。

 一方ウルトロンはザ・シングに命じてアダマンチウムの原料が入った巨大ドラム缶を運ばせていた。ロケット・プラットフォームにドラム缶が置かれ、ザ・シングを従えたウルトロンは発進する。彼はこの材料でウルトロン軍団を作り、アベンジャーズに勝利し世界を手にしようとしているのだ。

 そのすぐあと、スターク・インターナショナル社の研究施設にザ・シングが押し入り、警備員をノックアウトして深宇宙用生命維持装置を強奪していった。シングを乗せたプラットフォームはウルトロンの秘密地下工場へ到着。ウルトロンはすでに6体のウルトロン・ボディを作っており、これがさらに増産されれば全てが征服されウルトロンの憎む人間性なるものは消滅するのだ。

 ギアーズ・ガービンのガレージをマシンマンの親友の精神科医ピーター・スパルディングが訪ねていた。たった二人でウルトロンに対抗しようというマシンマンの計画に、アベンジャーズファンタスティック・フォーに通報すればいいだろうと反対するスパルディング。だがマシンマンは、ウルトロンがすでに動き出しているため時間がないと反論。ガービンはマシンマンの足を応急処置したが、しかし試しに動かしてみると伸ばした足の外板が破れて蒸気が吹き出してきた。仕方なく、壊れた右足を取り外してくれと言うマシンマン。ガービンの修理を批判するスパルディング。ガービンは時間さえあれば完全に修理できるんだがと反論。上流階級の精神科医と町の機械工はあいかわらず馬が合わず口論になるが、子供じみたことはやめろとマシンマンが腕を伸ばして二人を離した。

 内輪もめを見てジョキャスタはガレージから外へ歩き出し、こんなことではウルトロンを止められないと絶望する。だが後ろからマシンマンが、右足首の取れた状態で左足の車輪走行だけで追ってきた。ジョキャスタを励ますマシンマンだが、ジョキャスタは、あなたには判らない、あなたには友達がいるが自分には何もないと嘆く。だがマシンマンは自分もアーロン・スタックとして人々と出会ってきたことで、機械の体だが平和と幸福を得てきた、きみにもできるよと手を差し出す。ジョキャスタはその手を取るのだった。

 しばらく後、ガレージ内で、ガービンがジョキャスタの頭に設置した装置から伸びたケーブルをマシンマンの胸に接続していた。ガービンによると、ジョキャスタはいまだウルトロンとサイバーリンクを持っているが、マシンマンの機能で補助することで、彼女がウルトロンを居場所を発見しやすくすることができると言う。装置はうまく働き、ジョキャスタはウルトロンの居場所を発見した。まだ出撃に反対なスパルディングにガービンは秘密兵器があると答えるが、その秘密兵器とはガービン自身だった。マシンマンとジョキャスタを乗せたファンタスティ・サイクルをガービンが操縦し、3人は発進する。

 ウルトロンは自分の分身であるウルトロン軍団の調整をほぼ完成させていたが、何らかの音が近づいているのに気付く。ファンタスティ・サイクルが着陸し、ジョキャスタはウルトロンが地下にいると探知してアイ・ブラスターを地面に撃ち込み、3人はウルトロンの工場へ侵入した。通路が二つあり、ジョキャスタはマシンマン&ガービンと別れて進む。

 ガービンと通路を進むマシンマンだが、そこへ電子ミサイル群が襲来しピンチにおちいる。一方ジョキャスタの前にはパワーキャノン装置を抱えたウルトロンが現れ、我が花嫁となり自分が造る真のユートピアに来たれと強要する。ジョキャスタは、あなたのユートピアは生命を排除した不毛なものだと言い、ウルトロンもその通りだ、全ての生命は我が敵だと答える。なぜ私を選んだのと訊ねるジョキャスタに、お前は我が造った、我のものだとウルトロンは言う。

 電子ミサイルが飛び交う通路で大ピンチのマシンマン&ガービンだが、ガービンがミサイルのコントロール装置を発見、マシンマンは手を伸ばして装置のケーブルを引き抜き停止させる。そこへザ・シングが突っ込んできた。マシンマンは手を伸ばしてガービンを横に押しのけ、シングに立ち向かう。片足のマシンマンだが、左足の車輪走行で旋回したり足を伸ばして身をかわしたりしてなんとかシングの猛攻をしのぐ。

 ウルトロンはなおもジョキャスタを誘う。ジョキャスタはウルトロンのいままでしてきた事を思うと従えない、だけどあなたを愛していたわと言い、ウルトロンの持つパワーキャノン装置をオーバーロードさせた! 装置は大爆発を起こし、二人は吹き飛ばされた。

 マシンマンたちのいる区域の壁が崩れ、ジョキャスタとウルトロンがぶっとんできた。瓦礫に埋もれる一同。見れば、ジョキャスタはばらばらに壊れている。アダマンチウムのボディを持つウルトロンは無事で、ジョキャスタよ何と愚かなと嘆く。彼女に触るな!と怒るマシンマン。ナイトの登場か、だが遅かったな、ジョキャスタは死んだ!と言い返すウルトロン。そこで、瓦礫がぶつかったショックでザ・シングの催眠が解けた。「ボコボコにしてやるぜ!」ウルトロンをぶん殴るシング。ウルトロンは工場のケーブルを引き抜いてムチのようにシングを打つ。マシンマンは手を伸ばしケーブルを取り上げ、そこへシングがウルトロンにタックル!

 再び立ち上がったウルトロンは、製作したウルトロン軍団を起動しようとする。今ウルトロンを止めなければ! だが敵の装甲はアダマンチウム製で破壊不能だ。マシンマンは外部からは破壊できないだろうが内部からならと、手を伸ばしてウルトロンの口へ突っ込み、ケーブルを引き抜いた! ウルトロンは、我ならばジョキャスタを再生できる、だから我を救えと懇願するが、マシンマンは手を貸さず、ウルトロンは倒れて機能停止する。ザ・シングは、なぜウルトロンの誘いを受けてジョキャスタを助ける方を選ばなかったんだ?と訊ねる。マシンマンは、ジョキャスタならそれを拒否しただろうからと答え、だが彼女を救えなかった事を悔やむ。壊れたジョキャスタの体を抱え、もうきみは苦しまなくていいんだ、だけどきみがいなくて寂しいよとマシンマンはつぶやくのだった。

 

 ジョキャスタJOCASTAとは、ギリシャ神話のオディプスの母イオカステーの英語表記で、親子の近親相姦の悲劇を暗示した名前なのだが(ただし神話とは親子の立場が逆で、コミックのジョキャスタは親であるウルトロンとの関係に苦しむ)、その通り悲劇的な結末を迎えた。

 作者のトム・デファルコは自分でつくったキャラであるギアーズ・ガービンを登場させマシンマンのいい相棒として活躍させている。その一方、デファルコ先生がやるとピーター・スパルディングはガービンとの対比で正論ガチガチのエリート人間として描かれてしまうのが何とも。

 ウルトロンはこのあと、クロスオーバー「シークレット・ウォーズ」で超越者ビヨンダーの手によりバトルワールド惑星にて再登場。ジョキャスタも後に進化の実験者ハイ・エボリューショナリーによって再生され再登場することになる。

MARVEL TWO-IN-ONE #92

1982年 OCT

TOM DEFALCO : SCRIPTER

RON WILSON : PENCILER

 

 MARVEL TWO-IN-ONEは毎回ザ・シングが他のキャラクターと共演するタイトルで、この号はザ・シング&ジョキャスタ。ジョキャスタは'77年のTHE AVENGERS #162で初登場した女性型ロボットで、アベンジャーズの敵として名高い悪のロボット、ウルトロンによって製作されたが、造り主に反し、一時期アベンジャーズに参加していた。

 物語はエジプトのカイロから始まる。前号#91はノバの敵スフィンクスとの共演で、スフィンクスのオリジンを巡る話だった。カイロ空港で旅券を受け取る長い列が出来ていた。アメリカ行きの旅券を渡した相手は、怪物ザ・シングで、係員は驚く。ザ・シングは搭乗前の金属探知ゲートをくぐる時にぶち壊してしまう。旅客機に乗り込む列に並ぶが、そこへテロリストが車で突っ込んできた。ザ・シングは地面をぶっ叩き衝撃波で車を跳ねとばして事件を解決、旅客機に乗る。

 マンハッタンの路地裏では、3人の暴漢が、コートに帽子の女性を襲っていた。だが3人は一瞬にして吹きとばされる。

 一方バクスター・ビルディングファンタスティック・フォー本部では、ミスター・ファンタスティックことリード・リチャーズβ線探知機の調整に勤しんでいた。盲目の女性彫刻家アリシア・マスターズはリードに、ベンを人間に戻す研究を最近してないようだけどと声をかけるが、それに答える前に警報が鳴り、何者かの来訪を告げた。

 JFK国際空港に到着したザ・シングことベン・グリムは空港のターミナルを出る(ターミナルにはデモのプラカードを持った人々がいるが、「BRING BACK STAN LEE!」と書かれているのを持ってる人がいたり)。タクシーがベンに声をかけるが、ジョニー・ストームがファンタスティ・カーで降下してきて、ベンを乗せた。

 バクスター・ビルに戻ったベンを、アリシアが迎える。抱き合い、キスする二人。ジョニーはヒューマントーチに変身して宙に炎でハートマークを描く。

 戻ったベンたちに、リードが来客を紹介する。アベンジャーズの元メンバーの女性アンドロイド、ジョキャスタだ。アリシアはジョキャスタの声を聞いて、その孤独な調子に驚く。ジョキャスタはファンタスティック・フォーに助けを求めに来たのだ。邪悪なロボット、ウルトロンに造られたジョキャスタだが、人類を憎悪するウルトロンに反抗した彼女はアベンジャーズに参加する。だが様々なスーパーヒーローが集うアベンジャーズの中にも彼女の居場所はなく、ジョキャスタは次第に疎外感を覚えていった。その後、アベンジャーズが実働メンバーの数を限定しようとした際(AVENGERS #211)、ジョキャスタは自ら身を引きアベンジャーズマンションを去った。だが銀のメタリックボディの彼女は街で奇異の目で見られ、路地裏に隠れるがそこでも襲われ、精神的に追いつめられる。孤独にさいなまれたジョキャスタに同情するアリシアやベン。リードはジョキャスタにバクスター・ビルへの滞在を許可。アリシアはベンに、ジョキャスタはロボットだけど自分には人間のように感じると言う。

 一同が去ったあと、リードはアベンジャーズマンションのキャプテン・アメリカに連絡し、ウルトロンについて情報を得た。ウルトロンは数ヶ月前にアベンジャーズに倒されていたが(AVENGERS #202)、再び何かが起ころうとしているのか。

 ジョキャスタはあてがわれた部屋のベッドで眠りについていたが、ウルトロンの悪夢が彼女を襲うのだった。そのウルトロンは、アベンジャーズとの戦いで石像のような状態で封印されていた。

 翌日、ベンはデルマー保険に出向いた。保険会社の社員アーロン・スタックは、マシンマン人間性を学ぶための仮の姿だ。アーロンはいつもの如く、彼をやっかんだエディに突っかかられていたが、それを一蹴する。同僚のパメラに淡い思いを抱くアーロンだが、ロボットである彼には叶わぬ夢だ。そこへ、ザ・シングが入ってきた。ベンはアーロンを知らないが、マシンマンはシングと会ったことがあった(MACHINE MAN #15)。

 アートギャラリーでは、アリシア・マスターズがつくったスーパーヒーローの彫刻を見に来た人たちが、その出来を賞賛していた。彫刻の中に経路が違った銀色のものがあり、批評家はこれは駄目だと論じる。だがそれは彫刻ではなくジョキャスタで、彫刻だと思っていたものに突然、私のロボットボディがお気に召さずすみませんねと話しかけられ、批評家は気絶してしまう。ぶしつけな批評に傷ついたジョキャスタをなぐさめるアリシアだが、ジョキャスタは突然苦しみだした。暴れだし、彫刻を壊しながらもがくジョキャスタを周囲の者が止めようとするが、ロボットの力は止められるものではない。ジョキャスタは壁をぶち破って去ってしまう。アリシアはベンに電話するが、運悪くベンはデルマー保険に出向いていて留守だった。だがリードの設計した記録装置により、アリシアの声はコンピューターに記録される。

 デルマー保険ではアーロン・スタックがベン・グリムに説明を始めようとしていたが、そこでベンのズボンに入った呼び出しベルが鳴った。女ロボットが大変なんでねと言い残して去るザ・シング。女ロボットという言葉に興味を持ったアーロン・スタックは、マシンマンの姿となり反重力装置で空へ飛び立ち、電磁センサーで女ロボットの探査を開始した。

 自らの基地内で石像のように固まっているウルトロン。そこへやって来たジョキャスタは、特殊な分子構造を持つ装置を組み立てて石像のようなウルトロンの胴体に組み合わせ、アダマンチウムを熔解してウルトロンの頭上から流し込み、目から石像へビームを照射した。すると見よ、ウルトロンが新生し復活した! 我に返ったジョキャスタは、自分がなぜこんな事をしてしまったのか判らなかったが、ウルトロンを倒すために目からビームを撃ち込む。それをかわしたウルトロンは、ジョキャスタを催眠プログラムで操っていた事を明かし、平手打ちをくらわせた。倒れたジョキャスタの上で勝ち誇るウルトロンだが、そこへ伸びた手のパンチが打ち込まれる。マシンマンがこの場所を探知し登場したのだ。ウルトロンの手からのブラスターを、足を伸ばして避けるマシンマン。相手が自分と同じくロボットであることに驚くウルトロン。マシンマンはウルトロンの頭上からパンチを見舞い、相手のブタスターを避け大活躍する。だがウルトロンも、生けるアダマンチウムというべき自分を止めるものなどないと言い、激戦は続く。

 一方ザ・シングも、ファンタスティ・サイクルで現場に急行していた。ウルトロンの基地にたどり着くと、内部で大爆発が起き、シングは驚く。中ではウルトロンが、マシンマンの足を思い切り引っぱり、握り潰して壊す。我が機械の千年紀に案内しようとしているのにと嘲るウルトロン。

 だがそこへザ・シングが床板を引き抜き登場。ザ・シングはウルトロンと激突するが、さすがに歴戦のパワーファイターだけあってウルトロンが殴りとばされる。しかしザ・シングと組み合ったウルトロンは、ベンに催眠術をかけた。

 マシンマンは壊れて伸びきった足のため行動不能になっていた。そこへ、ウルトロンに操られたザ・シングが迫る。絶体絶命のピンチをどう乗り切るのか!?

 

 アベンジャーズに所属していた女性ロボット、ジョキャスタを登場させ、それと対になるようにマシンマンを登場させるうまいゲスト出演で前後編の話を作っているのは、MACHINE MAN終盤のライターであったトム・デファルコ。MACHINE MANの最終回ではアーロンは保険会社を休職するつもりのようであったが、この話ではデルマー保険に健在であることが判る。敵もアベンジャーズの宿敵ウルトロンが復活、ロボット対ロボットの対決が楽しめる。ウルトロンはアダマンチウム製で悪魔的頭脳を持つ強敵であり、ザ・シングをも操ってしまうという引きは、次号に期待を持たせる。

 

MACHINE MAN #19

1981年 FEB

TOM DEFALCO : WONDROUS WRITING

STEVE DITKO : ASTOUNDING ARTWORK

 

 人間の顔のマスクが爆発で溶けて醜く変わってしまったマシンマンは、ようやく自宅へ帰ってきた。マシンマンアーロン・スタックアイデンティティであるマスクの修理をガービンに頼む。ベストを尽くすが数時間かかると答えるガービン。コートと帽子を取って出て行こうとするマシンマンスパルディングは心配し自分もついていくと言うが、マシンマンは断り一人で外へ。夜の街を歩きながらこれまでの事を回想するマシンマン。自分とは一体何なのだろうか。

 その頃、マンハッタンの港近くのジムに、ギャングたちが集まっていた。そこに突然閃光弾が投げ込まれ、見ればハロウィンのお化けカボチャ型マスクを頭にかぶり、UFO型プラットフォームに乗って空を飛ぶ怪人ジャック・オ・ランタンが出現! この怪人はギャングたちを罵倒しガス弾を投げつけ散々に暴れ回りギャングたちを掌握してしまう。

 翌朝、アーロン・スタックのマスクは直っていた。アーロンは顔が戻ったことに安心し、友人二人も喜ぶ。アーロンはさっそく着替えてデルマー保険に出社する。

 仕事をしていると、エディが呼びに来た。社主のバイロン・ベンジャミンが皆を集めて話があるという。集まった社員たちにベンジャミンは、テロ対策を講じて建設された新しい大使館で来週各国の高官を招いてハロウィーン仮装パーティーがあり、それを後援することになったと伝える。会合のあと、ベンジャミンはアーロンに新大使館のチェックをしてくるよう命じる。ベンジャミンは社で唯一アーロンがマシンマンだと知っている人物だ。という事は、保安体制に万全を期すようにという指示だと知り、アーロンは大使館へ向かう。

 新型の大使館の内部を視察するアーロン。さすがに警備装置は厳重で、チタニウム鋼のシャッターが降りたり、ガスを換気する装置などが完備されていた。大使館を出たアーロンは、怪しげな男がカメラを持って大使館の周りを嗅ぎ回っているのを見つける。木陰に隠れてマシンマンの姿になったアーロンは、その男が乗った車に手を当てて上空を飛び追跡する。

 車から降りた男は撮った写真をジャック・オ・ランタンに渡す。マシンマンはサンルーフから中の様子をうかがっていたが、屋根がマシンマンの重みで壊れ、中に墜落してしまった。ジャック・オ・ランタンの命令で、ギャングたちがこのジムのダンベルやバーベルを持って殴りかかってきた。マシンマンは手足を伸ばしてギャングたちを蹴散らし、床を引っぺがして折りたたみギャングを一網打尽にする。ジャック・オ・ランタンはUFOに乗ってマシンマンに迫り、腕に仕込んだブラスターを発射し吹き飛ばした。壁を破って倒れたマシンマンは、起き上がって鏡を見て自分のマスクが再び溶けて崩れてしまっているのを見る。またも激しい怒りに襲われたマシンマンは復讐しようとするが、ジャック・オ・ランタンたちはすでにトラックで逃走していた。マシンマンは手足を伸ばしてビル街を進む。

 だがアーロン・スタックは大使館ハロウィンパーティーの警備を任されており、それを放棄するわけにはいかない。服を着てアーロン・スタックの姿に戻ったが、マスクだけはどうしようもない。困ったアーロンだが、道で遊んでいるスーパーマンバットマンの仮装をした子供たちを見つけ、スーパーマンのマスクを借りてパーティーに出席した。

 パーティーにはデルマー保険の一同も来ていた。仮装パーティーに普通の服で出てきたアーロンを同僚たちは不審に思う。アーロンは、このマスクの下にもっと凄いものが隠されていると言う。マギーがスーパーマンのマスクを引っぺがしてみると、中から機械の顔が現れた。マシンマンにとっては素顔だが、同僚は良くできたマスクだと感心する。

 その頃、大使館には、バナナ共和国の入場券を奪ってきたジャック・オ・ランタンたちがパーティーに参加するためやって来ていた。パーティー会場でジャック・オ・ランタンの姿を見かけたマシンマンは、やはりこの大使館を狙っていたかと思い、対策に動き出す。ジャック・オ・ランタンの一味は迅速に行動し、コントロールルームを制圧。チタン鋼のシャッターを降ろして各国高官が逃げられないようにし、エアコン装置からガスを噴射させ、大使館を制圧してしまった。

 マシンマンは、チタン鋼の壁を破っていては時間がかかりすぎると、指にコンピューターアクセスのアタッチメントを付け、壁の中の回路に端子を入れて建物のシステムを操作する。これに気付いたジャック・オ・ランタンたちは、マシンマン撃退へ向かう。ガス弾を投げつけるランタンだが、マシンマンは腕を振り回し煙を吹き飛ばし、伸びる手のパンチを打ち込む。UFO型プラットフォームを操りそれを避けるジャック・オ・ランタン。敵の手下を蹴散らし、ランタンに追いすがるマシンマン。ランタンは腕のブラスターを撃ってきて、一進一退の戦いが続く。ついに壁をぶち破って、仮装パーティー会場での戦いとなり、マシンマンジャック・オ・ランタンは群衆のど真ん中へ落下。会場はパニックになる。疲れを知らないロボットであるマシンマンと違い、ジャック・オ・ランタンには疲れと焦りが見えはじめた。切羽詰まったランタンは、群衆の中に手榴弾を投げ込むぞと叫ぶ。マシンマンは両手から磁力フィールドを展開してジャック・オ・ランタンを包み、敵の爆弾はフィールドの中で爆発、ランタンは倒れた。勝利したマシンマンだが、アーロン・スタックの仮装とマシンマンの顔が同じであることを指摘される恐れがあった。また、皆を救ったのに誰一人何も言ってくれない。マシンマンはその場を立ち去っていく。

 アパートに帰り、ガービンの修理を受けるマシンマン。彼はスパルディングとガービンという二人の友人に、デルマー社の仕事は休職すると宣言。彼にとってまだまだ世界は無限に学ぶべきものがあり、マシンマンはこの世界に長く長く生きていこうと思うのだった。

 

 感動のフィナーレというよりは、最終回だからやりたいことやってしまえという思い切りが楽しい回である。

 まず、ジャック・オ・ランタンという怪人の登場。このキャラクターは、初期のスパイダーマンの話を描いたスティーブ・ディッコが創作したハロウィン怪人という、グリーンゴブリンと共通点があることから、このあとスパイダーマンの敵役として定着していくのだが、初登場はこのマシンマンの最終回なのだ。お化けカボチャのマスクをかぶりUFOに乗って飛ぶというヘンテコ怪人だがそこがとても面白い。マシンマンとの対決もディッコ特有のアクションシーンが多くて楽しめる。

 そして今回の舞台はハロウィン仮装パーティー。本編ではマシンマンがスーパーマンのマスクを借りるという可笑しいシーンがあるが、表紙では色々なヒーローに仮装した人々をフランク・ミラー描いていて本編のパーティーより豪華だったりする。

 最後にマシンマンはデルマー保険を休職し、結局同僚に正体はばれたのかは明かされないまま終わるが、これはこのあとマシンマンが登場する時に自由に動かせるようにとの配慮だろう。ファーストタイトルは終了したが、マシンマンの物語は続いていく。

 このコミックが収録された合本は

 https://www.amazon.co.jp/dp/0785195777/

で購入できるので、是非!

MACHINE MAN #18

1980年 DEC

PERFIDIOUSLY PRODUCED BY TOM DEFALCO -- WHOSE WRITING IS JUSTLY SLURRED

STEVE DITKO -- AN ARTIST ABSURD!

 

 前号、マダム・メナスを倒したマシンマンだったが、メナスは本当に死んだのか疑問だった。彼は空を飛び、マダム・メナスの秘密基地へ向かう。基地の中ではマスクをしたマダム・メナスの部下たちが重要書類を焼き機械を壊して証拠隠滅をし、撤退の準備を進めていた。そこへ天井から手が伸びてきて、マスクの男を掴む。マシンマンの登場だ。手足を伸ばしマスクの男たちを蹴散らしていくマシンマン。マスクの男は音波ライフルを発射、マシンマンは足にダメージを受けるが手を伸ばしてライフルを握り潰した。相手は巨大な発電機の後ろに隠れて銃撃戦を続けようとするが、マシンマンは発電機ごと相手をぶっ飛ばした。ダメージを受けた左足をかばいながら、マシンマンは捕らえた男のマスクをはがし、胸ぐらを掴んで手を伸ばし高く差し上げ、マダム・メナスについて吐かせた。マダム・メナスは生きているが、どこかへ隠れていることしかこの男は知らなかった。マシンマンは男を投げ出し、基地を去っていく。別の隠れ家で、マシンマンの戦闘の様子をビデオに収めたマダム・メナス。マシンマンは音波攻撃に弱いと分析した彼女は、このロボットを自分の兵器商売の目玉商品にする野望を燃やすのだった。

 アーロン・スタックのアパートには、二人の男が訪ねてきていた。一人は精神科医ピーター・スパルディング、もう一人は町の機械工ギアーズ・ガービンだ。スパルディングはガービンに、僕のコーヒーテーブルに足を置かないでくれと言い、このささいな事で二人は言い合いを始めてしまう。育ちがまるで違うこの二人は気が合わないようだ。口論が激化しようとしたその時、窓からマシンマンが帰ってきて、二人を止めた。マシンマンの足の調子が悪いのを見てガービンは修理をする。スパルディングは子供じみた喧嘩をしてしまったことを恥じるのだった。

 あるホテルでは、マシンマンを人類の敵と喧伝するブリックマン上院議員の講演会が行われていた。彼はこの主張で上院議員になったが、最近ではその主張も人気を失い、彼は苦境にあった。部下は上院議員にもっと一般的な政策について語るべきだと進言するが、ブリックマンは聞く耳持たない。

 所は変わってカナダ。政府機関デパートメントHでは、エージェントKという諜報員が報告をしていた。最近活動を始めたカナダのスーパーヒーローチーム、アルファ・フライトが、カナダに現れた超人ハルクと戦ったこと。その戦いの前にハルクはアメリカでマシンマンと戦い、マシンマンが重力をキャンセルしてハルクを飛ばしたが(THE INCREDIBLE HULK #237)、これは故意にカナダを狙ったのではと結論するエージェントK。彼は大臣と相談し、アルファ・フライトをマシンマンに向けて派遣することが決定する。超スピード能力を持つノーススターオーロラの双子ヒーロー、獣人サスカッチの3人は任務を受け、車でアメリカ合衆国へ向かう。

 マダム・メナスは対マシンマン用に音波砲を用意。さらに相手を追いつけるため、デイリー・ビューグル新聞を利用したり、表の顔サンセット・ベインとしてパーティーでブリックマン上院議員接触したりと活動を重ねていく。その頃アーロン・スタックは、デルマー保険で仕事中。エディーがバトミントンの試合で賭けをやろうぜと誘ってくるが、もちろんアーロンは興味を示さない。だがパメラに声をかけて奇妙な気持ちを抱く。

 ニューヨークのホテルに到着したアルファ・フライトの3人。ラングコウスキイ博士は他の二人に腕時計型探知機を渡す。これはマシンマンが発している特有の波長を感知するものだ。さらに彼らは、マシンマンが普段はアーロン・スタックと名乗っていることも調べており、電話帳でアーロンの住所を調べる。こうして万全の準備を調えた3人は行動を開始する。

 翌朝、アーロンのアパートで、スパルディングがデイリー・プラネット新聞社の朝刊を見て驚いていた。それをマシンマンに知らせるスパルディングだが、マシンマンはそれがマダム・メナスの陰謀であることを疑っていた。考えがあると言って、窓から出て行くマシンマン

 アパートの外ではラングコウスキイ博士が腕時計の反応を見てマシンマンを追う。マシンマンは再びマダム・メナスの基地へ出向き、腕を伸ばして中に置かれていた追跡球体デバイスを入手した。それを分析し、逆にマダム・メナスを探査しようとするマシンマン。建物の屋根の上にマシンマンを発見したラングコウスキイ博士は、獣人サスカッチに変身し、マシンマンが乗る建物を怪力で壊し、マシンマンは落下。マシンマンも手足を伸ばして反撃。両者の戦いが続く。

 その頃、カナダのエージェントKは、合衆国側からマシンマンを追いつめるような圧力がかかっていることを知り疑問に思う。しかしすでにサスカッチマシンマンの戦いは始まっているのだ。マシンマンは伸ばした両手からフィールドを展開してサスカッチを宙に浮かせ捕らえようとする。だがサスカッチは掴んだ地面を怪力で引き剥がしマシンマンの足場を壊して体勢を崩させることで脱出。なぜハルクをカナダへやったのだと言うサスカッチマシンマンは驚くが、相手の背後に腕を伸ばして首に巻き付け、サスカッチを海へ投げ込んだ。さらに、街灯に手を突っ込み反対の腕でサスカッチを掴み感電させた。だがマシンマンサスカッチを見殺しにせず海から引き上げ、助ける。そして、この戦いの原因となったマダム・メナスを止めるために行動を開始した。

 マシンマンはマダム・メナスの部下を倒し、敵の本部へ侵入した。何人ものマスクの男が現れ、マシンマンは戦う。一方エージェントKはアメリカ合衆国の政府施設に潜入し、カナダへ圧力をかけた証拠を探っていた。メナスの部下はヌンチャクを持ち出してマシンマンに迫るが、マシンマンは天井を崩したり手を伸ばして奇襲したりして相手を倒していく。ここでマダム・メナスは音波砲を発射を命じた。背後から音波をくらい、マシンマンの体の機能は停止してしまい、床に転がって身動きが取れない。

 だがそこで意外な助けが入った。アルファ・フライトのノーススターとオーロラは超スピードでマスクの男たちを倒していく。サスカッチは壁をぶち破って登場。マシンマンが悪ではないと知ったサスカッチは、仲間と共に助けに来たのだ。先ほどまで戦っていたサスカッチが味方してくれたことに驚くマシンマン。マダム・メナスも奴等を倒せとマイクで命じる。動けないマシンマンだが自分も戦うため、首だけを切り離して反重力で飛び、音波砲へ特攻した。爆発が起こり音波砲は潰れたが、マシンマンの顔の左半分がケロイドのように溶けてしまった!

 ボディに戻ったマシンマンは、父の作ってくれた大事な顔が壊れたことで狂乱状態となり、悪鬼のような勢いでマダム・メナスの部下たちを相手に暴れまくる。オーロラとノーススターは二人の力を合わせて強烈な光線をマシンマンに放って目をくらまし動きを止めようとするが、目以外に指にもフィンガー・センサーのあるマシンマンには目くらましは通じず、ノーススターが殴り倒されてしまう。サスカッチマシンマンに駆け寄るが、暴れ狂うマシンマンサスカッチをも殴り倒してしまった。とどめをさそうとするマシンマンは、オーロラの制止の声を聞きぎりぎりのところで自分を取り戻す。自分は何と言うことをしてしまったのか。自分はブリックマンの言うように脅威なのか。自分を恥じたマシンマンは、体をドリルのように高速回転させてその場から去っていった。起き上がったサスカッチらは、別行動のエージェントKが成功したかどうかと考える。

 そのエージェントKは、ついにカナダへの圧力はブリックマン上院議員マシンマンとの戦いにカナダを引っ張り出すため画策していた証拠文書を発見していた。アルファ・フライトはカナダへ帰還。マダム・メナスはマシンマンへの野望をあきらめない。エージェントKの得た情報が公開されたことでブリックマンは窮地に立たされるが、しかしこの男も自分の信念を曲げずに再び返り咲くぞと闘志を燃やす。ガービンとスパルディングはアパートで待つが、マシンマンは帰ってこない。彼は醜く変わった顔のまま、夜の街をさまよい歩く。マシンマンの明日はどっちだ!?

 

 マダム・メナスと久々登場のブリックマン上院議員の野望が同調し、カナダへ圧力がかかったことで、カナダ政府のスーパーヒーローチーム、アルファ・フライトとマシンマンの共演が実現。アルファ・フライトは'79年にUNCANNY X-MEN #120にて登場したばかりの新規ヒーローチームであり、この時期まだ独自タイトルが創刊される前だった。カナダ政府のヒーローとして、諜報員と連動して行動しているのが特徴的で面白い。

 次号#19は、MACHINE MAN誌ファーストシリーズの最終回となる。

 このコミックが収録された合本は

 https://www.amazon.co.jp/dp/0785195777/

で購入できるので、是非!

MARVEL TEAM-UP ANNUAL #3

1980年 NOV

ROGER STERN : writer

HERB TRIMPE : pencils

 

 森の中を、邪魔な木を薙ぎ倒しながら、ハルクが進んでいた。小川にたどり着いたハルクは水を飲みながら、孤独な自分を思う。そこへ、上空から奇妙な形をした飛行機械が近づいていた。着陸した飛行機械からは、フードとマントをつけた怪しい人物が降りてきた。この怪人はひと抱えもある装置を持ち、その発信電波でハルクを操ろうとしているのだ。ハルクに装置を向け、電波を発射する怪人。頭が痛み出したハルクが振り向くとそこにはフードの怪人がいた。お前の力が必要なのだと言う怪人だが、ハルクは怒って装置をもぎ取り粉砕してしまう。追いつめられる怪人。だがハルクがフードを取ると、中は黒人女性だった。ナイトシェイドと名乗ったこの女性は、ハルクに助けてほしいことがあると懇願する。女性の助けになろうと、ハルクはナイトシェイドを抱えて彼女の飛行機械へ向かった。

 夜の波止場の高架下。ゴミ箱からアタッシュケースを取り出す男が一人。この男ルフレッド・セービンは、あるフイルムで女性をゆすり、ケースの中の大金をせしめたのだった。このフイルムさえあればもっと金を引き出せるぜとほくそ笑むセービンに、声をかけてくる者があった。それは、武術ヒーロー、アイアンフィスト! 彼はセービンが脅している女性から依頼を受けているのだ。セービンはアイアンフィストに銃を向け撃ちまくるが、アイアンフィストは巧みな身のこなしによりすべての銃弾を避け、跳び蹴りをくらわせる。かなわぬと見たセービンはフイルムケースを投げつけスーツケースを持って逃走。だが眼前に何者かが現れ、激突したセービンは弾き返されて倒れてしまう。セービンはコートの中からショットガンを取り出し相手を撃つが、相手は生きていた。それは、アイアンフィストと組んでヒーロー稼業をしている、鋼鉄のような体を持つ男パワーマンことルーク・ケイジだったのだ。パワーマンはセービンを絞めあげぶっ飛ばした。フイルムとスーツケースの金を回収して依頼を達成した二人のヒーローは、せービンをゴミ箱に叩き込んでその場を去っていく。近くのビルの壁には銃声を聞きつけたスパイダーマンが来ていたが、事件が解決していたのを見て帰って寝るかとスイングしていくのだった。

 翌朝、パワーマンとアイアンフィストは、次の依頼を受けにデルマー保険に出向いていた。ミズ・ジョイ・ミーカムの会社ランド・ミーカムが開発した新型のコンピューター回路が、シカゴの研究所まで輸送されるのを護衛してほしいという説明を受けた。

 二人の雇われヒーローは列車に乗り、厚い鉄の壁で保護された輸送車両の中で待機する。問題の回路は厳重に容器に封印され机に固定されており、この状態では何者も奪えないと思われた。パワーマンは本を読み、アイアンフィストは座禅を組んで車内で過ごす。と、突然列車にとんでもない衝撃が加えられ、二人は床に投げ出される。さらに輸送車両の分厚い壁がぶち抜かれて緑色の大きな手が現れた。ハルクだ! ハルクは輸送車両ごと持ち上げ、車両を引き抜いてぶん投げ、容器を机から引き抜いてしまった。パワーマンはハルクに組みつくが、ハルクの超怪力で振り払われてしまう。横転した車両の中に取り残されてしまったアイアンフィストは右手に気を込め車両の壁を打ち抜き脱出するが、すでに容器はハルクに持ち去られた後だった。

 新型コンピューター回路の入った容器を持ったハルクは、ナイトシェイドの家へ戻ってきた。この女性がハルクに頼んで回路を奪取させたのだ。頼みを聞いてくれたハルクをねぎらうナイトシェイド。

 ハルクによる事故が起こった近くの駅では、列車に乗っていた人たちが避難していた。デルマー保険からは3人のスタッフが派遣されてきた。その一人エディは、雇ったのに役に立たなかったルーク・ケイジに文句を言う。ハルクが出たと聞いたアーロン・スタック。この保険社員は実はマシンマンで、以前ハルクと戦った経験から彼について良く知っていた。エディに任せておくと現場がまとまらないと思ったアーロンは、物陰に隠れ、喉の奥にある送信装置から電話をかけて声を変えてエディを呼び出し、あなたの買ったサッカーくじが当たったと連絡する。大金持ちになたと有頂天のエディは、現場を同僚のマギーにまかせて去ってしまった。

 アーロンはマシンマンの姿となって現場に登場し、アイアンフィストとパワーマンに自己紹介し、ハルク探索に協力しようと申し出た。パワーマンはブリックマン上院議員がこのロボットを批判しているのを知っていたが、ハルクに対抗するために申し出を受ける。

 指のセンサーでガンマ線を探知しながら、マシンマンは反重力装置で空を飛びハルクを探す。後ろからジープに乗ったアイアンフィストとパワーマンがついていく。二人の雇われヒーローは突然現れたマシンマンに不安を持ちつつも強敵ハルクと対峙しなければならない仕事に助けが得られたことを心強く思う。そして、ジープの荷台には、自分が事件を解決しエディやアーロンを出し抜こうとして、秘かにマギーが乗り込んでいた。

 マシンマンガンマ線を感知し、ある家の屋根を破って突入。そこには男が一人眠っていた。相手を起こすマシンマン。アイアンフィストとパワーマンが家に入ると、マシンマンロバート・ブルース・バナー博士を紹介した。ハルクはバナー博士に戻っていたのだ。バナー博士は自分が列車強盗をしたことを憶えていなかった。ハルクを操っていた何者かが、鎮静剤を投与してハルクをバナーに戻していたのだ。

 そこへ突然マギーが踏み込んできて、バナー博士を激しく批難する。パワーマンが止めようとするが、マギーはバナー博士をひっぱたいてしまった。ハルクに変身していくバナー。マシンマンは手を伸ばしてマギーを外へ出す。ハルクはマシンマンを持ち上げてぶん投げ、パワーマンにぶつけ、二人は壁を破って外へ吹き飛ばされてしまう。アイアンフィストは武術の動きでハルクを翻弄、気を込めた鉄拳をハルクに打ち込む。だがハルクには通じず、アイアンフィストは捕まってしまった。自分を見失っているハルクにパワーマンは声をかける。以前パワーマンと会い友達になった事を思い出すハルク。落ちついたハルクは、ある女性に言われ列車を襲ったが、女性が列車に敵がいると言ったためパワーマンたちをぶっ飛ばしてしまったと話す。ハルクは、その女性はナイトシェイドと名乗ったと言ったが、アイアンフィストはその犯罪者について知っていた。

 ナイトシェイドは自宅を離れ、あるモーテルに部屋を取り、スーツケースに内蔵された携帯コンピューターに奪取した回路を接続し、さらに部屋の電話とテレビをつなげて回路のテストを開始した。新型回路の性能は抜群で、世界中のあらゆる回線に侵入することを可能にした。喜ぶナイトシェイドだが、そのとき部屋に衝撃が走り、ハルク、パワーマン、アイアンフィストが突入してきた。外へ逃げるナイトシェイドだが、そこにはマシンマンが待ちかまえていた。マシンマンはナイトシェイドの飛行機械の熱痕跡を探知し、さらに車のタイヤの跡を追い、このモーテルまで追跡してきたのだ。だが突然ナイトシェイドは意識を失い倒れてしまう。倒れた女をベッドに寝かせるが、ヒーローたちは彼女が操作していたコンピューターを見て驚く。ナイトシェイドは米軍の回路に侵入し、核戦争が3分後に迫っていたのだ! なんとか解除しようとコンピューターを操作するマシンマンだが、パワーマンは新型回路を握り潰して解決。そこで振り返るとナイトシェイドは消えていた。

 車で逃走するナイトシェイド。だが彼を追ってきたハルクがボンネットに落下してきて、ナイトシェイドは車から投げ出され近くの川に落下。警官隊が集まってきて、ナイトシェイドは捕らえられ、ハルクは跳び去る。

 翌日、ニューヨークにあるパワーマンとアイアンフィストの事務所。結局、新型回路を取り戻せなかった二人のヒーローだが、パワーマンはあんな回路なくてもランド・ミーカム社は大丈夫さと話す。一方デルマー保険ではマギーがやっと帰社し、自分を置いて先に帰ってきていたエディとアーロンに文句を言う。デルマー保険に保険金がかけられていた新型回路は結局失われてしまったが、ランド・ミーカム社はクレームをよこさなかったとパメラから聞き、アーロン・スタックは驚く。彼は知らぬことだったが、ランド・ミーカム社のもう一人の社主は、実はアイアンフィストことダニエル・ランドなのだ。

 

 MARVEL TEAM-UPの年刊特別号の#3では、これまでと違ってスパイダーマンはほんのちょい役で、ハルクとパワーマン&アイアンフィストのチームアップにマシンマンがゲストという豪華編となった。街の雇われヒーロー「ヒーロース・フォア・ハイア」として活躍しているパワーマン、アイアンフィストが主役。そして彼らを雇うのが、マシンマンことアーロン・スタックが勤めるデルマー保険、という面白い展開。悪役として登場するのは、キャプテン・アメリカの敵のナイトシェイドという女性犯罪者だ。彼女はアイアンフィストたちとこれまで戦っていて、今回はハルクを騙して使うという役回りをして、以前も共演したハルクとマシンマンが再会している。互いの組み合わせがうまい回で、落ちも気が利いている。

MARVEL TEAM-UP #99

1980年 NOV

WONDROUS WRITING : TOM DEFALCO

PULSATING PENCILS : JERRY BINGHAM

 

 大学院のティーチング・アシスタントの職を得たピーター・パーカー。彼は実はスパイダーマンであり、気晴らしのためにコスチューム姿になり、夜の街をスイングしていく。その夜。刑務所ではスパイダーマンの敵で全身を砂にできる能力を持ったサンドマンが捕らえられていた。ファンタスティック・フォーのリーダー、リード・リチャーズが作った透明のバブルの中に入れられたサンドマンは脱出しようと暴れていたが、バブルは伸縮してしまい決して破れない。他の牢を見守る看守は、牢の中で座ったまま宙に浮いている男に驚く。この男は、以前マシンマンに敗れて捕らえられた、バロン・ブリムストーンだ。彼は看守に暗示をかけて牢を開けさせた。脱獄したブリムストーンは白煙と共にサンドマンの前に登場し挨拶する。ブリムストーンは銃を抜いた警備員をビームで撃ち、サンドマンと共に刑務所から消えた。

 バブルから外へ助け出されたサンドマンは、まるで瞬間移動のように豪華な館の前に出現したのに驚く。そこはバロン・ブリムストーンの本拠地なのだ。サンドマンを招待し、マシンマンと戦うための助力を求めるブリムストーン。助けてもらったこともあり、協力するサンドマン

 翌朝。大学のキャンパスを歩いていたピーター・パーカーは、学生が持っていたラジオのニュースがサンドマン脱獄を報じているのを聞いて驚く。一方マシンマンもバロン・ブリムストーン脱獄の情報を得ていた。マシンマンは体の整備を終え、デルマー保険に出社する。口だけは達者な同僚のエディをいつものようにあしらったりしていたアーロンだが、そこへ、マシンマンをおびき寄せるためにパメラ・クインを狙ってブリムストーンサンドマンが乱入してきた。社内で暴れ回る二人のヴィラン。アーロンはパメラを机の下に隠し、サンドマンに立ち向かおうとするが、サンドマンのパンチをくらい壁を2つもぶち抜いて吹っ飛ばされてしまった。アーロンは変装を取り、マシンマンの姿となる。一方、サンドマンを探して街をスイングしていたスパイダーマンは、スパイダーセンスで異変を感じ、デルマー保険のビルへやって来た。

 サンドマンの左からはマシンマンが、右からはガラスをぶち破って突入してきたスパイダーマンが突進するが、サンドマンは体を砂に変えて床に沈み、スパイダーマンマシンマンは正面衝突してしまう。バロン・ブリムストーンは、マシンマンだけでなくスパイダーマンまで現れたことに驚きサンドマンに退却を指示するが、そのときサンドマンはすでに目的であったパメラ・クインを手にしていた。

 ヴィラン二人は一時撤退していく。スパイダーマンは発信器スパイダートレーサーをパメラに付けることに成功。マシンマンはパメラを追おうとするが間に合わず、敵の姿は消えていった。スパイダーマンは初めて見るマシンマンを敵の一味と誤認する。マシンマンは有名なスパイダーマンのことを知っていた。デイリー・ビューグル新聞にはスパイダーマンは社会の脅威だと出ていたが、マシンマンは相手がどういう人物かまだ知らないからと判断を保留。だがスパイダーマンが先制パンチを食らわせた。伸びるパンチで反撃するマシンマン。しかしスパイダーマンは二発目のパンチを避け、天井に張り付いた。話し合おうと言うマシンマン。その前にマシンマンの攻撃を封じようとスパイダーマンはウェブロープを発射し相手の手を縛るが、マシンマンは腕を振り回しスパイダーマンを投げ飛ばした。腕の温度を上げてウェブを焼き切るマシンマンスパイダーマンはキックで反撃。マシンマンは伸ばした腕をスパイダーマンに巻き付け床に叩きつける。だがスパイダーマンは相手の伸びた腕を掴んで逆に投げ飛ばす。両雄ゆずらず戦闘は続く。そこで電話が鳴り、戦闘の中だというのにエディが取ろうとするが、落下したスパイダーマンが電話に直撃、マシンマンは腕を伸ばしてエディを助けた。ついにスパイダーマンを捕らえたマシンマンは相手を説得し、二人のヒーローは和解した。

 二人が戦ったあと、警官たちが駆けつけてきた。マシンマンは窓から逃走し、話を続けたければついてきてくれと言う。スパイダーマンも窓から外へ逃走。少しあと、ビルの屋根からぶらさがったスパイダーマンと、ビルの壁に足を付けて横向きに立つマシンマンが話し合っていた。スパイダーマンが放ったスパイダートレーサーは、バロン・ブリムストーンの煙幕の影響で信号が受信できなくなっていた。マシンマンは、スパイダートレーサーを貸してくれと言い、自分の胸の装置に入れて信号を分析し、信号を受信し追跡を可能にした。マシンマンのメカニズムに驚くスパイダーマン

 二人のヒーローはギアーズ・ガービンのガレージにやって来た。ガービンはマシンマンに発電機を背負わせ、頭にプロペラを付けてくれた。これで反重力装置にエネルギーを取られず移動できる。礼を言い、マシンマンはウェブロープでぶら下がったスパイダーマンを連れて飛び立っていった。信号で追うと、森の中の屋敷へ到着した。

 屋敷の中では、バロン・ブリムストーンサンドマンが、捕らえたパメラを脅してマシンマンについて情報を得ようとしていた。と、突然ブリムストーンの体が後方へ弾けとぶ。スパイダーマンがウェブロープで引っ張ったのだ。二人のヒーローの登場に、サンドマンは下半身を砂のローラーのように変化させ突進してきた。二人は飛び上がってそれを避け、サンドマンは壁に激突。マシンマンはばらばらになった砂を見てサンドマンが死んだと思ったが、サンドマンは体を砂と化しマシンマンを包み込もうとする!

 一方バロン・ブリムストーンスパイダーマンにボール状のものを投げつけた。スパイダーマンはそれを避けるが、ボールは爆発し煙幕が張られた。ブリムストーンは背を向け、次元の壁のようなところから向こうへ逃げ込んでいく。それを追うスパイダーマン。向こうの世界は木の幹や岩が宙に浮いている奇妙なところであった。バロン・ブリムストーンは本当に魔法使いなのか? スパイダーマンはビームを避け、異次元の怪物と戦う。怪物にパンチを打ち込むが手応えがなく、逆に掴まれて投げつけられる。持ち前の敏捷さで怪物を翻弄し、スパイダーマンブリムストーンに組みつく。そこでスパイダーマンブリムストーンの背に機械装置があるのを発見し、それを壊した。すると、二人はこちらの世界へ戻ってきた。これはただの幻影装置なのか? それとも本当に魔術か? それは判らないが、スパイダーマンブリムストーンを殴り飛ばした。

 相棒がやられたことに驚くサンドマンマシンマンは上半身を回転させて砂を吹き飛ばそうとする。だがサンドマンは砂の密度を高めて体を硬くした。と、そこへスパイダーマンのウェブが飛んできて、サンドマンの目隠しをした。このチャンスに、マシンマンは手を伸ばして壁にあったコンセントに指を突っ込み、自分の体を介してサンドマンを感電させる。サンドマンは倒された。だがブリムストーンは煙幕と共に脱出していった。

 戦いは終わった。マシンマンはパメラに声をかけるが、パメラは機械人間が現れたことに驚き、スパイダーマンに助けを求めて抱きつく。スパイダーマンは、自分も理解されない正義の戦いをしていると思っていたが、マシンマンはさらに孤独だと感じる。自分はコスチュームを脱げば人間に戻れるが、彼は永遠に人類とは別のものなのだ。マシンマンは独り、その場を去るのだった…。

 

 MARVEL TEAM-UPは、毎回スパイダーマンとゲストヒーローがチームを組んで戦うという雑誌だが、#99ではついにマシンマンスパイダーマンと共演する。有名ヒーローとの共演で、マシンマンもマーベルヒーローの一員として道が開けた感じだ。悪役もお互いの悪役がチームを組むのが普通なのだが、スパイダーマン側からはサンドマンマシンマン側からはバロン・ブリムストーンがタッグを組んでマシンマンを狙う。マシンマンサンドマンスパイダーマンブリムストーンという、相手を入れ替えての戦いも基本通りで、盛り上がる。ライターはトム・デファルコで、自分がMACHINE MAN #16で創作したバロン・ブリムストーンをここで登場させてキャラクターを育てようとしているのが判って面白い。

 最後は助けたパメラに拒絶され、正義のために努力するのに理解されず悩むというマーベルヒーロー王道の展開だが、マシンマンが人間ではないことがその悲劇に拍車をかけ、悲しい余韻が残る名作となっている。

 『2001年宇宙の旅』に端を発するマシンマンのキャラクターは、人類から独立して並び立つ知性体としてのロボットという進歩的な面が強かった。それがこの話では、他者との違いに悩みを抱くというマーベルヒーローらしい結末で締められていて、いよいよマーベルユニバースのキャラクターになったという印象がある。この年の同誌年刊号でもマシンマンが登場し別のマーベルキャラクターと共演している。

MACHINE MAN #17

1980年 OCT

TOM DEFALCO -- A WRITER OF RENOWN

STEVE DITKO -- THE BEST ARTIST AROUND!

 

 バロン・ブリムストーンとの戦いを終え、パメラを救うために外した左腕を回収しに向かったマシンマンだったが、左腕は無くなっていた。誰かが盗んでいったのだ。マシンマンは胸のスイッチを操作して左腕と交信しようと試みるが、交信範囲外だった。近くではブリムストーンの部下の戦闘員たちが、ボスがやられたことで孤立し、警備員に煙幕弾を投げつけ逃走しようとしていた。それを見たマシンマンは左腕の捜索を中止して急行し、右手を伸ばして戦闘員を蹴散らす。後ろからライフルで狙われるが、伸ばした手で銃口をふさいで暴発させて防ぎ、全員を倒した。

 戦闘員を倒したマシンマンパメラを探す。パメラの姿を見ると、妙な当惑するような感覚をおぼえて戸惑うマシンマン。左腕がどこへいったのか訊くが、パメラは機械人間に怯え、異常事態が続いて混乱していたので憶えていないと答えた。仕方なくマシンマンはその場を飛び去る。

 実はマシンマンの左腕はクラガーという男が持ち去っていた。クラガーはマシンマンの左腕を入れた包みを持って、非合法の品を買ってくれる路地裏の倉庫に入っていった。中には奇妙なマスクをつけた集団がいて、クラガーはこの機械の左腕を買ってくれと売り込む。驚くべき物品を見たマスクの人物は、自分たちのボスへ連絡する。彼らのボス、ミズ・サンセット・ベインは美しい女性で、パーティーの真っ最中だった。そこへ執事が一枚の紙を持ってくる。紙に部下たちのかぶっているマスクのマークを見たサンセットは、パーティーの客に挨拶をし、その場を去る。

 マスクをした部下たちの前に現れたサンセットは、ボディースーツを着けアイメイクをして、裏の顔マダム・メナスとなっていた。目隠しをされマダム・メナスらの本拠地へ連れてこられているクラガー。マダム・メナスはクラガーに、盗品などには普通興味を持たないのだが、千ドル払ってやると言う。ごねるクラガーに、自分が扱っている品の例として殺人ゴキブリを見せ、マダム・メナスはクラガーを恐怖に追い込む。クラガーは千ドルを受け取り引き下がった。軍の最新兵器として製作されたマシンマンの腕を手に入れたマダム・メナスは、マシンマンに罠を仕掛けロボットを大量生産しようと計略を巡らす。

 アーロン・スタックのアパートの部屋には、ピーター・スパルディングギアーズ・ガービンが集まり左腕を失ったマシンマンの心配をし、相談していた。ガービンは早く代わりの腕を作らねばと言う。スパルディングは最新メカであるマシンマンの腕が容易く作れないことに悩む。マシンマンは、自分の腕を取り戻さねばならないと言う。ガービンは裏から手をまわして腕を探してみると言い、出て行った。マシンマンはコートと帽子、サングラスで変装して、外へ出て行く。

 自分の腕について聞き込みをするため、荒くれ者が集まる酒場へやって来たマシンマン。カウンターへ行き、自分の腕の情報を求めていると言うマシンマン。奇妙なこの来客に声をかけた酒場の用心棒は、こういう腕だと機械の腕を見せられ驚き倒れる。マシンマンを叩きのめそうと、後ろから男が近づき椅子で殴りつけようとするが、マシンマンは振り向きもせず右手のパンチを伸ばして殴りとばした。ふっとんでいった男がテーブルにぶつかったことから、酒場では大喧嘩が起こってしまい、これではしょうがないとマシンマンは酒場をあとにしようとする。喧嘩に巻き込まれたが、マシンマンは右手を伸ばして電球を割り、真っ暗になった店から窓ガラスを割って脱出した。酷い目にあったと、足裏の車輪で走り、左腕の捜索は明日再開しようと帰宅するマシンマン

 翌朝。アーロン・スタックは出勤しなければならない。マシンマンは金属の折りたたみ椅子をねじ曲げて左腕に取り付け、急場しのぎの腕を取り付けた。デルマー保険に、左腕を捻挫したと言って、吊って出勤するアーロン。彼を心配するパメラ。アーロンを妬み陰口を言うエディマギー。アーロンは、前回のバロン・ブリムストーンの事件で被害にあったパメラが落ちついた日常に戻ったことを喜ぶ。一方パメラはアーロンの態度がよそよそしいのを気にし、ディナーに誘ってみるが、先約があるからと断られてしまった。彼は冷たい男よと言うマギー。

 退社したマシンマンはガービンのガレージに来ていた。ガービンはマシンマンに仮設された左腕を改造。先端が光るようになった左腕を、これは何だとマシンマンは訊ね、ガービンは自家製パワーブースターだ、元の左腕とのリンクをつなげるエネルギーを発信していると説明する。マシンマンは飛び立ち、左腕を探す。ある埠頭へたどり着いたマシンマンは、左腕の反応が倉庫にあることを探知し中へ入るが、待ちかまえていた電磁ビームで撃墜されてしまった。

 気が付くと、マシンマンの前にはマダム・メナスの姿があった。マダム・メナスが手にしたスイッチを入れると、左右の壁に仕込まれた電磁石が起動し、マシンマンの体は宙に固定されてしまった。マシンマンが人間のような反応をすることに興味を持つマダム・メナス。プログラマーにユーモアのセンスがあったんだろうと答えるマシンマン。マダム・メナスはマシンマンの売買のために、左腕を入れたスーツケースを持ってその場を立ち去った。

 宙に固定されたまま、脱出の方法を考えるマシンマン。動けない彼だが、手足を伸ばす機能は使えるようだ。マシンマンは右手と左足を伸ばして左右の壁を強烈な力で押し、電磁石を破壊。自由になったマシンマンはマダム・メナスの手下のマスクの男たちを倒し、メナスを追って飛び立つ。

 マダム・メナスはテロリストのザーコフの船にやって来ていた。ロボットについての商談を進める両者。だがマシンマンが飛来、三者入り乱れての大乱闘となる。ザーコフの部下の水兵たちが組みつくが、マシンマンは上半身を高速回転させて敵を海に吹き飛ばしてしまった。マダム・メナスはスーツケースに手をかけようとしていたザーコフを撃ち、ケースを取り返す。死期を悟ったザーコフは、船の爆破スイッチを押した。左腕を探していたマシンマンは時限爆弾を察知したが、船は大爆発。吹き飛ばされたマシンマンは、海中のスーツケースを探し当て、やっと左腕を取り戻す。喜ぶマシンマン。だがマダム・メナスは本当に死んだのだろうか?

 

 失われた左腕を探すマシンマンの前に、新悪役マダム・メナスが登場する。ここでデビューしたマダム・メナスことサンセット・ベインは、このあと様々なタイトルに登場してマーベルの悪役として成長し活躍し続けるキャラクターになっていく。

 マダム・メナスの部下は、顔全体にマスクをかぶった男たちで、のっぺらぼうのマスクをかぶったヒーロー、クエスチョンを思わせるような、スティーブ・ディッコらしいデザインだ。

 マシンマンの相棒として、スパルディング医師よりもギアーズ・ガービンの方に見せ場が作られていて、ライターのデファルコがガービンというキャラクターを育てようとしているのが見て取れる。

 このコミックが収録された合本は

 https://www.amazon.co.jp/dp/0785195777/

で購入できるので、是非!

MACHINE MAN #16

1980年 AUG

TOM DEFALCO -- WRITER WITH FLAIR!

STEVE DITKO -- ARTIST BEYOND COMPARE!

 

 アーロン・スタックの今日の仕事は、有名な太陽エネルギー開発会社であるケム・ソーラー者の保安状況の確認だった。エディ・ハリスとともに研究施設内を見学する。中では新開発のソル・マックというマイクロウェーブ照射装置のテストが行われていた。分厚いチタン鋼に穴を開ける威力を見せ、技術者たちはテストは大成功を喜ぶ。

 そこへ突如、煙と共にマントを羽織った一人の男が出現した。バロン・ブリムストーンと名乗ったその男は、左手からまるで魔法使いのように炎を出し、技術者たちは驚く。この騒ぎに、アーロンはエディの前から姿を消し、マシンマンとなって腕を伸ばし壁を垂直に登り現場へ急行した。ブリムストーンは警備員に取り囲まれ銃を撃たれるが、銃弾は彼の体の周囲に展開された黒いオーラに弾かれた! 私はダークフォースを召喚し行使できると言うブリムストーン。さらにこの男は指から何かを放ち、警備員全員を眠らせた。

 だがその時、マシンマンの伸びるパンチがブリムストーンに打ち込まれる。ブリムストーンは指から炎を発し、マシンマンは炎やレーザーに耐える自分の体が吹き飛ばされたことに驚く。テーブルを持ち上げ反撃しようとするマシンマンだったが、相手はソル・マックを手にし、マシンマンに撃ち込んだ。ソル・マックの威力に、マシンマンの胸部装甲が溶解してしまう! ブリムストーンは、テーブルの下敷きになったマシンマンを見て、殺しは馬鹿どもの行いだと言い、煙と共に消えていった。

 マシンマンはテーブルを取り除き、足を伸びた腕で抱えて内部がむきだしになった胸部をガードしながら、足裏の車輪で現場から出ていった。彼が向かったのは、前回も協力してくれた街の技術者、ギアーズ・ガービンのところだ。ガービンはマシンマンに新たな胸部装甲を溶接してくれた。さらに、ソル・マックに対抗する手段を探すため、ガービンは物置部屋にマシンマンを案内する。中があまりに雑然としているので驚くマシンマン。ガービンはそこらを探しまわって、小さな箱を取り出す。中には純金製の指輪が入っていた。ガービンの妻が離縁した際に置いていったものだと言う。純金はマイクロウェーブの断熱材となる素材なので、ガービンは金を叩き伸ばして、マシンマンの重要部分をガードするつもりなのだ。

 その頃、街のギャングたちのところへ、煙と共に三人の男が出現した。リーダー格のバロン・ブリムストーンは、自分たちはサタン・スクアッドだと名乗り、ギャングたちを掌握するため力を見せつける。部下のハンマー・ハリソンはダイヤモンドの硬さを持つ四角い特殊鋼を手に付け、ギャングを殴り倒す。もう一人の部下スネーク・マーストンは手足や体を伸ばしてギャングを絞めあげる。ブリムストーンは我が黒魔術は人知を超えるのだと言いながら手から炎を発する。ギャングたちを圧倒したサタン・スクアッドは再び煙と共に消えていった。恐怖するギャングたち。

 三人は住処に戻っていた。マントをぬいだブリムストーンの背には機械装置があった。彼らは科学発明を魔術のように見せて人々を恐怖させ犯罪を行っていたのだ。そして最強の武器ソル・マックを手に入れた彼らは向かうところ敵無しで行動を続ける。

 デルマー保険に出社したアーロンは、パメラ・クインに頼んでおいたソル・マックの資料を受け取る。アーロンは資料を手に、ブリムストーンの行動を予測する。一方パメラは、ブリムストーンの居所について知っているので会いたいという男から電話を受け待ち合わせる。そこにはブリムストーンに襲われたギャングがいた。だが話をする前にギャングはスネーク・マーストンに巻き付かれ倒されてしまう。さらに、逃げようとするパメラはハンマー・ハリソンの一撃を受けて気絶し、捕まってしまう。その頃マシンマンはコンピューターにアクセスしていた。ブリムストーンがソル・マックを量産して行動するとしたら、防御として純金を使うはずだと推理した彼は、狙われそうな標的を発見した。

 足裏のブーツ・スケートで、セント・ガブリエラ教会へ向かうマシンマン。この教会の鐘は純金製なのだ。推理通り、ブリムストーンの部下たちがヘリコプターから伸びるフックを鐘に取り付けようとしていた。壁を駆け上がったマシンマンにスネーク・マーストンがからみつくが、マシンマンは上半身を高速回転して吹き飛ばした。そこへハンマー・ハリソンが殴りかかってきた。マシンマンは隣の屋根の煙突までぶっ飛ばされるが、煙突をもぎ取ってハリソンにかぶせて動きを封じた。

 ヘリからそれを見ていたバロン・ブリムストーンは、捕らえたパメラを突き落として逃走しようとする。マシンマンは左腕を外してパメラに投げつけた。伸びた左腕はパメラに巻き付き、腕の内部の反重力装置によりパメラはゆっくりと落下していく。

 マシンマンは左腕を伸ばしてヘリから垂れ下がったフックを掴み、反動をつけてヘリの外板をぶち抜き内部へ侵入する。さらに伸びたパンチで戦闘員たちをあっという間にノックアウト。ブリムストーンはソル・マックを撃ち込んできた。純金でガードされ前回よりはマイクロウェーブに耐えるマシンマンだが、このままでは危険だ。パンチを床に打ち込んで穴を開け、手のセンサーを使ってヘリにある電源の位置を探す。もう限界だというところで、手はバッテリーを発見した。マシンマンは手から自分を通した電気をヘリコプターの機体全体に流し、ブリムストーンは電気をくらって気絶した。マシンマンブリムストーンやソル・マックを警察のヘリにまかせ、ヘリから飛び立ちパメラのところへ戻っていく。パメラは無事だった。だが、自分の左腕は見あたらない。どこへ行ってしまったのか?

 

 科学を魔術にみせかけて活躍する新悪役バロン・ブリムストーンとサタン・スクアッド初登場。魔術師の格好で犯罪を行うというレトロな感じの悪役だが、変わった部下の存在もありなかなかいいキャラクターだ。マシンマンは再びギアーズ・ガービンを頼るが、何故あなたは製作者のブロードハースト博士のところへ行かないのか(笑)。まあ、街の発明家が相手の方が見ていて面白いが。純金がマイクロウェーブの遮断材になるというのは何かの勘違いかと思われる(ふつう火花が散るでしょう)。

 また、前回登場した同僚のパメラが、マギーに代わってヒロインのような位置づけになっているが、このへんはライターがデファルコにかわった影響だろう。

 このコミックが収録された合本は

 https://www.amazon.co.jp/dp/0785195777/

で購入できるので、是非!

MACHINE MAN #15

1980年 JUN

PROUDLY PRESENTED BY TOM DEFALCO : WRITER

STEVE DITKO : ARTIST

 

 マシンマンは胸のハッチを開いてメンテナンスを終え、人間の顔のマスクをかぶって今日も出社した。社内では変に生真面目な彼は浮いた存在になっていた。

 一方、代替資源センターでは事件が起ころうとしていた。女性研究員のボレッタ・トッド博士は水素エネルギーの研究で業績を上げていたが、しかし研究は行き詰まってもいた。博士は水素ガスに電磁エネルギーをチャージする実験を行う。だが実験は失敗し、暴走したエネルギーは研究室に噴き出し、ボレッタ博士は制御されない電磁エネルギーに襲われてしまった。

 デルマー保険で仕事をしていたアーロンは、同僚のパメラから社長が呼んでると言われる。ベンジャミン社長はアーロンに、代替資源センターの事故を伝え、現場に行って被害を査定し、出来るなら援助せよと言う。アーロンがセンターに到着すると、大火事が起きていた。物陰でマシンマンの姿になり、火事場へ飛び込む。中は人間には耐え難い熱になっており、二人が装置の下敷きになっていた。マシンマンは自分の足を取り外し、装置を持ち上げて自分の足をつっかえ棒にして二人を救った。足を接続しなおすマシンマンを見て、助けられた男は化け物扱いする。マシンマンは二人を抱えて建物から飛び出し助けるが、自分が理解できないものを憎み恐怖する人間に傷つくのだった。

 再び飛び立ち、建物の中を捜索するマシンマン。両手を別々の方向に伸ばし、建物の各部屋を捜索する。指のセンサーに異常を感じたマシンマンは壁をぶち抜き進むが、そこで彼が見たものは、ガス状の怪物だった。怪物は助けてと喋り、マシンマンは驚く。マシンマンのセンサーによると、怪物は電磁フィールドに包まれたイオン化した水素ガスで構成されていた。怪物は、自分は元は人間の女性だったが、事故によってこの体になってしまったと言い、助けられないのなら殺してと言いながら襲いかかってきた。狂ったように暴れ、ビームを撃ってくる彼女に対し、マシンマンはそばにあったコンピューターの断熱材でくるんで捕獲しようとする。だが相手はマシンマンの足をビームで撃った。床が崩れ、下の階に落下するマシンマン。怪物は外に出て暴れ、リポーターによりイオンという名を付けられた。マシンマンの足はひどく損傷していた。反重力装置により飛び立つが、バランスを失い、ついには墜落してしまう。人に当たるのを恐れたマシンマンは街外れの廃車置き場に落下した。

 この廃車置き場の主、オズワルド・F・ガービン、通称ギアーズ・ガービンは、突然落ちてきた男を助けようと駆け寄る。マシンマンはガービンに、修理する時間が必要なんだと言い、それまで自分を憎まないでほしいと頼む。ガービンは相手が機械の男なのに驚きつつも、手助けを申し出た。私は大きいおもちゃではないと断るマシンマンだが、意外にもガービンの腕は確かで、マシンマンの腕部ハッチを開いて配線をつなぎ、直してしまった。墜落時に砕けたマシンマンの膝を修理するには部品が足りなかったが、ガービンは車輪をひとつつないでとりあえず移動できるようにしてくれた。礼を言って、すぐさまイオンを追うマシンマン

 イオンとなってしまったボレッタ・トッド博士は、自分を殺すか治すかしてくれる相手を求めて、ファンタスティック・フォーの本部バクスタービルへ突入した。運悪くリードスーザンは外出中で、ベンジョニーしか残っていなかった。ザ・シングことベン・グリムは葉巻を吸いつつ風呂に入っていたが、侵入警報を開いてバスタオルを巻きあわててとび出す。ヒューマントーチことジョニー・ストームも飛んできて、二人は侵入者を捜しにいく。

 一輪車状態で走るマシンマンは、警察無線を傍受してバクスタービルの異変を知り、そこへ向かう。道路は渋滞のため、車の上を通って急ぐ。バクスタービルでは、イオンを発見したヒューマントーチがファイアーボールを投げつけていたが、イオンの体を素通りしてしまい通用しない。逆に電磁ブラストを撃ち込まれピンチにおちいるヒューマントーチ。そこへザ・シングが駆けつけ、近くにあった機械装置を持ち上げ投げつけようとする。しかしイオンは機械に磁力を浴びせ、シングは引き合った機械に押しつぶされてしまった。

 そこへマシンマンが到着。一輪車で走る変なロボットを見たヒューマントーチはどっから入ってきたと訊ね、窓からという答えを聞いて火炎を浴びせかける。有名スーパーヒーローに不審感を抱くマシンマン。ここでヒューマントーチと戦っている暇はない。マシンマンは右手の冷却装置を使って拳を凍らせてパンチを食らわせノックアウトした。イオンは、ファンタスティック・フォーも自分を助けられなかったと、外へ逃げていく。それを追おうとするマシンマンだが、機械の山をはねのけてザ・シングが復活し、立ちはだかる。マシンマンは伸ばした腕でシングの足をすくって倒し、外へ走り去った。

 やけになって街で暴れるイオン。彼女を発見したマシンマンは、街灯の電線を掴んでイオンに電気を撃ち込み、イオンを市場の肉売り場へ追い込んだ。自分を救ってくれるものなどないことに絶望したイオンはマシンマンを攻撃し、マシンマンは逃げて冷凍室にとび込む。追ってきたイオンはマシンマンを潰そうとし、お前は私よりも奇怪な存在だと罵倒するが、そこで彼女に異変が生じた。ガス状だった彼女の体は、冷凍室の低温により元の人間の姿に戻ったのだった。マシンマンはそれを予想し彼女をここに誘い込んだのだ。ボレッタ博士をKOし、いつかあなたの変異は治されるかもしれない、しかし私は…と言い残して、マシンマンは去っていった。この肉市場にはあとでファンタスティック・フォーの4人がやってきて、ボレッタ博士の治療法が発見されるまで彼女を保護することにして、事態を収めた。マシンマンは、ギアーズ・ガービンが待つ廃車置き場へ戻っていくのだった。

 

 この号からライターがトム・デファルコに代わった。デファルコはこの時期マーベルでのキャリアをスタートさせて間もない頃だったが、このあとAMAZING SPIDER-MANやTHOR、FANTASTIC FOURのライターを歴任し、編集長にもなり、'80年代後半から'90年代前半のマーベルをリードしていく。この話でも、新キャラクターのギアーズ・ガービンの登場や一輪車で走るヘンテコマシンマンファンタスティック・フォーとの共演など盛り沢山な内容で楽しませてくれる。

 このコミックが収録された合本は

 https://www.amazon.co.jp/dp/0785195777/

で購入できるので、是非!

MACHINE MAN #14

1980年 APR

MARV WOLFMAN : writer/editor

STEVE DITKO : artist

 

 テレビでは、スクールバスの事故をマシンマンが救ったニュースが報じられていた。それを見たブリックマン上院議員は癇癪を起こす。マシンマンが人類の敵だというアピールで大統領の座を狙う彼にとって、マシンマンの評判が良くなるのはまずい事態なのだ。ブリックマンは二人の部下フレッドアーチーに対策を命じる。

 二人はハイラム・R・ゴールドスミス博士のところを訊ねた。博士はちょうど、人体の分子密度を上げる実験を行おうとしていた。実験台となるのは、バリー・ウィザースプーンという失業者だった。妻と子供を部屋から出し、バリーは実験に挑む。エネルギーがバリーの肉体に注ぎ込まれ、彼の体の密度が高まりそれと同時に心が消滅していき、エネルギーは暴走し、部屋は大爆発を起こした。だがバリーは無事で、素手で壁をまるで紙のように突き破るほどの超分子密度の体となっていた。フレッドとアーチーの二人は、これこそブリックマンの望んだマシンマンを倒す人材だと喜び、バリーに近づく。

 その頃マシンマンピーターと共に取材を受け、鉄塔を持ち上げるほどの力の強さを記者たちに見せていた。メイソンという女性記者は、マシンマンの力は脅威となると断じ、また、マシンマンのようなロボットが増えれば仕事を失う者が増えると批判する。まだマシンマンを恐れる者が多いのが実情だった。

 記者会見後、マシンマンアーロン・スタックの姿になり職場へ戻った。アーロンが気になり誘惑しようとする女性社員マギーは、アーロンにとびつきキスするが、アーロンは彼女を持ち上げて棚の上にあげてしまい、キスはあなたが必要な次の機会にするべきだ、たとえばエディーにと言って去る。侮辱されたと思ったマギーは、アーロンと徹底抗戦する決意を固めるのだった。

 ウォール街の金庫に、壁を破って侵入する人物がいた。警備員が銃を向けてみると、それはマシンマンだ! 警備員たちは銃を撃ち込むがマシンマンには通じず、殴り倒され金を奪われる。それは、バリーが変装したニセマシンマンだった。心を失ったように従うバリーを使うフレッドとアーチーは、マシンマンの評判を落とすのと同時に、金を手に入れられると有頂天になる。

 ピーターはマシンマンに電話し、ニセマシンマンが現れたことを知らせる。ピーターの家には警官がやって来て、ピーターは彼らに逮捕されてしまった。それを見たマシンマンは無実を証明しようと考える。この事件とは別にアーロンを見張っていたマギーの姿を見つけるが、マシンマンは彼女に見つからないよう抜けだし、偽者を探し始めた。

 バリー・ウィザースプーンが変装したニセマシンマンは貴金属店を襲い時計などを奪った。奇妙な短波を追ったマシンマンは、偽者が壁の穴から出てきたところを発見し、格闘となる。マシンマンは送電線を掴み相手に高圧電流を流すが全く通じない。その時おかしなことが起こった。マシンマンの体が横転したのだ。彼の体内で平衡感覚をつかさどるジャイロが、ニセマシンマンの高密度の体の影響で狂わされているのだ。偽者は去り、倒れていたマシンマンのところへ警官が駆けつけ、金品を奪った犯人扱いされてしまう。マシンマンは上空へ脱出する他なかった。

 この事件が報道され、ブリックマンはそれみたことかとマシンマン批判を再開する。一方マシンマンは秘かに夜の街を移動していた。またもアーロンを見張るマギーを見かけるがかまわず、ピーターが入れられた牢の窓に取り付き彼と話をする。だが階下にはメイソン記者がおり、写真を撮られてしまった。

 翌日、アーロンはマシンマンが牢に侵入しようとしたというデイリー・ビューグル新聞を見て驚く。一計を案じた彼は、マシンマンの姿となって警官の前に現れ、自分から捕らえられた。一方、フレッドとアーチーはまたもニセマシンマンを使って金庫を襲う。その姿が写真に撮られ、牢にいた本物のマシンマンの無実が証明された。あとは偽者を止めるだけだ。

 その頃、ブレッドとアーチーは仲間割れをしていた。ニセマシンマンの威力をさらなる金儲けに使おうとするフレッドは、慎重な意見のアーチーを邪魔者扱いし、マイクでニセマシンマンに命令してアーチーを追わせる。アーチーはマシンマンのところへ逃げ込んできたが、同時にニセマシンマンも壁を破って登場。再び戦いとなる。だがニセマシンマンにジャイロを狂わされてしまうマシンマンは普段の能力を発揮できず、伸びた足によるキックもまったく通じず、持ち上げられて共に窓から外へ落下していく。反重力装置で舞い上がり難を逃れたマシンマンは偽者を追い、トラックの荷台に入っていくのを発見。手足を伸ばしてトラックを横転させると、運転席からフレッドが現れニセマシンマンマシンマンを破壊せよと命じた。またも偽者に圧倒されるマシンマンであったが、手を伸ばしてフレッドが持っていたマイクを奪った。命令が伝えられなければ偽者は動かず、マシンマンはフレッドを捕らえる。フレッドはすべてがブリックマンの指示だったと白状するのだった。

 だがブリックマンはこの事実を否定し、さらなる反マシンマンキャンペーンを張るのだった。ニセマシンマンことバリーは、ブロードハースト博士の手で次元効果が反転され、再び元の体に戻ることができた。幸せそうに妻子と抱き合うバリーを、マシンマンは見守るのだった。

 

 ヒーローものに付きものである、ニセモノ話。ニセマシンマンはロボットではなく、体を高密度に変えられた人間の変装であり、科学実験の影響で超人化してしまうのはマーベルのいつもののパターンだ。この偽者はマシンマンのジャイロを狂わすため、本物を圧倒するのが面白い。それにしても、あらゆる事態にめげずに反マシンマン運動に突っ走るブリックマン上院議員がもの凄いです。

 このコミックが収録された合本は

 https://www.amazon.co.jp/dp/0785195777/

で購入できるので、是非!

MACHINE MAN #13

1980年 FEB

MARV WOLFMAN : SCRIPT/EDITS

STEVE DITKO : ART

 

 今マシンマンはエレベーターシャフトの内部に閉じ込められていた。上から彼を押しつぶすようにエレベーターが迫る。マシンマンは手足を伸ばしてエレベーターの降下を食い止めようとするが、彼の手足の伸縮力をもってしても止まらない。その姿をモニターしているのは、巨大飛行船ザナドゥの主、クビライ・カーンだ。この太った男は、マシンマンの完璧な能力に興味を持ち、マシンマンの性能をテストするためにエレベーター落下の罠を仕組んだのだ。マシンマンはエレベーターの発電機に取り付き、電力を自分に通して磁力として放ち、エレベーターを押し返すことに成功した。カーンはこの結果に満足し、マシンマンの体を手に入れることを決意する。

 クビライ・カーンはそのあと、巨大な自分の石像を作らせていた職人を、床を開いて飛行船から落として殺す。彼は冷酷な独裁者なのだ。モニターを見ると、マシンマンはカーンの手下どもを、腕を伸ばして撃退していた。満足したカーンは、マシンマンの高性能な体を、自分の頭脳を入れる器にしようと行動を開始する。

 時は移って、ここはデルマー保険。この会社では、人間アーロン・スタックとしてマシンマンが仕事を続けていた。真面目に仕事するアーロンに、エドワード・ホワイトがマギーとの仲を疑ってちょっかいを出してくる。マギー・ジョーンズもやってきて二人は言い合いを始め、アーロンは仕事だから別のところでやってくれと素っ気なく言う。そのあしらい方に二人は気を悪くして立ち去った。そこへ社長のベンジャミンがやってきて、アーロンの仕事ぶりを褒めた。社内はアーロンの噂で持ちきりだが、奇妙な感じも受けているという。彼らとも交流しようと思っていると言うアーロン。

 社長室を出たアーロンはマギーに誘われパーティーに出た。エドワードはアーロンにグラスを渡し、アーロンは勧められるままに飲む。それは強い酒で、エディーは悪戯のつもりで飲ませたのだが、初めて体内に摂取したアルコールはマシンマンの体に影響し、アーロンはふらついたあと倒れてしまう。

 気が付くとアーロンはピーター・スパルディングの家のベッドに寝ていた。ピーターに、きみは19時間眠っていたと聞いて驚くアーロン。さらにアーロンは機能の不調を訴え、ピーターはそれが二日酔いだよと答える。その時、ザナドゥではカーンの指示で特殊音波が発せられた。それを感知したアーロンは頭を押さえて苦しむ。原因を調べるためにアーロンはマシンマンの姿となり、空に飛び立った。

 工事現場の上を通過しようとした時、カーンのリモートコントロールによりビル破壊用鉄球がマシンマンを襲い、何度も激突する。カーンの声が響き、マシンマンの性能について科学雑誌を調査し、音波攻撃に弱いことも知っているぞと明かした。マシンマンは鉄球のワイヤーを掴んで重機を潰す。だが周囲にあった何台もの廃車が突然空を飛び、ライトからビームを発射し攻撃してきた。マシンマンは鉄球を振るい、ワイヤーで車をからめとって撃破する。

 罠は続き、マシンマンは巨大な迷路の中に閉じ込められた。さらに小型の飛行機械がレーザービームを撃って攻撃してくる。それを避けつつマシンマンは脱出の方法を探る。足を伸ばして迷路の天井を抜こうとしてみたが、天井は分厚い。ならばとマシンマンは体を回転させてドリルのように地面を掘り、脱出した。マシンマンに呼びかけるカーンの声は、マシンマンの性能を賞賛した。マシンマンの前に、巨大飛行船ザナドゥが姿を現す。

 内部に突入したマシンマンを、カーンの部下トングが待ち受けていた。このカーンの忠実な部下は、カーンにより肉体を強化され、また神経を切断されて痛みを感じない体になっているのだ。トングはマシンマンと格闘戦を繰り広げ、マシンマンは頭部を強打され意識を失ってしまう。トングは気絶したマシンマンの体を運んだ。カーンはマシンマンの体に意識を移し、永遠に生きようとしているのだ。マシンマンの体はカーンの太った体と共にベッドに寝かされ、頭脳置換機にかけられた。装置が作動し、マシンマンの体が起き上がる。成功を祝うトングは、あの機械の意識は古い体の中にあるのですねと訊ねる。だが、元のカーンの体がトングに呼びかけるのを聞き、精神が入れ替わっていない事が判った。トングは再びマシンマンを取り押さえようと格闘するが、さきほどとは打って変わってマシンマンはトングを圧倒する。実はマシンマンは自分を狙う者の目的を知るためにわざと倒されたのだった。腕を伸ばしてトングを投げ飛ばすマシンマン。太って病にも冒されていたカーンは元の体のまま、一体どうやったのだと訊ねる。マシンマンは装置の電極を反転させていたことを明かし、壁をぶち抜いてその場から去っていった。飛行船の中で装置がスパークし、大爆発を起こし、クビライ・カーンは最後を迎えるのだった。

 

 #11のラストから続く、クビライ・カーンの決着編。でっぷりと太ったこの東洋人の王者は、マシンマンの機械の体を自分の新たなボディにしようというとんでもない野望を抱き、周到な罠を巡らせてくるのが楽しい。敵の部下の東洋人の格闘家トングとの戦いも、マシンマンが倒された!という驚きがあるが、最後は因果応報の結末を迎えるのだ。

 このコミックが収録された合本は

 https://www.amazon.co.jp/dp/0785195777/

で購入できるので、是非!

MACHINE MAN #12

1979年 DEC

MARV WOLFMAN : SCRIPTER/EDITOR

STEVE DITKO : ARTIST

 

 夜のニューヨークの路地裏。マシンマンは建物の上から眼下を見ていたが、暴漢が女性に襲いかかり財布を奪って逃げていくのが見えた。手足を伸ばしてクズカゴを暴漢の頭からかぶせて捕らえ、財布を女性に返す。だが財布を受け取った女性はマシンマンを恐れる。私はあなたを助けたのになぜだと問うマシンマンに女性は、だけどあなたは人間じゃない、怪物だわと言い捨てて逃げていってしまう。その言葉にショックを受けるマシンマン

 と、すぐ近くで車が当て逃げをした。車を追ったマシンマンは手を伸ばしてボンネットを掴み、後輪を踏みつぶして停車させた。座席からとび出し犯人が逃げていくが、マシンマンはマンホールを手に取り、磁力を帯びさせ、回転をつけて投げた。マンホールは犯人のベルトのバックルに吸い付き、ブーメランのように大きなカーブを描いてマシンマンのところに戻ってきた。犯人は、自分が当て逃げした男はギャングから盗みを働き、自分が殺し屋として送り込まれたと語る。どちらも悪人だったのだ。

 また別の場所では男が銃撃されて倒れ、その息子が父に駆け寄っており、撃った男が逃走しようとしていた。そこへ登場したマシンマンは、きみの父親はまだ生きている、戻ってから助けるよと言い、犯人を追う。少年は、犯人が金を奪うために父を撃ったと言った。紙切れが命よりも価値があると考える人類がわからなくなるマシンマン。フェンスに電流を流しつつ引っこ抜いて犯人にぶつけて倒す。だが、今夜出会った人間たちによって人類への評価が激減したマシンマンは感情を爆発させ、空中に浮いて雷のような高圧電流を周囲へ放出した。

 放射したエネルギーは、マシンマンが考えていなかった効果を及ぼす。エネルギーは近くの建物に飛び、中で実験中だった男が使っていたビーカーやフラスコを割って化学薬品を飛び散らせ何らかの変化をもたらし、さらに中にいた5人の人たちに伝わり、ビルは崩れ彼らは倒れた。死んだかに見えたこの5人だが、彼らに奇妙な変化が起こっていた。

 そうとは知らないマシンマンは、先ほどの父を撃たれた子供のところへ戻った。子供は父を助けるために手を貸してくれないのを言うが、人間不信になっているマシンマンは、人類は私が助ける価値はない、何故手を貸さねばならない?と答えてしまう。子供は父を助けるために必死でマシンマンにお願いをする。マシンマンは、自分は悪人がいるからといって善人を見捨てることはできないと考え直し、手から磁力を放って父親の体から銃弾を取り出した。その時、倒れていた犯人が起き上がった。マシンマンは手を伸ばして犯人を捕らえ、ばらばらにしてやろうかと脅す。男は必死で命乞いをし、マシンマンは男に迫るが、その時、上空からビームが放たれ、「止めるのだ、父よ」と声がかかった。

 見上げると、上空に5人の輝く人物がいた。驚くマシンマン。5人はマシンマンに、命は神聖だ、抹殺すべからずだ、暴力が暴力を生んではならないと言う。自分のセンサーをも圧倒する謎の相手に、きみたちは誰だと問うマシンマン。5人は、アベル・スタックがあなたの父親であるように、あなたは我々の父だと答える。

 マシンマンはブラストを放つが、火線は宙に浮く人物に届く前に曲げられてしまった。彼らはマシンマンが放った電気の影響で人類より発展した存在となったことを明かす。マシンマンのパワーすらまったく通じない超存在となった彼らは、生命を殺すことを否定した。マシンマンは彼らを攻撃しつつ、自分はこれまで人間を倒すだけではなく見守り続けた、だが彼らは破壊を行う、愛を持たない者がいたならば、なぜ死を与えてはいけないのかと疑問を投げかける。マシンマンが伸ばした手も彼らを素通りしてしまいまったく通じない。彼らは、あなたは論理から生まれた者なのに、この世界に役立ち楽園へと向かうより人を殺そうとするのは理屈に合わないと諭す。さらに、宙に浮き飛びかかってきたマシンマンの頭をビームバリアでおおって動きを封じ、あなたは力を無駄に使っており、あなたの父の教えを忘れていると言う。マシンマンは、私を捕らえる権利はないと反論。だが5人は、あなたが我々を超存在にし、人類に手を貸す道をもたらしたと語った。マシンマンは、人類は不快な行動を取り、世界を破壊していると指摘して、その愚行にうんざりするのになぜ彼らに手を貸さねばならないのかと問う。5人は人類には希望があると答え、マシンマンが人類の進歩を妨げるのは許されないと言い、マシンマンの体を強力な力場で包んでしまった。

 動きが取れなくなったマシンマンを前にし彼らは、マシンマンは破壊されるべきであるか、その処遇について裁判を行う。一人はマシンマンを解体すべきだと主張し、別の者はアーロンは生き残るべきだと語る。マシンマンは、自分は犯罪を犯したわけではないと主張するが、超越者たちの判決は下ろうとしていた。

 その時、地上にいた少年から、待って、彼は父さんを助けてくれた、彼はいい人だよと声がかかった。これまで人間不信におちいっていたマシンマンは少年に、私はあなたと違う怪物ではないかと訊ねるが、少年はマシンマンが人々に手を貸そうとしていたと言い、怪物じゃないよと否定する。5人の超越者たちはマシンマンを開放した。マシンマンも人間に絶望していた考えを改めた。安心した5人は、あなたは真実を学んだと言い、地球にはもう居るべきではないと、星の世界へと旅立っていった。

 

 マシンマンに善を説く超越者が突然登場するという、ヒーローコミックとしては奇妙な内容だが、スティーブ・ディッコ独特の道徳観がもろに出たストーリーが興味深い一編になっている。なかなかこんなの読めないという点で読み応えありだ。

 このコミックが収録された合本は

 https://www.amazon.co.jp/dp/0785195777/

で購入できるので、是非!