アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

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MARVEL TEAM-UP #99

1980年 NOV

WONDROUS WRITING : TOM DEFALCO

PULSATING PENCILS : JERRY BINGHAM

 

 大学院のティーチング・アシスタントの職を得たピーター・パーカー。彼は実はスパイダーマンであり、気晴らしのためにコスチューム姿になり、夜の街をスイングしていく。その夜。刑務所ではスパイダーマンの敵で全身を砂にできる能力を持ったサンドマンが捕らえられていた。ファンタスティック・フォーのリーダー、リード・リチャーズが作った透明のバブルの中に入れられたサンドマンは脱出しようと暴れていたが、バブルは伸縮してしまい決して破れない。他の牢を見守る看守は、牢の中で座ったまま宙に浮いている男に驚く。この男は、以前マシンマンに敗れて捕らえられた、バロン・ブリムストーンだ。彼は看守に暗示をかけて牢を開けさせた。脱獄したブリムストーンは白煙と共にサンドマンの前に登場し挨拶する。ブリムストーンは銃を抜いた警備員をビームで撃ち、サンドマンと共に刑務所から消えた。

 バブルから外へ助け出されたサンドマンは、まるで瞬間移動のように豪華な館の前に出現したのに驚く。そこはバロン・ブリムストーンの本拠地なのだ。サンドマンを招待し、マシンマンと戦うための助力を求めるブリムストーン。助けてもらったこともあり、協力するサンドマン

 翌朝。大学のキャンパスを歩いていたピーター・パーカーは、学生が持っていたラジオのニュースがサンドマン脱獄を報じているのを聞いて驚く。一方マシンマンもバロン・ブリムストーン脱獄の情報を得ていた。マシンマンは体の整備を終え、デルマー保険に出社する。口だけは達者な同僚のエディをいつものようにあしらったりしていたアーロンだが、そこへ、マシンマンをおびき寄せるためにパメラ・クインを狙ってブリムストーンサンドマンが乱入してきた。社内で暴れ回る二人のヴィラン。アーロンはパメラを机の下に隠し、サンドマンに立ち向かおうとするが、サンドマンのパンチをくらい壁を2つもぶち抜いて吹っ飛ばされてしまった。アーロンは変装を取り、マシンマンの姿となる。一方、サンドマンを探して街をスイングしていたスパイダーマンは、スパイダーセンスで異変を感じ、デルマー保険のビルへやって来た。

 サンドマンの左からはマシンマンが、右からはガラスをぶち破って突入してきたスパイダーマンが突進するが、サンドマンは体を砂に変えて床に沈み、スパイダーマンマシンマンは正面衝突してしまう。バロン・ブリムストーンは、マシンマンだけでなくスパイダーマンまで現れたことに驚きサンドマンに退却を指示するが、そのときサンドマンはすでに目的であったパメラ・クインを手にしていた。

 ヴィラン二人は一時撤退していく。スパイダーマンは発信器スパイダートレーサーをパメラに付けることに成功。マシンマンはパメラを追おうとするが間に合わず、敵の姿は消えていった。スパイダーマンは初めて見るマシンマンを敵の一味と誤認する。マシンマンは有名なスパイダーマンのことを知っていた。デイリー・ビューグル新聞にはスパイダーマンは社会の脅威だと出ていたが、マシンマンは相手がどういう人物かまだ知らないからと判断を保留。だがスパイダーマンが先制パンチを食らわせた。伸びるパンチで反撃するマシンマン。しかしスパイダーマンは二発目のパンチを避け、天井に張り付いた。話し合おうと言うマシンマン。その前にマシンマンの攻撃を封じようとスパイダーマンはウェブロープを発射し相手の手を縛るが、マシンマンは腕を振り回しスパイダーマンを投げ飛ばした。腕の温度を上げてウェブを焼き切るマシンマンスパイダーマンはキックで反撃。マシンマンは伸ばした腕をスパイダーマンに巻き付け床に叩きつける。だがスパイダーマンは相手の伸びた腕を掴んで逆に投げ飛ばす。両雄ゆずらず戦闘は続く。そこで電話が鳴り、戦闘の中だというのにエディが取ろうとするが、落下したスパイダーマンが電話に直撃、マシンマンは腕を伸ばしてエディを助けた。ついにスパイダーマンを捕らえたマシンマンは相手を説得し、二人のヒーローは和解した。

 二人が戦ったあと、警官たちが駆けつけてきた。マシンマンは窓から逃走し、話を続けたければついてきてくれと言う。スパイダーマンも窓から外へ逃走。少しあと、ビルの屋根からぶらさがったスパイダーマンと、ビルの壁に足を付けて横向きに立つマシンマンが話し合っていた。スパイダーマンが放ったスパイダートレーサーは、バロン・ブリムストーンの煙幕の影響で信号が受信できなくなっていた。マシンマンは、スパイダートレーサーを貸してくれと言い、自分の胸の装置に入れて信号を分析し、信号を受信し追跡を可能にした。マシンマンのメカニズムに驚くスパイダーマン

 二人のヒーローはギアーズ・ガービンのガレージにやって来た。ガービンはマシンマンに発電機を背負わせ、頭にプロペラを付けてくれた。これで反重力装置にエネルギーを取られず移動できる。礼を言い、マシンマンはウェブロープでぶら下がったスパイダーマンを連れて飛び立っていった。信号で追うと、森の中の屋敷へ到着した。

 屋敷の中では、バロン・ブリムストーンサンドマンが、捕らえたパメラを脅してマシンマンについて情報を得ようとしていた。と、突然ブリムストーンの体が後方へ弾けとぶ。スパイダーマンがウェブロープで引っ張ったのだ。二人のヒーローの登場に、サンドマンは下半身を砂のローラーのように変化させ突進してきた。二人は飛び上がってそれを避け、サンドマンは壁に激突。マシンマンはばらばらになった砂を見てサンドマンが死んだと思ったが、サンドマンは体を砂と化しマシンマンを包み込もうとする!

 一方バロン・ブリムストーンスパイダーマンにボール状のものを投げつけた。スパイダーマンはそれを避けるが、ボールは爆発し煙幕が張られた。ブリムストーンは背を向け、次元の壁のようなところから向こうへ逃げ込んでいく。それを追うスパイダーマン。向こうの世界は木の幹や岩が宙に浮いている奇妙なところであった。バロン・ブリムストーンは本当に魔法使いなのか? スパイダーマンはビームを避け、異次元の怪物と戦う。怪物にパンチを打ち込むが手応えがなく、逆に掴まれて投げつけられる。持ち前の敏捷さで怪物を翻弄し、スパイダーマンブリムストーンに組みつく。そこでスパイダーマンブリムストーンの背に機械装置があるのを発見し、それを壊した。すると、二人はこちらの世界へ戻ってきた。これはただの幻影装置なのか? それとも本当に魔術か? それは判らないが、スパイダーマンブリムストーンを殴り飛ばした。

 相棒がやられたことに驚くサンドマンマシンマンは上半身を回転させて砂を吹き飛ばそうとする。だがサンドマンは砂の密度を高めて体を硬くした。と、そこへスパイダーマンのウェブが飛んできて、サンドマンの目隠しをした。このチャンスに、マシンマンは手を伸ばして壁にあったコンセントに指を突っ込み、自分の体を介してサンドマンを感電させる。サンドマンは倒された。だがブリムストーンは煙幕と共に脱出していった。

 戦いは終わった。マシンマンはパメラに声をかけるが、パメラは機械人間が現れたことに驚き、スパイダーマンに助けを求めて抱きつく。スパイダーマンは、自分も理解されない正義の戦いをしていると思っていたが、マシンマンはさらに孤独だと感じる。自分はコスチュームを脱げば人間に戻れるが、彼は永遠に人類とは別のものなのだ。マシンマンは独り、その場を去るのだった…。

 

 MARVEL TEAM-UPは、毎回スパイダーマンとゲストヒーローがチームを組んで戦うという雑誌だが、#99ではついにマシンマンスパイダーマンと共演する。有名ヒーローとの共演で、マシンマンもマーベルヒーローの一員として道が開けた感じだ。悪役もお互いの悪役がチームを組むのが普通なのだが、スパイダーマン側からはサンドマンマシンマン側からはバロン・ブリムストーンがタッグを組んでマシンマンを狙う。マシンマンサンドマンスパイダーマンブリムストーンという、相手を入れ替えての戦いも基本通りで、盛り上がる。ライターはトム・デファルコで、自分がMACHINE MAN #16で創作したバロン・ブリムストーンをここで登場させてキャラクターを育てようとしているのが判って面白い。

 最後は助けたパメラに拒絶され、正義のために努力するのに理解されず悩むというマーベルヒーロー王道の展開だが、マシンマンが人間ではないことがその悲劇に拍車をかけ、悲しい余韻が残る名作となっている。

 『2001年宇宙の旅』に端を発するマシンマンのキャラクターは、人類から独立して並び立つ知性体としてのロボットという進歩的な面が強かった。それがこの話では、他者との違いに悩みを抱くというマーベルヒーローらしい結末で締められていて、いよいよマーベルユニバースのキャラクターになったという印象がある。この年の同誌年刊号でもマシンマンが登場し別のマーベルキャラクターと共演している。