アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

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MARVEL TEAM-UP ANNUAL #3

1980年 NOV

ROGER STERN : writer

HERB TRIMPE : pencils

 

 森の中を、邪魔な木を薙ぎ倒しながら、ハルクが進んでいた。小川にたどり着いたハルクは水を飲みながら、孤独な自分を思う。そこへ、上空から奇妙な形をした飛行機械が近づいていた。着陸した飛行機械からは、フードとマントをつけた怪しい人物が降りてきた。この怪人はひと抱えもある装置を持ち、その発信電波でハルクを操ろうとしているのだ。ハルクに装置を向け、電波を発射する怪人。頭が痛み出したハルクが振り向くとそこにはフードの怪人がいた。お前の力が必要なのだと言う怪人だが、ハルクは怒って装置をもぎ取り粉砕してしまう。追いつめられる怪人。だがハルクがフードを取ると、中は黒人女性だった。ナイトシェイドと名乗ったこの女性は、ハルクに助けてほしいことがあると懇願する。女性の助けになろうと、ハルクはナイトシェイドを抱えて彼女の飛行機械へ向かった。

 夜の波止場の高架下。ゴミ箱からアタッシュケースを取り出す男が一人。この男ルフレッド・セービンは、あるフイルムで女性をゆすり、ケースの中の大金をせしめたのだった。このフイルムさえあればもっと金を引き出せるぜとほくそ笑むセービンに、声をかけてくる者があった。それは、武術ヒーロー、アイアンフィスト! 彼はセービンが脅している女性から依頼を受けているのだ。セービンはアイアンフィストに銃を向け撃ちまくるが、アイアンフィストは巧みな身のこなしによりすべての銃弾を避け、跳び蹴りをくらわせる。かなわぬと見たセービンはフイルムケースを投げつけスーツケースを持って逃走。だが眼前に何者かが現れ、激突したセービンは弾き返されて倒れてしまう。セービンはコートの中からショットガンを取り出し相手を撃つが、相手は生きていた。それは、アイアンフィストと組んでヒーロー稼業をしている、鋼鉄のような体を持つ男パワーマンことルーク・ケイジだったのだ。パワーマンはセービンを絞めあげぶっ飛ばした。フイルムとスーツケースの金を回収して依頼を達成した二人のヒーローは、せービンをゴミ箱に叩き込んでその場を去っていく。近くのビルの壁には銃声を聞きつけたスパイダーマンが来ていたが、事件が解決していたのを見て帰って寝るかとスイングしていくのだった。

 翌朝、パワーマンとアイアンフィストは、次の依頼を受けにデルマー保険に出向いていた。ミズ・ジョイ・ミーカムの会社ランド・ミーカムが開発した新型のコンピューター回路が、シカゴの研究所まで輸送されるのを護衛してほしいという説明を受けた。

 二人の雇われヒーローは列車に乗り、厚い鉄の壁で保護された輸送車両の中で待機する。問題の回路は厳重に容器に封印され机に固定されており、この状態では何者も奪えないと思われた。パワーマンは本を読み、アイアンフィストは座禅を組んで車内で過ごす。と、突然列車にとんでもない衝撃が加えられ、二人は床に投げ出される。さらに輸送車両の分厚い壁がぶち抜かれて緑色の大きな手が現れた。ハルクだ! ハルクは輸送車両ごと持ち上げ、車両を引き抜いてぶん投げ、容器を机から引き抜いてしまった。パワーマンはハルクに組みつくが、ハルクの超怪力で振り払われてしまう。横転した車両の中に取り残されてしまったアイアンフィストは右手に気を込め車両の壁を打ち抜き脱出するが、すでに容器はハルクに持ち去られた後だった。

 新型コンピューター回路の入った容器を持ったハルクは、ナイトシェイドの家へ戻ってきた。この女性がハルクに頼んで回路を奪取させたのだ。頼みを聞いてくれたハルクをねぎらうナイトシェイド。

 ハルクによる事故が起こった近くの駅では、列車に乗っていた人たちが避難していた。デルマー保険からは3人のスタッフが派遣されてきた。その一人エディは、雇ったのに役に立たなかったルーク・ケイジに文句を言う。ハルクが出たと聞いたアーロン・スタック。この保険社員は実はマシンマンで、以前ハルクと戦った経験から彼について良く知っていた。エディに任せておくと現場がまとまらないと思ったアーロンは、物陰に隠れ、喉の奥にある送信装置から電話をかけて声を変えてエディを呼び出し、あなたの買ったサッカーくじが当たったと連絡する。大金持ちになたと有頂天のエディは、現場を同僚のマギーにまかせて去ってしまった。

 アーロンはマシンマンの姿となって現場に登場し、アイアンフィストとパワーマンに自己紹介し、ハルク探索に協力しようと申し出た。パワーマンはブリックマン上院議員がこのロボットを批判しているのを知っていたが、ハルクに対抗するために申し出を受ける。

 指のセンサーでガンマ線を探知しながら、マシンマンは反重力装置で空を飛びハルクを探す。後ろからジープに乗ったアイアンフィストとパワーマンがついていく。二人の雇われヒーローは突然現れたマシンマンに不安を持ちつつも強敵ハルクと対峙しなければならない仕事に助けが得られたことを心強く思う。そして、ジープの荷台には、自分が事件を解決しエディやアーロンを出し抜こうとして、秘かにマギーが乗り込んでいた。

 マシンマンガンマ線を感知し、ある家の屋根を破って突入。そこには男が一人眠っていた。相手を起こすマシンマン。アイアンフィストとパワーマンが家に入ると、マシンマンロバート・ブルース・バナー博士を紹介した。ハルクはバナー博士に戻っていたのだ。バナー博士は自分が列車強盗をしたことを憶えていなかった。ハルクを操っていた何者かが、鎮静剤を投与してハルクをバナーに戻していたのだ。

 そこへ突然マギーが踏み込んできて、バナー博士を激しく批難する。パワーマンが止めようとするが、マギーはバナー博士をひっぱたいてしまった。ハルクに変身していくバナー。マシンマンは手を伸ばしてマギーを外へ出す。ハルクはマシンマンを持ち上げてぶん投げ、パワーマンにぶつけ、二人は壁を破って外へ吹き飛ばされてしまう。アイアンフィストは武術の動きでハルクを翻弄、気を込めた鉄拳をハルクに打ち込む。だがハルクには通じず、アイアンフィストは捕まってしまった。自分を見失っているハルクにパワーマンは声をかける。以前パワーマンと会い友達になった事を思い出すハルク。落ちついたハルクは、ある女性に言われ列車を襲ったが、女性が列車に敵がいると言ったためパワーマンたちをぶっ飛ばしてしまったと話す。ハルクは、その女性はナイトシェイドと名乗ったと言ったが、アイアンフィストはその犯罪者について知っていた。

 ナイトシェイドは自宅を離れ、あるモーテルに部屋を取り、スーツケースに内蔵された携帯コンピューターに奪取した回路を接続し、さらに部屋の電話とテレビをつなげて回路のテストを開始した。新型回路の性能は抜群で、世界中のあらゆる回線に侵入することを可能にした。喜ぶナイトシェイドだが、そのとき部屋に衝撃が走り、ハルク、パワーマン、アイアンフィストが突入してきた。外へ逃げるナイトシェイドだが、そこにはマシンマンが待ちかまえていた。マシンマンはナイトシェイドの飛行機械の熱痕跡を探知し、さらに車のタイヤの跡を追い、このモーテルまで追跡してきたのだ。だが突然ナイトシェイドは意識を失い倒れてしまう。倒れた女をベッドに寝かせるが、ヒーローたちは彼女が操作していたコンピューターを見て驚く。ナイトシェイドは米軍の回路に侵入し、核戦争が3分後に迫っていたのだ! なんとか解除しようとコンピューターを操作するマシンマンだが、パワーマンは新型回路を握り潰して解決。そこで振り返るとナイトシェイドは消えていた。

 車で逃走するナイトシェイド。だが彼を追ってきたハルクがボンネットに落下してきて、ナイトシェイドは車から投げ出され近くの川に落下。警官隊が集まってきて、ナイトシェイドは捕らえられ、ハルクは跳び去る。

 翌日、ニューヨークにあるパワーマンとアイアンフィストの事務所。結局、新型回路を取り戻せなかった二人のヒーローだが、パワーマンはあんな回路なくてもランド・ミーカム社は大丈夫さと話す。一方デルマー保険ではマギーがやっと帰社し、自分を置いて先に帰ってきていたエディとアーロンに文句を言う。デルマー保険に保険金がかけられていた新型回路は結局失われてしまったが、ランド・ミーカム社はクレームをよこさなかったとパメラから聞き、アーロン・スタックは驚く。彼は知らぬことだったが、ランド・ミーカム社のもう一人の社主は、実はアイアンフィストことダニエル・ランドなのだ。

 

 MARVEL TEAM-UPの年刊特別号の#3では、これまでと違ってスパイダーマンはほんのちょい役で、ハルクとパワーマン&アイアンフィストのチームアップにマシンマンがゲストという豪華編となった。街の雇われヒーロー「ヒーロース・フォア・ハイア」として活躍しているパワーマン、アイアンフィストが主役。そして彼らを雇うのが、マシンマンことアーロン・スタックが勤めるデルマー保険、という面白い展開。悪役として登場するのは、キャプテン・アメリカの敵のナイトシェイドという女性犯罪者だ。彼女はアイアンフィストたちとこれまで戦っていて、今回はハルクを騙して使うという役回りをして、以前も共演したハルクとマシンマンが再会している。互いの組み合わせがうまい回で、落ちも気が利いている。