アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

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MARVEL TWO-IN-ONE #92

1982年 OCT

TOM DEFALCO : SCRIPTER

RON WILSON : PENCILER

 

 MARVEL TWO-IN-ONEは毎回ザ・シングが他のキャラクターと共演するタイトルで、この号はザ・シング&ジョキャスタ。ジョキャスタは'77年のTHE AVENGERS #162で初登場した女性型ロボットで、アベンジャーズの敵として名高い悪のロボット、ウルトロンによって製作されたが、造り主に反し、一時期アベンジャーズに参加していた。

 物語はエジプトのカイロから始まる。前号#91はノバの敵スフィンクスとの共演で、スフィンクスのオリジンを巡る話だった。カイロ空港で旅券を受け取る長い列が出来ていた。アメリカ行きの旅券を渡した相手は、怪物ザ・シングで、係員は驚く。ザ・シングは搭乗前の金属探知ゲートをくぐる時にぶち壊してしまう。旅客機に乗り込む列に並ぶが、そこへテロリストが車で突っ込んできた。ザ・シングは地面をぶっ叩き衝撃波で車を跳ねとばして事件を解決、旅客機に乗る。

 マンハッタンの路地裏では、3人の暴漢が、コートに帽子の女性を襲っていた。だが3人は一瞬にして吹きとばされる。

 一方バクスター・ビルディングファンタスティック・フォー本部では、ミスター・ファンタスティックことリード・リチャーズβ線探知機の調整に勤しんでいた。盲目の女性彫刻家アリシア・マスターズはリードに、ベンを人間に戻す研究を最近してないようだけどと声をかけるが、それに答える前に警報が鳴り、何者かの来訪を告げた。

 JFK国際空港に到着したザ・シングことベン・グリムは空港のターミナルを出る(ターミナルにはデモのプラカードを持った人々がいるが、「BRING BACK STAN LEE!」と書かれているのを持ってる人がいたり)。タクシーがベンに声をかけるが、ジョニー・ストームがファンタスティ・カーで降下してきて、ベンを乗せた。

 バクスター・ビルに戻ったベンを、アリシアが迎える。抱き合い、キスする二人。ジョニーはヒューマントーチに変身して宙に炎でハートマークを描く。

 戻ったベンたちに、リードが来客を紹介する。アベンジャーズの元メンバーの女性アンドロイド、ジョキャスタだ。アリシアはジョキャスタの声を聞いて、その孤独な調子に驚く。ジョキャスタはファンタスティック・フォーに助けを求めに来たのだ。邪悪なロボット、ウルトロンに造られたジョキャスタだが、人類を憎悪するウルトロンに反抗した彼女はアベンジャーズに参加する。だが様々なスーパーヒーローが集うアベンジャーズの中にも彼女の居場所はなく、ジョキャスタは次第に疎外感を覚えていった。その後、アベンジャーズが実働メンバーの数を限定しようとした際(AVENGERS #211)、ジョキャスタは自ら身を引きアベンジャーズマンションを去った。だが銀のメタリックボディの彼女は街で奇異の目で見られ、路地裏に隠れるがそこでも襲われ、精神的に追いつめられる。孤独にさいなまれたジョキャスタに同情するアリシアやベン。リードはジョキャスタにバクスター・ビルへの滞在を許可。アリシアはベンに、ジョキャスタはロボットだけど自分には人間のように感じると言う。

 一同が去ったあと、リードはアベンジャーズマンションのキャプテン・アメリカに連絡し、ウルトロンについて情報を得た。ウルトロンは数ヶ月前にアベンジャーズに倒されていたが(AVENGERS #202)、再び何かが起ころうとしているのか。

 ジョキャスタはあてがわれた部屋のベッドで眠りについていたが、ウルトロンの悪夢が彼女を襲うのだった。そのウルトロンは、アベンジャーズとの戦いで石像のような状態で封印されていた。

 翌日、ベンはデルマー保険に出向いた。保険会社の社員アーロン・スタックは、マシンマン人間性を学ぶための仮の姿だ。アーロンはいつもの如く、彼をやっかんだエディに突っかかられていたが、それを一蹴する。同僚のパメラに淡い思いを抱くアーロンだが、ロボットである彼には叶わぬ夢だ。そこへ、ザ・シングが入ってきた。ベンはアーロンを知らないが、マシンマンはシングと会ったことがあった(MACHINE MAN #15)。

 アートギャラリーでは、アリシア・マスターズがつくったスーパーヒーローの彫刻を見に来た人たちが、その出来を賞賛していた。彫刻の中に経路が違った銀色のものがあり、批評家はこれは駄目だと論じる。だがそれは彫刻ではなくジョキャスタで、彫刻だと思っていたものに突然、私のロボットボディがお気に召さずすみませんねと話しかけられ、批評家は気絶してしまう。ぶしつけな批評に傷ついたジョキャスタをなぐさめるアリシアだが、ジョキャスタは突然苦しみだした。暴れだし、彫刻を壊しながらもがくジョキャスタを周囲の者が止めようとするが、ロボットの力は止められるものではない。ジョキャスタは壁をぶち破って去ってしまう。アリシアはベンに電話するが、運悪くベンはデルマー保険に出向いていて留守だった。だがリードの設計した記録装置により、アリシアの声はコンピューターに記録される。

 デルマー保険ではアーロン・スタックがベン・グリムに説明を始めようとしていたが、そこでベンのズボンに入った呼び出しベルが鳴った。女ロボットが大変なんでねと言い残して去るザ・シング。女ロボットという言葉に興味を持ったアーロン・スタックは、マシンマンの姿となり反重力装置で空へ飛び立ち、電磁センサーで女ロボットの探査を開始した。

 自らの基地内で石像のように固まっているウルトロン。そこへやって来たジョキャスタは、特殊な分子構造を持つ装置を組み立てて石像のようなウルトロンの胴体に組み合わせ、アダマンチウムを熔解してウルトロンの頭上から流し込み、目から石像へビームを照射した。すると見よ、ウルトロンが新生し復活した! 我に返ったジョキャスタは、自分がなぜこんな事をしてしまったのか判らなかったが、ウルトロンを倒すために目からビームを撃ち込む。それをかわしたウルトロンは、ジョキャスタを催眠プログラムで操っていた事を明かし、平手打ちをくらわせた。倒れたジョキャスタの上で勝ち誇るウルトロンだが、そこへ伸びた手のパンチが打ち込まれる。マシンマンがこの場所を探知し登場したのだ。ウルトロンの手からのブラスターを、足を伸ばして避けるマシンマン。相手が自分と同じくロボットであることに驚くウルトロン。マシンマンはウルトロンの頭上からパンチを見舞い、相手のブタスターを避け大活躍する。だがウルトロンも、生けるアダマンチウムというべき自分を止めるものなどないと言い、激戦は続く。

 一方ザ・シングも、ファンタスティ・サイクルで現場に急行していた。ウルトロンの基地にたどり着くと、内部で大爆発が起き、シングは驚く。中ではウルトロンが、マシンマンの足を思い切り引っぱり、握り潰して壊す。我が機械の千年紀に案内しようとしているのにと嘲るウルトロン。

 だがそこへザ・シングが床板を引き抜き登場。ザ・シングはウルトロンと激突するが、さすがに歴戦のパワーファイターだけあってウルトロンが殴りとばされる。しかしザ・シングと組み合ったウルトロンは、ベンに催眠術をかけた。

 マシンマンは壊れて伸びきった足のため行動不能になっていた。そこへ、ウルトロンに操られたザ・シングが迫る。絶体絶命のピンチをどう乗り切るのか!?

 

 アベンジャーズに所属していた女性ロボット、ジョキャスタを登場させ、それと対になるようにマシンマンを登場させるうまいゲスト出演で前後編の話を作っているのは、MACHINE MAN終盤のライターであったトム・デファルコ。MACHINE MANの最終回ではアーロンは保険会社を休職するつもりのようであったが、この話ではデルマー保険に健在であることが判る。敵もアベンジャーズの宿敵ウルトロンが復活、ロボット対ロボットの対決が楽しめる。ウルトロンはアダマンチウム製で悪魔的頭脳を持つ強敵であり、ザ・シングをも操ってしまうという引きは、次号に期待を持たせる。