アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

昔のアメコミを紹介しています

MACHINE MAN #12

1979年 DEC

MARV WOLFMAN : SCRIPTER/EDITOR

STEVE DITKO : ARTIST

 

 夜のニューヨークの路地裏。マシンマンは建物の上から眼下を見ていたが、暴漢が女性に襲いかかり財布を奪って逃げていくのが見えた。手足を伸ばしてクズカゴを暴漢の頭からかぶせて捕らえ、財布を女性に返す。だが財布を受け取った女性はマシンマンを恐れる。私はあなたを助けたのになぜだと問うマシンマンに女性は、だけどあなたは人間じゃない、怪物だわと言い捨てて逃げていってしまう。その言葉にショックを受けるマシンマン

 と、すぐ近くで車が当て逃げをした。車を追ったマシンマンは手を伸ばしてボンネットを掴み、後輪を踏みつぶして停車させた。座席からとび出し犯人が逃げていくが、マシンマンはマンホールを手に取り、磁力を帯びさせ、回転をつけて投げた。マンホールは犯人のベルトのバックルに吸い付き、ブーメランのように大きなカーブを描いてマシンマンのところに戻ってきた。犯人は、自分が当て逃げした男はギャングから盗みを働き、自分が殺し屋として送り込まれたと語る。どちらも悪人だったのだ。

 また別の場所では男が銃撃されて倒れ、その息子が父に駆け寄っており、撃った男が逃走しようとしていた。そこへ登場したマシンマンは、きみの父親はまだ生きている、戻ってから助けるよと言い、犯人を追う。少年は、犯人が金を奪うために父を撃ったと言った。紙切れが命よりも価値があると考える人類がわからなくなるマシンマン。フェンスに電流を流しつつ引っこ抜いて犯人にぶつけて倒す。だが、今夜出会った人間たちによって人類への評価が激減したマシンマンは感情を爆発させ、空中に浮いて雷のような高圧電流を周囲へ放出した。

 放射したエネルギーは、マシンマンが考えていなかった効果を及ぼす。エネルギーは近くの建物に飛び、中で実験中だった男が使っていたビーカーやフラスコを割って化学薬品を飛び散らせ何らかの変化をもたらし、さらに中にいた5人の人たちに伝わり、ビルは崩れ彼らは倒れた。死んだかに見えたこの5人だが、彼らに奇妙な変化が起こっていた。

 そうとは知らないマシンマンは、先ほどの父を撃たれた子供のところへ戻った。子供は父を助けるために手を貸してくれないのを言うが、人間不信になっているマシンマンは、人類は私が助ける価値はない、何故手を貸さねばならない?と答えてしまう。子供は父を助けるために必死でマシンマンにお願いをする。マシンマンは、自分は悪人がいるからといって善人を見捨てることはできないと考え直し、手から磁力を放って父親の体から銃弾を取り出した。その時、倒れていた犯人が起き上がった。マシンマンは手を伸ばして犯人を捕らえ、ばらばらにしてやろうかと脅す。男は必死で命乞いをし、マシンマンは男に迫るが、その時、上空からビームが放たれ、「止めるのだ、父よ」と声がかかった。

 見上げると、上空に5人の輝く人物がいた。驚くマシンマン。5人はマシンマンに、命は神聖だ、抹殺すべからずだ、暴力が暴力を生んではならないと言う。自分のセンサーをも圧倒する謎の相手に、きみたちは誰だと問うマシンマン。5人は、アベル・スタックがあなたの父親であるように、あなたは我々の父だと答える。

 マシンマンはブラストを放つが、火線は宙に浮く人物に届く前に曲げられてしまった。彼らはマシンマンが放った電気の影響で人類より発展した存在となったことを明かす。マシンマンのパワーすらまったく通じない超存在となった彼らは、生命を殺すことを否定した。マシンマンは彼らを攻撃しつつ、自分はこれまで人間を倒すだけではなく見守り続けた、だが彼らは破壊を行う、愛を持たない者がいたならば、なぜ死を与えてはいけないのかと疑問を投げかける。マシンマンが伸ばした手も彼らを素通りしてしまいまったく通じない。彼らは、あなたは論理から生まれた者なのに、この世界に役立ち楽園へと向かうより人を殺そうとするのは理屈に合わないと諭す。さらに、宙に浮き飛びかかってきたマシンマンの頭をビームバリアでおおって動きを封じ、あなたは力を無駄に使っており、あなたの父の教えを忘れていると言う。マシンマンは、私を捕らえる権利はないと反論。だが5人は、あなたが我々を超存在にし、人類に手を貸す道をもたらしたと語った。マシンマンは、人類は不快な行動を取り、世界を破壊していると指摘して、その愚行にうんざりするのになぜ彼らに手を貸さねばならないのかと問う。5人は人類には希望があると答え、マシンマンが人類の進歩を妨げるのは許されないと言い、マシンマンの体を強力な力場で包んでしまった。

 動きが取れなくなったマシンマンを前にし彼らは、マシンマンは破壊されるべきであるか、その処遇について裁判を行う。一人はマシンマンを解体すべきだと主張し、別の者はアーロンは生き残るべきだと語る。マシンマンは、自分は犯罪を犯したわけではないと主張するが、超越者たちの判決は下ろうとしていた。

 その時、地上にいた少年から、待って、彼は父さんを助けてくれた、彼はいい人だよと声がかかった。これまで人間不信におちいっていたマシンマンは少年に、私はあなたと違う怪物ではないかと訊ねるが、少年はマシンマンが人々に手を貸そうとしていたと言い、怪物じゃないよと否定する。5人の超越者たちはマシンマンを開放した。マシンマンも人間に絶望していた考えを改めた。安心した5人は、あなたは真実を学んだと言い、地球にはもう居るべきではないと、星の世界へと旅立っていった。

 

 マシンマンに善を説く超越者が突然登場するという、ヒーローコミックとしては奇妙な内容だが、スティーブ・ディッコ独特の道徳観がもろに出たストーリーが興味深い一編になっている。なかなかこんなの読めないという点で読み応えありだ。

 このコミックが収録された合本は

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