アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

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THUNDERBOLTS #29

1999年 AUG

KURT BUSIEK & MARK BAGLEY : STORYTELLERS

 

 サンフランシスコのSWATチームのヘリコプターが、上空1万マイルの宇宙空間に浮いていた。ガラスが割れ、外に飛び出した乗員は血液が沸騰し肺は破裂し死亡している。この異常な事態を引き起こしたのは、重力を操るヴィラングラビトンだった。彼は空に浮く島に自分の国を作り、自分を阻止しようとしたヒーローたちを捕らえていた。ホークアイアトラスソングバードムーンストーン、そしてアークエンジェルは、グラビトンの作る重力により体を固定されている。このヒーローたちは元ヴィランで結成されたサンダーボルツというチームで、アークエンジェルと出会った後この事件に遭遇していたのだ。グラビトンは自ら作った空に浮く王国の住人を集め、そこでは誰もが空を飛ぶことができた。武器を持って集まっている住人に、こいつらは明日の夜明けに始末するとグラビトンは宣言する。

 その様子を、難を逃れた2人のチームメンバーが見ていた。ジョルトチャコールだ。仲間を助けに飛び出そうとするジョルトをチャコールが止め、彼らは助けを探すことにする。

 空の都市の都に戻ったグラビトンを、3人の半裸の美女が出迎える。かれはここでは王だった。元はフランクリン・ホール博士という平凡な科学者だった彼は、事故で重力を操るパワーを得て、人生が変わったのだ。富。権力。女。贅沢。だが彼はまだ満足していなかった。

 ジョルトはアベンジャーズファンタスティック・フォーに電話するが、どちらも不在だった。どうすればいいのかと考えるチャコールとジョルトだが、ジョルトに良い考えが閃く。

 一方、ホークアイたちサンダーボルツとアークエンジェルは、空の島の建物に捕らえられていた。周囲には重力フィールドが張られている。ホークアイはフィールドに突進してみるがあっさり弾かれて倒れ、このまま眠ってみた方が良い考えが浮かぶかもと言う。他のメンバーにもここから脱出する能力はなかった。アトラスはジョルトとチャコールに期待する。だがムーンストーンはそうは考えなかった。

 横になっているホークアイが目を開くと、ソングバードが側にいた。ソングバードは前に助けられたことにお礼を言いたかったのといい、ホークアイにキスする。ホークアイは驚くが、不安がるソングバードを安心させるため抱きしめる。だが、ホークアイムーンストーンが歩いていくのを見た。彼女は何をしようと考えているのか。不安を感じるホークアイ

 その頃、以前はビートルというヴィランだったサンダーボルツの一員、マッハ1ことエイブ・ジェンキンスは牢から出されたが、そこに超人活動委員会のヘンリー・ガイリックが彼を待ちうけていた。

 一方カリフォルニアは南サンディエゴの海岸近くの別荘地では、空に巨大なX-51という火文字が描かれていた。体をマグマ化して飛ぶチャコールが描いたものだが、発案はジョルトである。ジョルトは先週テレビでマシンマンがこの付近にいるのを見たと言う。マシンマンは軍が開発した人間の知能を持つロボットで、アベンジャーズに所属している。飛行バイクに乗って飛ぶジョルトは、彼に助けを求めようと言うが、そこへマシンマンの首が伸びてきて返事をした。驚く二人。見れば眼下の別荘の煙突から首が伸びている。マシンマンはギアーズが案内するよと言い、ジョルトとチャコールはギアーズってロボットかと言いながら降下する。下でマシンマンの整備を行う友人でメカニックの天才ギアーズ・ガービンが待っていた。二人を中へ招き入れるガービン。

 だが、別荘の中でマシンマンは外装をバラバラに分解されていた。年一回の維持管理分解中なんだと言うマシンマン。彼は、ジョルトとチャコールがサンダーボルツに所属し、サンフランシスコでグラビトンと戦っている事まで知っていた。分解整備中のため同行できないマシンマンだが、二人の助けになる方法はあると言う。

 別荘の外では、S.H.I.E.L.D.のエージェント二人が、中の会話を盗聴していた。サンダーボルツ2名が来ているが問題ない事を本部へ報告、増援を待てと指示を受け、二人は監視を続ける。一体何故S.H.I.E.L.D.はX-51を見張っているのか。

 空の島では、さらなる高みを目指すグラビトンが、部下にムーンストーンを連れて来させていた。ムーンストーンは重力フィールドで囲まれ抵抗できなくされている。グラビトンは彼女にむかって自分を誇示し、俺は王だ、今や神同然だと言い従わせようとする。その様子を見て、ムーンドラゴンは痛々しいほど自意識過剰だと罵倒する。怒ったグラビトンは彼女を牢に戻し、あとで他の奴らと一緒に殺してやると叫ぶ。

 夜明けが来た。グラビトンは、サンダーボルツを重力フィールドで捕らえてこの国の民衆の前に引き出し、この犯罪者どもは空島の皇帝グラビトンI世の感情を害した、よって死刑であると宣言。しかしグラビトンは公正な人間である、慈悲を懇願する者には死から逃れるチャンスをやろうと語るが、ムーンストーンが屈しないのを見て刑の執行を決める。

 だがジョルトが現れ両手からエネルギーをスパークさせグラビトンを吹き飛ばした。そういえばサンダーボルツはまだ残りがいたなと言い、グラビトンは重力でジョルトを捕らえようとするが、何故かその力が通じず焦る。再びグラビトンを吹き飛ばすジョルト。こんな小娘一人にと怒るグラビトンだが、ジョルトは数秒間彼の注意をそらす役目であり、その隙にもう一人、チャコールがサンダーボルツを解放した。チャコールは、マシンマンは重力方程式をキャンセルする技術により空を飛んでいる、彼は同行できなかったが、内部の反重力装置を貸してくれたのさと明かした。

 サンダーボルツは反撃! ソングバードの声が、アトラスのパンチが、ムーンストーンのブラストがグラビトンを直撃する。地面に叩きつけられたグラビトンに、この国の民衆である犯罪者たちが加勢しようとするが、グラビトンは退避せよと指示し、私に助けなど要らぬと叫び岩石を飛ばして攻撃してくる。ホークアイは弓を射るがグラビトンは何なく撃ち落とす。だがその隙にムーンストーンの蹴りが炸裂。続いてアークエンジェルのパンチ、ソングバードの固体化音波が打ち込まれ、グラビトンは地面を割って撃沈。さらにチャコールとアトラスがグラビトンをめった打ちにする。

 だが、グラビトンは反撃に転じた。チャコールとアトラスの立っていた地面ごと吹き飛ばし、それは遠く離れたビルに激突する。ムーンストーンはグラビトンに近づくが、敵はこれまで異常のパワーを放ち姿が変貌していた!

 

 サンダーボルツは、オンスロート事件でアベンジャーズなどヒーローたちが消えていた間隙に登場したチーム。当初はヴィランがスーパーヒーローに擬装し暗躍するための表の顔であった。だがメンバーたちがヒーローとして活躍していく事に意欲を感じ始め、首謀者であるシチズンV(バロン・ジーモ)から離反し真のスーパーヒーローチームとなった。アトラスはアベンジャーズの敵パワーマン(ゴライアスとも名乗っていた)、ソングバードはザ・シング&デスロックの話でスクリーミング・ミミという名で登場、ムーンストーンキャプテン・アメリカの敵ドクター・ファウスタスの協力者として登場したあとマスターズ・オブ・エビルにも参加と、全員がヴィランだった。また、彼らに合流しチームリーダーとなったホークアイも最初はアイアンマンの敵であった。ゲストキャラとして登場しているX-MENアークエンジェルもアポカリプスに改造され敵となっていた時期がある。

 グラビトンはアベンジャーズヴィラン。重力を意のままに操るという異様に強力な特殊能力とは裏腹に、自己顕示欲のままに振る舞う小物っぷりを発揮していて笑える。

 ヘンリー・ピーター・ガイリックは’77年のAVENGERS #165で初登場した政府機関員で、スーパーヒーローを危険視し管理活動を行っている人物。このあとマシンマンにからんで何度も登場する。

 マシンマンが意外な登場をするのだが、友達のギアーズ・ガービンが整備をしていたり、彼が空を飛べるのは反重力装置を内蔵しているからという設定が使われていたりと、旧作を活かしているのはいかにもカート・ビュシークらしくて嬉しい。

 この話で登場したマシンマンのその後の展開は、UNCANNY X-MEN #371、X-MEN #91、X-MEN 1999と続き、新タイトル創刊へとつながっていく。