アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

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BLUE BEETLE: REBIRTH #1

2016年 OCT

BROUGHT TO YOU BY: KEITH GIFFEN & SCOTT KOLINS: STORY

GIFFEN: SCRIPT

KOLINS: ART AND COVER

 

 ごく普通の少年だったハイメ・レイエスは青い甲虫型のアイテム「スカラベ」に融合され、アーマーヒーロー「ブルービートル」となった。億万長者の実業家でかつてはヒーロー「2代目ブルービートル」だったテッド・コードは、発明品を使ってハイメを助けて戦う。

 テキサス州エル・パソのレイエス家から、ハイメの妹ミラグロが駆け出し、友達と会って登校していく。続いてハイメが両親に挨拶して家から出、友人のブレンダパコに会って挨拶する。二人はあいかわらずネットゲームの事で口論していてハイメそっちのけでやりあう。通学中、突然ハイメのスマートフォンが鳴った。相手はテッド・コードで、ちょっと待てない?とハイメが言うのも聞かず、事件発生を伝える。巨大甲虫型メカに乗って基地から飛び立つテッド。こっちの話を聞いてくれないテッドに不満を持ちつつ、ブレンダとパコに励まされ、ハイメは脊椎に融合したブルービートルアーマーを展開し変身した! 翼を開いて飛び、現場へ向かう。

 事件が起きたのはコーヒーショップで、周囲の車やドアなどが破壊され、店内の客が脅える中、ラックルインという鉢巻きをして顔をマスクで覆った怪人がのんきにコーヒーを飲みながら相手の到着を待っていた。巨大甲虫型メカに合流したブルービートルは、怪人が地面に書いた呼び出しメッセージ「BRING BLUE BETLE」を見てBEETLEのスペルが間違ってる、敵はバカなのか?と思う。コーヒーショップへ降下するブルービートル。

 店内で怪人たちと対峙、怪人が客に暴力を振るったため戦闘開始。ラックは背後から冷蔵庫をぶつけ、後ろから掴みかかるが、ブルービートルアーマーが衝撃波を放ち天井に叩きつけた。そこへルインが首に手をかけ絞めてくる。テッドが無線で指示を伝えてくるが、聞いている暇などないハイメは苛立つ。アーマーは自動で反撃のためのビーム砲を展開し、ハイメは相手に当てないように上へ向けて発砲、上空にいたテッドは驚く。ルインの体当たりでハイメは壁に激突、煉瓦が崩れ客へ落下する。翼を展開して落下物を受け止め、客を逃がすブルービートル。後輩の活躍を喜ぶテッド。

 ラックとルインはブルービートルの腕をそれぞれ引っ張り苦しめるが、ブルービートルはアーマーに増幅された力で二人を激突させた。粉々になってしまう敵。ロボットだったのか?と驚くハイメだが、バラバラになった敵の手や足が襲ってきた! 苦戦するブルービートル。テッドは対抗策を講じてティスプレイの手順を進めるが、待ってろと言われて攻撃を受け続けるハイメにとってはたまったものではない。ようやく巨大甲虫型メカから砲撃が放たれ、他にも敵がいると知り二人の怪人は逃走した。不満を抱えたハイメだけが残される。

 テッド・コードは基地でハイメに、俺のことはミスター・コードではなくテッドと呼んでくれと親しみを込めて話すが、不満げなハイメはこんな巨大メカ作る暇があるんなら自分に融合したスカラベを外してくださいよとぼやく。テッドはこの巨大甲虫型メカは移動基地で、空飛ぶバットケイブみたいなものなんだと説明する。バットケイブなんて要りませんよとハイメ。テッドは自分のあとにブルービートルとなった後輩ヒーローをできるだけ支援したいと考えるが、できればスカラベから解放されたいと望むハイメはバットマン&ロビンみたいにはなりませんと突っぱねる。話している最中、再びアーマーが起動してブルービートルになったハイメは、学校に行かないとと飛び立つ。見送ったテッドの前に突然、魔術師ヒーロードクター・フェイトが出現した。ドクター・フェイトは、きみたちはブルービートルのスカラベを異星科学の産物だと考えているようだがそれは誤りだ、これは魔法だと指摘する。

 夕方になり、ブレンダは帰宅。アンパロ伯母さんは養娘に愛情を込めて言葉をかけるが、実は彼女は悪の黒幕であり、部下から電話でブルービートルが戦闘中に誰かと会話をしていて気が散っていたようだとの報告を受け、敵が複数いることを把握し、打倒のため情報収集を命じ、次の手を打とうと動き出すのだった。

 2005年のCOUNTDOWN TO INFINITE CRISIS #1にて、2代目ブルービートルことテッド・コードが殺された。キース・ギフェン&J.M.デマティスジャスティス・リーグ・インターナショナルなどで2代目ブルービートルとブースターゴールドやガイ・ガードナーたちのわちゃわちゃ痛快活劇を楽しんだファンは怒る。だがINFINITE CRISISクロスオーバーで3代目ブルービートルことハイメ・レイエスが登場し、2006年にBLUE BEETLE新タイトルをキース・ギフェンがジョン・ロジャースと組んで創作することを知り、ファンは注目した。

 こうしてスタートした3代目ブルービートルの物語は、普通の少年が偶然手に入れたアイテムによりアーマーヒーローになるが、それは異星科学によるもので、後に異星人のアーマーヴィランと対決することになるという、マーベルのダークホークでも描かれた新たなヤングヒーローとして人気を博し、最初のシリーズは#36まで続く。このシリーズの#1-6までが日本語版『ブルービートル:青い衝撃』として発行されているのでお勧めする。DCが歴史をリセットしNEW52という新タイトルを展開した2011年には2回目のシリーズが#16まで発行された。

 そしてそのあと、2016年になってDCが新体制でスタートさせたDC UNIVERSE REBIRTHの一環として、再びキース・ギフェンにより単発誌の本作BLUE BEETLE: REBIRTHが刊行され、続けて3代目ブルービートル3回目のシリーズが新たに発行されていく。

 本作は3代目ブルービートルの基本設定をおさらいしつつ、復活したテッド・コードとのコンビ(当初はこのコンビがうまくいってないところから描くのが巧い)を描くが、ラストに突然登場したドクター・フェイトが「ブルービートルのアーマーは異星人の科学で作られたのではなく魔法の産物だ」と爆弾発言を投下し、これまでの物語の基本設定を思い切りちゃぶ台返ししてしまうのがいかにもギフェンらしい。ギフェンはこれまでも、一時はタイトル完結したFATE誌を設定修正して一から語り直すBOOK OF FATE誌でひっくり返した前科があり、この自由さがファンの心を掴むのだ。

 キャラの会話において、ギフェンらしい「特に話の展開に関係ない無意味とも言える台詞」がばらまかれており、ヒーローものっぽい説明口調にならない自然で自由な感じを作品に与えているのが読んでいて楽しいのだ。