アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

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MACHINEMAN #11

1979年 OCT

MARV WOLFMAN : SCRIPT/EDITS

STEVE DITKO : ART

 

 夜のニューヨークの空に、背中に背負った巨大なバルーン状の装備から空気を噴出して飛ぶ怪人バイナリー・バグの姿があった。怪人が飛んでいく下の建物の屋上には、反マシンマン・キャンペーンの看板が見える。バイナリー・バグは、バックパックに付いていた巨大なバルーンメカの着陸脚を出して豪華な高層マンションの屋上に着地し、バルーンメカと分離して指から電流を放ちビルの扉を焼き切って中へと侵入していく。マンションのガードマンは37階へ侵入者があったことをモニターで発見し駆けつけた。大金持ちバイロン・J・ベンジャミンの部屋へ侵入したバイナリー・バグは、金庫に配線をつなぎ、暗証番号を解析する。そこへガードマンが突入。だが怪人は指から煙幕を発射。さらに指から電撃を発射しガードマンの拳銃を撃ち落とした。

 ちょうどその時、ピーター・スパルディングマシンマンことアーロン・スタックをベンジャミンに引き合わせるため来訪していた。マシンマンは37階での異変を知り、反重力装置で空を飛び、急行する。部屋に突入したマシンマンは手を伸ばして侵入者にパンチを放つがそれははずれた。手足を伸ばして怪人を捕らえようとするが、敵はマシンマンを知っていて、触手のようなコードのついた機械を投げつけられる。それはマシンマンの体に巻き付いて高圧電流を流し、彼は行動不能に。続いてピーターが駆けつけたがバイナリー・バグの電撃に打たれてしまう。屋上へ戻ったバイナリー・バグはバルーンメカを装着し飛び去っていった。

 マシンマンは電撃機械をピーターに取ってもらって復活。燃え尽きたトースターになるところだったよとお礼を言うアーロン。そこへ、部屋の主であるベンジャミン氏がやって来た。ピーターはベンジャミン氏とアーロンを引き合わせる。強盗が入ったことを説明したあと、二人はベンジャミン氏に、アーロンが人間と共に生活していくため人間の思考を学ぶ必要があり、そのために仕事をしたいと望んでいると伝える。ベンジャミン氏は快諾してくれた。

 その頃、地球がロボットに破壊されるという反マシンマン・キャンペーンにより政界での立場を確立していくブリックマンが、部下に自説を強弁していた。これを足がかりにホワイトハウスへ進出し、行く行くは大統領になると吼えるブリックマンだった。

 マシンマンはピーターと共に服を買いにいき、カツラをつけ赤い目はサングラスで隠して、人間そっくりの姿になった。翌月曜日、ベンジャミン氏の紹介でアーロンはデルマー保険という会社の社員として机を与えられた。ベンジャミン氏はアーロンに副社長のパトリック・ギルロイを紹介したあと、計算コード伝達の仕事を任せた。ギルロイに、ダイヤモンドなどへ多額の保険金をかけているアンダーソン氏の財産の警備に問題ないか確認するベンジャミン。保険の金額と内容をチェックしながら、こういう浪費は人間特有だなあと感想を口にするアーロン。

 その頃、一人の男がバイナリー・バグのマスクをつけて自分の基地のコンピューターを操作していた。デルマー保険に何か恨みを持つこの男は、自分に対する支払いをさせるべく行動を開始した。バイナリー・バグはバルーンメカを装着してデルマー保険のビルへ飛来しコンピュータールームに侵入。配線をつないで情報を引き出す。その頃アーロンは仕事帰りにピーターと街へ出ていた。人間が娯楽に無駄に時間を使う理由がわからないというアーロンに、「勉強ばかりで遊ばない子は面白みに欠ける」と言うよと返すピーター。雑談をしながらアーロンは、空に奇妙な物体が飛んでいくのを目にする。

 その物体はバイナリー・バグであった。この怪人はアンダーソン氏の屋敷に飛来し、絵画やダイヤモンドなど、デルマー保険に高額の保険金をかけている品を強奪していった。

 翌日デルマー保険では、この事件が大問題になっていた。アーロンは、強盗には、金品を奪うのと同時にデルマー保険を失墜させるという第2の目的がある、誰かから恨みを持たれていますと指摘。彼の冷静な言動に、女性社員のマギー・ジョーンズは興味を持つ。ベンジャミン氏はアーロンに、他の仕事は中断して強盗を見つけるよう命じた。マギーはアーロンに声をかけるが、アーロンは命じられた仕事をこなすためそっけなくあしらい、自分の魅力が通じなかったことに彼女は怒る。それを見たエディー・ホワイトというお調子者の社員がアーロンの肩を叩くが、体が硬いのに、チェーンメイルを着ているのかと驚き、また、アーロンの奇妙な受け答えに絶句する。

 別の建物では、一人の男が祝杯を上げていた。その男、ジェセフ・ランボーは、デルマー保険の社員だったが、データの不正使用が発覚して解雇されたのを逆恨みして、社主のベンジャミンに復讐するため、犯罪装備を売る「組み立て屋」から装備を入手して怪人バイナリー・バグとなったのだ。

 マシンマンもコンピューターから情報を得てジョセフ・ランボーが犯人だと推理し、カルビン・C・ブリヤーという男を訪ねてランボーの住所を調べた。ランボーの家へ潜入したマシンマンは、机に残された文書から、相手の次の狙いが、デルマーの高額顧客であるザナドゥのカーンであることを読み取る。

 ザナドゥとはクビライ・カーンの詩に詠われた伝説の都市であったが、現代のザナドゥは巨大飛行船であった。そこの主であるカーンはその中で踊り子を舞わせ食事をしていた。部下のギアネリーはカーンに不満をぶつけているところだったが、そこにバイナリー・バグが登場。ギアネリーは銃を抜くが、バイナリー・バグの電撃に撃たれる。バグはカーンが保険をかけた金品を要求。ここへ侵入する前に見張りは片付けたし、飛行船を吹き飛ばすにはこのスーツの電力で十分だと脅すが、そこへマシンマンの足が伸びて足払いが命中。またお前かと驚き煙幕を放つバイナリー・バグ。マシンマンは手足を伸ばしてバグを捕らえようとする。バグは再び触手メカを投げつけてきた。その対策はしてきたと言うマシンマンだったが、今度のメカは音波ブラスターを発し、マシンマンはひるむ。マシンマンを一撃したバイナリー・バグはまた来るぞとカーンに言い残し、飛行船から脱出していった。

 ランボーを追うマシンマン。バイナリー・バグは背中の巨大バグ・ポッドからミサイルを発射してきた。マシンマンはそれを避け、前を見ろランボーと警告するが、攻撃に夢中なバイナリー・バグは聞く耳持たず、鉄塔に激突し爆発炎上して死亡してしまう。マシンマンはなぜ人間は命を浪費するのかと嘆くのだった。一方、マシンマンに救われたカーンは、マシンマンを自分のものにしたいと望むのだった。

 

 カービー後のMACHINE MAN2回目だが、前回の#10ではWRITER/EDITORという表記だったマーヴ・ウルフマンが今回はSCRIPT/EDITSになっている。どちらかと言えばスティーブ・ディッコが物語を作っているのかもしれない。

 スティーブ・ディッコという漫画家は、とても単純なキャラクターを創作することもある一方、逆にハイセンスなキャラクター造型をみせてくれる事があるのだが、今回の敵バイナリー・バグは後者の好例だと思う。バックパックに接続される巨大バルーンのようなバグ・ポッドは、複数の噴射口から空気を噴出して大空を飛び、ミサイルも備え、三脚で着陸するスーパーメカ。バイナリー・バグはポッドから伸びた二本の操縦桿で飛行を操作する。飛行時にバグの頭部に大きな角のようなパーツが付くが、これはマスクとポッドを接続するためにポッドから伸びているフレームで、ポッドから離れる時には外れる仕掛けになっている。ぱっと見は古めかしいが、例えばこれが立体になったところや、現在のデザインで描き直したところを想像してみると、めちゃくちゃ格好よくて、ディッコの非凡さがうかがえる。名前の「バイナリー・バグ」も、人間とポッドの二つの合体キャラという意味と、二進法のコンピューターデータを喰う虫という、二つの意味が掛けてあって巧い。こんな素晴らしい悪役が最後には死亡してしまうのが残念で、普通はこのキャラクターを次に使おうと生存させるものだが、悪人はすべからくその罪のため死去するというディッコ独特の道徳観がうかがえるところだ。

 マシンマンの方も、これまでは逃亡者だったのが、人間生活へ馴染むために保険会社に入社するという新展開を迎えていて、続きが気になるところだ。

 このコミックが収録された合本は

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