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SPIDER-MAN 2099 MEETS SPIDER-MAN

1995年 NOV

Peter David : WRITER

Rick Leonardi : PENCILER

 

 ここは2099年のニューヨーク。飛行車に乗った若者たちが驚きの目差しで見るのは、スパイダーマンだ! 警官が乗る飛行バイク数台に追われ、自分の状況が判らず混乱したままスパイダーマンは逃げ惑う。コスチュームを変えてもお前は世間の敵だぞと警官が発砲。スパイダーマンはなんだこれブレードランナーかよとぼやきつつウェブを発射し、奪ったブラスターを警官にぶち当てて反撃。警官は飛行バイク搭載の機関砲を撃ちだし、スパイダーマンは必死でかわす。素早い動きで警官に後ろから組みつき、今は何年だと聞くと、2099年という答えが返ってきた。スパイダーマンは警官を脅して移動し、通風口の中へ逃れる。

 一方、あるアパートの寝室では、一人の男が目覚め、バルチャーにやられたあとどうして自分は見知らぬベッドに寝ているのかと驚いていた。明かりがついてないぞライラと人工知能に話しかけると、同じベッドに寝ていた女性がライトを点け、一緒にいる男がピーターではなく知らない全裸の男なのに悲鳴を上げる。「ショックだ」と言いながら男はあわててコスチュームを手に取り、私の夫はどこ?とおびえる女性から離れて天窓から外へ脱出する。これは夢か?と状況が判らず困惑しつつ、男はスパイダーマン2099のコスチュームを身につけた。

 さらに別の、何処とも知れぬ場所で、謎の人物たちがスパイダーマン、スパイダーマン2099双方の様子を観察していた。スパイダーマンは通風口から外に出て、未来世界を観察しジャッジドレッドかよとぼやく。

 スパイダーマン2099も街を移動しながら観察し、地上をガソリン車が無秩序に動き空に飛行車で誰も飛んでいないことに驚く。彼はデイリー・ビューグル新聞社を発見し中に入った。中にはJ・ジョナ・ジェイムソン編集長がおり、スパイダーマン嫌いの彼は罵倒しながら葉巻の煙を吹きかける。スパイダーマン2099はお返しにウェブで口を塞ぎ椅子にむかって蹴飛ばし、他の記者たちと話を続ける。

 2099年の未来では、スターク・フジカワ社の社長ヒカル様と重役フジカワ様が、謎のエネルギー変動を利用する実験について相談していた。一方スパイダーマンは何が起こっているのか判らないまま下層街を進んでいたが、突然バルチャー2099の襲撃を受ける。巧みな動きで攻撃をかわし、バルチャー2099を地面に叩きつけノックアウト! 未来の下層民たちは現れた希望にすがりつこうとするが、スパイダーマンはその場を離れビルの上に逃れる。

 そこには一人の男が待っていて、スパイダーマンを兄と呼び、なぜ新コスチュームにしたんだと聞く。この男ガブリエル・オハラは、兄ミゲル・オハラがこの時代のスパイダーマンだと話すが、スパイダーマンは別人だと説明。今のは忘れてくれと慌てるガブリエルに、スパイダーマンは秘密は守ると答え、助けを求める。

 現代のデイリー・ビューグル新聞社では、スパイダーマン2099が本日の日付を確かめ、記者のパソコンの記事をチェックしていた。「フジカワ・インダストリーズが新型エネルギー保存装置の実験を行う」という記事に、未来で自分が知る「スターク・フジカワのことか?」と聞くと、フジカワは日本の小さい会社だとの返事。今の日付とその記事を見たスパイダーマン2099は、この日が終末の引き金となった事件が起こった日であるのに気づく! この記事のコピーをくれと言った瞬間、再びジェイムソン編集長が怒鳴り込んできた。スパイダーマン2099はマスクを取って素顔を見せ、俺は未来から来た、今日の事件で人が大勢死ぬことになると言い、さらに、一世紀後にもスパイダーマンはヒーローとして伝えられている、あんたの名前は誰も知らないがねと指摘する。彼の様子はジェイムソンを退け、コピーを受け取って新聞社を出る。

 何処とも知れぬ場所で、謎の人物たちはスパイダーマン2099の様子を監視し続ける。スパイダーマン2099は、ピーター・パーカーを探しに新聞社の前に来ていたメリージェーンを見つけて抱え、連れ去る。「ショックだ」という相手の言葉を聞いて、メリージェーンはそれがベッドにいた男だと気づく。ビルの上に着地し、スパイダーマン2099はフジカワ・インダストリーズの実験が今日失敗しスパイダーマンたちヒーローの時代が終わるんだと説明。マスクを取って素顔を見せた相手に、メリージェーン・パーカー、スパイダーマンの妻よと彼女は自己紹介した。スパイダーマン2099もミゲル・オハラだと言い、大きな力には大きな責任が伴うというならそうしようと答えるのだった。

 2099年の未来では、スパイダーマンが巨大企業アルケマックスのビルを見てスパイダーセンスで危険を感じ取っていた。ガブリエルに連れられ、スパイダーマンはミゲル・オハラの自宅に来る。ライラという美女ホログラム・ホームコンピューターは、マスクを取ったピーター・パーカーの虹彩認証をしてみて、彼がこの時代に登録されている人間ではないことを確認した。元の時代に戻りたいスパイダーマンは、アルケマックスを調べに行くことにする。

 メリージェーンからMARVEL COMICSのロゴがついたピーターのトレーナーを借りて街を歩くミゲルは、買ったコーヒーが本物の豆を碾いたものだと驚いたりするが、何らかのエネルギーを感じてマスクを被り動き出す。2099年でもスパイダーマンがアルケマックスのビルからの異様なエネルギーで頭痛を伴うほどのスパイダーセンスを感じていた。さらに、何処とも知れぬ場所で二人を監視していた謎の人物たちのところへ、ゴブリン姿の怪人が襲撃する!

 スパイダーマン2099はエネルギーが放射されているビルを目指すが、突然ベノムが襲いかかってきた。スパイダーマンだと誤解しているのだ。その攻撃をかわし目的のビルの前まで来たが、ベノムはなおも食らいついてくる。腕のカッターでベノムの頬を切り裂き反撃するスパイダーマン2099。

 未来のアルケマックスビル内の研究室では、スターク・フジカワ社の研究員たちが、時空エネルギーを5次元と通じて過去とループさせることで永久機関を作り出す実験を始めていた。このエネルギーを感じたスパイダーマンはビルの外壁に取り付くが、警官隊の飛行バイクが迫る。機関砲を撃ち込まれウェブスイングでかわし、開いた穴からビル内部へ侵入した。

 現代ではスパイダーマン2099がベノムと揉み合いながらフジカワ・インダストリーズの実験室へ突入。だがベノムはそこで何かを見て逃げ出す。スパイダーマン2099が振り向くと、キャプテン・アメリカやハルク、X-MENゴーストライダーなどの20世紀のヒーローたちのイメージが出現し、通過していく。そこで、スパイダーマン2099を掴む者がいた。未来とつながった次元を抜けてきた、スパイダーマンだ! ついに出会う二人のヒーロー!

 だが二人の到着したのは、現代でも2099年の未来でもない、荒廃した世界だった。ここは誰の未来なんだ?という問いに、私のだと答えたのは、2211年から来たホブゴブリン2211という怪人だった。未来の敵の攻撃を避けたダブルスパイダーマンは組みつこうとするが弾き飛ばされ、レトコン・ボムという時間軸から相手を消滅させる爆弾を投げつけられた。

 しかしその爆弾は、ウェブで受け止められる。新たに登場したのは、これまで何処とも知れぬ場所でスパイダーマンたちを監視していた、2500年のスパイダーマンだ! 二人のスパイダーマンにきみたちの役目は完了したと言い、スパイダーマン2500は受け止めたレトコン・ボムを、現代のフジカワ・インダストリーズの装置と、2099年のスターク・フジカワの装置に投げつけ、時空エネルギー循環装置を消滅させる。時空が修正され、元の時代に戻る前に、スパイダーマン2099とスパイダーマンが交わしたのはどちらも、「イカすコスチュームだね!」という一言だった。

 メリージェーンの前に戻ってくるピーター・パーカー。ミゲル・オハラは2099年の自宅へ戻りガブリエルやライラと再会した。「リチャーズ原理」という定説によれば時間改変はできないとされていたが、ヒーローたちが消滅したとされていた日付が記録や記憶から消えているのを確認するミゲル。学校で教わったはずなのに。ガブリエルも覚えていないと言い、ミゲル自身の記憶からも消えていった。未来は変えることができるかもしれないと希望を持つミゲル。未来を見て現代へ戻ったピーターも、世界をよりよくするべく努力すべきと考え、メリージェーンと抱き合うのだった。

 

 『スパイダーバース』以降、別次元のスパイダーマンが会うことはよくあることになったが、そんな事がまったく無かった頃、未来のスパイダーマン2099が現代のスパイダーマンと入れ替わり、出会うという驚天動地のクロスオーバーが本作である。バルチャー2099対スパイダーマンやベノム対スパイダーマン2099という、普段と敵を入れ替えての対決も楽しめ、最後にはホブゴブリン2211やスパイダーマン2500まで登場する豪華な作品となっている。

 スパイダーマン2099の敵組織として登場していたスターク・フジカワ社が、現代ではフジカワ・インダストリーズという会社だったこのが本作で明かされた。この設定はIRON MAN誌に取り入れられ、『クロッシング』事件によりトニー・スタークが死亡したあとフジカワがスターク・エンタープライゼス社を吸収合併している。