アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

昔のアメコミを紹介しています

X-MEN 1999

ALAN DAVIS and RICK LEONARDI : story and art

TERRY KAVANAGH : script

 

 彼はグロックファランクスという異星のテクノ・オーガニック生命体の力を持っている。だが一方で彼は人間だった。ダグ・ラムジーという名のミュータントで、ニューミュータンツの仲間たちはサイファと呼んでいた。チーム内に親友のウォーロックがいた。彼はファランクスのはぐれ者だった。激しい戦いで二人は死に、埋葬されたあと融合し、ダグロックとなった。そして英国のミュータントチーム、エクスカリバーの一員になった。

 だが今の彼は、レッドスカルの奴隷だった。彼はレッドスカルと共にS.H.I.E.L.D.ヘリキャリアを襲撃したのだ。レッドスカルは彼を蹴りつけ、まだ抵抗しやがるのかと怒る。その周りには、テクノ・オーガニック化されたS.H.I.E.L.D.のエージェントたちが立っていた。ダグロックの体に無数の配線がコネクトされ、ヘリキャリアのシステムを乗っ取ろうとしている。進行が遅いことにいらだち罵倒するスカル。この男は狂人だった。

 ダグロックを追ってヘリキャリアへ潜入したナイトクローラーことカート・ワグナーは物陰から船内をうかがっていたが、エージェントたちがまったく会話を交わさないことに驚いていた。一体何が起きているのか? ナイトクローラーはエージェントの一人を捕獲しようと天井から吊り下がって出現するが、エージェントがノーリアクションなのに驚く。ナイトクローラーはエージェントを捕らえ、彼のミュータント能力であるテレポートでその場から消える。

 ナイトクローラーが出現した場所には、仲間のコロッサスシャドウキャットが待っていた。彼らはX-MEN。シャドウキャットはエージェントを調べ、体に有機機械が侵入している事を知る。だが何故か。考える三人だが、彼らの前にS.H.I.E.L.D.の司令官ニック・フューリー大佐が登場、銃を突きつける。

 ダグロックはレッドスカルが支配した世界の悪夢を見ていた。レッドスカルはコズミックキューブの力を得て再びキャプテン・アメリカと戦ったが、キューブの使用を誤り吹き飛ばされ、英国に落下しダグロックを発見したのだ。スカルは残っていたキューブの力に願い、ダグロックとそのテクノ・オーガニックの力を手中に収めた。ダグロックに触れたスカルの左手は、機械のカギ爪に変化した。その後レッドスカルはS.H.I.E.L.D.のエージェントを捕らえ、ヘリキャリアに侵入したのだった。

 銃を向けるニック・フューリーを、以前一緒に働いた事のあるシャドウキャットは説得。自分たちがダグロックを助けに来た事を伝える。フューリーは三人のミュータントを信用し、共同戦線を張ることにした。

 一方、ニューヨークはセイラム・センターのエグゼビア高等教育研究所、つまりX-MENの本部では、ストームガンビットを呼び出し、マロウの検査結果に、異様なパターンの信号が現れている事を話す。それは、ファランクスのものに似ていた。彼らはX-MENの専用機ブラックバードを発進させる。

 レッドスカルはS.H.I.E.L.D.の新兵器として作られたサイボーグ、デスロックと、アンドロイドのマシンマンを発見。スカルはデスロックを指して、こいつは無駄なものだが、一つ興味のある要素がある、人間の脳をコンピューターと統合するところだと言う。その技術を使えばダグロックのようにこいつを操る事ができると考えたレッドスカルは、ソール少佐を銃で脅して協力させる。

 ニック・フューリーは三人のX-MENに現在の状況を教えていた。レッドスカルが襲来しているという説明に驚くX-MEN。フューリーはヘリキャリアの機能を説明し、小さな国ぐらいならば壊滅させられる装備を持っていると言う。それをレッドスカルは乗っ取ろうとしているのだ。ニック・フューリーは、レッドスカルを一発で殺さなければならないと言う。一方シャドウキャットはダグロックを探すのを優先したい。ナイトクローラーは両者をまとめ、シャドウキャットとコロッサスがダグロックを探し、自分がテレポート能力を駆使してフューリー大佐のフォローをするというチーム分けを提案。大佐も同意する。

 スカルに脅されたソール少佐はなるべく時間稼ぎをしようとするが、レッドスカルが監視しているためそれもうまくいかない。レッドスカルはヘリキャリアのデータベースを調べ、テクノウイルスの分析研究の結果を得る。スカルはこの星を征服してやると息巻く。

 沢山の配線を接続され、ヘリキャリアのハッキングを行っているダグロックだが、その意識はまだ残っていた。ダグロックはレッドスカルに抵抗する方法を探し、デスロックとマシンマンを発見して起動させる。

 ナイトクローラーはニック・フューリーを連れてテレポート。出現した場所がヘリキャリアの武器庫なのを見て、フューリーはここでやる事があるとデッキへ降りていく。

 コロッサスとナイトクローラーはダグロックを探すため潜入しようとしていたが、そこへ手が伸びてきて止められる。それはマシンマンだった。マシンマンはここに捕らえられしばらくオフラインの状態だったが、ダグロックにより再起動されたと言う。そして、他の人間を脱出させるため役立ちたいと語る。ダグロックについて二人が訊ねると、コンピューターリンクしているマシンマンは正確な位置を指示してくれた。だが彼はもう生きていないかも知れないと言うマシンマンの言葉に、シャドウキャットは囚われている人々の解放をコロッサスとマシンマンに任せ、自分はダグロックを探しに行く。

 ソール少佐の作業が進まないのにレッドスカルは苛立つ。少佐は理由を説明しようとするが、スカルは聞かず、相手を操るのに用いる画鋲型のデバイスを突き刺し少佐を殺してしまった。その時、何か大きな音が聞こえた。ニック・フューリーが武器庫を爆破したのだ。ヘリキャリアの高度が下がっていく。

 機械化されなかったS.H.I.E.L.D.隊員たちは一室に捕らえられていたが、パンチで壁が破られ、コロッサスとマシンマンが救出に現れた。

 また、起動したデスロックは攻撃兵器としての性能通りにS.H.I.E.L.D.のエージェントを蹴散らして進み、ダグロックの前に到達する。デスロックはダグロックに銃を向けるが、壁を透過してシャドウキャットが割って入った。ダグロックは、デスロックも犠牲者なんだと言う。

 フューリーとナイトクローラーは共にヘリキャリア内を進行するが、エージェントたちが攻撃してきた。ナイトクローラーはテレポートを繰り返しあっという間に3人のエージェントを倒す。

 コロッサスとマシンマンは解放したエージェントたちを甲板へ誘導していた。だがヘリキャリアは空中にあり、脱出はできない。さらにそこへ敵に操られたS.H.I.E.L.D.のロボットの群れが迫る。マシンマンは、私に考えがあると言ってヘリキャリアから下へ飛んでいった。あのロボットはここを見捨てるぞ、俺たちを置いて逃げる気だと叫ぶS.H.I.E.L.D.エージェント。コロッサスは、君たちが攻撃し捕らえたから彼はここにいるのだ、それを許し、君たちを救うために彼は危険を冒しているのに、君たちはまだ彼を信用していないのかと言う。そして、迫るロボットたちに突っ込んでいき食い止める。マシンマンは海岸の岩の隙間に足を突っ込み、脚を伸ばしてヘリキャリアまで上昇し、甲板の手すりを掴んで、自分をロープ代わりにして地上に滑り降りろと言う。二人の活躍を目の当たりにしてS.H.I.E.L.D.エージェントたちも奮い立ち、団結して脱出していく。

 船内で戦い続けるニック・フューリーとナイトクローラー。だがニックの足場をロボットが崩し、ニックは落下。レッドスカルが操るエージェントたちに捕らえられてしまう。スカルは先ほどの画鋲型デバイスを持ち出す。

 弱気なダグロックを励ますシャドウキャットことキティ・プライド。彼女の物体透過能力は電気機器を配線を切ることができると、ダグロックをつないでいるケーブルに自分の体を通す。感電し倒れて気絶するシャドウキャット。ダグロックはうなだれて謝り、この危機に対してたった1つの解決方法があるとつぶやく。

 レッドスカルが迫り、ニック・フューリー絶体絶命のピンチ。それを見たナイトクローラーは両者の間にテレポートする。が、フューリーは、レッドスカルの機械化された左手を掴み引き抜いた! スパークが起こり、悲鳴を上げるスカル。

 それにより、ダグロックへのスカルの支配が切れた。僕は彼の物じゃない、レッドスカルはインターフェイスから分離されたと言うダグロック。彼と同じく、テクノ・オーガニック化されコントロールされていたS.H.I.E.L.D.のエージェントたちも意識を取り戻し、脱出を開始する。ダグロックはデスロックを解放し、デスロックは部屋を出て行く。ダグロックは、命がけで彼を救おうとしてくれたキティ・プライドを抱き上げ運んでいく。

 甲板に爆煙が上がる。いまだコロッサスがロボット軍団を相手に奮闘していた。だが数が多すぎる。まだ避難していないS.H.I.E.L.D.隊員は十数名いた。しかしマシンマンにも限界が来ていた。コロッサスはマシンマンに脱出するように言うが、S.H.I.E.L.D.隊員を逃がすロープ代わりになっているマシンマンは踏ん張っている。その甲斐あって一人また一人とエージェントたちが地上へ到達していた。だがマシンマンの頭部がスパークしている。S.H.I.E.L.D.に解体されたあと動き出したマシンマンの内部に不備が生じているのだ。限界が来て、マシンマンは手を離してしまい、落下し爆発する。

 そしてロボット軍団に一人で立ち向かっていたコロッサスも限界が近かった。奇跡でも起きなければ助からないと彼が思ったその時、上空からローグが急降下しロボットをぶっ飛ばした。上空にはブラックバードが飛んでいる。ストームも登場し、竜巻でロボットたちを巻き上げる。ナイトクローラーのテレポートでニック・フューリーも甲板に現れた。フューリーはレッドスカルから奪った左腕を海に投げ捨てるのだった。

 ローグはコロッサスを掴んで飛んでいく。残りのS.H.I.E.L.D.隊員はストームが竜巻で運ぶ。そこへ、シャドウキャットを抱えてダグロックが現れた。ヘリキャリアはますます高度を下げている。ニック・フューリーの判断で、一同は地上へ退避した。内部の艦橋にはまだレッドスカルがいたが、彼はヘリキャリアと共に落ちていく。

 ダグロックはニック・フューリーに謝ろうとするが、フューリー大佐はきみも犠牲者だった、きみはここには居なかったのだと不問に処す。X-MENと別れるフューリー。事件は解決した。だが、この事件に関わった三人の機械人はこのあとどうなるのか。爆発したマシンマンの頭部はもげて瓦礫の中に落ちていた。新たなサイボーグ戦士デスロックは街へ放たれた。彼らは恐れられ憎まれながら、この世界での位置を探さなければならないのだ。

 

 このTHE DAWN OF M TECH完結編は、X-MENのこの年のANNUAL(年刊)誌として発行された。

 ニック・フューリーとX-MENたちの連携が楽しめる一作。新デスロックが登場したものの、いまいち活躍しないのが残念。甲板でコロッサスに迫るS.H.I.E.L.D.のネメシス・ドロイドやライフ・モデル・デコイといったロボットたちの方が印象的。レッドスカルに追いつめられても的確な反撃をしてのけるニック・フューリーは流石だ。

 解体後放置されていたマシンマンはよく動けたと思うが、最後に爆発し首だけになってしまう。S.H.I.E.L.D.隊員も命を助けられたんだから探してやれよ。

 このクロスオーバーのあと、MARVEL TECHというレーベルで機械人を主人公にした3冊のコミック、WARLOCK、X-51、DEATHLOKが新創刊された。マシンマンの第3の連載タイトルがスタートする!