1978年 DEC
EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY
マシンマンは陸軍兵士によって無事に発見された。本部へ同行したマシンマンは、私が破壊されたという報告は早すぎたねと言う。兵士たちの上官は、どうやって原爆から生き残ったのかと訊ねる。マシンマンは指のウェポンズ・システムを見せ、窓から外に出て実演してみせた。最大出力でレーザーを地面に発射して深い穴を開け、中へ飛び込んで爆発から逃れたのだった。そして放射能値が下がったころに、足裏のバネで飛び上がり穴から脱出したのだ。
一方、クラッグ大佐の部屋では、帰還した大佐とスパルディングが、マシンマンが消滅したと思い、嘆いていた。ボードに写真が貼られているが、爆発した現場はめちゃくちゃになっており、マシンマンは爆発崩壊したとしか考えられなかった。我々は得難い才能を失ってしまったと嘆くスパルディング。きみや俺やこの国が抱えていた問題は解決されたと大佐は言うが、医師は、我々は問題を解決したのか、友人を失ったのかどちらだと反論する。クラッグは、俺は奴を金属カラクリ以上の何かとして見始めたことは認めると語り、俺はマシンマンを好きになり賞賛するようになっていたともらす。彼がそれを聞いたら喜んだだろうなと答えるスパルディング。
そこへマシンマンが入ってきて、その言葉にはよろめくなと声をかける。マシンマンが生きていたことに驚愕する二人。すまない私は自分の葬儀に遅れたよとジョークを言うマシンマンに駆け寄り、誰でもブリキ幽霊に取り憑かれるのは嫌だからなあと答えて喜ぶスパルディング。ただただ驚くクラッグ。マシンマンはクラッグに相手の組織について訊ねられ、彼らはコーポレーションと言っていたと答える。
マシンマンをコピーしようとした敵組織では、デュークという背広姿の男が、新型銃器のテストを監督中のコニックという片眼鏡の男のところへ出向いていた。デュークはビームライフルを撃つコニックに話しかけ呼び出し、ターゲットとしてマシンマンの写真を見せる。
陸軍本部から出たマシンマンとスパルディング。マシンマンの耳はバッターアップと言う声をとらえる。近くのグラウンドでは兵士たちが野球をしていた。マシンマンは野球に参加することにした。バットを持って打席に立つ。投げられたボールを思い切りバットで打つと、ボールは粉々になってしまった。必要以上の力で叩いてしまったなと反省したマシンマンは、今度は守備につくことに。バッターが高く打ち上げたボールを、腕を伸ばして取ろうとする。その間にランナーが次の塁を狙うが、マシンマンはボールを取った腕を伸ばしてタッチアウトした。こんな奴反則じゃねえかと兵士たちがもめ始めたので、スパルディングはマシンマンをグラウンドから連れ出す。そういえば弁護士が来ると言ってなかったっけとマシンマンは訊ね、スパルディングは、審議の弁護にマイルズ・ベイカーという男を雇ったと答え、二人はベイカーに会いに向かった。
マシンマンとスパルディングはマイルズ・ベイカーと対面するが、それはあの組織のコニックなのだ! ベイカーは二人に、マシンマンは世紀の社会問題だと言い、彼が公共の恐怖心を取り除くために、歩く武器庫というイメージを無くさねばならないと提案した。だが彼のスーツケースの中には小型の銃器が入っているのだ。私の防御メカニズムを全て取り外せということかというマシンマンに、それは攻撃メカニズムと見なされる、完全に武装解除しなければならないと指摘する弁護士。スパルディングはそれではマシンマンが格好の的になってしまうと反対するが、マシンマンは同意する。ベイカー弁護士はあなたの武装を無力化する中枢ユニットがあるかと訊ね、マシンマンは自分の人間の顔のマスクを外して機械の素顔を曝し、額のX-51のマークを押して武装のネットワークを解除した。そのあと、あなたも同じことをしないか?と言いながら、マシンマンは弁護士に掴みかかる。ポケットに金属反応があり、その中にはマシンマンの回路にダメージを与える小型の音波ビーム銃が入っていた。それを取り上げるマシンマン。この男はベイカー弁護士などではなく、組織が送り込んできた刺客なのだ。男を掴んで持ち上げるマシンマン。
だがマシンマンは突然衝撃を浴びる。男は腹にプラスチックでできた衝撃波装置を付けていたのだ。マシンマンは左手のパンチを伸ばして攻撃するが、男は伏せて避け、衝撃波を受けた時にマシンマンが床に落とした音波銃を拾い、撃つ。だがマシンマンは跳んでそれを避けながら組みつき、男を組み伏せ、銃と片眼鏡を奪った。男を説得して話を聞こうとするマシンマンとスパルディング。男は片眼鏡を返してくれ、そうしたら話すと答える。マシンマンは男のベルトの衝撃波装置も握り潰した。スパルディングはレンズを調べたが、何事もないようだった。男はレンズが二重になっていると言い、スパルディングがレンズを分解してみると、一方のレンズが太陽光を受けて火を噴き出した。あっという間に床に火が付き火災になる。男はそれに乗じて逃げ出した。マシンマンは額のX-51のスイッチを再び入れ、指のショック・ウェーブを撃ち込み、炎を吹き飛ばす。衝撃波で起こった真空により炎は消えたが、男の姿はすでになく、上空をヘリが飛び去っていった。敵はすべての事態に対応するよう準備していたのだ。
ヘリに助けられた刺客の男コニックは、今回のミスから学び、次回へとファイトを燃やす。マシンマンたちは、コーポレーションの執念深さを知り、彼らを倒す次のチャンスを待つのだった。
実はこの#9が、ジャック・カービーの書いた最後のマシンマンのストーリーなのだ。そんな重要な回であるのに、マシンマンが野球をやるシーンなど入れてしまうのがカービーらしくて楽しい。逆に、マシンマンを捕らえたギャングの正体などは明かされずに終わってしまうが、それはあえてこのあとの続きに託しているのだろう。マシンマンの話は2001: A SPACE ODYSSEY #8から数えて12号にわたって展開してきたが、ストーリーの区切りが数号完結だったこともあり、実際読むとかなり短く感じて、まだまだこのキャラクターやストーリーには伸びしろが残っていて、もったいないと思ってしまう。
この時期に連載されていたカービーのタイトルは'78年にばたばたと終了した。'70年代後半にマーベルでスタートしたカービーの3つのオリジナルタイトルのうちの1つであるTHE ETERNALSは'78年1月号(#19)で先に終了。ファンタスティック・フォーで登場したヒーローがスピンオフしたBLACK PANTHER誌はMACHINE MANより1ヶ月早く'78年11月号(#12)で終わり。そしてMACHINE MANと同時にスタートしたDEVIL DINOSAURは同じく12月号(#9)で完結し、すべての連載が終了している。これには、ジャック・カービーが、この時期に2回目のアニメ化をすることになったファンタスティック・フォーの製作に加わったためという理由がある。その後もカービーは'80年代前半はアニメの仕事に移り、そのあとマーベルで連載を担当することはなかった。
だがマシンマンの物語はこのあとも続くことになる。ここまでで創られたマシンマンのキャラクターは、かなり有望視されていたということではないだろうか。2001年宇宙の旅がスタート地点ではあったが、マシンマンと人間の対立・対決を描いているうちに、人間の仲間に入れないキャラクターが、軍に追われ逃げながら活躍する展開となる。考えてみるとこれは、カービーの代表キャラクターの一つであるハルクの展開だ。マシンマンは'70年代版ハルクという見方もできるのだ。そして#9の巻末にも書いてあるが、ストーリーはそれから4ヶ月後に出るTHE INCREDIBLE HULK #234-237へと続く。このつなぎ方のハイセンスさ加減は見事という他ない。
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