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2001: A SPACE ODYSSEY #1

 1976年 DEC

 EDITED, WRITTEN & DRAWN BY JACK KIRBY

 

 太古の時代、一人の猿人が木の上に立ち、棍棒を持って獲物を狙っている。彼の同族は今そこにはいない。彼はそれを好ましいと思う。彼は他の者が嫌いであった。他の者は「精神の石」の言葉を聞くことができないのだ。このハンターは、首と足の長いキリンのような動物「ロングレッグ」に狙いを定め、木から飛び降りて獲物の背にしがみつく。驚いたロングレッグは彼をしがみつかせたまま走り出す。

 その騒ぎを聞きつけた他の猿人が集まってきた。自分の獲物を横取りされそうになったハンターは、棍棒で相手を打ち、追い払う。だがその間に獲物も逃げてしまった。ハンターは思う、棍棒ではだめだ! もっと長くて歯のように鋭いものが必要だ。彼は「精神の石」から知識を得るため歩き出す。他の猿人たちは彼の秘密を探ろうとあとを追跡する。彼らはハンターの持つ知識の力に嫉妬し、自分たちもその知識を得て彼を殺そうと考えているのだ。宙に浮く黒い石板モノリスのところへやってきたハンターは、モノリスに触れて啓示を得る。他の猿人には彼がモノリスから得た知識がわからない。ハンターは木の枝を折り、その先に鋭い石を付け、ナイフのような武器を作りだした。そこへ、獰猛なサーベルタイガーが現れた。猿人には到底かなわない相手だ。他の猿人は木の上に逃げるが、新たな武器を手にしたハンターはサーベルタイガーに組みつき、その首を切り裂いて仕留めた! この発明を手にしたハンターは、彼を真似る者たちから「ビーストキラー」と呼ばれることになる。彼が手にした進歩は、未来の彼の種族を宇宙にまでも進出させるものであった。

 場面は変わって2001年。宇宙飛行士ウッドロウ・デッカーは、火星と木星の間にある小惑星帯にやってきていた。そこには何者かの作った遺跡があったが、この大発見にもかかわらず、デッカーは不機嫌で、遺跡の瓦礫を手荒に扱っていた。彼と共にここに来たメイソンはそれをとがめるが、デッカーにとってはもう遺跡などどうでもよかった。彼らの乗ってきた宇宙船は事故で大破してしまい、ここから生還する手段はないのだ。彼らは遺跡の奥へと進むが、突如怪物が現れ触手を伸ばしメイソンをからめ捕る。デッカーは助けようとするがあっという間にメイソンの宇宙服は破壊され、怪物はメイソンの体を穴に引きずり込んでしまった! 同時に遺跡が崩れ始める。彼の行く前には黒い石板モノリスが見えた。必死のデッカーはモノリスに飛び込んだ! 彼の体は光と共に飛翔し、異星の風景や異質な生命が見えた。デッカーは変わっていく。石器を手にしたビーストキラーが人間になったように。デッカーは何になるのか?

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 気が付くと彼は草むらに倒れていた。意識を取り戻すと、すでに宇宙服を着てはいなかった。ここはどこなのだろうか。デッカーの前に少年が現れ、自分を知っているようで、ここはホームだよと言う。二人は共に道を歩いていくが、気が付くと少年の姿は消えており、デッカーは次第に老人になっていく。ビーストキラーから始まった歩みは止まることはないのだ。体は重く、ついに倒れてしまうデッカー。その前にモノリスが現れ、デッカーの体を新たな姿に変えていく。スター・チャイルドが誕生し、宇宙へ飛び立っていった。

 

 ジャック・カービーは映画『2001: A SPACE ODYSSEY』をMARVEL TREASURY SPECIALという大判コミックで見事にコミカライズしたが、それだけでは終わらず、今度は連載コミック誌として2001: A SPACE ODYSSEYを創刊する。これは、映画から離れて独自のストーリーを展開するということで、驚くべきことだ。

  連載コミック誌2001: A SPACE ODYSSEY第1話は、まだそれほど映画から逸脱していない。映画とは別のストーリーで、原人が石器を手にする過程が描かれたり、宇宙怪物が登場したりという違いはあるものの、原始時代の原人にモノリスが知識を与え、2001年の宇宙飛行士がスター・チャイルドになるという同様の筋書きだ。ビーストキラーが石器を手にし猛獣を仕留めるのは、進歩の象徴として判りやすい。デッカーが歩む田舎道は、映画のボーマンが到達したホテルのように、モノリスが与えたイメージなのだろう。映画と同じテーマを別の人物、展開に置き換えて語っているのだが、これをベースに第2話からは変貌していく。