アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

昔のアメコミを紹介しています

2001: A SPACE ODYSSEY #9

1977年 AUG

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

f:id:sleepwalker2099:20210923170817j:plain

 機械の顔をさらしたまま、拘束を脱したX-51は行動を開始する。彼は自分の顔が奪い取られたことに激しく怒っていた。扉のダイヤルを回し、セットされていた音波バズーカ砲の攻撃をかわし、指に仕込まれた火炎放射器で砲を焼き払う。その先の扉を破ったX-51は兵士たちを蹴散らして捕らえ、自分の顔がどこにあるのか激しい調子で聞く。だがその兵士は知らない。兵士を指からの軽いビームで気絶させた彼はヘルメットと銃を奪い、頭部の脳の位置にあるコンピューターで兵士の喋った言葉を組み替え「急ぎ部隊へ伝達せよ、機械は牢から脱出した」と通信。あわてて一部隊が鉄の扉を開き入ってくる。扉の影に隠れていたX-51はさっと外へ出て扉を閉じてしまった。彼は求めるものを探しに向かう。

 一方オフィスでは、クラッグ大佐ブロードハースト博士が衝突していた。大佐がX-51から顔を取り外したことを、彼の唯一のアイデンティティーを奪ってしまったのだと説明する博士。それをはなから馬鹿にする大佐に、博士は考える機械に悲しい偏見があるなと答える。神は彼を助け賜うという博士に、あれはただの機械だ、お前はXモデルの破壊命令を出しただろうと言う大佐。X-51は別だ、彼は損なわれないままであらねばならないと反論する博士。そこへX-51脱出の報告が届く。クラッグ大佐は前と同じく音波兵器を使ってバラバラにすべきだと主張し、ハイネスも同意するが、ブロードハースト博士は拒否し、兵士の抵抗を止めさせろと命じる。そんな事をすれば部下の兵士は虐殺されると大佐は憤り、お前は奴がここを出て行くのを許すつもりだなと言う。博士はその通りだと答え、お互いの信念と信頼をもたらすつもりだと宣言した。

 X-51は兵士たちの抵抗と戦う。鉄の防御壁をひねり潰し、兵士たちを弾きとばし、音波ライフルを持つ兵士に飛びかかって持ち上げた。そこへ別の兵士たちが入ってきた。戦いはやめよう、自分たちは話し合いに来た、あなたがこの施設から出て行く許可が出たのだと言う兵士。彼らの言葉を信じてついていくと、技師は自分が求めていたアーロン・スタックの顔を取り付けてくれた。喜びお礼を言うアーロン。さらに兵士はアーロンが持っていたコスチュームも返してくれた。技師は人間そっくりな言動をするアーロンに驚き言葉をかけるが、アーロンは自分の目だけはロボットにしか見えないけどねと返す。自分のことはミスター・マシンと呼んでくれと言い残し、彼は施設から飛び立っていった。それを見送るブロードハースト博士は、我々はあの鳥を籠に収めておくことはできないと言う。クラッグ大佐は、お前は世界の危険を解き放っただけだと怒る。だがブロードハーストはX-51に発信装置を仕掛ける指示を出していた。X-51の所在は人工衛星にモニターされているのだ。

 飛翔していったミスター・マシンは着地し、無用の危険を防ぐため目立たないように道路を歩こうと考える。その彼の前に、モノリスが現れた。彼に脱出をうながしたモノリスは、次に彼をどのように導くのか。そこへ男の子が現れ、彼をみて驚き、まるでマーベル・スーパーヒーローみたいだと感激して言う。この男の子ジェリーの姉リビアの車がこの近くでパンクしていて、二人は立ち往生していたのだ。ミスター・マシンは車を片手で持ち上げタイヤを交換する。驚きつつも感謝したオリビアは、彼を車に乗せてくれ、三人は走り始めた。

 一方、怪しい黒い車に乗ったマスクの怪紳士ミスター・ホットラインは、運転手クリンジからXモデルの一体が破壊されずに逃れたと報告を受ける。細かい状況を伝えない運転手に、報告は正確にせよと威圧した怪紳士は、マイクを取って通信を始めた。

 車で走る三人。ミスター・マシンは何らかの信号を受信した。スーパーヒーロー大好きなジェリーは、アベンジャーズファンタスティック・フォーからのメッセージかなあ、ドクター・ドゥームが来るのかもとはしゃぐ。そこへ、卵形のカプセルが三機飛んできて攻撃しはじめた。車から降りたX-51は、足のシャフトを軸に足首を回転させて地面に埋めて足場を固定し、足のシャフトを伸ばして頭からカプセル機に突っ込み一機目を撃破。二機目は着陸し、乗員は音波砲をかまえて狙いをつける。だがそれが発射される前に、X-51の目は相手をターゲットスコープに捕らえ、衝撃波を撃ち込んだ。三機目は、カプセル機に装備された火器で攻撃してきたが、X-51は突撃しカプセル機は粉砕された。やったぜスーパーヒーロー!と喜ぶジェリー。心配するオリビア。ミスター・マシンは二人を巻き込んでしまったことを詫びる。オリビアは、攻撃されたことを警察に言わなくちゃと言い、三人はこの場を去る。だがその様子は、ミスター・ホットラインたちに監視されていた。

 

 X-51は、父が作ってくれた人間の顔を取り戻すために激闘。人間に反逆するのも、機械ではあるが人間として生きたいという彼の目標ゆえであり、彼の願いが強く感じられる。

 X-51を解き放つブロードハースト博士だが、決していい人だからではなく、秘かに発信装置をつけて追跡するなど、人間としての自我を持ったロボットがどう動いていくのか知りたいという科学者としての冷徹な目的があるのがシビアだ。

 ジェリーはミスター・マシンをマーベル・スーパーヒーローの一員ではないかと言う。後には本当にそうなるのだが、ここではコミック狂の少年がコミックと現実をごっちゃにして喋っている風で、マーベルユニバースの世界観とは分けて描かれている。一方、明らかにヴィランな怪紳士が登場し、ストーリーは急速にスーパーヒーローものになっていく。