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MACHINE MAN #10

1979年 AUG

MARV WOLFMAN : WRITER/EDITOR

STEVE DITKO : ARTIST

 

 倒れたマシンマンは担架でブロードハースト博士の研究所に運び込まれた。マシンマンは危険な状態だった。博士はマシンマンの頭部を開いて内部を診断し、彼のプログラムが自己破壊を起こしたことが判明する。ピーター・スパルディングは友人としてマシンマンの身を案じる。X-51製作者であるブロードハースト博士はマシンマンの各部を修理しながら、これまでの彼について回想する。X-51をあずけたアベル・スタックは、このロボットを息子アーロンとして育てたのだった。

 ブリードハースト博士が計画主任として創られたXモデルと呼ばれるロボットたちは、人間のように思考するロボットとして製作されたが、それ故自己のアイデンティティに悩み暴走するという欠点を抱えていた。X-35は大暴走し警備をしていた軍と交戦したうえ破壊された。ブロードハースト博士は開発を中止しXモデルの自爆装置を起動する。だがアベル・スタックはX-51の自爆装置を取り除き、彼に人間の顔のマスクを与え、自分の姿を記憶させたあと送り出し、自分はアーロンの逃亡を成功させるために犠牲となり自爆装置の爆発で死去したのだった。

 語り終える頃には、博士の修理は終わっていた。ピーターは、マシンマンの目が以前の特徴的な大きい目ではなく人間のような小ささに変わっているのを見る。博士はマシンマンを彼の望み通り、より人間らしく見えるように改造したのだ。意識を取り戻し起き上がったアーロンは、自分が変わっていることに驚いた。あなたを修理した、その時に改変した部分もあると説明する博士。それを聞いて、彼を勝手に改変したのかとピーターは怒る。博士は、きみは試作モデルで、テスト装置のために負荷がかかっていたと言い、今回の改良点を含めたマシンマンの能力の図解を示した。

 自分が改造されたと知ったマシンマンは、博士が止めるのも聞かず、一人になりたいからと窓から出ていった。手足を伸ばして移動し、ヴァスコ山に登り、考え込むマシンマン。ブロードハースト博士は自分のプログラムを勝手に変更した。博士は私がなぜそのことに神経質になっているのか理解できないようだ。だが、普通の人間は、他人によっていじり回されることなどない。他人に勝手に思考や体を改変されるのならば、自分とは何なのか?

 深い悩みに落ち込んだマシンマンの目から映像が放たれ、岩壁に映し出された。それは父であるアベル・スタックであり、父はマシンマンに語りかける。この映像は、マシンマンの回路が改変された時に発動するよう以前から父がプログラムしていたものなのだ。父は、Xモデルのロボットには、政府に不都合な行動に抵抗する誤作動安全装置が組み込まれていると言う。そのため自立行動との矛盾からオーバーロード・キャパシティにおちいることは予想されたが、おまえは信頼するに足る友人と出会うだろうから、それについては心配していないと言う父。おまえはただの歩く機械ではない、おまえは考え、人を愛せる創造物だ。おまえがこの映像を見ているということは、信頼できる友人に救われて再プログラムされたという証拠だ。おまえは人間だと励ます父は、別れの言葉を言い、消えていった。父の心のこもった言葉に、アーロン・スタックは人間なんだと立ち直った。

 その頃、ニューヨークでは、ブリックマン上院議員クラッグ大佐を裏切り者と罵倒していた。歩くガラクタコンピューターに洗脳されやがって、おまえはマシンマンの存在そのものが人類に対する脅威であることが判らないのかとわめき立てるブリックマン。クラッグ大佐は、彼があなたの政治的野心の脅威である事は理解していますがねと答え、自分はロボットどもを止めるために多くの部下を失ったが、X-51と話して彼が他とは違ってほとんど人間と言えることを知ったと反論する。あの殺人ロボットに何をされたんだと言うブリックマンだが、そこへスパルディングとブロードハーストがヴァスコ山へ向かうとの情報が入った。ブリックマンはヴァスコ山にいるマシンマンを破壊すべくジェット機で出発し、大佐も上院議員の暴走を抑えるために同行する。

 ヴァスコ山にいたマシンマンはロボットと人間の狭間で揺れる自己に整理をつけようとしていたが、ジェット機が迫ってくるのを発見。自分を邪魔だと考えるブリックマンの差し金だと見抜いたが、至近で爆発したミサイルにより体勢を崩し、続く2発目を火炎放射で迎撃しようとするも、その機能はブロードハースト博士の改造で除去されていて失敗、直撃をくらってしまう。

 だがマシンマンは左腕を伸ばし、飛んでいるジェット機のキャノピーを取り外す。マシンマンは自分の腕の強度が改良されていることを知った。パイロットは機から脱出し落下していく。マシンマンは腕を伸ばしてパイロットを捕まえて崖の上に降ろし、誰に命令されたと質問をしようとしたが、パイロットに音波銃で攻撃され、崖から落下する。ブリックマンは崖下に倒れているマシンマンに駆け寄り、奴は死んだ、俺は勝ったぞ!と叫ぶ。そのすぐ後ろには同行したクラッグ大佐、さらに向こうからマシンマンを追ってきたピーターとブロードハーストが駆けつけてきた。

 と、そこで崖崩れが起こり、落石で全員が生き埋めになってしまう。誰も怪我はしていなかったが、外へ出る隙間などない。ブリックマンはこの事故をマシンマンの仕業と決めつけ、機械のせいで我々は全滅するんだとわめき立てる。ブロードハースト博士はマシンマンを回復させた。マシンマンは自分を罵倒する上院議員に反論しながら脱出の手段を探る。マシンマンのハンドセンサーは、周囲が石炭であることを探知した。マシンマンは腕の温度コントロール装置を使い、岩盤を冷却したあと加熱し、岩を崩れやすくしていく。だが周囲にガスが発生し始めた。マシンマンは座って岩盤に足を付け、足を伸ばす力で穴を開けようとする。自分たちを救おうと努力するマシンマンを目の当たりにしてすら、彼を責める上院議員の言葉は止まらない。それに反論するピーターやクラッグ大佐だったが、ガスにやられ喋っていられなくなってきた。間一髪穴が開き、マシンマンは手足を伸ばしてクラッグ、ブロードハースト、ピーターの3人を崖上に避難させた。

 崖下に戻ったマシンマンはブリックマン上院議員と対峙する。私がもしあなたが言うような機械にすぎなかったら、あなたのことなどに時間を浪費しないだろうと言いながら、手を差し伸べるマシンマン。しかしブリックマンはあくまでマシンマンの助けを拒み、ハシゴが降ろされるのを待つと言って逃げだそうとする。仕方なくマシンマンは腕を伸ばして上院議員の体を捕らえ崖上に差し上げた。助けられたことを気にもせずブリックマンは、この事故は仕組まれたものだとか、こいつは人類に敵対するとか叫び、わたしはこいつを破壊すると言い続ける。マシンマンの心もこの男には通じなかったのだ。

 

 カービーが去ったあと再開したMACHINE MANの第1回目。ライター兼エディターは、マーベルで編集長の経験もありTOMB OF DRACULAなどのライターを勤めて高い評価を得ていたマーヴ・ウルフマン。アーティストはスパイダーマンドクター・ストレンジで有名なスティーブ・ディッコという強力布陣である。

 マシンマンは設計製作者であるブロードハースト博士が再登場するのをはじめ、これまでのマシンマンの関連キャラが登場してストーリーをつないでいくのが嬉しい。マシンマンの目が、カービーが描いた大きくて波打つ線が入った独特のものから、小さく赤い普通の目に変えられたが、これはディッコの希望だろうか。これ以降のマシンマンはこの時の改変に準じた姿で登場していく。カービー版ではあまり出番のなかったブリックマンは、実に活き活きとした嫌な奴に描かれているのがディッコらしくて、マシンマンに助けられようが何しようが絶対に心を入れ替えないというキャラの立ちかたをみせてくれる。マシンマンのメカニズムも改良が加えられたという設定になり、話も生みの親カービーを離れて育ての親たちによって新たなスタートを切ったのが伝わってくる一編となっている。

 このコミックが収録された合本は

 https://www.amazon.co.jp/dp/0785195777/

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