1977年 APR
EDITED, WRITTEN, AND DRAWN BY JACK KIRBY
三つ目で牙が生え四本腕の一つにビームガンを持った恐ろしげな宇宙怪人が迫る。額にその名の由来のマークを印したスーパーヒーロー、ホワイトゼロは宇宙怪人を強襲し、痛烈な右パンチでぶっ飛ばした。この2040年の未来では、コミックの世界は実体を持っている。ホワイト・ゼロはザコの宇宙人悪役たちをすごい早さで片付けていき、抹殺爆弾即死光線の発生装置の破壊に成功した。だがそこで、コミックブックの定石通り、宇宙人の首領デス・マスターがスクリーンに現れ、プリンセス・アドーラは我が手にあるぞとあざ笑う。悪の化身を倒しプリンセスを救うため通路を急ぎ走るホワイト・ゼロだったが、突如眼前に黒い石板が現れ、驚く。彼はそれが、2001年に月で発見されたようなモノリスだと気付いた。その有名な映像はスミソニアン博物館に収められているのを彼は知っていたが、眼前にあるのは実物のようだ。モノリスに触れた時、彼は宇宙を感じるが、突然足下の床が落ちた。デス・マスターの罠だ。地面に向かって落下していき、さらにミサイルまで撃ち込まれるが、ホワイト・ゼロはうまくかわして着地し、デス・マスターのタイムワープ円盤へとたどり着いた。デス・マスターは、もう遅い、あと5秒で発進だと勝ち誇るが、ホワイト・ゼロは切り札の指ビームを発射しデス・マスターを蒸発させる。正義の勝利だ。ヒーローは円盤のドアを開け、中のプリンセスと対面する。ああ、だが何ということだろう。こんなことはスーパーヒーローの歴史上なかったことだ。そこにいたのはコスチュームを着たデブのおばちゃんだった!
抱きつくおばちゃんを制し、彼は壁のボタンを押して係員に苦情を訴えた。おばちゃんは自分に不満のヒーローに文句を言う。係員は、自分たちのところのモデルはきみの要望を果たせなかったようだが…と反論しようとするが、すっかりしらけたヒーローは、いいからもう出してくれといい、その部屋から出る。ここはコミックの世界を体感できる娯楽施設だったのだ。ホワイト・ゼロはこれからヒーローを体験しようと順番待ちをしている皆に、このコミック村で成功できないような奴はセーターでも編んでなと笑いものにされ、恥をかいたまま部屋を出て行く。
着替え室で、ホワイトゼロはただの男ハーベイ・ノートンに戻った。マスクを取ったところで支配人が入ってきて、あなたとの契約には登場させる少女についての言及はなかった事は思い出していただきたいと言い訳を始めた。うんざりなノートンは、モノリスの登場に驚かされたから料金はそのままでいいよと答えたが、意外なことに支配人はモノリスなど出していないと返事をする。そして、実際の冒険に憧れるあなたのような方は宇宙計画に参加されてはと支配人は勧め、ノートンは適当にあしらって施設から出ていった。
ノートンは、魅力的だが実在しないヒーローの世界から単調な現実へと戻ってきた。2040年のニューヨークはドーム都市になっており、公害がひどく破棄された区域も多い。ノートンは地下鉄に乗り自宅へ戻った。ダイヤル一つでできる夕食を食べ、立体テレビの格闘番組を見て、一本15ドルする高山の澄んだ空気を酸素マスクをつけて吸い込みリラックスする。
翌日ノートンはロング・アイランドのビーチへ泳ぎに行き、海の景色と冷たい水を楽しんだ。だがこの風景も単なるホログラムなのだ。ここに現実はない。自分は何をすれば満足できるのか? 突然彼の前にモノリスが現れ、それに触れたノートンは、唯一の現実的な冒険を求めて宇宙計画に参加することを決意した。
ここは海王星から100マイルの宙域。ノートンと仲間たちはそこで、異星の宇宙機の捕獲に成功していた。その内部には、未知の文字が書き込まれたカプセルがあった。自分たちの宇宙船からスクリーンを通してそれを調べるノートンたちは、カプセルの中から異星の女が現れるのを見る。明らかに人間とは異なるが、美しい女性の姿に感動するノートン。彼が求めていたものが現れたのだ。だがその時、宇宙船が何者かの攻撃を受けた。窓から宇宙空間をのぞいたノートンは、巨大な宇宙戦闘艦を見る。コミック村では体験できない圧倒的な光景。彼の運命は?
前回までで古代の時間が描かれていたので今回は中世あたりが舞台かと思いきや、さにあらず。タイトルは2001年宇宙の旅だというのに、今回はなんと2040年である。しかもとつぜんコスチュームヒーロー対宇宙怪人のバーチャル娯楽というぶっ飛んだ展開! モノリスとの出会いは未来人ノートンに何をもたらすのか? ラストで登場する異星人女性は、カービーが以前THORで描いたリゲル人そっくりだ。