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2001: A SPACE ODYSSEY #10

1977年 SEPT

EDITED, WRITTEN + DRAWN BY JACK KIRBY

 

 リビアジェリーミスター・マシンの三人は、町の保安官のところへ行き、卵型の飛行機械に襲撃されたことを話す。突拍子もない話に、信じられない様子の保安官だが、ミスター・マシンは現場に行ってみれば残骸が発見できると言う。ジェリーは、ヒドラ党がミスター・マシンを捕まえに来たんだよ、でも大丈夫、ニック・フューリーたちが助けに来てくれるからと言い、オリビアはコミックの話ばかりする弟をたしなめる。保安官は機械人間が実在しているのに驚いている。保安官はこのあとどこへ行くのかと訊ね、姉弟はうちに泊まってとミスター・マシンを招待した。

 一方、地下に隠された秘密基地では、ミスター・ホットラインが部下のクリンジから、カプセル機の残骸の始末が完了したと報告を受けていた。この秘密結社自慢の兵器であるカプセル攻撃機が撃退されたことに恐怖するクリンジ。ミスター・ホットラインは、あれは極秘とされるXモデルだと答える。彼らはハーデス神を信仰する一党であり、全地球をマインドコントロールする計画を立てているのだ。ミスター・ホットラインがモニターの前で祈りを捧げると、悪魔のようなハーデス神の姿が登場。ハーデス神は、そやつの秘密を探ることで全ての者をコントロール下に置く方法を得ることができると言い、そのXモデルを連れてこいと命じた。

 ジェリーの家に滞在するミスター・マシン。オリビアとジェリーの父は機械の男の訪問を驚きつつも歓迎してくれた。ミスター・マシンをコミックの中のスーパーヒーローと思っているジェリーの視線はずっと彼に釘付けだ。家族につれて訊ねられ、彼は自分の父はアベル・スタックで、自分にアーロンという名をつけてくれたと答える。ジェリーの父はミスター・マシンが有名な科学者であるアベル・スタックの息子だと名乗ったことに驚き、アベル・スタックは最近亡くなったはずだがと言う。その言葉に衝撃を受けるミスター・マシン。ジェリーの父は、アベルが爆死したと新聞に出ていたことを伝える。父アベルの死を知ったミスター・マシンを皆はなぐさめようとするが、そこへ武装した戦闘員三人が乱入し、銃を向けて、家族を傷つけたくなければ同行しろと命じる。

 ミスター・ホットラインの前に引き出されるミスター・マシン。戦闘員を一撃し、銃弾をはね返すミスター・マシンだが、怪人物ミスター・ホットラインはあの家族を人質にしていると脅す。怒るミスター・マシンではあったがここは従うしかない。彼は固定具に入れられ研究室に運ばれ、技術者たちにX線透過装置で体の秘密を調べられ、ボディのジョイントを解体され両腕・両足・胴体・頭に六分割されてしまった。ミスター・ホットラインは、X-51の意識をつかさどる頭部のみをマインド・モニターのところへ運ぶよう部下に指示する。ミスター・マシンは敵の一団が地球をアリの巣のような意志のない世界にする目的だと知った。ミスター・ホットラインは別室に退避してからマインド・モニターを起動。ミスター・マシンの前にハーデス神が現れる。邪悪な姿を見て、自分の魂を奪うつもりかと叫ぶミスター・マシン。ハーデス神の目からエネルギーが発せられ、X-51の頭脳部分へ強烈な電流がながされその機構を探りはじめた! だがX-51の防衛機構が発動、頭部からテレビジョン・トランスミッティング・ユニットが飛び出し、送信を開始する。

 電波を受けたミスター・マシンの手足が、離れた別室の中で動き出す。分解した手足が突然活動しはじめたことに驚く技術者たち。手足は技術者たちを叩きのめし、胴体のところに歩いていって自分たちと胴体をつなぎあわせた。異変を知った戦闘員たちが銃やバズーカを手に部屋へ向かい、扉を破ろうとするが、扉は逆に内部からの炎で破られ、頭部がないX-51の体が躍り出て、壁を突き抜けて頭部のある部屋へと到着した。

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 ミスター・マシンの頭部は胴体に接続された。彼は眼前の悪魔的な像に立ち向かい、指からのブラストを発射する。ガラスの割れた音がして、そこに残されたのは破壊されたモニターだけだった。あの悪魔は、ただのホログラムだった。このハーデス神教団を支配するために作られたイメージだったのだ。ミスター・マシンは、教団をつかさどるスーパーコンピューターを発見する。彼はコンピューターの画面にジェリーたちの家で爆弾を持って家族を人質に取っている戦闘員を映し出し、コンピューターを操作して爆弾を融解させる。家族は戦闘員が倒れたことに驚き、父はオリビアに保安官へ電話するように言い、戦闘員を縛り上げる。誰が助けてくれたんだろうと言うジェリー。父は、おまえのスーパーヒーローかもなと答えるのだった。

 ミスター・マシンは教団の施設の天井を破って脱出していた。施設は彼がコンピューターを暴走させたことで大爆発を起こした。ミスター・ホットラインはカルト教団を支配する邪悪な天才だった。ミスター・マシンは、人々の自由を守るという自分の運命を初めて自覚するのだった。

 

 この号が、コミック版2001: A SPACE ODYSSEYの最終回だ。モノリスはもはや登場せず、内容は映画を大きく外れ、ロボットヒーロー対カルト教団に偽装した科学結社という、とんでもないストーリーになっている。ハーデス神の名で登場する悪魔は最後に本物ではないと明かされるものの、ミスター・マシンと悪魔の対峙はとても違和感があって面白い。怪人物ミスター・ホットラインの正体は、結局明かされないまま終わる。X-51の腕や足が一本一本独立して暴れまわるシーンはとても可笑しい。

 そして、ロボットヒーローが主人公となったことでこのタイトルは終了し、新たに彼の独立タイトルがスタートするのだ。