アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

昔のアメコミを紹介しています

2001: A SPACE ODYSSEY #7

1977年 JUNE

EDITED, WRITTEN, AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 宇宙飛行士であったゴードン・プルエットは森の中を歩いていたが、宇宙での事故のあと自分がなぜここにいるのか記憶がなかった。何が起こっているのか? 気付くと着ていたはずの宇宙服がなくなり普段着になっている。彼はこの森の風景に安らぎを覚える。岩を背に座り込んだ彼の体は、次第に老い、モノリスが現れプルエットをスター・チャイルドに変えていった。

 誕生したスター・チャイルドは新たな力と思考を得て、モノリスのもとを離れ、彗星より速く宇宙を飛翔していった。様々な世界をまわるスター・チャイルド。原始の惑星では恐竜のような生物が戦いあっていた。対照的に、機械技術が極限に発達し驚くべき巨大な建造物を作り上げた世界もあった。

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 そして彼は、文明が崩壊するほどの戦いが行われた世界へとやってきた。瓦礫の上で、兵士はライフルを向けてくるが、スター・チャイルドは炎を発し武器を焼く。逃げ出した兵士を追っていくと、他のも人々がいた。そのうちの一人は、この世界の汚染に耐えきれずに倒れて死んだ。それを宙からながめるスター・チャイルド。

 スター・チャイルドはこの惑星の破壊された文明の跡を見てまわり、銃を手にした野蛮な男たちが女性を襲っているところに遭遇する。男たちは女性を捕らえるが、そこへ一人の兵士が登場し、男たちに向かっていった。集団で兵士をリンチする男たちだが、兵士は逆襲し、鞄から手榴弾を投げつけた。男たちは吹き飛ばされていき、女性は救われた。抱き合う二人。だが男たちが最後の力で男を、さらに向かってきた女を、銃殺してしまう。その場には誰も生き残らなかった。それを見たスター・チャイルドは考える。この惑星は死以外何も生み出さなかったのか? あの二人が最後に見せた勇気と愛を、この星ができた意義として、スター・チャイルドはその力でエネルギー化し、自分の後ろに引っ張って惑星を離れる。そして銀河を横断し、ちょうど生命が誕生する寸前のエリダヌス座イプシロン星へと飛来し、生命誕生のエネルギーとして海へと加えた。別の惑星で生まれた貴重なものは、何万年も後にこの星の生命として開花するだろう。スター・チャイルドは次なる答えを求めて、宇宙の旅を再開するのだった。

 

 人類の次の段階である新たな種スター・チャイルドになった者が、それから何をするかは、映画では語られず、小説版でもわずかに語られるだけだった。コミック版も前号まではスター・チャイルドになるところまでで終わっている。映画の続編として書かれた1982年発行の小説『2010年宇宙の旅』ではある程度語られるのだが、誰しも気になるそのテーマに、本号ではコミック版なりの答えを描いているのが意義深い。愚かさから滅んだ星と、そこにあった人間の美しさが次代へと伝えられるというこの物語は、まるで手塚治虫の『火の鳥』のようだ。

 スター・チャイルドについては本号で区切りがつけられ、次号では別のキャラクターが誕生する。