アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

昔のアメコミを紹介しています

2001: A SPACE ODYSSEY #6

1977年 MAY

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 宇宙船のスクリーンに、敵の異星人たちの顔が映る。だが相手の言葉は理解できず、何を要求しているのか皆目わからない。焦りながらなんとか翻訳できないかと試みる宇宙船の乗組員二人。だがそこへやってきた三人目の乗組員ハーベイ・ノートンは、異星人の攻撃にこれこそコミックファンの夢だと有頂天で、さらに相手の目的はプリンセスに違いないと断言する。彼にとってカプセルから出てきた女性は自分の相手役のプリンセスなのだ。敵はプリンセスを探知しているに違いないと言うノートン。この緊急事態に浮かれたことを言うコミックおたくにいらだつ二人の乗組員。そこへさらに攻撃が加えられた。急いで宇宙服を着なければとあわてる二人をおいて走り出したノートンは、敵の攻撃のスリルを楽しみながらエアロックを通り抜け、異星宇宙機へ行きプリンセスと会った。だがプリンセスも人間の言葉を理解できないようだ。宇宙船に残された二人は、ノートンの勝手な書き置きを見て怒る。

 異星宇宙機に乗ったプリンセスとノートンは、敵の戦闘艦の追跡をかわそうと宇宙空間を圧倒的な速さで疾走していた。ノートンはプリンセスに名前や故郷を訊ねるが、返事は返ってこない。と、敵艦から攻撃を受け、それを振り切るためにプリンセスは「スター・ドライブ」を起動。あっという間に宇宙機は空間を飛び抜け、人類未到の異星へたどり着いた。驚き興奮するノートン

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 だがそれも束の間、スクリーンに宇宙艦の姿が現れた。追跡されたのだ。プリンセスの宇宙機は攻撃をかわし岩山をくぐり抜け、建物へと近づいていったが、そこで撃墜されてしまう。ぐったりするプリンセスを抱えて脱出したノートンは、彼女が示す建物へと向かう。敵艦から兵士が降下してきた。プリンセスはノートンに銃を握らせ、それを撃ったノートンは威力に驚く。敵兵士を一掃したノートンはプリンセスと共に建物に向かった。そこにあった装置に登るプリンセス。ノートンが下で見ている中、プリンセスはその物質転送機を起動させて消えていった。自分が置き去りにされたことに気付くノートン。そこで、敵艦の攻撃で建物が崩れる。瓦礫に生き埋めになったノートン。戦闘艦は去っていった。気絶したノートンの上にまるで墓標のようにモノリスが立ち、ノートンの体を変貌させる。

 気が付くとノートンは、再びヒーローのコスチュームを着ていた。今度のはキャプテン・コズミックの衣装だ。彼は自分の街を窓から見おろし、安堵する。彼の体は老いていき、モノリスノートンスター・チャイルドに変えるのであった。

 

 異星の「プリンセス」のために尽力するノートンだが、彼女に理解されず便利に利用されたに過ぎないことが語られ、なんとも哀れだ。ノートンに彼女を助けさせたモノリスの意図もわからないまま終わるのだが、最後にはノートンはスター・チャイルドに変えられるところをみると、宇宙規模では何かしらの意味があったことなのだろう。

 人類の知らない星系へ行きそこを描写するのは『2001年宇宙の旅』の初期プロットにあった展開なのだが、コミックではカービーがコミックならではの効果を使って人知の及ばぬ風景を絵にしている。