アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

昔のアメコミを紹介しています

MARVEL GRAPHIC NOVEL: EMPEROR DOOM _ STARRING THE MIGHTY AVENGERS

1986年

DAVID MICHELINIE : WRITER (Concept by Mark Gruenwald, David Michelinie, and Jim Shooter)

BOB HALL : ARTIST

 

 フランス領ポリネシアの都市パペエテでは、紫色の肌をした一人の男が、将軍や市長を顎で使い、陽気に楽しんでいた。だがこの男ゼベディア・キルグレイブに声をかける者がいた。その者は怖いもの知らずのキルグレイブの襟を掴んで持ち上げ、従わせる。

 雨のマンハッタンを、帽子にトレンチコートで身を包んだ一人の男が、濡れるのにもかまわずゆっくりと歩いていた。彼にとって水の中にいるのは生まれて以来普通の事なのだ。彼はかつて王と呼ばれた男。警官はこの男の足から小さな翼がはえているのを見て、S.W.A.T.チームの出動を要請する。男はレストランの中へと入っていった。

 店員がこの男にご予約はございますかと訊ねる。予約はないというこの男を止めようとする店員だが、その紳士は私の客だと声がし、同時にブラストが撃ち込まれ男のトレンチコートを焼いた。ネイモア・ザ・サブマリナーの正体を現したこの男は怒るが、レストランで待っていたのが旧知のドクター・ドゥームであるのを知り、席につく。ドクター・ドゥームはネイモアに、サイコ・プリズムという紫色の宝石の形をしたデバイスを見せる。ドゥームはこれに、人の意志を操るフェロモンを出すヴィランパープルマンことゼベディア・キルグレイブの髪の毛が入っており、その精神操作能力を使うことができると説明する。それでどういう計画を立てたと訊ねるネイモアに、今はヨーロッパの小国ラトヴェリアを治める自分だが、この力で世界を支配するのだと答えるドクター・ドゥーム。

 席を立つ二人に店員が声をかけるが、ドゥームの宝石で操られており、何も食べず金も払わない二人を快く見送る。店の外には警察の特殊部隊が待ち受けていたが、これもドゥームに操られ二人を見逃す。ドクター・ドゥームはネイモアに協力を要請し、自分が世界を征服した暁には、ネイモアが何十年も求めてきた海の完全な自治権を認めると持ちかける。と、ドゥームは突然ネイモアに建物の影に隠れるように言う。上空をアベンジャーズのアンドロイドヒーロー、ビジョンが通過していった。ドゥームの宝石は人間を従わせることができるが、ロボットには効力がない事にネイモアは気付く。ドゥームはそのため、3人のロボットに制御ディスクを取り付けろと言い、自分は大型のプリズムを製作していると言って、ディスクとプリズムをネイモアに渡す。この計画に同意したネイモアは、その二つを受け取りドゥームと握手を交わした。

 スタントマンのサイモン・ウィリアムズは、映画撮影中だった。手榴弾を鉄カブトで押さえるシーンで吹き飛ばされ、服はボロボロになるが、ワンダーマンとしての能力を持つ彼には傷一つない。

 撮影を終え、車でウェストコースト・アベンジャーズの本部の屋敷へ戻ってきたワンダーマン。女性ヒーローのモッキンバードが、ホークアイと一緒にピザを食べるんだけどあなたもどう?と声をかけるが、自分の変異した体に食事は必要ないんだと応えるワンダーマン。ホークアイは吊したリンゴを矢で射抜く練習中だったが、モッキンバードが来たのをみて抱き合いキスする。ワンダーマンは庭で読書中のティグラに声をかけ、屋敷に入っていった。中ではトニー・スタークが待っていて、きみの体を構成しているエネルギーについて調べさせてくれと言われ、ワンダーマンは服を脱いで、トニーが製作したタンクの中に入った。

 一方、東海岸アベンジャーズ本部では、執事のエドウィンジャービスがビジョンに来客を案内してきた。その来客が、海底人類で地上の人間とは敵対しているサブマリナーであるのに驚き、他のメンバーに知らせていないのかとビジョンはジャービスに言うが、何故かジャービスは何事もなかったかのように退出してしまった。サブマリナーはディスクを出しビジョンに取り付けようとするが、ビジョンは体の密度を雲のようにうすくして非実体化し、サブマリナーの手はビジョンの体を突き抜けてしまう。さらに、拳をダイヤモンドなみの硬度に変えてパンチを打ち込むビジョン。だがサブマリナーはそれを避け、タイタン人のアベンジャーズメンバー、スターフォックスと、ビジョンの妻でミュータントの魔女スカーレット・ウィッチを部屋へ呼び入れ、スターフォックスにスカーレット・ウィッチの首に手をかけろと命じる。慌てるビジョン。人質を取ったサブマリナーはビジョンに動くなと言い、ビジョンの額にディスクを張り付けた。サブマリナーはビジョンに踊れと命じ、制御ディスクの力でビジョンは命令に従い踊り出す。ネイモアはこの記憶は回路から消去しておけと命じ、その場を去っていった。

 カリブ海のとある島に、垂直離着陸機が降下してきた。機から降りたドクター・ドゥームは警備ロボットに出迎えられ、チタニウムの扉の奥へ進む。海中に設置されたガラス張りの部屋があり、そこに巨大なサイコ・プリズムが設置され、中にはパープルマン本人が入れられていた。この屈辱はいつか返すぞと怒るパープルマン。ドクター・ドゥームはその金属のマスクの奥で笑うのだった。

 カリフォルニアのウェストコースト・アベンジャーズ本部ではホークアイモッキンバード、アイアンマンが食事をしていたが、そこへティグラがあわててやって来て、モニターを示す。そこには東海岸アベンジャーズのビジョンの部屋が映っており、サブマリナーが額になにか付けたかと思うとビジョンが踊り出すという異常事態が起こっていた。驚きつつ、一体どうしてこんな事になっているのかわからないホークアイたち。

 一方、ギアーズ・ガービンのガレージでは、ガービンがマシンマンの肩にディスクを貼っていた。そこへ第三の人物が現れ、マシンマンに回れと命じる。制御ディスクの力でマシンマンは、伸ばした手を軸に回転し続ける。やって来た男はネイモアで、ガービンを操りマシンマンにディスクを取り付けさせたのだ。

 ドゥームの島では、巨大サイコ・プリズムの中に閉じ込められたパープルマンことゼベディア・キルグレイブが、ドクター・ドゥームを罵倒していた。人を操るこの力は俺のものだ、お前はこの小賢しい機械装置がなければ俺の力を使えない、お前は支配者には値しないんだとわめくキルグレイブ。その言葉に、ドゥームは自分もプリズムの中へ入る。自分はこのマスクでお前の力を遮っていると言うドゥームは、鉄仮面を外す。キルグレイブはチャンスとばかりに、俺を解放しろ、逆立ちしろ、ぴょんぴょん跳べ、自殺しろと立て続けにドゥームに命令するが、ドゥームは動じない。驚愕するキルグレイブ。誰も自分の力には逆らえないはずだ。ドクター・ドゥームは、それで誰が支配者にふさわしいかねと問い返すのだった。

 ホークアイとアイアンマンはジェット機を用意し出撃準備を進めていた。アイアンマンは実験中のワンダーマンを置いていくと言う。モッキンバードとティグラがフライトデッキに入ってきて、ある島が最近ラトヴェリアの金で買収されたという情報を持ってきた。ネイモアの裏にはドクター・ドゥームがいる可能性がある。ウェストコースト・アベンジャーズは発進する。

 プリズムから出たドクター・ドゥームに部下が呼びかけ、アベンジャーズ西海岸チームの基地から飛行物体が接近中だと知らせた。ドゥームは即座に迎撃態勢を命じる。

 島に着陸したアベンジャーズ。アイアンマンはアーマーのセンサーで背後に動くものを察知。地面が開き、レーザー砲付き金属触手が出現した。ホークアイの弓とアイアンマンのリパルサー光線がこれを撃破。だが続いて十数体の警備ロボットが向かってきた。

 シカゴにある見捨てられた廃工場。そこはアダマンチウムのロボット、ウルトロンの秘密基地となっていた。ウルトロンはサブマリナーの接近に気付き、手からのブラストをくらわせる。だがサブマリナーはその程度ではまいらず、人間に似た機械の化け物であるウルトロンには嫌悪を感じると言い、組みついてディスクを張り付ける。サブマリナーはウルトロンにひざまずけと命じ、ウルトロンがその通りにするのを満足そうにながめるのだった。

 ドゥームはスクリーンで警備ロボットとアベンジャーズの戦いを見ていたが、部下の報告に驚喜する。モッキンバードの蹴りとアイアンマンのリパルサー光線が警備ロボットを倒していき、ホークアイはロープアローでロボットたちをまとめて縛りつける。ティグラは野獣のような動きでロボットにキックをくらわせる。だが警備ロボットたちの次の動きを見てホークアイは驚く。ロボットたちは一列に並び、アベンジャーズを扉まで迎える道を作るのだった。

 一同は扉の中へ入り、ドクター・ドゥームと対面。ドゥームは、そこで我が究極の勝利を目撃せよ、我が人生最大の発明がついに完成するところだと言い、レバーを入れた。中にパープルマンを入れた巨大サイコ・プリズムが起動し、その影響が地球全体へ広がっていく。ホークアイたちは、ここに何をしに来たのだろうと言い出し、ドゥームに挨拶して去っていった。

 2日後、ドクター・ドゥームは国連総会に出席。この混沌とした地球の状況を改善するには、一人のリーダーを選ぶしかない、地球の皇帝をだと演説し、満場一致で地球皇帝に選出される。世界の支配者となったドゥームは、側にいたネイモアにもうお前の役目は終わったと言い放つ。約束を違えられたネイモアは怒り、今度はサイコ・プリズムでお前を操ってやると小さい宝石を使おうとする。だがそれは今や巨大サイコ・プリズムの増幅装置となっており、ネイモアまでもドゥームに従ってしまう。ドゥームは支配者としてホワイトハウスへと向かった。

 ドゥーム皇帝という単一の意志に支配された世界には、戦乱のない平和が訪れていた。アフガニスタンからはロシア軍が撤退し、エチオピアの人々は農業に勤しみ、南アフリカでは黒人が代表者となる。犯罪や飢餓は減少し生産性が高まり、軍隊は必要最小限を残して解体され始めた。

 数週間後、トニー・スタークが作ったタンクの蓋が開き、ワンダーマンが解放された。そこには誰もおらず部屋が真っ暗で、何かあったのだろうかと思うサイモン。彼はトニー・スタークに声をかけるが、トニーは皇帝の専用機の設計をしたんだとにこやかに答える。皇帝とは何だ?と思うサイモン。

 屋敷のロビーへ出てみると、キャプテン・アメリカワスプが来ており、なぜか本部の壁をキャンバスに変え絵を仕上げていた。皇帝の決定だよとにこやかに言うキャプテン・アメリカにとまどいつつ、ワンダーマンは次にティグラのところへ行き事情を聞こうとする。だがティグラも忙しいのよと言って出ていってしまった。と、テレビでドクター・ドゥームがプエルトリコの独立を認めたというニュースが報じられ、街頭パレードをしているドゥームの姿を見て、ワンダーマンは驚く。あわててキャプテン・アメリカやワスプに奴を止めに行こうと言うワンダーマン。だが二人は逆に唖然とし、キャプテン・アメリカホワイトハウスへのホットラインに通報する。

 ワシントンD.C.では、ホワイトハウスの執務室にドクター・ドゥームが座っており、自分の支配は完璧で戦争や飢餓が無くなり人々は満足しているが、彼自身はこの現状に奇妙な不満を感じていた。そこへキャプテン・アメリカから通報が入る。ワンダーマンについて調べたドゥームは、サイモン・ウィリアムズが呼吸をしていない事を知り、興味を覚え、キャプテン・アメリカに彼を阻止せよと命じる。

 だがワンダーマンは事情が判らないまま抵抗を開始。キャプテン・アメリカをぶっとばし、グランドピアノをホークアイたちに投げつけて駆けだし、警報を聞いてアーマーを着けながら走るトニー・スタークを殴りつけて、ホークアイのスカイサイクルに乗り逃走した。

 街に出たワンダーマンだが、このニュースはすでにテレビで報道されており、民衆は物を投げてワンダーマンを落とし、殴り始める。ワンダーマンは地面をぶち割り下水道へ逃亡。何が起きているのかわからないサイモンは困惑する。撮影所に侵入したサイモンはメーキャップで別人に変装。

 世界を手中におさめたドゥーム皇帝だが、その心中は複雑であった。自分が目指したのは征服者であって管理者ではない、勝利を目指す戦いは気高いが、挑戦を受けずに得た勝利に何の価値があろうかと疑問を持ってしまうドゥーム。

 変装したサイモン・ウィリアムズは郊外を歩きながら、ドゥームによってうまく動かされている地球の現状に手を下すべきなのかと迷っていた。林の中の小屋で、駆けてきた犬にじゃれつかれ、サイモンは盲目の女性エレン・バーネスと出会う。ハル・カヌットという偽名を名乗ったサイモンは朝食に誘われる。エレンはラジカセでモーツァルトを聞いていた。彼女との会話の中で、たとえ皇帝が繁栄をもたらしていても、自分の人生でどう適所を見つけるのは別問題よという言葉を聞き、サイモンは進むべき道を得る。エレンが落としたリンゴがボートの下に転がっていったが、サイモンはボートを片手で持ち上げリンゴをエレンに返す。盲目のエレンには何が起きたのか判らない。リンゴを受け取りながら、モーツァルトも波乱の人生を送ったけれど、もし彼があきらめてしまっていたら、音楽を書いていなかったでしょう、それは世界の損失ねと言う。サイモンは「世界の損失」と戦うための決意を固めるのだった。

 アベンジャーズ基地へ侵入したワンダーマンはコンピューターを調べ、ビジョンのもとへ現れた時にネイモアが持っていた宝石に入っているのが、パープルマンの髪の毛である事を突き止める。パープルマンについて調べると、デアデビルキングピンが強い意志力でパープルマンの影響を脱したと記されていた。ワンダーマンは行動を開始する。

 訓練中のキャプテン・アメリカのところへやって来たワンダーマン。キャプテン・アメリカはシールドを投げつけてきて、第一投はワンダーマンの後頭部を直撃する。だが二投目を受け止めたワンダーマンはシールドを投げ返し、それを避けたキャプテン・アメリカを殴りつけ、首根っこを掴み、これを見ろと無理矢理モニターを見せる。画面には、これまでドクター・ドゥームがファンタスティック・フォーアベンジャーズと敵対してきた記録が流れ、ドゥームの手がキャプテン・アメリカの首を絞めている場面が映った。混乱するキャプテン・アメリカだが、ついに精神支配を脱し自分を取り戻す。

 やっと味方を得たワンダーマン。キャプテン・アメリカホークアイ、ワスプ、アイアンマンの3人に、皇帝の作った映像だと言ってうまくモニターの前に座らせ、同様の映像を見せた。ホークアイとワスプはすぐに精神操作が解けたが、トニー・スタークはショックを受けているようだ。

 彼らはクインジェットで出撃しようとするが、ホークアイの姿が見えず探しにいく。部屋から廊下へモッキンバードの戦闘棒がとんできた。中へ入ると、ホークアイが自分の妻モッキンバードをノックアウトしていた。精神操作されたモッキンバードはドゥームへ連絡してしまい、仕方なくホークアイは妻を倒したのだ。5人のアベンジャーはクインジェットに乗り出撃する。

 ワシントンにいたドクター・ドゥームは、アベンジャーズがサイコ・プリズムを狙うと考え、サブマリナーを従えヘリに乗り込む。ピンチにもかかわらずドゥームはなぜか生きる実感を得ていた。

 クインジェットに乗りドゥームの島へ向かうアベンジャーズ。だが一足早く島へたどり着いていたドゥームは島の防衛システムで砲撃し、クインジェットは撃墜されてしまった。手放しに喜ぶ部下たちにいらだつドゥーム。これは擬装で、アベンジャーズは当然脱出しているはずだ。

 アイアンマンがホークアイを、ワンダーマンがキャプテン・アメリカを抱えて、5人は無事着地していた。だが次の出迎えが現れる。二機の巨大戦車と一機の四脚戦車が砲撃してきた。周囲には警備ロボット軍団も隊列を組んで迫ってくる。ワンダーマンは巨大戦車に突撃して操縦席をぶち割った。キャプテン・アメリカはシールドを投げ警備ロボット数体の首をとばし、残ったロボットと格闘戦を繰り広げる。ホークアイは弓で巨大戦車を狙うが、四脚戦車が吹き出したガスを浴びてしまう。アイアンマンはまだドゥーム皇帝に従うかどうか迷いを持っていたが、四脚戦車に踏みつぶされそうになるホークアイを見て、ドゥームは敵だ、そしてホークアイは友人だとようやく自分を取り戻し、リパルサー光線で四脚戦車を吹きとばす。ワンダーマンは残り一機の巨大戦車を持ち上げてぶん投げ、警備ロボット軍団にぶつけて一掃した。ドゥームはネイモアにサイコ・プリズムの防衛を命じる。

 昆虫サイズになったワスプは排水口から内部へ潜入し、手からのビームをサイコ・プリズムに浴びせる。ネイモアは警備ロボットに銃撃を命じるが、ワスプはロボットを撃破し、ネイモアが首からさげていた宝石を破壊する。ワスプを掴んで捕らえるネイモア。そこへ他のアベンジャーが突入してきたが、ネイモアが握っているワスプを見て手が出せない。ワスプはネイモアに、海へ帰らないの?と聞き、ネイモアはそれは皇帝に禁じられていると答える。水はネイモアを強力にしていまうため彼と戦う時には避けるべきだが、彼の意志は弱くなっていると気付いたワスプはあえて部屋のガラスをビームで割った。海水が流れ込んできて、それを浴びたネイモアは自分を取り戻す。

 モニターで見ていたドゥームは、こんな時のためにプリズム室に設置しておいた神経ガスのスイッチに手をかけるが、皇帝に様々なことを要求してくる声を聞いて、押すのをためらい、これも運命だと押すのを止めた。サブマリナーは 巨大サイコ・プリズムを叩き割った。宝石と共に、ドゥームの支配した世界も崩壊し、元の争いのある世界に戻っていく…。

 ネイモアは犠牲となったゼベディア・キルグレイブを抱えて装置から降ろす。キャプテン・アメリカはドゥームを追うが、ドゥームは脱出ジェットで飛び去っていった。サブマリナーも海へ帰っていく。

 ヘリコプターで島を離れるアベンジャーズは、イラン・イラク戦争の再開や、アメリカがドゥームの支配に協力したと主張してロシアが国連に抗議を提出したというニュースを聞く。キャプテン・アメリカは、世界は完全ではない、だが人々は自分自身の選択する自由を持たなければならないと言う。どちらが良かったのか迷いがあるホークアイだが、自分たちは現状を受け入れなければならないと答えるのだった。

 

 MARVEL GRAPHIC NOVELは、大判、良い紙質、多いページ数で発行される豪華版のコミックレーベルで、通常より大きいスケールで一話完結の話をじっくり楽しむことができる。この話はドクター・ドゥームが世界の皇帝になってしまうという特別編だ。

 ドゥームが世界の支配者になる力をもたらすのは、DAREDEVIL #4に初登場という長い歴史を持つがヴィランとしては小物、だがその能力が良く考えたら凄いよなという、パープルマンだ。このへんの渋いチョイスが素晴らしい。

 ドクター・ドゥームが手を組むのは、Fantastic Four #6以来の歴史が長いコンビである、ネイモア・ザ・サブマリナーだ。今回はあっさり裏切られ配下にされてしまうが、それもまた彼ららしい。

 ヒーロー側の主役となるのは、ワンダーマンことサイモン・ウィリアムズ。体がイオンエネルギーで変質しており、食事や呼吸の必要がないという特性が、今回のポイントとなる。たった一人で反抗する意味を盲目の女性との出会いで見つけるのも、良い展開だ。

 この時期アベンジャーズは、東海岸チームと西海岸チームに分裂していた。この話は西海岸のウェストコースト・アベンジャーズがメインだが、キャプテン・アメリカとワスプが合流してきて、どちらにも見せ場がある。

 ネイモアはドクター・ドゥームの依頼で3人のロボットを無力化する。その中に我らがマシンマンも入っていて、ドゥームがマシンマンもマークしていたことが判る。マシンマンの登場は、ネイモアに操られる1ページと、全ての崩壊を描く1コマのみだが。

 ドゥームがパープルマンと対面し、意思の力だけで相手の能力が効かないことを示してみせるシーンは、大物ヴィランであるドクター・ドゥームの格の高さを見せてくれて嬉しいところだ。

 あっさり操られてしまうウェストコースト・アベンジャーズだが、アイアンマンのアーマーは気密服ではないのか。やはり通常の呼吸は口の部分から空気を取り込んでいるのか。

 ドゥーム皇帝の支配で平和になる世界。南アフリカ共和国の全人種参加選挙は1994年まで行われなかったので、この時点での黒人大統領はあり得ない事だった。世界平和を考えるとこちらの方が理想的な世界ではあるのだが、誰もがただ自分に従う世界にドゥーム本人が満足していないのが、いかにも彼らしい。

 アベンジャーズの反撃は、巨大戦車との戦いが大判ページで描かれ迫力がある。ドゥームは最後は、自分でこの支配を手放すという、気位の高い選択をして去っていく。各所に見応えのある、充実の内容のコミックだ。

MACHINE MAN Vol.2 #4

1985年 JAN

TOM DEFALCO -- PLOT/SCRIPT

BARRY WINDSOR-SMITH -- PLOT/ART/COLOR

 

 サンセット・ベインのところへ行こうとするマシンマンを、ギアーズ・ガービンをはじめ仲間たちは無謀だと止める。だがハッスルだけは賛成する。自分もあの女に捕まり、ジョキャスタというロボットが止めなかったら酷い目にあっていたわというハッスル。マシンマンはジョキャスタがマダム・ベインのところに居ることを知り、さらに敵陣へ乗り込む決意を固めて出て行く。ハッスルは他の皆がマシンマン支援に動こうとしないのに驚く。ブレインは、ベイントロニクスの本部の位置すらわからないことを指摘。

 マシンマンは外へ出て、アイアンマン2020との戦いの際に切り離した右腕を回収し再び装着。その近くで、敵が乗っていた飛行スクーターの通信機が生きているのを発見。

 ガービンたちは、飛行バイクが飛び立つ爆音に驚く。外へ出てみると、すでにマシンマンが飛び立っていた。一同はその近くで敵の通信機を発見し、マシンマンがベイントロニクス本部の位置をつかんだ事を知る。ガービンもマシンマンを助ける意志を固め、一同は他の飛行バイクのところへ駆ける。

 街の上空を飛んでいくマシンマン。彼が目指すベイントロニクス本部では、アイアンマン2020が機体を整備しエネルギーを充電していた。そこへサンセット・ベインから通信が入った。あなたのサンクチュアリ攻略が失敗したから報復が来たと、マシンマン襲来を伝えるサンセット。彼女はドクター・サイクローブに命じ、ロボット兵にマシンマンを迎撃させる。

 飛行バイクをビルの屋上に着陸させたマシンマンだが、ロボット兵軍団のライフルが乱射される。飛行バイクを盾にし防御するマシンマン。そこへスリックが急降下、乗ってきた飛行バイクから飛び降りバイクをロボット兵軍団に突っ込ませた。スリックを受け止めるマシンマン。他のミッドナイト・レッカーズも合流してきた。マシンマンはスリックに無益な破壊はやめろと言う。だがガービンが、お前はサンセット・ベインが迎えてくれるとでも思ったのか、これは戦争なんだと諭す。仲間がロボット兵を食い止めている間に、マシンマンは再び飛行バイクに乗り、ビルの側面のガラスをぶち破って司令室に突入!

 マシンマンは宿敵サンセット・ベインに対峙し、お前のために何十人もの人間が死んだ、戦いをやめろと言う。サンセットはドクター・サイクローブに屋上での戦闘停止を命じる。だがその直後、アーノ・スタークマシンマンを殺すのよと指示。司令室内でアイアンマン2020とマシンマンの壮絶な殴り合いが始まった。

 サンセット・ベインはその間にジョキャスタに通信し、屋上での戦いを再開させレッカーズを消し去りなさいと命じる。躊躇するジョキャスタに命令に従いなさいと指示し、サンセットはジョキャスタの横にいるブリックマンに、私たちの敵が今夜破壊されるのよと言う。だがもしアイアンマンが負けたらどうなると言うブリックマンに、酒はやめなさいとだけサンセットは答える。

 アイアンマン2020のパンチが何度もマシンマンに打ち込まれる。マシンマンは巴投げでアイアンマン2020をコンピューター・コンソールに叩きつけ逆転。私は戦いたい訳じゃない、狂気を終わらせるため話をしたいんだと言いながら、アイアンマン2020を殴り続ける。このままではマシンマンが勝ってしまうと、サンセット・ベインは切れたケーブルを持ち、マシンマンの後頭部に押し当てた。スパークで装甲が吹きとび内部メカがむきだしになり、倒れるマシンマン。サンセットはアーノ・スタークに、あんたたちが戦っている間に屋上の戦闘を再開させたわ、あんたも行ってミッドナイト・レッカーズを殲滅しなさいと命じる。それを聞いて立ち上がるマシンマン。その姿をスクリーンで見て、なぜそんな状態で動けるのと驚くジョキャスタ。その横で絶望のあまり顔を手でおおいながら、奴は制止不能なんだとわめくブリックマン。

 ぼろぼろの状態ながら、アイアンマン2020にパンチを打ち込み、優勢なマシンマン。ボディへ一撃をくらわし、アイアンマンを抱え上げ、私はもうあなたを殺すことさえできる、だがそうはしない、私はあなたより良い人間だからだ!と叫び、マシンマンはアイアンマン2020をコンソールに叩きつけた! 決着だ。マシンマンは再びサンセットと対峙する。ジョキャスタはロボット兵に停戦を指示し、マシンマンの元へ走る。敗北を知ったブリックマンはピストルを取り出し、こめかみに当て自分に始末をつけた。マシンマンは手を伸ばしてパンチを打ち込みながらサンセットを追いつめるが、そこへジョキャスタが駆けつけ、マシンマンを止めた。

 屋上ではロボット兵の動きが止まり、戦闘が終わっていた。そこへ警察の飛行パトカーが飛来し、一同を逮捕すると言う。レッカーズたちはバイクで飛び去り、マシンマンのところへ合流していく。

 敗北し、倒れたサンセット・ベインは、私にどうしろと言うのと訊ねる。マシンマンは、もう私やミッドナイト・レッカーズに関わるのをやめろと言う。マシンマンを心底恐れるベイン。そこへレッカーズがバイクで飛来し、警察が来ていると知らせる。マシンマンは、ベイントロニクスとレッカーズの戦いは終わったと仲間たちに言う。ハッスルはママBがまだ生きていると銃を向けるが、ジョキャスタが間に割って入り、マシンマンもサンセットは戦いをやめると言ったとハッスルを止める。こいつが嘘ついてたらどうするのと言うハッスル。マシンマンはサンセットに、もし約束を破れはどうなるかわかっているなと言い、敗北に打ちひしがれたサンセットは今後の関与を否定する。ジョキャスタはサンセットが約束を守るか私が見ているわと言う。自分と一緒に行かないことを選んだジョキャスタに驚くマシンマン。彼女には自分が必要なのと答えるジョキャスタ。警察の飛行パトカーが飛来しライトで照らされる中、マシンマンはジョキャスタと別れ、仲間たちと共に飛び立つ。ジョキャスタはマシンマンたちの逃亡を助けるため、飛行パトカーにジャミングをかける。飛び立った一同は、朝日に向かって飛んでいくのだった。

 

 全4話のマシンマンのセカンドシリーズ完結。アイアンマン2020との格闘戦が、敵基地のスクリーンの様々な映像をバックに繰り広げられ、とんでもなく盛り上がる。この4冊の仕上げと彩色は、#4ではアートも担当したバリー・ウィンザー=スミス(日本では日本語版が刊行されたWEAPON Xや、マーヴルXの8号に掲載されたUNCANNY X-MEN #205のアーティストとして有名)が手がけていて、カラフルでありつつもくすんだ色彩に仕上がっていて魅力的だ。

MACHINE MAN Vol.2 #3

1984年 DEC

TOM DEFALCO : SCRIPT

HERB TRIMPE : BREAKDOWNS

 

 警備艇を奪い脱出したハッスルは、艇に装備された機関砲を撃ち、追っ手の警備艇と戦う。この警備艇には何らかの発信装置が組み込まれているだろうと疑うハッスル。敵の警備艇を撃墜しながら、ママBことサンセット・ベインの尋問が手ぬるかったことに疑問を持つ。後ろから追撃を受けるが、森の中に飛び込んでやり過ごし、逆襲。最後の追っ手を撃ち落とし、逃走を続ける。

 もちろんその模様はサンセット・ベインたちに監視されていた。マッドサイエンティストドクター・サイクローブは、ハッスルの拷問の際に彼女の耳に衛星通信によるモニター装置を仕込んだと言う。ミッドナイト・レッカーズの連中などどうでもいい、マシンマンこそ真の問題だと文句を言うブリックマンは、コップに酒を注ごうとするが、手が震えてこぼしそうになる。ブリックマンから 酒を取り上げたアーノ・スタークは、自分に酒を注ぐ。自分はオリジナルのアイアンマンが死んだ後にアーマーを買い取ったと語るこの男は、ミッドナイト・レッカーズの伝説的な砦であるサンクチュアリと、マシンマンの発見が目前という祝いとして、ドクター・サイクローブと乾杯する。彼らの向こうに女性ロボットのジョキャスタがたたずんでいた。昔マシンマンを愛したことのある彼女だが、今はそれを胸に秘めるのだった。

 カナダ北部の森で捕らえられたブレインたちは、網に入れられたまま飛行バイクに引かれて運ばれていた。マシンマンジージーうるさいと文句を言うスイフト。それは僕が付けた機能妨害バッジのせいだと答えるブレイン。スリックは飛行バイクの男に、あんたたちもレッカーズじゃねえのかと訊ねる。バイクの男は、俺たちはそうだがお前らがベイントロニクスの奴らじゃないと決まってないからなと答え、俺たちのリーダー、古株のレッカー自身が判断すると言う。雲の中を彼らは運ばれていき、空中に浮かぶ巨大な都市サンクチュアリーに着陸する。

 バイクの男ボーンズは、俺は古株のレッカーに報告するからこいつらを連れていけと仲間に言い、ブレインたちは一室に入れられた。ハッスルを見捨ててきたことについてブレインに当たるスイフト。悩むブレイン。一方シャワーを浴び顔のペイントを塗り直してくつろぐスリック。マシンマンは機能妨害バッジのせいでヘンテコな言動をしていたが、ブレインはバッジを外してやる。正気に戻り、私に何をしたんだとブレインにくってかかるマシンマン。自分の体は回路や鋼鉄で出来ているかもしれないが、人間と同じように感じ、感情があるんだぞと文句を言うマシンマン。詫びる一同。

 そこへ、こりゃパーティータイムだなと言いながら一人の男が部屋へ入ってきた。ここのリーダー、古株のレッカーであるこの男にマシンマンは見覚えがあった。ギアーズ・ガービン!と驚きの声を上げるマシンマン

 スターク・エンタープライゼス社では、ブリックマン大使がマシンマン復活の不安から飲んだくれていた。それをうっとおしそうに見るサンセット・ベイン。そこへジョキャスタが入ってきて、スターク氏の襲撃チームの準備が整いましたと報告。ベインはジョキャスタに、ブリックマン大使をお送りしてと命じる。

 サンクチュアリーではお祭り騒ぎが行われていた。パーティー会場でくつろぐスリック。バイクで彼らをここまで運んだモヒカンの男ボーンズが、さっきは悪かったと詫びを入れてきて、スリックも気にするなと返す。スイフトは踊りに誘われるが、ブレインの落ち込む姿を見て断る。

 マシンマンとガービンは二人きりでテラスに出て話す。これまで何があったのかと訊ねるマシンマンガービンは、もう40年ぐらい前の話だと言って語り始めた。ガービンのガレージにはそれまで通り、マシンマンピーター・スパルディングが出入りしていた。彼らはジョキャスタの電子頭脳を再起動させようと取り組んでいた。ある日ガービンがガレージに戻ってみると、煙が上がっており、マシンマンとジョキャスタは連れ去られて、スパルディングが死んでいた。ガービンは言う、俺は奴を生意気で気弱な野郎だと思ってた、だが違っていた、ガレージには争った跡があった、ピーターは必死の抵抗の末殺されたんだ、と。それから数年して、サンセット・ベインがベイントロニクス社を起こしロボット産業を独占して社会を牛耳るようになった。あの女がマシンマンを手に入れたのは明白だったと物語るギアーズ・ガービン。彼はそれからミッドナイト・レッカーズを組織し、この再会を待っていたのだった。長い間、絶望せずに。

 サンクチュアリーにさらに来訪者があった。その顔を見て、ブレインは驚き慌てて駆け寄る。それはハッスルだった。再会する二人。

 だがそこへ敵襲の警報が鳴り響く。浮遊要塞サンクチュアリーを目がけ、アイアンマン2020ことアーノ・スタークと、その配下の飛行スクーターに乗ったアイアン・ボット兵団が襲来していた。なんでここが発見されたんだ、どんなスキャナーでも撹乱する雲に隠されているのにと驚きつつも、飛行バイクで迎撃に出る一同。だがアイアンマン2020は指からのレーザーでたやすく1機目を撃墜する。

 スリックはボーンズと共に飛行バイクで出撃。ハッスルも、なぜここが発見された?、私は奴らをまいたのにと考えながら、飛行バイクを無理矢理借りて発進していく。マシンマンはガービンに彼らを止めろと言うが、レッカーズはこの時のために組織されたのだ。ガービン自身も飛行バイクに乗り飛びだしていく。

 アイアンマン2020は配下の部隊を前進させる。サンクチュアリーに上陸した敵兵を、スイフトが得意の跳び蹴りで倒す。アイアンマン2020はマシンマンを発見し、腰に装備していた投擲武器を投げつける。三方にカーブした刃がついたその武器は、マシンマンの背中に突き刺さる。倒れたマシンマンに突進し、アイアンマン2020は拳を叩きつける。だがマシンマンもバックブローでアイアンマン2020をぶっとばした。アイアンマン2020は指からのレーザーを、続いて胸からのユニビームをマシンマンに浴びせた。マシンマンは指のマグナム弾で天井を撃ち、瓦礫を落とす。だがマシンマン2020は電磁フォース・フィールドで防御してしまった。

 アイアン・ボットはサンクチュアリーに上陸し、壁を銃で破り内部を爆破しはじめた。サンクチュアリーから煙が上がり、次第に落ち始める。揺れる床。スイフトは倒れ、何が起きたのと驚く。反重力ジェネレーターがやられたんだ、制御コンピューターを調整し体勢を立て直さなければ、皆が地面に叩きつけられて死ぬと、ブレインは内部へ駆け込む。

 アイアンマン2020の指レーザーをくらいながらもマシンマンは戦い続ける。マシンマンの右腕が発射され、腕が伸びてアイアンマン2020に巻き付き、アンチ・マグネティック・ヌル・フィールドを形成。このアーマーはそれに対抗できると言うアイアンマン2020だが、この反磁力無効化フィールドを中和するにはエネルギーをフルに使う必要があり、一時的に無力化される。

 その間にマシンマンサンクチュアリー内部へ急ぐ。ブレインがなんとかコンピューターを調整しようとしていたが、手が付けられない状態になっていた。マシンマンは指をコネクターに接続し、サンクチュアリーのコンピューター・コアに直接リンクして制御しようとする。エネルギーのバックラッシュが起こり、コネクターから火花が散り、しかもそれがどんどん強くなっていく。マシンマンは倒れたが、なんとかコンピューターは復旧し、サンクチュアリーは再び姿勢を回復した。一時退避しようと言うガービンに、マシンマンはサンセット・ベインへの逆襲するのだと反論。今度はこちらの番だ!

 

 ギアーズ・ガービン再登場! 未来でミッドナイト・レッカーズを設立し指導者となっているという格好いい役回りだ。一方、マシンマンの創作者ジャック・カービーマシンマンの友人として登場させたピーター・スパルディングは死んだことにされている。ひどいよデファルコ先生。アイアンマン2020とマシンマンの対決は一進一退で手に汗握る。

MACHINE MAN Vol.2 #2

1984年 NOV

TOM DEFALCO : SCRIPT

HERB TRIMPE : BREAKDOWNS

 

 2020年のマンハッタンのミッドタウンを、飛行機械で逃走するミッドナイト・レッカーズの4人組マシンマン。後ろからはベイントロニクスの追っ手、C-10ロボットが操る警備艇が迫る。これまでにない執拗な追撃に、自分たちが発掘したこのマシンマンというロボットとは何だろうかという疑問がよぎる。ハッスルは敵の警備艇を銃撃。マシンマンは腕を伸ばしてロボット兵が乗った警備艇を撃墜したり、スリックスイフトを掴んで空へ退避し自分たちの乗っていた飛行機械を警備艇にぶつけたり。追っ手を片付けた彼らは、地下鉄通路へ逃げ込む。

 ベイントロニクス社本部ではマダム・サンセット・ベインが、パトロール隊がマシンマンを発見しつつも取り逃がしたことに歯噛みしていた。ジョキャスタは彼を行かせてあげてと頼むが、サンセットはマシンマンが生きているとこちらが危ないと言い返す。彼女は30年前にマシンマンを封印していたのだ。そこへいきなり、今すぐ話があると怒鳴りながら、老人が部屋へ、マダム・ベインの秘書が止めるのも聞かずに入ってきた。マイルズ・ブリックマン大使だ。昔、マシンマン排除運動を仕掛けていたブリックマンは、マシンマンが再び現れたことを知り、慌てているのだ。取り乱すブリックマンに、マダム・ベインはエキスパートに任せてあると答え、テレビ電話のボタンを押し、ある男を呼び出す。アーノと呼ばれたこの男の正体は?

 一方、クイーンズまで逃げのびたブレインたち。マシンマンには帽子とコートを着せて変装させている。彼らはブルードニという男が経営するビデオゲーム店に逃げ込むが、奥にいた太った店主ブルードニはブレインたち「レッカーズ」が来るのを知っており、秘かにテーブル下のスイッチを入れる。それに気付いたハッスルは銃を抜き、カーテンの向こうへ発砲。

 カーテンの中からロボット兵の一体が倒れてきたが、他にも何体ものロボット兵が銃を持って出現、包囲されてしまう。マシンマンは指のマグナム弾を撃ち、スリックは置物を持ってロボット兵を押しつぶす。ブレインはロボット兵の一体に電子頭脳を狂わせる機能妨害バッジを張り付けた。狂ったロボットは別のロボット兵を破壊するが、次はブレインが襲われてしまう。危ういところでブレインは銃を取り出し、ロボット兵の頭部を吹き飛ばした。スイフトはとんぼ返りをしながら脚でロボット兵をすくい投げる。マシンマンはロボット兵の頭部を地面に押しつけ粉砕。ブルードニは、貴様らは終わりだ、ベイントロニクスが貴様らを捕らえるため資金をばらまいているぞと言いながら、隠し扉の向こうへ脱出。それを見たハッスルは皆に指示し、スイフトが、スリックが、マシンマンが通路へとび込む。ブレインはハッスルに声をかけるが、ハッスルはしんがりとして二丁拳銃でロボット兵を食い止めつつ、ブレインを通路の向こうへ蹴って先に行かせた。だが、ハッスル自身はロボット兵に捕らえられてしまう。

 通路の向こうは下水道。ブロードニは用意されていた脱出艇へ駆け込み発進させようとするが、マシンマンは腕を伸ばして、手にある冷却装置を使って脱出艇が浮かぶ周囲の水を凍らせて阻止。ブロードニをつまみ上げ、泳げるかと聞き、マシンマンは下水道の向こうへ放り出す。

 マシンマンはさっきとは逆に手から発熱して氷を溶かし脱出艇が使えるようにするが、ハッスルがいないのに気付く。僕たちが逃げるのを助けるため残ったと聞き、戻ろうとするマシンマンを、ブレインはもう追っ手がそこまで迫っていると言って止める。それでも戻ろうとするマシンマンに、ブレインは先ほどロボット兵にも使った機能妨害バッジを取り付け、動きを封じてマシンマンを脱出艇に乗せた。追いついてきたロボット兵が銃撃する中、間一髪脱出艇が発進し、下水道から飛び立った。彼らは「サンクチュアリ」へと向かう。

 捕らえられたハッスルはベイントロニクス社本部へ連行され、拘束され、マダム・ベインの尋問を受けていた。サンクチュアリーの位置を問われても口を割らないハッスル。マダム・ベインはマッド・ドクターに指示し、ドクターはハッスルの頭脳へレーザー光を撃ち込む。苦しむハッスル。ジョキャスタは殺すつもりなのですかと言う。その通りねと、マダム・ベインはロボット兵にハッスルを連行させる。ハッスルはロボット兵のピストルを奪って脱出、飛行機械を奪って飛び立った。だがそれは全てマダム・ベインに監視されていた。罠だったのだ。

 カナダ北方の森の中で脱出艇を降りたブレインたちレッカーズ。雪の中で、こっちでいいの?、わたしサンクチュアリーへ行ったことないと言うスイフトサンクチュアリーとは古株のレッカーの家なんだと言うスリック。一同は雪の中を進むが、踏み出した足がロープに触れて罠が作動し、網に閉じこめられ釣り上げられてしまった。周囲に槍や弓を持った集団が現れる。

 その頃、スターク・エンタープライゼス社では、ある男がマダム・ベインからマシンマンサンクチュアリーについて連絡を受けていた。手に足に、アーマーを装着しながら、マシンマンに会うのを楽しみにしているよと言うこの男アーノ・スタークは、ヘルメットを装着し、2020年のアイアンマンとなった!

 

 MACHINE MAN旧タイトルに登場したブリックマン上院議員が大使という肩書きになって登場。

 さらに、スターク家の血族アーノ・スターク、アイアンマン2020が登場する。この未来アイアンマンは、歯のようなモールドがあるマスクと、肩が歯車のようなアーマーが特徴で、このスタイルはその後IRON MAN #250に登場するアイアンマン2093(装着するのはアーノの孫アンドロス・スターク)まで受け継がれていくアイアンマンアーマーの最終進化形である。この強敵の登場で、次号以降の対決に期待がいやが上にも高まる。

MACHINE MAN Vol.2 #1

1984年 OCT

TOM DEFALCO : SCRIPT

HERB TRIMPE : BREAKDOWNS

 

 西暦2020年9月23日ベイントロニクス社の最深部の倉庫#5で、整理ロボットIU-104/Eが広大な倉庫の中から不要コンテナを検索して動いていた。この場所は2007年に作られた。整理ロボットはDANGER PRIORITT RED 6と書かれたコンテナをロボットアームで引き出して運び、ベルトコンベアーに乗せる。コンテナは廃棄物輸送飛行機IU-72RTに積載され、IU-72RTはニューヨーク市に1999年に作られた廃棄場へ飛び、ゴミを落とした。

 ゴミ捨て場で、コンテナを発見した者たちがいた。ブレインと呼ばれる眼鏡に帽子の青年がコンテナを見つけて近寄る。スキンヘッドの体格がいい男スリックが、ママBならガラクタしか詰まっていないと言うかもしれんが、何か使えるものがあるか調べろと言う。短髪の女性ハッスルや、弁髪の女性スイフトは周囲を警戒。これはだいぶ古いなと言いながらブレインはコンテナを開ける。中からはまず、金属の面が出てきた。スイフトは空中で宙返りをしつつ近くへ着地し、スリックものぞき込んで、その人間の顔のような面を見る。だがそこで、ハッスルが空から近づいてくる光を発見し警告した。

 警備艇が飛来し、ブレインたちのような「ミッドナイト・レッカーズ」と呼ばれる抵抗グループを捕らえるために、地上から数体の銃を持ったロボット兵が近づいてきた。ハッスルはブラスターを撃ち警備艇の照明を破壊する。スイフトは体術を活かしロボット兵に跳び蹴り。ブレインはリュックから爆弾を投げつけ、ロボット兵は爆発する。スリックは鉄骨を持ち上げロボット兵をぶん殴る。さらに数体のロボット兵を銃撃したハッスルは、2丁拳銃警備艇を撃墜した。ブレインはコンテナを飛行機械に乗せ、4人は警備艇のパトロール隊員を尻目に逃走に成功する。パトロール隊員はそこに残された6番コンテナの蓋を発見する。

 翌朝、ベイントロニクス社本部では、社主のサンセット・ベインが、廃棄品盗人の取り締まりに失敗したパトロール隊員を叱責していた。反論する隊員に、私は結果しか求めてないのと言い、盗んだ相手を探し箱の中身を取り戻せと指示。隊員たちはマダム・ベインの命令に従い退出する。

 使えない部下にいらだつマダム・ベイン。昔は美しかった彼女も、すでに年をとり、なんとか若く見せる努力をしている。十分でしょう、貴女は70歳を過ぎてるのですよとカーテンの向こうから声をかけた謎の人物は、機械のような指だけ覗かせた。マダム・ベインは、盗まれた箱の中身のことを考え、あれには私の遠い過去が入っていると思い出すのだった。

 コンテナを盗み出した4人組はアジトへ戻っていた。ブレインはコンテナの中身を組み立てている。アンドロイドが組みあげられていた。ブレインは胸の装甲板を朱色に塗装しなおし、ボディにはめ込む。これは1990年代末期の反ロボット暴動以前に作られたのだろうとブレインは推測する。ブレインはロボットに電気ショックを与えた。煙が上がり、失敗かと思われたが、ロボットの手が動きはじめ、ここはどこだと喋った。まるで人間のように喋るロボットに驚くブレインたち。ロボットはきみたちは誰だと訊ね、その質問はこちらがしようと思ってたとスリックが言う。ロボットは頭にヘルメット部分をはめながら、私にはいくつか名前があるが一番知られているのは、マシンマンという名だと答えた。

 マシンマンは自分について語り始める。秘密計画で作られたX-51というロボットで、アベル・スタック博士の息子として育てられた。スタック博士は自分を逃がすために命を犠牲にした。マシンマンにはピーター・スパルディングギアーズ・ガービンという友人が出来たが、両者は仲が悪く喧嘩ばかりしていた。また、ジョキャスタという元アベンジャーズ・メンバーの女性アンドロイドと出会い幸せを得るかと思われたが、彼女は爆発で破壊された。また彼には敵がいた。マイルズ・ブリックマン上院議員や、マダム・メナスだ。このマダム・メナスは本名をサンセット・ベインと言い、自分の配下を持ち、高性能ロボットの自分を狙っていた。サンセット・ベインという名を聞いて思い当たるスリック。だが会話の途中でマシンマンが頭を抱えて苦しみ始め、ブレインたちは心配する。

 一方、ベイントロニクスのパトロール隊員は、多数のロボット兵に加え、C-28デス・ディーラーという金色の戦闘ロボットを搭載した大型飛行艇に乗って発進していた。

 ブレインはマシンマンの頭脳部を開いて調整する。スリックはマシンマンに、なんであの箱に入っていたのか記憶はないのかと訊ねる。マシンマンは、その記憶は消去されたらしいと答え、自分がいま2020年に居るということにとまどっていると言う。スリックたちは、1980年代後半からベイントロニクスはロボット製作を始め、一時は反対運動が盛り上がったが、政府が2001年までに暴動を終わらせ、現在は独占状態にあると説明する。ブレインはマシンマンの修理を終えるが、ベイントロニクスのパトロール艇のスキャナーがマシンマンの反応を発見した。ブレインたちのアジトに敵の襲来を告げる警報が鳴り響くが、時すでに遅く、壁をぶち破ってC-28デス・ディーラーが突入してきた!

 デス・ディーラーは指から銃弾を発射。部屋の機械を盾にしてハッスルはグレネード弾を撃ち返すが、デス・ディーラーはグレネードを手でキャッチし握り潰してしまう。マシンマンはデス・ディーラーに組みつく。デス・ディーラーはマシンマンが予想より強い力を持っているのに驚くが、腰からエレクトロ・ブラスターを発射し、それがマシンマンを直撃。マシンマンがC-28を引きつけている間に、他の4人は襲来したロボット兵軍団やパトロール隊員と戦う。ハッスルはロボット兵を銃撃し破壊していく。スリックは部屋の機械を持ち上げてロボット兵に投げつけて倒す。スイフトは空中で回転しパトロール隊員たちを跳び蹴りでなぎ倒す。頭脳労働担当のブレインだが、ロボット兵の弱点にハンマーでシャフトを打ち込んで破壊。マシンマンは再びデス・ディーラーと対峙。デス・ディーラーが胸から発射したミニ・ミサイルを足を伸ばして避け、ギアーズ・ガービンが組み込んだ装備だと言いながら指から.357マグナム弾を撃ち込む。デス・ディーラーはフォース・フィールドを張って銃弾をはじく。ならばとマシンマンは腕を伸ばして敵ロボットの頭を掴むが、デス・ディーラーは胸から回転ノコギリ付きフレキシブル・アームを出しマシンマンの腕を切断しようとする。あわてて腕を引っ込めるマシンマン。デス・ディーラーはマシンマンを殴り倒し、胸から伸びたフレキシブル・アームより酸を発射しマシンマンを溶かそうとする。マシンマンは相手のフレキシブル・アームを掴んで引っこ抜く。だが強烈なハンマーパンチをくらってしまった。倒れて絶体絶命のマシンマンに、デス・ディーラーはレーザーブラストを浴びせようとする。マシンマンは配電盤のケーブルを左手で引きちぎり、右手を敵ロボットに当てて電流を流し、やっとデス・ディーラーを倒した。

 他の4人も敵を撃ち倒しており、彼らは飛行機械に乗って脱出する。反重力装置で飛行し彼らについていくマシンマン。だが自分はこれから何をしようとしているのだろうか、この未来世界で。自分の友人たちはこの世界でまだ生きているのだろうか。多くの疑問が浮かぶが、答えは出ない。

 パトロール隊の敗北を知り、サンセット・ベインは彼が復活したんだわとつぶやく。誰のことですか?と問う声に、古い敵よ、私に会うために現れた、そしてあなたにもねと答えるベイン。カーテンの向こうから現れた話し相手は、女性ロボットのジョキャスタだった。

 

 マシンマンの第2タイトルが全4話のミニシリーズで開幕。ライターは前タイトル終盤からずっとマシンマンの話を続けてきたトム・デファルコで、未来世界の話ではあるがそれまでのマシンマンの話を盛り込んでいて盛り上がる。なんと、MACHINE MAN #17でデビューした悪女マダム・メナスことサンセット・ベインが未来世界でも登場だ。また、未来世界で大企業ベイントロニクスに抵抗する4人組も、一人一人キャラが立っていて魅力的だ。未来の強敵ロボットとの戦いも手に汗握る。

 表紙は#1から#4まで徐々にマシンマンの顔が組み立てられていくというもので、素晴らしいセンスだ。

 2020年までの未来史が語られるが、マシンマンは1990年代以前に作られたと言及される。2001: A SPACE ODYSSEY #8でデビューしたマシンマンだが、あの#8-10の話の年代は2001年なのか、それともマーヴルユニバースに合流しているから2001年ではなくそれ以前の物語なのかという、今まで微妙にスルーされてきた時系列についての疑問がよぎる。後にこのミニシリーズは、パラレルワールドの未来史だと規定されるのだが。

明日のオンラインアメコミ同人誌イベントにサークル参加します

アメコマー菅野のアメコミ同人誌サークル「アメコミ向上委員会」は、2020年9月20日(日)に開催される「海外アニメ・コミック&関連コンテンツ オンラインオンリーイベント HEROES UNIVERSE ONLINE β」にサークル参加します。スペースは「い7です。

イベントにつきましてはこちら↓をご参照ください。 

pictsquare.net

 

頒布予定の同人誌をお知らせします。

 

出でよ、ザ・デーモン エトリガン!   【新刊】

ジャック・カービーが創作したTHE DEMON #1-16(ファーストシリーズ全話)の紹介本です!

 

ティーブ・ガーバーの隠れた名作A. BIZARRO   【既刊】

:1999年のA. BIZARROミニシリーズの紹介本です! 新たなビザロは普通人がベースのへんてこクローン! スティーブ・ガーバー先生の魅力をお伝えしたく!

 

 

友人のHumanflyさんのサークル「ふらいぺーぱー」さんも参加されます。よろしくお願いします!

CAPTAIN AMERICA ANNUAL #4

1977年

WRITTEN, DRAWN & EDITED BY: JACK KIRBY

 

 マグニートの攻撃を受けるキャプテン・アメリカ! 磁力で室内の中の物が飛ぶ。だがマグニートの目的はキャプテン・アメリカ打倒ではなかった。そこに住むジョー・キーガンに会ったマグニートは、この男が手に入れていた新たなミュータントを要求。それは腕時計に収まるほどの小さい男で、ミスターワンと呼ばれていた。このサイズは我が目的にとって完璧だと言い、マグニートは磁力でキーガンから腕時計を取り上げる。だが次の瞬間、背後に立つ大男の豪腕がマグニートの頭をヘルメットごと押し潰し腕時計を取り返した。大男をスターツと呼ぶキーガン。マグニートはミスターツーにぶっ飛ばされ、一時撤退する。キーガンはキャップに腕時計を託す。

 諜報機関シールドの研究施設で調査されるミスターワン。その脳波を解析すると、ここから出せと要求しており、それと同時にミスターツーが襲来。暴れるミスターツーだが電撃を浴びせられ倒された。

 一方マグニートは、両手で持てるほどの小型宇宙船を手にしていた。彼はこれにミスターワンを乗せ、星々の世界を探検させようとしているのだ。そこに千里眼の能力を持つピーパーキャプテン・アメリカの位置を発見したと報告。他にもスリザーショッカーリフターバーナーという男たちが集結している。これが彼の配下となった新たなブラザーフット・オブ・エビルミュータンツなのだ。

 キャプテン・アメリカはミスターツーのジョギングに同行していたが、突如草原に火が放たれた。発火能力者バーナーの仕業だ。続いて蛇人間スリザーがキャップを絞めあげる。剛力リフターはミスターツーに岩をぶつけ、相手を頭上に持ち上げた。反撃するミスターツーだが、ショッカーの爪によるエレクトロ・タッチの衝撃をくらい倒されてしまう。だがそこへシールドの部隊が到着。ブラザーフット・オブ・エビルミュータンツは退却する。座り込んだまま動かなくなったミスターツーについて考えるキャプテン・アメリカ。シールドの研究室に戻るとすでにマグニートに襲撃されておりミスターワンは連れ去られていた。キャプテン・アメリカは、ミスターワンとミスターツーが二つの体を行き来できる同一人物であると確信する。

 マグニートはミスターワンを脅して異星の小型宇宙船に乗ることを強要しようとしていた。ミスターワンの目が閉じていき、シールド基地ではミスターツーが目覚める。彼に同行しマグニートのアジトへ向かうキャプテン・アメリカ

 ピーパーはそれを察知し、マグニートはミスターワンの体をつまみあげて宇宙船へ入れる。そこへ壁をぶち割りミスターツーが襲来。スリザーが巻き付いて止め、ショッカーが攻撃しようとするが、キャップのシールドがショッカーに激突。続いてリフターを攻撃するキャップだが通じず持ち上げられてしまう。だがミスターツーがスリザーを振り回してリフターにぶつけ、二人とも倒す。バーナーの火炎に苦しむミスターツーだが、今度はキャップのパンチがそれを救った。けれどもミスターツーはそこで動かなくなる。残る敵はピーパーだが、その目は遠隔視だけでなく、ビームも発射できるのだ。巧みに盾で受けとめ、ピーパーをダストシュートへ放り込むキャップ。

 マグニートは宇宙船の最終調整をしていた。内部でミスターワンが動いているのを確認し、星々の力を我に!と命じる。そこにキャプテン・アメリカが飛び込んでくるが、マグニートは磁力で相手の体をぶん回して叩き伏せる。さらに剣を飛ばしてキャップの首の周囲の床に突き立てた。キャプテン・アメリカは蹴りで反撃するも、ブラザーフット・オブ・エビルミュータンツが駆けつけ、絶体絶命となる。そこで宇宙船内のミスターワンが操縦装置を起動、宇宙船は大爆発と共に飛び立つ。辛くも生き延びたキャプテン・アメリカはその場を去るが、マグニートたちも生きている事を確信するのだった。

 

 冒頭からアクション!、珍妙な新キャラでおどろかせ、さらにアクション!という、ジャック・カービーならではの展開! キャプテン・アメリカ、マグニートという、自身が生み出した著名キャラクターに加えて、二人一組のミュータントや新しいブラザーフット・オブ・エビルミュータンツ(リフターなんて「持ち上げる」というだけのミュータント能力!)と多数の新キャラを登場させて、矢継ぎ早にバトルを見せて楽しませてくれる。

 このコミックが収録された合本は、

 https://www.amazon.co.jp/dp/0785120785/

で購入できるので、是非!

CAPTAIN AMERICA ANNUAL #3

1976年

EDIT, WRITTEN and DRAWN by JACK KIRBY

 

 ‘76年のCAPTAIN AMERICA年刊特別号は、題してThe THING FROM THE BLACK HOLE STAR! 1ページ目からキャプテン・アメリカが謎の怪物に襲われているが、この唐突さがカービースタイル! そして2-3ページ目の見開きではこれまた唐突に、同行していた農夫のジム・ヘンドリクスが衝撃光線銃で怪物を吹き飛ばす! 二人は異星から来た宇宙船の中へ入っていたが、突如あらわれた異星怪物に襲われ、船内にあった光線銃で撃退したのだ。倒された怪物は閃光と共に消えた。ごく普通の農夫にすぎない自分がUFOやエイリアンと遭遇している事に困惑するジム。二人は宇宙船を出る。ジムはこの宇宙船が数千光年彼方のブラックホール星から来たと言い、キャップがなぜそんな事を知っているのか訊ねると、なんと、この宇宙船のパイロットから訊いた、彼は俺の農家にいると言うのだ。

 その頃、地球軌道を航行する宇宙艦の中では、ブラックホール星の異星人たちが先に地球へ送り込んだストーカーという怪物が地球人に倒されたのを知る。司令官は次の手として、より強力な「コンバトロン」を送るよう命じ、カプセルが地球へ撃ち込まれた。

 キャップはジムの家に行ってみたが、そこには本当に異星人がいた。おびえる異星人にジムはキャプテン・アメリカを紹介し、この星の正義のシンボルなんだと説明するが、異星人には正義という言葉は理解できないようだった。キャップが異星人の頭巾を取ってみると、意外にも人間に似た顔があらわれる。キャップはこの異星人が光の速度ですら脱出できないブラックホールから来たことへの疑問を口にするが、異星人は本当だと答える。異星人は自分を追跡してきた怪物ストーカーをキャップたちが倒したと知ると、次にはコンバトロンが送り込まれてくるとおびえる。その言葉通り、大きな落下音がして、キャプテン・アメリカとジムは外へ飛び出した。

 地面に降下カプセルが突き刺さっていたが、中身は空だった。すでに地上に降り立っていた怪物兵器コンバトロンが突如強襲! 右腕のプレッシャーアームを地面に突き立てて衝撃を加え、キャプテン・アメリカは飛んできた岩や木をシールドで防ぐが、衝撃波で吹き飛ばされてしまう。だがキャップも負けてはいない、近づいてきたコンバトロンに反撃を打ち込む。激しい格闘戦を見守るジムだが、そこへ上空から熱線が撃ち込まれる。ジムとキャップは必死で避け、熱線はコンバトロンに当たって怪物兵器を消滅させ、さらに降下カプセルまでも焼き尽くし完全に証拠隠滅してしまった。宇宙空間からの熱線照射という攻撃が可能な敵に驚くキャップだが、次は直接攻撃部隊が送り込まれてくると予想する。

 衛星軌道上の宇宙艦では、部下が再度のイオン砲攻撃を進言していたが、地球を戦争をしに来たのではないと司令官は言い、マグノイド部隊の出動を指示する。

 自宅へ戻ったジムは電話でこの異常事態を通報しようとするが、電話は通じない。敵宇宙船の妨害だ。キャップは追われている異星人に様々な質問し事情を知ろうとするが、そんな時間はない。一同は車で逃走しようとするが、砲撃を受け車が破壊されてしまう。三人の頭上から宇宙艇が降下してくる。

 キャップは二人に、追われている異星人の宇宙船へ行き武器を探せと指示。ジムたちは異星人の宇宙船へ入り、武器を準備する。異星人は生体飼料が欲しい、エネルギーが必要だと言い、ジムもそうかと同意する。

 一方キャプテン・アメリカは降下してきた宇宙艇から無数の機械歩兵マグノイドが降りてくるのを監視していた。気付かれぬようその場を離れようとするキャップだが、マグノイドの1体がすでに後ろへ迫っており、熱線砲を受けて吹き飛ばされてしまう。倒れたキャプテン・アメリカに3体のマグノイドが掴みかかるが、キャップは弾き返した。だが後ろから首を強烈な握力で掴まれピンチに! キャップはエルボーを打ち込んで脱出! 熱線砲を放つマグノイドに素早く接近して腕を掴み、自分の武器を撃ち込ませて倒した。熱線砲を奪ったキャップは反撃しつつ逃走に成功する。

 ジムと異星人の待つ宇宙船まで走るキャップ。異星人はようこそと歓迎するが、そんな挨拶をしている場合ではない。自分が戦っている間に二人は敵を防ぐ準備ができたかと訊くキャップに、俺はいま強力になったと答える異星人。何を言っているんだ、ジムはどこだと訊ね、宇宙船内を移動して農夫を探すキャップだが、彼が見たのは床に倒れているジムの姿だった。その体は乾ききって皺だらけになっており、死亡していた! 彼に何をしたと言うキャップに、異星人はジムの生体エネルギーを吸ったことを明かす。敵に追われる善良な異星人かと思われていたそいつは、宇宙吸血鬼の如き怪物だったのだ!

 ジムから吸収したエネルギーがこの異星人の目や体から噴き出し、明らかに強力になっている。こいつはこの特性により自分の星で恐れられ、追われて地球まで来たのだ。キャプテン・アメリカは怪物に飛びかかるが、エネルギーを吸われそうになり苦しむ。敵は地球人のエネルギーに喜び、ここを牧場のようにして地球人のエネルギーを吸い続け、最後には最強の種族となるぞと叫ぶ。エネルギーを吸おうとする怪物を、シールドで防いで耐えるキャプテン・アメリカだが、敵のパワーに苦戦。

 そこで、マグノイド部隊が船内に突入してきた。熱線砲で怪物を狙うが、怪物は避け、強力なエネルギーを放射する。キャプテン・アメリカはシールドを投擲し、みごと怪物にヒット! その隙にマグノイドたちは怪物を押さえつけ、金属帯を全身に巻き付け拘束した。

 衛星軌道上の宇宙艦で地上の様子を監視している司令官は、近くにいたキャプテン・アメリカを目にとめるが、友人の遺体を抱えて去るのを見て、自分たちへの脅威にはならないと判断する。拘束された怪物は、必ず戻ってくるぞと恨みを込めて叫ぶ。異星人司令官の指示で、怪物を乗せた宇宙船は宇宙へと飛び去った。

 キャプテン・アメリカはマグノイドの降下艇が地球を離れるのを見送り、まだ地球人にとっては未知の宇宙の驚異について考える。そして、怪物を運ぶ宇宙船は、数千光年離れたイプシロン4という灼熱の星へ突入。怪物は焼かれ溶かされながらも必ず生きて戻ると叫び続ける。

 帰還したキャプテン・アメリカ安全保障委員会へ出頭し今回の事件について報告する。だが委員会のメンバーはあまりに突飛な話を信じてくれない。委員たちが去ったあと、我々は天に唯一の存在ではない、星に目を向けよ!とキャプテン・アメリカは独白するのだった。

 

 宇宙人の怪人や戦闘員が複数登場し大活劇が楽しめる、年刊号のページ数を利した豪華編。保護されるべき逃亡宇宙人かと思いきや…という展開にも驚く。

 このコミックが収録された合本は、

https://www.amazon.co.jp/dp/0785120785/

で購入できるので、是非!

MARVEL TREASURY SPECIAL CAPTAIN AMERICA'S BICENTENNIAL BATTLES

1976年

EDITED, CONCEIVED AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 このコミックは、1976年のアメリカ合衆国建国200周年の時に、MARVEL TREASURY SPECIALという大判装丁のレーベルで発行された。CAPTAIN AMERICA BY JACK KIRBY: BICENTENNIAL BATTLESという名称でTPB化もされている。編集/創作/作画はもちろんJACK KIRBY、インクはH. TRIMPEJ. ROMITAB. SMITHが担当している。

  序文は「歴史とは人々だ!」という力強い宣言から始まる。これからアメリカ合衆国の歴史を旅することになるキャプテン・アメリカだが、それはミスター・ブダという剃髪の謎の人物がいきなり出現したことによる。カービー得意の、1ページ目から事件が始まっている構成! このミスター・ブダという人物は、その後エルダーズ・オブ・ユニバースコレクターグランドマスターと同類ですね)のコンテンプレイターがその正体と設定されるが、これが初登場。霊体として現れたミスター・ブダは、装飾の施されたピラミッド状の座具の中に入ると受肉し、座禅を解き扉を開けて座具から出てきた。アストラルボディからピラミッドパワーによって肉体を現出させたと説明するミスター・ブダだが、突飛すぎてキャプテン・アメリカは信じない。ミスター・ブダは手を合わせて挨拶するが、相手の宗教的な物言いにキャップは自分には必要ない、国のための仕事が待っていると歩き去る。だがミスター・ブダはキャプテン・アメリカが知らないうちに力を使い、時空ゲートを超えさせた。

 キャプテン・アメリカはいつの間にか迷路のような場所を歩いており、床が抜けて落下。うまく着地するが、そこはあり得ない場所だった。背後の壁にはハーケンクロイツが掲げられ、目の前にいる兵士はどう見ても第二次大戦中に見たナチスの警備兵だ。素早い動きで警備兵を捕らえ黙らせたが、キャップは混乱する。これはミスター・ブダのトリックか? しかし、かつて体感した’40年代にしか見えない。物音を聞いてドアを開けてみると、三人の男が誰かを拷問している。三人が振り返った瞬間、キャプテン・アメリカは驚愕した。アドルフ・ヒットラーナチス親衛隊が、捕らえたバッキーを椅子に縛りつけ尋問している! この時期はウインターソルジャーの設定はなく、キャプテン・アメリカはバッキーを失ったことを永遠に後悔していたので、この驚きたるや凄まじいものだろう。バッキーに駆け寄ろうとするキャップを、ドアの陰に潜んでいたレッドスカルが狙うが、シールドを叩きつけてあっさり倒し、親衛隊と戦闘開始。敵を殴り飛ばし、シールドを投げてピストルを弾き、逃げるヒットラーを掴んで顔を親衛隊と鉢合わせにぶっつけて倒した。

 キャップは目の前のバッキーに感激し声も出ない。だがバッキーはキャップがすぐに縄を解いてくれないのに不満を言う。あわててほどきにかかるキャップ。ナチス兵が駆けつけ、機関銃を撃ち込んできた! 間一髪、窓から脱出するキャップ&バッキー。キャップはバッキーにきみは最高のパートナーだと話すが、そんな場合ではない。木の枝を掴んでうまく着地し、バッキーは藪を抜けて先へ駆けていく。キャップも続くが、バッキーの姿が見えなくなる。バッキーの名を呼びながら走るキャップは時空ゲートを抜け、再びミスター・ブダの前に現れた。古傷をえぐるようなまやかしを見せたミスター・ブダに怒るキャプテン・アメリカだが、ミスター・ブダはあれは現実だと答え、これは痛みしかもたらさなかったかと問う。内心、バッキーと再会できたことを嬉しく思ったと認め、キャプテン・アメリカはミスター・ブダと握手し立ち去った。だが彼の旅はこれから始まるのだ。ミスター・ブダはキャプテン・アメリカの手に秘かに護符を付けていた。

 ミスター・ブダの館の中を歩いて行くと、壁や天井に戦場が映されている。あまりに生々しい兵士たちの姿に動揺したキャップは扉を開けて外へ出る。ミスター・ブダの影響から逃れるためその場からすぐ立ち去ろうと考える。

 キャップはタクシーを止め乗り込んだ。運転手は子供が持ってるマーヴルコミックにサインをいただきたいねえと話しかけ、運転しながら、誰かがこの国の全てを見るとしたらそれはあんたじゃねえかなあと言う。ふと右の手のひらを見ると、○と△を組み合わせた徴が付けられていた。まだミスター・ブダの影響下にいることを悟るキャップ。見れば、タクシーに乗っていたと思っていたらそこは馬車の中だった。

 馬車から降りると、そこは200年前のフィラデルフィアだった。誰もが奇異の目でキャプテン・アメリカを見て、噂する。UFOを見たような反応だなとキャップは呟くが、UFOって何だと返される。野次馬のような人たちの話題になる中、僕の雇い主がお話ししたいと言っていますという少年がいた。ついていったキャップは、驚くべき人物と会う。ベンジャミン・フランクリンだ。彼はキャプテン・アメリカを出迎え、新聞を出版している者ですと自己紹介し、店に招いた。合衆国建国の父の一人を驚きの目で見つつ、招待を受けるキャップ。フランクリンは従業員に椅子を出させ、飲み物を出してもてなし、ベッツィー嬢を見つけてこいと命じる。キャプテン・アメリカカップを少年に返して礼を言う。少年はジョン・ステイシーですと名乗り、あなたのコスチュームは本当にいいですねと話す。部屋へベッツィーという女性が入ってきた。ベンジャミンは、凄いインスピレーションをくれる人物を迎えているぞとキャップを紹介する。ベッツィーはキャプテン・アメリカを一目見るなり驚き喜び、この衣装を作った人を賞賛するわと感激する。フランクリンは、彼女は優秀な裁縫師なんだと紹介する。フランクリンはキャップの服をスケッチしはじめ、ベッツィーはコスチュームを調べ始めた。昔のアメリカの人々の熱意を感じるキャプテン・アメリカ。フランクリンはスケッチに色をつけ、キャプテンに見せ、自由のための愛国心を呼び起こすデザインだと話し、これを旗にしたらと提案。気づき、驚くキャップにフランクリンは、ベッツィー・ロス嬢は大陸軍の旗をデザインするんだ、ワシントン将軍に乞われてねと話す。ベッツィー・ロスはアメリカ合衆国国旗を作ったとされる人物だ。自分は歴史に干渉したのか?と驚き、店を飛びだし走り去るキャプテン・アメリカ

 壁にもたれかかっていると、後ろから肩を叩かれた。先程の時代とは違う感覚があった。キャップに話しかけてきた紳士は、酷い時代だよな、貧民用の無料食堂に案内するぜと言う。それは断り、新聞売りの少年に声をかけて新聞に書かれた年を見せてもらう。新聞売りの少年は、誰も新聞を買ってくれない、売れなきゃ今週は石鹸食わなきゃならないよと話す。今は1930年代、大恐慌時代なのだ。ギャングの乗る車が止まり、新聞をよこせと声がかかる。少年が新聞を渡すとギャングは少年の顔を押しのけ、代金を払わず走り去ろうとした。キャプテン・アメリカはドアごとギャングを引き出し、代金を払うんだと叫ぶ。ギャングたちは発砲し、キャップは盾で少年を守る。警官が駆けつけるがギャングの車は走り去ってしまった。キャップに引き抜かれたギャングは警官に逮捕されるが、文句を叫ぶ。新聞売りの少年も叫び返す。この子供は「俺がコミック描きになったら…」と話す。これはカービー本人ですね。キャップの右手の徴がまた働き、荒れ地に出現した。

 強い日射しを避け、岩場へと歩くキャップ。岩場にはアメリカインディアンの部隊が身を隠していた。酋長に配下が、白人の歩兵だろう、殺すかと訊ねるが、酋長は何者かわからん殺すなと命じる。キャプテン・アメリカの背後から、気配を消したインディアンがライフルを突きつけた。キャップは前転しながら蹴りを撃ち込み逃れる。インディアンたちの銃撃が始まり、キャップは飛び退くが、左足を投げ縄で捕らえられた。しかしそこはキャプテン・アメリカ、縄を引く力に負けずに立ち、両腕で二人の相手を倒した。酋長はライフルをかまえる部下を制し、キャップと話をする。キャップは「相手が戦わぬ者を殺すジャッカルなら撃て」と答え、二人はわかり合う。キャップには相手がジェロニモだと判っていて、自分は平和を守ることを求める男だと言う。ジェロニモはキャップの中に偉大な魂を見る。だがいま白人がインディアンを狩っており、自分たちも対抗してここで待ち伏せをしている、死か自由かだと話す。キャプテン・アメリカは、自由か死かとはアメリカ人としての言葉だ、我々は兄弟でありつつ異人だが、一つの人民になるんだと理想を語る。だが戦闘は近づいており、この場で何が真実か決めるのは銃弾だとジェロニモは答える。ついに銃弾が届くようになり、インディアンたちは馬に乗って配下を連れ走り出した。キャプテン・アメリカは白人の騎兵隊めがけて走る。必死で止めようとするが、この戦いは歴史の一部であり、スーパーヒーローにも止められない。キャップは「別の道がある!みんなアメリカ人なんだ!」と絶叫する。だが右手の徴がキャップを別の時代へと飛ばした。

 気づくとキャップは地面に埋まっていた。男たちが力を合わせ、彼を引っ張り出してくれる。だが話を聞くと、坑道で落盤が起こり、全員生き埋めで死を待つのみという状況だという。皆があきらめ、錯乱して叫びだす者も出る。さらに、岩の間からガスまで噴き出してきた。絶体絶命! キャプテン・アメリカは全力で岩を押し、死力を振り絞って押し続け、最後には脱出口が開けた。九死に一生を得た鉱夫たちは助け合いながら脱出する。頭上に地上へ通じる穴が見えた。鉱夫たちは、自分たちを助けてくれた謎の男を見つけようとするが、もうどこにもいなかった。

 気づくとキャプテン・アメリカ複葉機に乗りドイツ機に狙われていた。敵はエース級の腕を持ち、機関銃弾が操縦席をかすめる。第一次世界大戦だ。塹壕から歩兵たちが空中戦を見て応援している。キャプテン・アメリカといえども、これほど古い複葉機は不慣れだ。宙返りをしても敵機は追いすがってくる。機体を横にして木と木の間をすり抜けるという荒技で、敵機はついて行けず木に激突した。だが後方から前方に目を戻したとたん、眼前にドイツの観測気球があり、激突寸前に飛び降りる。時空ゲートが開き、キャップは再びミスター・ブダの前に出現させられた。自分をもてあそぶ相手に怒り、すぐに徴を取れと要求するキャップだが、ミスター・ブダは得るものは無かったのか、そして悲劇のない歴史はないぞと言い、まだこれをやめるつもりはないようだ。反論するキャップだが、またも時空転移されてしまう。

  背後から強烈なパンチを浴び、倒れるキャプテン・アメリカ。口髭が特徴のこの相手は、アメリカボクシング界伝説の男、ジョン・L・サリバンだ! 観客たちは盛り上がり、口々に声援を叫ぶ。サリバンの左ストレートを避けカウンターで右パンチを打ち込むキャップ。超人兵士の力で打ち込んだパンチにも耐える相手に驚くキャップだが、二度三度のパンチでついにサリバンは倒れ込んだ。そこに警官隊が突入。この当時、まだボクシングは合法ではなかったのだ。大混乱になる会場。キャップはサリバンの体を引きずって避難させる。

 が、気づくとまた時空が変わっており、銃を突きつけられていた。キャップは黒人をかばっており、何人かに取り囲まれている。この奴隷制度廃止論者を殺して賞金を得ようぜという賞金稼ぎたち。南北戦争の時代だ。黒人は、ここでは奴隷制度は廃止されたと主張する。キャプテン・アメリカは法を犯している賞金稼ぎたちに反論する。だがそんな説得は通じず、相手はキャップを縛り首にしようとまで言い出す。その時、離れたところにいた若いガンマンがライフルで狙撃。それをきっかけとして黒人とキャプテン・アメリカは反撃を開始した。超人兵士の怪力で、賞金稼ぎたちは次々と空を飛ぶようにぶっ飛ばされていく。これには援護の狙撃をした若者も驚いた。最後の一人を殴り倒したあと、キャップは黒人の男にも仕返しはやめるよう諭す。黒人の男は自分に友人や兄弟と呼びかけるこの白人の男を信じ、挨拶を交わして別れた。それを遠くから見ている若者。彼の父親がやって来て、息子が奴隷商人を倒す手助けをした聞いて誉める。この父親こそ、奴隷廃止活動家ジョン・ブラウンだ。

 馬に乗り、夕陽の中、歩を進めるキャプテン・アメリカ。途中で馬がトカゲに驚き暴れ、落馬してしまう。馬は走り去り、立ち上がったところに、ジープがやって来た。また時空が移動したのだ。警備兵に話しかけ、同乗して砂漠地帯を進む。途中で待っていた兵士がジープを止め、キャプテン・アメリカは中に招かれる。キャプテン・アメリカにはここで何が起こるのか判っていた。指揮官の将軍はキャプテン・アメリカの参加を歓迎し、閃光防御用のアイマスクをつけるように言う。科学者・軍人・官僚が並び見守る中、カウントダウンが行われ、巨大な火球が砂漠に立ち上がった。人類は原子爆弾を手にし、新たな時代が幕を開けたのだ。軍人たちがふと見ると、すでにキャプテン・アメリカはおらず、アイマスクだけが落ちていた。

 炎の前に立つキャプテン・アメリカ。だがこちらは原子爆弾ではない。大火事が街中に広がっていた。逃げまどう人々。一人の男が火の回っているビルに入ろうとしていた。キャプテン・アメリカはその男に組み付いて止める。話せ、重要な物を持ち出さないとと暴れる男に、命の方が大事だとキャップは言い、ビルの前でもみ合う。と、ビルの壁が崩れてきた。キャップはシールドで防御し、男を救う。助かったと言う男に、生きることを考えてくれて良かったとキャップは答えるが、さすがにダメージを負っていた。男からここがシカゴだと聞き、1871年シカゴ大火なのだと知る。街が全て灰になってしまうと言う男に、新しい街として生まれ変わるよと答えるキャップ。道路は避難民であふれ、火から逃れるために川の橋に人が殺到していた。と、誰かが川に落ちたと声が上がる。キャプテン・アメリカはすぐさま飛び込んだ。水中は暗く何も見えない。さらに、またも別の時空に転移される。

 水中に突然、サメが現れ、襲いかかってきた。水中で思い切りのけぞって反転しサメに一撃をくらわせるキャップ。だが息が続かず絶体絶命だ。そこへ、潜水服の人物二人が現れてキャップを救い、海底基地へと運ぶ。中に運び込まれ、酸素ボンベから呼吸をすると、キャップは蘇生した。中にいた男はキャップにあなたはスーパーヒーローだねと言い、ここで研究されていることが世界の食糧問題を解決するかもしれないと話す。キャップの手の徴が働き、時空転移しまたもミスター・ブダのところへ運ばれた。

 ミスター・ブダは逆さ吊りになりヨガに励んでいた。キャップはこの旅はいつ終わるのか、アメリカはどの時代も私の知るアメリカだったと話すが、ミスター・ブダはまだ結論にたどり着くには早いと考えているようで、次なる舞台へとキャップを送り込む。空に地球が見え、岩だらけの月面にキャプテン・アメリカは時空転移していた。

 宇宙服を着たキャプテン・アメリカは、意外にも月面で爆発が起き、飛んで来た破片を受け体勢を崩す。向こうから、兵員輸送機が飛んできて、何かと交戦し重火器を撃ちまくっていた。未来では、人類は月面でも戦争を繰り広げているのかと驚くキャップ。月面を進むと、何人もの歩兵が戦っていた。月面戦車の残骸を発見し、中に生存者がいないかとガラス面をのぞき込むが、誰も見えない…。ガラス面に写ったキャップの姿が変化していき、そのガラス面は月面戦車のキャノピーではなく、カメラのレンズになった。

 時空転移し、キャプテン・アメリカは昔の映画の撮影現場に居た。監督やカメラマンや俳優たちが沢山おり、キャップはその中を歩くが、メルビン・グラバーという映画業界人の目にとまり、映画に出ることになってしまう。兵隊コスプレのダンサーたちに囲まれ、華々しいプロパガンダ映画の中心人物にされてしまうキャップ。戸惑っていたキャップだが、あわてて「やめろ!」と叫び撮影を止め、さらにミスター・ブダに怒鳴る。

 周囲のダンサーは消え、ミスター・ブダの声がしはじめた。キャップはこれで真実のアメリカを見せたつもりなのか、アメリカ人たちが立ち上がる時の原動力という本質は何だというのかと怒鳴る。これまでキャプテン・アメリカを翻弄してきたミスター・ブダだが、最後の転移に同行するという。見ればキャップの手のひらの徴が消えかかっていた。キャプテン・アメリカアメリカの本質を見つけミスター・ブダに示せるのか?

 二人は田舎町に現れる。カントリーミュージックが聞こえてきた。老人が庭先でフィドル(バイオリン)を弾き、仕事の疲れを離れて安らぎを得ていた。それを聞かせてもらいながら、キャップの心も和らぎ、これもアメリカなんだとブダに言うが、ブダはまだ満足せず、最後の転移を行う。二人は貧民窟(ゲットー)で懸命に勉強している青年のところに現れた。キャプテン・アメリカは、不遇な境遇にもかかわらず努力することを選んだ青年の姿に、これこそ本質だと確信する。この結論にたどり着いたキャプテン・アメリカを見て、ミスター・ブダは合掌し消えていった。唐突な離別に驚くキャップだが、いま二人のどちらにも真実は共有されていた。

 そこで子供の声が聞こえる。キャプテン・アメリカを見つけた子供たちが駆け寄ってきたのだ。子供たちは憧れのヒーローを前に口々に話をし質問する。スーパーヴィランがこの通りに隠れていてそれを探しに来たの?と言われ、僕はどんなスーパーヴィランよりもでっかい何かを探していたが、ここでそれを見つけた、きみたち若者だよと答えるキャップ。全てのアメリカ人が、自分が抱える問題に打ち勝てるよう十分に強く賢くなるということが最も大切だと話すキャプテン・アメリカ。まだまだ子供たちが集まってきた。沢山の子供たちに囲まれ、皆を励ましながら、キャプテン・アメリカはついに長かった旅の終着点に行き着くのだった。

 

 ジャック・カービーによる、子供たちへの明確なメッセージが込められた快作。キャプテン・アメリカによるアメリカ合衆国の歴史巡りで多くの場面が楽しめ、描かれたキャラクターの意思と、最後の到達点が胸を打つ。もちろん、ジャック・カービーならではのアートも堪能できる。是非お勧めしたい。

 アメコミビブリオバトルというイベントに参加しこのコミックを紹介したので、音声がアップされたYouTubeも御案内します(マイクを使わずに喋ったので音声を上げて聞いてください)。アメコミビブリオバトルは非常に楽しかったので興味がある方は是非御参加を。

www.youtube.com

 このコミックが収録された合本は

https://www.amazon.co.jp/dp/0785117261/

で購入できるので、是非!

SILVER SURFER #18

1970年 SEP

SCRIPT : STAN LEE

PENCILLING : JACK KIRBY

 

  シルバーサーファーを突然襲う、覆面の飛翔者、鎖鉄球を使うケンタウロス、鉄の爪の獣人! 超人種族インヒューマンズだ。飛び去ろうとするサーファーだが、覆面男エレオが恐るべき飛翔で追いつき、組み付かれ、投げ飛ばされる。落下するサーファーを受け止めるサーフボード。続いてスタリアーというケンタウロスの鎖鉄球がぶち込まれる。地面に落ちたサーファーに獣人が鉄の爪で追い打ち。サーファーは相手の腕を掴んで投げ、さらに獣人の背後からサーフボードがぶち当たり倒した。そこへ第4の敵、ティンベリウスという樹人が現れ、木を伸ばしてサーフボードを捕らえ、沢山の枝を放ってきた。だがシルバーサーファーはパワーコズミックを使って枝を原子分解し、ブラストを撃ち込んだ。サーファーの強大なパワーに4人のインヒューマンズは敗走する他なかった。ボードを取り戻したサーファーは、たまたま迷い込んだインヒューマンズの隠れ家を探索することにする。

 敗走した4人は空中母艦に帰還。彼らの主は、ブラックボルトの弟マキシマスだ。兄の王位を狙う彼はマキシマス・ザ・マグニフィセントを名乗り、シルバーサーファーをこの地へ誘い込み、インヒューマンズから攻撃を受けたと思わせ兄の仲間たちへぶつける計画を立てたのだ。高笑いをするマキシマス。

 その思惑通り、サーファーはインヒューマンズの都へ入っていく。山中だというのに驚くべき都市があるのに驚くサーファー。警報が響き、ブラックボルトが飛来した。巧みな機動で背後へ回るサーファーだが、赤い髪が伸びてきて絡みつかれてしまった。女王メドゥーサだ。さらに拳法使いカーナックがチョップで建物の一部を飛ばしサーファーにぶち当てる。撃墜されたサーファーを半魚人トリトンが受け止めた。

 王の前にサーファーを運ぶトリトンたち。メドゥーサはこれがマキシマスの罠だとブラックボルトに伝える。そこへゴーゴンが、マキシマスの空中母艦を発見したと報告。スクリーンに映る敵母艦に注目するインヒューマンズだが、そこでシルバーサーファーが意識を取り戻した。トリトンを一撃するサーファー。トリトンは必死に組み付くが、恐るべき力で反撃された。メドゥーサは再び髪でサーファーを捕らえようとするが、サーファーはブラストで振りほどく。しかしそこへゴーゴンが地面を踏み鳴らして衝撃波でサーファーをぶっ飛ばした。そこへカーナックが飛びかかり、取り押さえようとする。

 そこでマキシマスの空中母艦が都市に砲撃を始める。ブラックボルトは迎撃に飛び立ち、メドゥーサたちも対空砲火を放つ。インヒューマンズに二つの勢力があるのを知ったサーファーは「ボードよ来たれ!」と叫ぶが、なぜかボードが来ない。探すと、テレポート犬ロックジョウがボードをくわえていた。なかなかはなさないロックジョウをブラストで脅し、ボードを取り返して飛び立つシルバーサーファー。

 だがサーファーをマキシマスの味方と誤解したメドゥーサたちは対空砲を撃ち込む。かわしながら進んでいくと、空中母艦はダメージを受け煙を上げながら逃げていくのが見えた。地球で暴力と争いを見てきたサーファーはインヒューマンズも同じなのかと悩むが、街へ潜入していたマキシマスのスパイたちが銃撃してくる。それをかわし、追ってきたブラックボルトからも逃げ、パワーコズミックの超スピードでその地を離れたシルバーサーファーは、荒野に一人降り、膝を抱える。地球に閉じ込められて以来、地球人の争いを見続けてきたサーファーは、愛や慈悲はないのかと悩み絶望し、地球人類への怒りで吠えるのだった!

 

 シルバーサーファーはジャック・カービーがFantastic Four #48 (MAR ’66)で創作したキャラだが、1968年に出た初の単独タイトルTHE SILVER SURFERではジョン・ビュシーマが担当し、#7まではページ数が通常の倍という力の入った重厚なストーリーでキャラクターに肉付けされていった。このタイトルは#18で打ち切られたが、その#18で突然アートがジャック・カービーになり内容もアクションものになって締めくくられている。

 1ページ目からアクションシーンというカービー節炸裂の内容で「コミックは子供が楽しめるアクション重視」というカービーのポリシーがうかがえる。

IRON MAN #168

1983年 MAR

DENNY O'NEIL : WRITER

LUKE McDONNELL : PENCILER

 

 マシンマンは手足を伸ばしたままタクシーから降り、スターク・インターナショナル社アンソニー・スタークを訪ねる。突然変なロボットに来訪され警備員たちは驚くが、誰もスターク社長がどこにいるのか知らなかった。

 スターク・インターナショナル社の物理学研究室では、試作した機械のテストに立ち会うスターク氏を研究員が待っていたが、そのスタークは酒びたりで個人研究室に籠もっていた。妙なロボットが訪ねてきておりますと通信が入り、スタークはゲートの警備員にろれつが回らない声で、そのロボットに私は興味がないと言えと指示。だがマシンマンは、自分で会いにいくよと、金網を飛び越え中に入っていく。スタークは警報を聞きロボットが侵入したことを知る。朦朧とした状態でシャワーを浴びるスタークだが、服を着たままだったのでかえって気持ち悪い。アイアンマンアーマーを装着しようとするが、腕アーマーをとり落としてしまい、自分は病気だとうずくまって嘆く。

 マシンマンは足を伸ばして3階の窓ガラスを叩き、中にいるスタークの秘書ミセス・アーボガストを驚かせる。窓から中へ入ったマシンマンが、スターク氏かもしくはそのボディーガードのアイアンマンと会いたい、もしアイアンマンが私の同類なら…と言いかけたところで、その場にアイアンマンが現れた。マシンマンは友好的に話しかけるが、アイアンマンはステインの回し者かと突進し、壁を壊してしまう。回路がうまく作動せずよろめいているぞと思うマシンマン。アイアンマンは再度マシンマンにタックルを敢行、二人は窓ガラスを破って外へ落ちるが、マシンマンは空中でうまく体をかわして着地。

 アイアンマンはマシンマンの右腕をもぎ取り後ろへ放り投げるが、マシンマンは腕をコントロールしてブーメランのようにアイアンマンの後頭部へぶつけ、右腕をつけ直す。ならばとアイアンマンは街灯を引き抜いて殴りつけようとするが、うまく手が振れず街灯が外にいた社員に振り下ろされる。マシンマンは手を伸ばして社員たちを救った。アイアンマンのプログラムは故障しているのか、殻は私を殺そうとしていると疑ったマシンマンは、空を飛んでアイアンマンに突進。

 スコットランド郊外の飛行場では、ステインの部下がスタークの飛行機を見張っていた。そこへ、掃除用具を運んで黒人の男が近づいてくる。ステインのスパイは銃を抜こうとするが、この男ジム・ローデスはホウキでスパイたちを叩きのめし気絶させ、銃を拾って飛行機に乗り離陸する。

 マシンマンとアイアンマンは空中で激突していた。スターク・インターナショナル社の警備主任マーチネリーはそれを見守る他ない。マシンマンは伸びるパンチをアイアンマンに打ち込む。アイアンマンは反撃しようとするが、マシンマンは手を伸ばして建物を掴み素早くその場から退避、建物の中へ入る。アイアンマンはそれを追うが、また建物の壁をぶち壊してしまった。マシンマンは伸ばした手でアイアンマンに触れ10万ボルトの電流を流し止めようとするが、アイアンマンのアーマーはそれを吸収する能力があるのだ。アイアンマンは手強いと感じたマシンマンは、その場にあった発電機を投げつけ、電気が消えて真っ暗な中を赤外線アイをいかして走り去る。

 隣の研究室では研究員たちが、4年の歳月と8千万ドルの費用をかけてようやく完成した装置のテストにスターク社長がいつまで待っても現れないことに気をもんでいた。そこへマシンマンが入ってきて部屋を通過し走り去り、その後からアイアンマンが突っ込んできて研究員にぶつかって気絶させ、せっかく作った試作装置にもぶちあたって粉砕してしまう。

 再び外へ出た両者は空中戦となる。アイアンマンは両手のリパルサー・レイを発射したが、マシンマンは電磁フィールドを展開して防ぐ。マシンマンは手を伸ばしてアイアンマンの頭を掴み、指から電磁波を発射してアイアンマンのシステムを止めようとする。この攻撃でアイアンマンは落下していくが、ここでマシンマンはアイアンマンが自分のようなロボットではなく人間であることに気付く。人を殺すわけにはいかないとあわててマシンマンは腕を伸ばし、地面に激突寸前にアイアンマンを止めた。アイアンマンが自分の同類ではないと知ったマシンマンはその場を跳び去る。

 起き上がったアイアンマンにマーチネリーが駆け寄ったが、アイアンマンは返事もそこそこに歩き去る。また、研究員を殴り装置を破壊したことで責められるが、簡単に謝っただけで去ってしまう。個人研究室へ戻ったスタークはヘルメットを脱ぎ、ぼろぼろな自分に頭を抱える。そこへ秘書から電話があり、オフィスはメチャクチャ、研究室は壊され、そのうえ銀行からの客が会わせろと言ってますと伝えられる。スタークは、そのどれも相手にしている暇はない、車をまわしてくれと答えた。髭を剃りアーマーを脱いでスーツに着替えた彼は、他人の話を聞かず車で外出してしまった。

 街へ出たスタークは、酒を飲むためにペントハウスで一泊する。翌日そこを出たスタークにドアマンが話しかけるが、スタークはもう何もかもどうでもよくなっていた。

 

 この時期のIRON MANでは主人公のスタークがヒーローと社長業の重圧からアルコール依存の末期になっており、ボロボロの状態である。この話のすぐ後の#173にてスターク・インターナショナルはオバディア・ステインに乗っ取られ、スタークはすべてを失ってスラム街に堕ちる。

 この号で再登場したジム・ローデスは次号#169でスタークと再会し、まともに活動できないスタークに代わってアイアンマンアーマーをつけて活躍していく。

 そんな時期なだけにこの号のスタークの行動はめちゃくちゃで、まわりに迷惑かけまくりだし、マシンマンとの対決もやみくもに突っ込んで物を壊すばかりだ。一方マシンマンもアイアンマンをロボットだと思って訊ねてくるというちょっと間抜けな展開(ジョキャスタと出会ったことで同胞を求めようという気になったのか?)だが、アイアンマンに対抗するのにこれまで登場した能力をいろいろ披露してくれるのは嬉しいところだ。ここでアイアンマンと初対決したマシンマンだが、両者の対決は翌年、別の形で再登場することになる。

 このコミックが収録された合本は

https://www.amazon.co.jp/dp/B073V9SDTH/

で購入できるので、是非!

MARVEL TWO-IN-ONE #93

1982年 NOV

TOM DEFALCO : SCRIPT

RON WILSON : PENCILS

 

 この号は前号ラストから続いてザ・シングVSマシンマンで、両者の格闘シーンから始まる。復活したウルトロンに操られたザ・シングが、強烈なパンチを打ち込んできた。伸びきって一部が壊れた足を引きずりながら、なんとか攻撃をかわし続けるマシンマン。ウルトロンはジョキャスタに、我に従い、我に愛を捧げよと持ちかけるが、ジョキャスタは拒否。それを聞いて、マシンマンはこの女アンドロイドを救おうと思う。基地の電源に右手を突っ込み、左手をザ・シングに巻き付けて電流をながしシングを気絶させる。そこへウルトロンがブラスターを撃ち込みマシンマンはなんとか避け、運良く壁に大穴が開いた。マシンマンは両手を合わせ磁場フィールドを発生させてウルトロンを弾きとばし、ジョキャスタを連れて外へ脱出。ザ・シングの乗ってきたファンタスティ・サイクルに乗り、指先を抜いて指にあるコネクターを接続しシステムを操作、離陸した。ここでザ・シングの催眠術が解けかけたため、ウルトロンは再催眠をほどこし、マシンマン追撃ではなく自分の計画を開始する。

 マシンマンギアーズ・ガービンのガレージにやって来ていた。足を修理してもらいながらジョキャスタの話を聞く。操られていたとはいえウルトロンを復活させてしまった彼女は、自分がウルトロンの道具にすぎないのではないかと悩み、敵の強大さに恐怖し走り去ろうとする。腕が伸びてきて彼女を止め、私たちはウルトロンを倒せるよと言い、マシンマンはジョキャスタを抱き寄せる。

 一方ウルトロンはザ・シングに命じてアダマンチウムの原料が入った巨大ドラム缶を運ばせていた。ロケット・プラットフォームにドラム缶が置かれ、ザ・シングを従えたウルトロンは発進する。彼はこの材料でウルトロン軍団を作り、アベンジャーズに勝利し世界を手にしようとしているのだ。

 そのすぐあと、スターク・インターナショナル社の研究施設にザ・シングが押し入り、警備員をノックアウトして深宇宙用生命維持装置を強奪していった。シングを乗せたプラットフォームはウルトロンの秘密地下工場へ到着。ウルトロンはすでに6体のウルトロン・ボディを作っており、これがさらに増産されれば全てが征服されウルトロンの憎む人間性なるものは消滅するのだ。

 ギアーズ・ガービンのガレージをマシンマンの親友の精神科医ピーター・スパルディングが訪ねていた。たった二人でウルトロンに対抗しようというマシンマンの計画に、アベンジャーズファンタスティック・フォーに通報すればいいだろうと反対するスパルディング。だがマシンマンは、ウルトロンがすでに動き出しているため時間がないと反論。ガービンはマシンマンの足を応急処置したが、しかし試しに動かしてみると伸ばした足の外板が破れて蒸気が吹き出してきた。仕方なく、壊れた右足を取り外してくれと言うマシンマン。ガービンの修理を批判するスパルディング。ガービンは時間さえあれば完全に修理できるんだがと反論。上流階級の精神科医と町の機械工はあいかわらず馬が合わず口論になるが、子供じみたことはやめろとマシンマンが腕を伸ばして二人を離した。

 内輪もめを見てジョキャスタはガレージから外へ歩き出し、こんなことではウルトロンを止められないと絶望する。だが後ろからマシンマンが、右足首の取れた状態で左足の車輪走行だけで追ってきた。ジョキャスタを励ますマシンマンだが、ジョキャスタは、あなたには判らない、あなたには友達がいるが自分には何もないと嘆く。だがマシンマンは自分もアーロン・スタックとして人々と出会ってきたことで、機械の体だが平和と幸福を得てきた、きみにもできるよと手を差し出す。ジョキャスタはその手を取るのだった。

 しばらく後、ガレージ内で、ガービンがジョキャスタの頭に設置した装置から伸びたケーブルをマシンマンの胸に接続していた。ガービンによると、ジョキャスタはいまだウルトロンとサイバーリンクを持っているが、マシンマンの機能で補助することで、彼女がウルトロンを居場所を発見しやすくすることができると言う。装置はうまく働き、ジョキャスタはウルトロンの居場所を発見した。まだ出撃に反対なスパルディングにガービンは秘密兵器があると答えるが、その秘密兵器とはガービン自身だった。マシンマンとジョキャスタを乗せたファンタスティ・サイクルをガービンが操縦し、3人は発進する。

 ウルトロンは自分の分身であるウルトロン軍団の調整をほぼ完成させていたが、何らかの音が近づいているのに気付く。ファンタスティ・サイクルが着陸し、ジョキャスタはウルトロンが地下にいると探知してアイ・ブラスターを地面に撃ち込み、3人はウルトロンの工場へ侵入した。通路が二つあり、ジョキャスタはマシンマン&ガービンと別れて進む。

 ガービンと通路を進むマシンマンだが、そこへ電子ミサイル群が襲来しピンチにおちいる。一方ジョキャスタの前にはパワーキャノン装置を抱えたウルトロンが現れ、我が花嫁となり自分が造る真のユートピアに来たれと強要する。ジョキャスタは、あなたのユートピアは生命を排除した不毛なものだと言い、ウルトロンもその通りだ、全ての生命は我が敵だと答える。なぜ私を選んだのと訊ねるジョキャスタに、お前は我が造った、我のものだとウルトロンは言う。

 電子ミサイルが飛び交う通路で大ピンチのマシンマン&ガービンだが、ガービンがミサイルのコントロール装置を発見、マシンマンは手を伸ばして装置のケーブルを引き抜き停止させる。そこへザ・シングが突っ込んできた。マシンマンは手を伸ばしてガービンを横に押しのけ、シングに立ち向かう。片足のマシンマンだが、左足の車輪走行で旋回したり足を伸ばして身をかわしたりしてなんとかシングの猛攻をしのぐ。

 ウルトロンはなおもジョキャスタを誘う。ジョキャスタはウルトロンのいままでしてきた事を思うと従えない、だけどあなたを愛していたわと言い、ウルトロンの持つパワーキャノン装置をオーバーロードさせた! 装置は大爆発を起こし、二人は吹き飛ばされた。

 マシンマンたちのいる区域の壁が崩れ、ジョキャスタとウルトロンがぶっとんできた。瓦礫に埋もれる一同。見れば、ジョキャスタはばらばらに壊れている。アダマンチウムのボディを持つウルトロンは無事で、ジョキャスタよ何と愚かなと嘆く。彼女に触るな!と怒るマシンマン。ナイトの登場か、だが遅かったな、ジョキャスタは死んだ!と言い返すウルトロン。そこで、瓦礫がぶつかったショックでザ・シングの催眠が解けた。「ボコボコにしてやるぜ!」ウルトロンをぶん殴るシング。ウルトロンは工場のケーブルを引き抜いてムチのようにシングを打つ。マシンマンは手を伸ばしケーブルを取り上げ、そこへシングがウルトロンにタックル!

 再び立ち上がったウルトロンは、製作したウルトロン軍団を起動しようとする。今ウルトロンを止めなければ! だが敵の装甲はアダマンチウム製で破壊不能だ。マシンマンは外部からは破壊できないだろうが内部からならと、手を伸ばしてウルトロンの口へ突っ込み、ケーブルを引き抜いた! ウルトロンは、我ならばジョキャスタを再生できる、だから我を救えと懇願するが、マシンマンは手を貸さず、ウルトロンは倒れて機能停止する。ザ・シングは、なぜウルトロンの誘いを受けてジョキャスタを助ける方を選ばなかったんだ?と訊ねる。マシンマンは、ジョキャスタならそれを拒否しただろうからと答え、だが彼女を救えなかった事を悔やむ。壊れたジョキャスタの体を抱え、もうきみは苦しまなくていいんだ、だけどきみがいなくて寂しいよとマシンマンはつぶやくのだった。

 

 ジョキャスタJOCASTAとは、ギリシャ神話のオディプスの母イオカステーの英語表記で、親子の近親相姦の悲劇を暗示した名前なのだが(ただし神話とは親子の立場が逆で、コミックのジョキャスタは親であるウルトロンとの関係に苦しむ)、その通り悲劇的な結末を迎えた。

 作者のトム・デファルコは自分でつくったキャラであるギアーズ・ガービンを登場させマシンマンのいい相棒として活躍させている。その一方、デファルコ先生がやるとピーター・スパルディングはガービンとの対比で正論ガチガチのエリート人間として描かれてしまうのが何とも。

 ウルトロンはこのあと、クロスオーバー「シークレット・ウォーズ」で超越者ビヨンダーの手によりバトルワールド惑星にて再登場。ジョキャスタも後に進化の実験者ハイ・エボリューショナリーによって再生され再登場することになる。

MARVEL TWO-IN-ONE #92

1982年 OCT

TOM DEFALCO : SCRIPTER

RON WILSON : PENCILER

 

 MARVEL TWO-IN-ONEは毎回ザ・シングが他のキャラクターと共演するタイトルで、この号はザ・シング&ジョキャスタ。ジョキャスタは'77年のTHE AVENGERS #162で初登場した女性型ロボットで、アベンジャーズの敵として名高い悪のロボット、ウルトロンによって製作されたが、造り主に反し、一時期アベンジャーズに参加していた。

 物語はエジプトのカイロから始まる。前号#91はノバの敵スフィンクスとの共演で、スフィンクスのオリジンを巡る話だった。カイロ空港で旅券を受け取る長い列が出来ていた。アメリカ行きの旅券を渡した相手は、怪物ザ・シングで、係員は驚く。ザ・シングは搭乗前の金属探知ゲートをくぐる時にぶち壊してしまう。旅客機に乗り込む列に並ぶが、そこへテロリストが車で突っ込んできた。ザ・シングは地面をぶっ叩き衝撃波で車を跳ねとばして事件を解決、旅客機に乗る。

 マンハッタンの路地裏では、3人の暴漢が、コートに帽子の女性を襲っていた。だが3人は一瞬にして吹きとばされる。

 一方バクスター・ビルディングファンタスティック・フォー本部では、ミスター・ファンタスティックことリード・リチャーズβ線探知機の調整に勤しんでいた。盲目の女性彫刻家アリシア・マスターズはリードに、ベンを人間に戻す研究を最近してないようだけどと声をかけるが、それに答える前に警報が鳴り、何者かの来訪を告げた。

 JFK国際空港に到着したザ・シングことベン・グリムは空港のターミナルを出る(ターミナルにはデモのプラカードを持った人々がいるが、「BRING BACK STAN LEE!」と書かれているのを持ってる人がいたり)。タクシーがベンに声をかけるが、ジョニー・ストームがファンタスティ・カーで降下してきて、ベンを乗せた。

 バクスター・ビルに戻ったベンを、アリシアが迎える。抱き合い、キスする二人。ジョニーはヒューマントーチに変身して宙に炎でハートマークを描く。

 戻ったベンたちに、リードが来客を紹介する。アベンジャーズの元メンバーの女性アンドロイド、ジョキャスタだ。アリシアはジョキャスタの声を聞いて、その孤独な調子に驚く。ジョキャスタはファンタスティック・フォーに助けを求めに来たのだ。邪悪なロボット、ウルトロンに造られたジョキャスタだが、人類を憎悪するウルトロンに反抗した彼女はアベンジャーズに参加する。だが様々なスーパーヒーローが集うアベンジャーズの中にも彼女の居場所はなく、ジョキャスタは次第に疎外感を覚えていった。その後、アベンジャーズが実働メンバーの数を限定しようとした際(AVENGERS #211)、ジョキャスタは自ら身を引きアベンジャーズマンションを去った。だが銀のメタリックボディの彼女は街で奇異の目で見られ、路地裏に隠れるがそこでも襲われ、精神的に追いつめられる。孤独にさいなまれたジョキャスタに同情するアリシアやベン。リードはジョキャスタにバクスター・ビルへの滞在を許可。アリシアはベンに、ジョキャスタはロボットだけど自分には人間のように感じると言う。

 一同が去ったあと、リードはアベンジャーズマンションのキャプテン・アメリカに連絡し、ウルトロンについて情報を得た。ウルトロンは数ヶ月前にアベンジャーズに倒されていたが(AVENGERS #202)、再び何かが起ころうとしているのか。

 ジョキャスタはあてがわれた部屋のベッドで眠りについていたが、ウルトロンの悪夢が彼女を襲うのだった。そのウルトロンは、アベンジャーズとの戦いで石像のような状態で封印されていた。

 翌日、ベンはデルマー保険に出向いた。保険会社の社員アーロン・スタックは、マシンマン人間性を学ぶための仮の姿だ。アーロンはいつもの如く、彼をやっかんだエディに突っかかられていたが、それを一蹴する。同僚のパメラに淡い思いを抱くアーロンだが、ロボットである彼には叶わぬ夢だ。そこへ、ザ・シングが入ってきた。ベンはアーロンを知らないが、マシンマンはシングと会ったことがあった(MACHINE MAN #15)。

 アートギャラリーでは、アリシア・マスターズがつくったスーパーヒーローの彫刻を見に来た人たちが、その出来を賞賛していた。彫刻の中に経路が違った銀色のものがあり、批評家はこれは駄目だと論じる。だがそれは彫刻ではなくジョキャスタで、彫刻だと思っていたものに突然、私のロボットボディがお気に召さずすみませんねと話しかけられ、批評家は気絶してしまう。ぶしつけな批評に傷ついたジョキャスタをなぐさめるアリシアだが、ジョキャスタは突然苦しみだした。暴れだし、彫刻を壊しながらもがくジョキャスタを周囲の者が止めようとするが、ロボットの力は止められるものではない。ジョキャスタは壁をぶち破って去ってしまう。アリシアはベンに電話するが、運悪くベンはデルマー保険に出向いていて留守だった。だがリードの設計した記録装置により、アリシアの声はコンピューターに記録される。

 デルマー保険ではアーロン・スタックがベン・グリムに説明を始めようとしていたが、そこでベンのズボンに入った呼び出しベルが鳴った。女ロボットが大変なんでねと言い残して去るザ・シング。女ロボットという言葉に興味を持ったアーロン・スタックは、マシンマンの姿となり反重力装置で空へ飛び立ち、電磁センサーで女ロボットの探査を開始した。

 自らの基地内で石像のように固まっているウルトロン。そこへやって来たジョキャスタは、特殊な分子構造を持つ装置を組み立てて石像のようなウルトロンの胴体に組み合わせ、アダマンチウムを熔解してウルトロンの頭上から流し込み、目から石像へビームを照射した。すると見よ、ウルトロンが新生し復活した! 我に返ったジョキャスタは、自分がなぜこんな事をしてしまったのか判らなかったが、ウルトロンを倒すために目からビームを撃ち込む。それをかわしたウルトロンは、ジョキャスタを催眠プログラムで操っていた事を明かし、平手打ちをくらわせた。倒れたジョキャスタの上で勝ち誇るウルトロンだが、そこへ伸びた手のパンチが打ち込まれる。マシンマンがこの場所を探知し登場したのだ。ウルトロンの手からのブラスターを、足を伸ばして避けるマシンマン。相手が自分と同じくロボットであることに驚くウルトロン。マシンマンはウルトロンの頭上からパンチを見舞い、相手のブタスターを避け大活躍する。だがウルトロンも、生けるアダマンチウムというべき自分を止めるものなどないと言い、激戦は続く。

 一方ザ・シングも、ファンタスティ・サイクルで現場に急行していた。ウルトロンの基地にたどり着くと、内部で大爆発が起き、シングは驚く。中ではウルトロンが、マシンマンの足を思い切り引っぱり、握り潰して壊す。我が機械の千年紀に案内しようとしているのにと嘲るウルトロン。

 だがそこへザ・シングが床板を引き抜き登場。ザ・シングはウルトロンと激突するが、さすがに歴戦のパワーファイターだけあってウルトロンが殴りとばされる。しかしザ・シングと組み合ったウルトロンは、ベンに催眠術をかけた。

 マシンマンは壊れて伸びきった足のため行動不能になっていた。そこへ、ウルトロンに操られたザ・シングが迫る。絶体絶命のピンチをどう乗り切るのか!?

 

 アベンジャーズに所属していた女性ロボット、ジョキャスタを登場させ、それと対になるようにマシンマンを登場させるうまいゲスト出演で前後編の話を作っているのは、MACHINE MAN終盤のライターであったトム・デファルコ。MACHINE MANの最終回ではアーロンは保険会社を休職するつもりのようであったが、この話ではデルマー保険に健在であることが判る。敵もアベンジャーズの宿敵ウルトロンが復活、ロボット対ロボットの対決が楽しめる。ウルトロンはアダマンチウム製で悪魔的頭脳を持つ強敵であり、ザ・シングをも操ってしまうという引きは、次号に期待を持たせる。

 

MACHINE MAN #19

1981年 FEB

TOM DEFALCO : WONDROUS WRITING

STEVE DITKO : ASTOUNDING ARTWORK

 

 人間の顔のマスクが爆発で溶けて醜く変わってしまったマシンマンは、ようやく自宅へ帰ってきた。マシンマンアーロン・スタックアイデンティティであるマスクの修理をガービンに頼む。ベストを尽くすが数時間かかると答えるガービン。コートと帽子を取って出て行こうとするマシンマンスパルディングは心配し自分もついていくと言うが、マシンマンは断り一人で外へ。夜の街を歩きながらこれまでの事を回想するマシンマン。自分とは一体何なのだろうか。

 その頃、マンハッタンの港近くのジムに、ギャングたちが集まっていた。そこに突然閃光弾が投げ込まれ、見ればハロウィンのお化けカボチャ型マスクを頭にかぶり、UFO型プラットフォームに乗って空を飛ぶ怪人ジャック・オ・ランタンが出現! この怪人はギャングたちを罵倒しガス弾を投げつけ散々に暴れ回りギャングたちを掌握してしまう。

 翌朝、アーロン・スタックのマスクは直っていた。アーロンは顔が戻ったことに安心し、友人二人も喜ぶ。アーロンはさっそく着替えてデルマー保険に出社する。

 仕事をしていると、エディが呼びに来た。社主のバイロン・ベンジャミンが皆を集めて話があるという。集まった社員たちにベンジャミンは、テロ対策を講じて建設された新しい大使館で来週各国の高官を招いてハロウィーン仮装パーティーがあり、それを後援することになったと伝える。会合のあと、ベンジャミンはアーロンに新大使館のチェックをしてくるよう命じる。ベンジャミンは社で唯一アーロンがマシンマンだと知っている人物だ。という事は、保安体制に万全を期すようにという指示だと知り、アーロンは大使館へ向かう。

 新型の大使館の内部を視察するアーロン。さすがに警備装置は厳重で、チタニウム鋼のシャッターが降りたり、ガスを換気する装置などが完備されていた。大使館を出たアーロンは、怪しげな男がカメラを持って大使館の周りを嗅ぎ回っているのを見つける。木陰に隠れてマシンマンの姿になったアーロンは、その男が乗った車に手を当てて上空を飛び追跡する。

 車から降りた男は撮った写真をジャック・オ・ランタンに渡す。マシンマンはサンルーフから中の様子をうかがっていたが、屋根がマシンマンの重みで壊れ、中に墜落してしまった。ジャック・オ・ランタンの命令で、ギャングたちがこのジムのダンベルやバーベルを持って殴りかかってきた。マシンマンは手足を伸ばしてギャングたちを蹴散らし、床を引っぺがして折りたたみギャングを一網打尽にする。ジャック・オ・ランタンはUFOに乗ってマシンマンに迫り、腕に仕込んだブラスターを発射し吹き飛ばした。壁を破って倒れたマシンマンは、起き上がって鏡を見て自分のマスクが再び溶けて崩れてしまっているのを見る。またも激しい怒りに襲われたマシンマンは復讐しようとするが、ジャック・オ・ランタンたちはすでにトラックで逃走していた。マシンマンは手足を伸ばしてビル街を進む。

 だがアーロン・スタックは大使館ハロウィンパーティーの警備を任されており、それを放棄するわけにはいかない。服を着てアーロン・スタックの姿に戻ったが、マスクだけはどうしようもない。困ったアーロンだが、道で遊んでいるスーパーマンバットマンの仮装をした子供たちを見つけ、スーパーマンのマスクを借りてパーティーに出席した。

 パーティーにはデルマー保険の一同も来ていた。仮装パーティーに普通の服で出てきたアーロンを同僚たちは不審に思う。アーロンは、このマスクの下にもっと凄いものが隠されていると言う。マギーがスーパーマンのマスクを引っぺがしてみると、中から機械の顔が現れた。マシンマンにとっては素顔だが、同僚は良くできたマスクだと感心する。

 その頃、大使館には、バナナ共和国の入場券を奪ってきたジャック・オ・ランタンたちがパーティーに参加するためやって来ていた。パーティー会場でジャック・オ・ランタンの姿を見かけたマシンマンは、やはりこの大使館を狙っていたかと思い、対策に動き出す。ジャック・オ・ランタンの一味は迅速に行動し、コントロールルームを制圧。チタン鋼のシャッターを降ろして各国高官が逃げられないようにし、エアコン装置からガスを噴射させ、大使館を制圧してしまった。

 マシンマンは、チタン鋼の壁を破っていては時間がかかりすぎると、指にコンピューターアクセスのアタッチメントを付け、壁の中の回路に端子を入れて建物のシステムを操作する。これに気付いたジャック・オ・ランタンたちは、マシンマン撃退へ向かう。ガス弾を投げつけるランタンだが、マシンマンは腕を振り回し煙を吹き飛ばし、伸びる手のパンチを打ち込む。UFO型プラットフォームを操りそれを避けるジャック・オ・ランタン。敵の手下を蹴散らし、ランタンに追いすがるマシンマン。ランタンは腕のブラスターを撃ってきて、一進一退の戦いが続く。ついに壁をぶち破って、仮装パーティー会場での戦いとなり、マシンマンジャック・オ・ランタンは群衆のど真ん中へ落下。会場はパニックになる。疲れを知らないロボットであるマシンマンと違い、ジャック・オ・ランタンには疲れと焦りが見えはじめた。切羽詰まったランタンは、群衆の中に手榴弾を投げ込むぞと叫ぶ。マシンマンは両手から磁力フィールドを展開してジャック・オ・ランタンを包み、敵の爆弾はフィールドの中で爆発、ランタンは倒れた。勝利したマシンマンだが、アーロン・スタックの仮装とマシンマンの顔が同じであることを指摘される恐れがあった。また、皆を救ったのに誰一人何も言ってくれない。マシンマンはその場を立ち去っていく。

 アパートに帰り、ガービンの修理を受けるマシンマン。彼はスパルディングとガービンという二人の友人に、デルマー社の仕事は休職すると宣言。彼にとってまだまだ世界は無限に学ぶべきものがあり、マシンマンはこの世界に長く長く生きていこうと思うのだった。

 

 感動のフィナーレというよりは、最終回だからやりたいことやってしまえという思い切りが楽しい回である。

 まず、ジャック・オ・ランタンという怪人の登場。このキャラクターは、初期のスパイダーマンの話を描いたスティーブ・ディッコが創作したハロウィン怪人という、グリーンゴブリンと共通点があることから、このあとスパイダーマンの敵役として定着していくのだが、初登場はこのマシンマンの最終回なのだ。お化けカボチャのマスクをかぶりUFOに乗って飛ぶというヘンテコ怪人だがそこがとても面白い。マシンマンとの対決もディッコ特有のアクションシーンが多くて楽しめる。

 そして今回の舞台はハロウィン仮装パーティー。本編ではマシンマンがスーパーマンのマスクを借りるという可笑しいシーンがあるが、表紙では色々なヒーローに仮装した人々をフランク・ミラー描いていて本編のパーティーより豪華だったりする。

 最後にマシンマンはデルマー保険を休職し、結局同僚に正体はばれたのかは明かされないまま終わるが、これはこのあとマシンマンが登場する時に自由に動かせるようにとの配慮だろう。ファーストタイトルは終了したが、マシンマンの物語は続いていく。

 このコミックが収録された合本は

 https://www.amazon.co.jp/dp/0785195777/

で購入できるので、是非!

MACHINE MAN #18

1980年 DEC

PERFIDIOUSLY PRODUCED BY TOM DEFALCO -- WHOSE WRITING IS JUSTLY SLURRED

STEVE DITKO -- AN ARTIST ABSURD!

 

 前号、マダム・メナスを倒したマシンマンだったが、メナスは本当に死んだのか疑問だった。彼は空を飛び、マダム・メナスの秘密基地へ向かう。基地の中ではマスクをしたマダム・メナスの部下たちが重要書類を焼き機械を壊して証拠隠滅をし、撤退の準備を進めていた。そこへ天井から手が伸びてきて、マスクの男を掴む。マシンマンの登場だ。手足を伸ばしマスクの男たちを蹴散らしていくマシンマン。マスクの男は音波ライフルを発射、マシンマンは足にダメージを受けるが手を伸ばしてライフルを握り潰した。相手は巨大な発電機の後ろに隠れて銃撃戦を続けようとするが、マシンマンは発電機ごと相手をぶっ飛ばした。ダメージを受けた左足をかばいながら、マシンマンは捕らえた男のマスクをはがし、胸ぐらを掴んで手を伸ばし高く差し上げ、マダム・メナスについて吐かせた。マダム・メナスは生きているが、どこかへ隠れていることしかこの男は知らなかった。マシンマンは男を投げ出し、基地を去っていく。別の隠れ家で、マシンマンの戦闘の様子をビデオに収めたマダム・メナス。マシンマンは音波攻撃に弱いと分析した彼女は、このロボットを自分の兵器商売の目玉商品にする野望を燃やすのだった。

 アーロン・スタックのアパートには、二人の男が訪ねてきていた。一人は精神科医ピーター・スパルディング、もう一人は町の機械工ギアーズ・ガービンだ。スパルディングはガービンに、僕のコーヒーテーブルに足を置かないでくれと言い、このささいな事で二人は言い合いを始めてしまう。育ちがまるで違うこの二人は気が合わないようだ。口論が激化しようとしたその時、窓からマシンマンが帰ってきて、二人を止めた。マシンマンの足の調子が悪いのを見てガービンは修理をする。スパルディングは子供じみた喧嘩をしてしまったことを恥じるのだった。

 あるホテルでは、マシンマンを人類の敵と喧伝するブリックマン上院議員の講演会が行われていた。彼はこの主張で上院議員になったが、最近ではその主張も人気を失い、彼は苦境にあった。部下は上院議員にもっと一般的な政策について語るべきだと進言するが、ブリックマンは聞く耳持たない。

 所は変わってカナダ。政府機関デパートメントHでは、エージェントKという諜報員が報告をしていた。最近活動を始めたカナダのスーパーヒーローチーム、アルファ・フライトが、カナダに現れた超人ハルクと戦ったこと。その戦いの前にハルクはアメリカでマシンマンと戦い、マシンマンが重力をキャンセルしてハルクを飛ばしたが(THE INCREDIBLE HULK #237)、これは故意にカナダを狙ったのではと結論するエージェントK。彼は大臣と相談し、アルファ・フライトをマシンマンに向けて派遣することが決定する。超スピード能力を持つノーススターオーロラの双子ヒーロー、獣人サスカッチの3人は任務を受け、車でアメリカ合衆国へ向かう。

 マダム・メナスは対マシンマン用に音波砲を用意。さらに相手を追いつけるため、デイリー・ビューグル新聞を利用したり、表の顔サンセット・ベインとしてパーティーでブリックマン上院議員接触したりと活動を重ねていく。その頃アーロン・スタックは、デルマー保険で仕事中。エディーがバトミントンの試合で賭けをやろうぜと誘ってくるが、もちろんアーロンは興味を示さない。だがパメラに声をかけて奇妙な気持ちを抱く。

 ニューヨークのホテルに到着したアルファ・フライトの3人。ラングコウスキイ博士は他の二人に腕時計型探知機を渡す。これはマシンマンが発している特有の波長を感知するものだ。さらに彼らは、マシンマンが普段はアーロン・スタックと名乗っていることも調べており、電話帳でアーロンの住所を調べる。こうして万全の準備を調えた3人は行動を開始する。

 翌朝、アーロンのアパートで、スパルディングがデイリー・プラネット新聞社の朝刊を見て驚いていた。それをマシンマンに知らせるスパルディングだが、マシンマンはそれがマダム・メナスの陰謀であることを疑っていた。考えがあると言って、窓から出て行くマシンマン

 アパートの外ではラングコウスキイ博士が腕時計の反応を見てマシンマンを追う。マシンマンは再びマダム・メナスの基地へ出向き、腕を伸ばして中に置かれていた追跡球体デバイスを入手した。それを分析し、逆にマダム・メナスを探査しようとするマシンマン。建物の屋根の上にマシンマンを発見したラングコウスキイ博士は、獣人サスカッチに変身し、マシンマンが乗る建物を怪力で壊し、マシンマンは落下。マシンマンも手足を伸ばして反撃。両者の戦いが続く。

 その頃、カナダのエージェントKは、合衆国側からマシンマンを追いつめるような圧力がかかっていることを知り疑問に思う。しかしすでにサスカッチマシンマンの戦いは始まっているのだ。マシンマンは伸ばした両手からフィールドを展開してサスカッチを宙に浮かせ捕らえようとする。だがサスカッチは掴んだ地面を怪力で引き剥がしマシンマンの足場を壊して体勢を崩させることで脱出。なぜハルクをカナダへやったのだと言うサスカッチマシンマンは驚くが、相手の背後に腕を伸ばして首に巻き付け、サスカッチを海へ投げ込んだ。さらに、街灯に手を突っ込み反対の腕でサスカッチを掴み感電させた。だがマシンマンサスカッチを見殺しにせず海から引き上げ、助ける。そして、この戦いの原因となったマダム・メナスを止めるために行動を開始した。

 マシンマンはマダム・メナスの部下を倒し、敵の本部へ侵入した。何人ものマスクの男が現れ、マシンマンは戦う。一方エージェントKはアメリカ合衆国の政府施設に潜入し、カナダへ圧力をかけた証拠を探っていた。メナスの部下はヌンチャクを持ち出してマシンマンに迫るが、マシンマンは天井を崩したり手を伸ばして奇襲したりして相手を倒していく。ここでマダム・メナスは音波砲を発射を命じた。背後から音波をくらい、マシンマンの体の機能は停止してしまい、床に転がって身動きが取れない。

 だがそこで意外な助けが入った。アルファ・フライトのノーススターとオーロラは超スピードでマスクの男たちを倒していく。サスカッチは壁をぶち破って登場。マシンマンが悪ではないと知ったサスカッチは、仲間と共に助けに来たのだ。先ほどまで戦っていたサスカッチが味方してくれたことに驚くマシンマン。マダム・メナスも奴等を倒せとマイクで命じる。動けないマシンマンだが自分も戦うため、首だけを切り離して反重力で飛び、音波砲へ特攻した。爆発が起こり音波砲は潰れたが、マシンマンの顔の左半分がケロイドのように溶けてしまった!

 ボディに戻ったマシンマンは、父の作ってくれた大事な顔が壊れたことで狂乱状態となり、悪鬼のような勢いでマダム・メナスの部下たちを相手に暴れまくる。オーロラとノーススターは二人の力を合わせて強烈な光線をマシンマンに放って目をくらまし動きを止めようとするが、目以外に指にもフィンガー・センサーのあるマシンマンには目くらましは通じず、ノーススターが殴り倒されてしまう。サスカッチマシンマンに駆け寄るが、暴れ狂うマシンマンサスカッチをも殴り倒してしまった。とどめをさそうとするマシンマンは、オーロラの制止の声を聞きぎりぎりのところで自分を取り戻す。自分は何と言うことをしてしまったのか。自分はブリックマンの言うように脅威なのか。自分を恥じたマシンマンは、体をドリルのように高速回転させてその場から去っていった。起き上がったサスカッチらは、別行動のエージェントKが成功したかどうかと考える。

 そのエージェントKは、ついにカナダへの圧力はブリックマン上院議員マシンマンとの戦いにカナダを引っ張り出すため画策していた証拠文書を発見していた。アルファ・フライトはカナダへ帰還。マダム・メナスはマシンマンへの野望をあきらめない。エージェントKの得た情報が公開されたことでブリックマンは窮地に立たされるが、しかしこの男も自分の信念を曲げずに再び返り咲くぞと闘志を燃やす。ガービンとスパルディングはアパートで待つが、マシンマンは帰ってこない。彼は醜く変わった顔のまま、夜の街をさまよい歩く。マシンマンの明日はどっちだ!?

 

 マダム・メナスと久々登場のブリックマン上院議員の野望が同調し、カナダへ圧力がかかったことで、カナダ政府のスーパーヒーローチーム、アルファ・フライトとマシンマンの共演が実現。アルファ・フライトは'79年にUNCANNY X-MEN #120にて登場したばかりの新規ヒーローチームであり、この時期まだ独自タイトルが創刊される前だった。カナダ政府のヒーローとして、諜報員と連動して行動しているのが特徴的で面白い。

 次号#19は、MACHINE MAN誌ファーストシリーズの最終回となる。

 このコミックが収録された合本は

 https://www.amazon.co.jp/dp/0785195777/

で購入できるので、是非!