アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

昔のアメコミを紹介しています

MACHINE MAN #15

1980年 JUN

PROUDLY PRESENTED BY TOM DEFALCO : WRITER

STEVE DITKO : ARTIST

 

 マシンマンは胸のハッチを開いてメンテナンスを終え、人間の顔のマスクをかぶって今日も出社した。社内では変に生真面目な彼は浮いた存在になっていた。

 一方、代替資源センターでは事件が起ころうとしていた。女性研究員のボレッタ・トッド博士は水素エネルギーの研究で業績を上げていたが、しかし研究は行き詰まってもいた。博士は水素ガスに電磁エネルギーをチャージする実験を行う。だが実験は失敗し、暴走したエネルギーは研究室に噴き出し、ボレッタ博士は制御されない電磁エネルギーに襲われてしまった。

 デルマー保険で仕事をしていたアーロンは、同僚のパメラから社長が呼んでると言われる。ベンジャミン社長はアーロンに、代替資源センターの事故を伝え、現場に行って被害を査定し、出来るなら援助せよと言う。アーロンがセンターに到着すると、大火事が起きていた。物陰でマシンマンの姿になり、火事場へ飛び込む。中は人間には耐え難い熱になっており、二人が装置の下敷きになっていた。マシンマンは自分の足を取り外し、装置を持ち上げて自分の足をつっかえ棒にして二人を救った。足を接続しなおすマシンマンを見て、助けられた男は化け物扱いする。マシンマンは二人を抱えて建物から飛び出し助けるが、自分が理解できないものを憎み恐怖する人間に傷つくのだった。

 再び飛び立ち、建物の中を捜索するマシンマン。両手を別々の方向に伸ばし、建物の各部屋を捜索する。指のセンサーに異常を感じたマシンマンは壁をぶち抜き進むが、そこで彼が見たものは、ガス状の怪物だった。怪物は助けてと喋り、マシンマンは驚く。マシンマンのセンサーによると、怪物は電磁フィールドに包まれたイオン化した水素ガスで構成されていた。怪物は、自分は元は人間の女性だったが、事故によってこの体になってしまったと言い、助けられないのなら殺してと言いながら襲いかかってきた。狂ったように暴れ、ビームを撃ってくる彼女に対し、マシンマンはそばにあったコンピューターの断熱材でくるんで捕獲しようとする。だが相手はマシンマンの足をビームで撃った。床が崩れ、下の階に落下するマシンマン。怪物は外に出て暴れ、リポーターによりイオンという名を付けられた。マシンマンの足はひどく損傷していた。反重力装置により飛び立つが、バランスを失い、ついには墜落してしまう。人に当たるのを恐れたマシンマンは街外れの廃車置き場に落下した。

 この廃車置き場の主、オズワルド・F・ガービン、通称ギアーズ・ガービンは、突然落ちてきた男を助けようと駆け寄る。マシンマンはガービンに、修理する時間が必要なんだと言い、それまで自分を憎まないでほしいと頼む。ガービンは相手が機械の男なのに驚きつつも、手助けを申し出た。私は大きいおもちゃではないと断るマシンマンだが、意外にもガービンの腕は確かで、マシンマンの腕部ハッチを開いて配線をつなぎ、直してしまった。墜落時に砕けたマシンマンの膝を修理するには部品が足りなかったが、ガービンは車輪をひとつつないでとりあえず移動できるようにしてくれた。礼を言って、すぐさまイオンを追うマシンマン

 イオンとなってしまったボレッタ・トッド博士は、自分を殺すか治すかしてくれる相手を求めて、ファンタスティック・フォーの本部バクスタービルへ突入した。運悪くリードスーザンは外出中で、ベンジョニーしか残っていなかった。ザ・シングことベン・グリムは葉巻を吸いつつ風呂に入っていたが、侵入警報を開いてバスタオルを巻きあわててとび出す。ヒューマントーチことジョニー・ストームも飛んできて、二人は侵入者を捜しにいく。

 一輪車状態で走るマシンマンは、警察無線を傍受してバクスタービルの異変を知り、そこへ向かう。道路は渋滞のため、車の上を通って急ぐ。バクスタービルでは、イオンを発見したヒューマントーチがファイアーボールを投げつけていたが、イオンの体を素通りしてしまい通用しない。逆に電磁ブラストを撃ち込まれピンチにおちいるヒューマントーチ。そこへザ・シングが駆けつけ、近くにあった機械装置を持ち上げ投げつけようとする。しかしイオンは機械に磁力を浴びせ、シングは引き合った機械に押しつぶされてしまった。

 そこへマシンマンが到着。一輪車で走る変なロボットを見たヒューマントーチはどっから入ってきたと訊ね、窓からという答えを聞いて火炎を浴びせかける。有名スーパーヒーローに不審感を抱くマシンマン。ここでヒューマントーチと戦っている暇はない。マシンマンは右手の冷却装置を使って拳を凍らせてパンチを食らわせノックアウトした。イオンは、ファンタスティック・フォーも自分を助けられなかったと、外へ逃げていく。それを追おうとするマシンマンだが、機械の山をはねのけてザ・シングが復活し、立ちはだかる。マシンマンは伸ばした腕でシングの足をすくって倒し、外へ走り去った。

 やけになって街で暴れるイオン。彼女を発見したマシンマンは、街灯の電線を掴んでイオンに電気を撃ち込み、イオンを市場の肉売り場へ追い込んだ。自分を救ってくれるものなどないことに絶望したイオンはマシンマンを攻撃し、マシンマンは逃げて冷凍室にとび込む。追ってきたイオンはマシンマンを潰そうとし、お前は私よりも奇怪な存在だと罵倒するが、そこで彼女に異変が生じた。ガス状だった彼女の体は、冷凍室の低温により元の人間の姿に戻ったのだった。マシンマンはそれを予想し彼女をここに誘い込んだのだ。ボレッタ博士をKOし、いつかあなたの変異は治されるかもしれない、しかし私は…と言い残して、マシンマンは去っていった。この肉市場にはあとでファンタスティック・フォーの4人がやってきて、ボレッタ博士の治療法が発見されるまで彼女を保護することにして、事態を収めた。マシンマンは、ギアーズ・ガービンが待つ廃車置き場へ戻っていくのだった。

 

 この号からライターがトム・デファルコに代わった。デファルコはこの時期マーベルでのキャリアをスタートさせて間もない頃だったが、このあとAMAZING SPIDER-MANやTHOR、FANTASTIC FOURのライターを歴任し、編集長にもなり、'80年代後半から'90年代前半のマーベルをリードしていく。この話でも、新キャラクターのギアーズ・ガービンの登場や一輪車で走るヘンテコマシンマンファンタスティック・フォーとの共演など盛り沢山な内容で楽しませてくれる。

 このコミックが収録された合本は

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MACHINE MAN #14

1980年 APR

MARV WOLFMAN : writer/editor

STEVE DITKO : artist

 

 テレビでは、スクールバスの事故をマシンマンが救ったニュースが報じられていた。それを見たブリックマン上院議員は癇癪を起こす。マシンマンが人類の敵だというアピールで大統領の座を狙う彼にとって、マシンマンの評判が良くなるのはまずい事態なのだ。ブリックマンは二人の部下フレッドアーチーに対策を命じる。

 二人はハイラム・R・ゴールドスミス博士のところを訊ねた。博士はちょうど、人体の分子密度を上げる実験を行おうとしていた。実験台となるのは、バリー・ウィザースプーンという失業者だった。妻と子供を部屋から出し、バリーは実験に挑む。エネルギーがバリーの肉体に注ぎ込まれ、彼の体の密度が高まりそれと同時に心が消滅していき、エネルギーは暴走し、部屋は大爆発を起こした。だがバリーは無事で、素手で壁をまるで紙のように突き破るほどの超分子密度の体となっていた。フレッドとアーチーの二人は、これこそブリックマンの望んだマシンマンを倒す人材だと喜び、バリーに近づく。

 その頃マシンマンピーターと共に取材を受け、鉄塔を持ち上げるほどの力の強さを記者たちに見せていた。メイソンという女性記者は、マシンマンの力は脅威となると断じ、また、マシンマンのようなロボットが増えれば仕事を失う者が増えると批判する。まだマシンマンを恐れる者が多いのが実情だった。

 記者会見後、マシンマンアーロン・スタックの姿になり職場へ戻った。アーロンが気になり誘惑しようとする女性社員マギーは、アーロンにとびつきキスするが、アーロンは彼女を持ち上げて棚の上にあげてしまい、キスはあなたが必要な次の機会にするべきだ、たとえばエディーにと言って去る。侮辱されたと思ったマギーは、アーロンと徹底抗戦する決意を固めるのだった。

 ウォール街の金庫に、壁を破って侵入する人物がいた。警備員が銃を向けてみると、それはマシンマンだ! 警備員たちは銃を撃ち込むがマシンマンには通じず、殴り倒され金を奪われる。それは、バリーが変装したニセマシンマンだった。心を失ったように従うバリーを使うフレッドとアーチーは、マシンマンの評判を落とすのと同時に、金を手に入れられると有頂天になる。

 ピーターはマシンマンに電話し、ニセマシンマンが現れたことを知らせる。ピーターの家には警官がやって来て、ピーターは彼らに逮捕されてしまった。それを見たマシンマンは無実を証明しようと考える。この事件とは別にアーロンを見張っていたマギーの姿を見つけるが、マシンマンは彼女に見つからないよう抜けだし、偽者を探し始めた。

 バリー・ウィザースプーンが変装したニセマシンマンは貴金属店を襲い時計などを奪った。奇妙な短波を追ったマシンマンは、偽者が壁の穴から出てきたところを発見し、格闘となる。マシンマンは送電線を掴み相手に高圧電流を流すが全く通じない。その時おかしなことが起こった。マシンマンの体が横転したのだ。彼の体内で平衡感覚をつかさどるジャイロが、ニセマシンマンの高密度の体の影響で狂わされているのだ。偽者は去り、倒れていたマシンマンのところへ警官が駆けつけ、金品を奪った犯人扱いされてしまう。マシンマンは上空へ脱出する他なかった。

 この事件が報道され、ブリックマンはそれみたことかとマシンマン批判を再開する。一方マシンマンは秘かに夜の街を移動していた。またもアーロンを見張るマギーを見かけるがかまわず、ピーターが入れられた牢の窓に取り付き彼と話をする。だが階下にはメイソン記者がおり、写真を撮られてしまった。

 翌日、アーロンはマシンマンが牢に侵入しようとしたというデイリー・ビューグル新聞を見て驚く。一計を案じた彼は、マシンマンの姿となって警官の前に現れ、自分から捕らえられた。一方、フレッドとアーチーはまたもニセマシンマンを使って金庫を襲う。その姿が写真に撮られ、牢にいた本物のマシンマンの無実が証明された。あとは偽者を止めるだけだ。

 その頃、ブレッドとアーチーは仲間割れをしていた。ニセマシンマンの威力をさらなる金儲けに使おうとするフレッドは、慎重な意見のアーチーを邪魔者扱いし、マイクでニセマシンマンに命令してアーチーを追わせる。アーチーはマシンマンのところへ逃げ込んできたが、同時にニセマシンマンも壁を破って登場。再び戦いとなる。だがニセマシンマンにジャイロを狂わされてしまうマシンマンは普段の能力を発揮できず、伸びた足によるキックもまったく通じず、持ち上げられて共に窓から外へ落下していく。反重力装置で舞い上がり難を逃れたマシンマンは偽者を追い、トラックの荷台に入っていくのを発見。手足を伸ばしてトラックを横転させると、運転席からフレッドが現れニセマシンマンマシンマンを破壊せよと命じた。またも偽者に圧倒されるマシンマンであったが、手を伸ばしてフレッドが持っていたマイクを奪った。命令が伝えられなければ偽者は動かず、マシンマンはフレッドを捕らえる。フレッドはすべてがブリックマンの指示だったと白状するのだった。

 だがブリックマンはこの事実を否定し、さらなる反マシンマンキャンペーンを張るのだった。ニセマシンマンことバリーは、ブロードハースト博士の手で次元効果が反転され、再び元の体に戻ることができた。幸せそうに妻子と抱き合うバリーを、マシンマンは見守るのだった。

 

 ヒーローものに付きものである、ニセモノ話。ニセマシンマンはロボットではなく、体を高密度に変えられた人間の変装であり、科学実験の影響で超人化してしまうのはマーベルのいつもののパターンだ。この偽者はマシンマンのジャイロを狂わすため、本物を圧倒するのが面白い。それにしても、あらゆる事態にめげずに反マシンマン運動に突っ走るブリックマン上院議員がもの凄いです。

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MACHINE MAN #13

1980年 FEB

MARV WOLFMAN : SCRIPT/EDITS

STEVE DITKO : ART

 

 今マシンマンはエレベーターシャフトの内部に閉じ込められていた。上から彼を押しつぶすようにエレベーターが迫る。マシンマンは手足を伸ばしてエレベーターの降下を食い止めようとするが、彼の手足の伸縮力をもってしても止まらない。その姿をモニターしているのは、巨大飛行船ザナドゥの主、クビライ・カーンだ。この太った男は、マシンマンの完璧な能力に興味を持ち、マシンマンの性能をテストするためにエレベーター落下の罠を仕組んだのだ。マシンマンはエレベーターの発電機に取り付き、電力を自分に通して磁力として放ち、エレベーターを押し返すことに成功した。カーンはこの結果に満足し、マシンマンの体を手に入れることを決意する。

 クビライ・カーンはそのあと、巨大な自分の石像を作らせていた職人を、床を開いて飛行船から落として殺す。彼は冷酷な独裁者なのだ。モニターを見ると、マシンマンはカーンの手下どもを、腕を伸ばして撃退していた。満足したカーンは、マシンマンの高性能な体を、自分の頭脳を入れる器にしようと行動を開始する。

 時は移って、ここはデルマー保険。この会社では、人間アーロン・スタックとしてマシンマンが仕事を続けていた。真面目に仕事するアーロンに、エドワード・ホワイトがマギーとの仲を疑ってちょっかいを出してくる。マギー・ジョーンズもやってきて二人は言い合いを始め、アーロンは仕事だから別のところでやってくれと素っ気なく言う。そのあしらい方に二人は気を悪くして立ち去った。そこへ社長のベンジャミンがやってきて、アーロンの仕事ぶりを褒めた。社内はアーロンの噂で持ちきりだが、奇妙な感じも受けているという。彼らとも交流しようと思っていると言うアーロン。

 社長室を出たアーロンはマギーに誘われパーティーに出た。エドワードはアーロンにグラスを渡し、アーロンは勧められるままに飲む。それは強い酒で、エディーは悪戯のつもりで飲ませたのだが、初めて体内に摂取したアルコールはマシンマンの体に影響し、アーロンはふらついたあと倒れてしまう。

 気が付くとアーロンはピーター・スパルディングの家のベッドに寝ていた。ピーターに、きみは19時間眠っていたと聞いて驚くアーロン。さらにアーロンは機能の不調を訴え、ピーターはそれが二日酔いだよと答える。その時、ザナドゥではカーンの指示で特殊音波が発せられた。それを感知したアーロンは頭を押さえて苦しむ。原因を調べるためにアーロンはマシンマンの姿となり、空に飛び立った。

 工事現場の上を通過しようとした時、カーンのリモートコントロールによりビル破壊用鉄球がマシンマンを襲い、何度も激突する。カーンの声が響き、マシンマンの性能について科学雑誌を調査し、音波攻撃に弱いことも知っているぞと明かした。マシンマンは鉄球のワイヤーを掴んで重機を潰す。だが周囲にあった何台もの廃車が突然空を飛び、ライトからビームを発射し攻撃してきた。マシンマンは鉄球を振るい、ワイヤーで車をからめとって撃破する。

 罠は続き、マシンマンは巨大な迷路の中に閉じ込められた。さらに小型の飛行機械がレーザービームを撃って攻撃してくる。それを避けつつマシンマンは脱出の方法を探る。足を伸ばして迷路の天井を抜こうとしてみたが、天井は分厚い。ならばとマシンマンは体を回転させてドリルのように地面を掘り、脱出した。マシンマンに呼びかけるカーンの声は、マシンマンの性能を賞賛した。マシンマンの前に、巨大飛行船ザナドゥが姿を現す。

 内部に突入したマシンマンを、カーンの部下トングが待ち受けていた。このカーンの忠実な部下は、カーンにより肉体を強化され、また神経を切断されて痛みを感じない体になっているのだ。トングはマシンマンと格闘戦を繰り広げ、マシンマンは頭部を強打され意識を失ってしまう。トングは気絶したマシンマンの体を運んだ。カーンはマシンマンの体に意識を移し、永遠に生きようとしているのだ。マシンマンの体はカーンの太った体と共にベッドに寝かされ、頭脳置換機にかけられた。装置が作動し、マシンマンの体が起き上がる。成功を祝うトングは、あの機械の意識は古い体の中にあるのですねと訊ねる。だが、元のカーンの体がトングに呼びかけるのを聞き、精神が入れ替わっていない事が判った。トングは再びマシンマンを取り押さえようと格闘するが、さきほどとは打って変わってマシンマンはトングを圧倒する。実はマシンマンは自分を狙う者の目的を知るためにわざと倒されたのだった。腕を伸ばしてトングを投げ飛ばすマシンマン。太って病にも冒されていたカーンは元の体のまま、一体どうやったのだと訊ねる。マシンマンは装置の電極を反転させていたことを明かし、壁をぶち抜いてその場から去っていった。飛行船の中で装置がスパークし、大爆発を起こし、クビライ・カーンは最後を迎えるのだった。

 

 #11のラストから続く、クビライ・カーンの決着編。でっぷりと太ったこの東洋人の王者は、マシンマンの機械の体を自分の新たなボディにしようというとんでもない野望を抱き、周到な罠を巡らせてくるのが楽しい。敵の部下の東洋人の格闘家トングとの戦いも、マシンマンが倒された!という驚きがあるが、最後は因果応報の結末を迎えるのだ。

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MACHINE MAN #12

1979年 DEC

MARV WOLFMAN : SCRIPTER/EDITOR

STEVE DITKO : ARTIST

 

 夜のニューヨークの路地裏。マシンマンは建物の上から眼下を見ていたが、暴漢が女性に襲いかかり財布を奪って逃げていくのが見えた。手足を伸ばしてクズカゴを暴漢の頭からかぶせて捕らえ、財布を女性に返す。だが財布を受け取った女性はマシンマンを恐れる。私はあなたを助けたのになぜだと問うマシンマンに女性は、だけどあなたは人間じゃない、怪物だわと言い捨てて逃げていってしまう。その言葉にショックを受けるマシンマン

 と、すぐ近くで車が当て逃げをした。車を追ったマシンマンは手を伸ばしてボンネットを掴み、後輪を踏みつぶして停車させた。座席からとび出し犯人が逃げていくが、マシンマンはマンホールを手に取り、磁力を帯びさせ、回転をつけて投げた。マンホールは犯人のベルトのバックルに吸い付き、ブーメランのように大きなカーブを描いてマシンマンのところに戻ってきた。犯人は、自分が当て逃げした男はギャングから盗みを働き、自分が殺し屋として送り込まれたと語る。どちらも悪人だったのだ。

 また別の場所では男が銃撃されて倒れ、その息子が父に駆け寄っており、撃った男が逃走しようとしていた。そこへ登場したマシンマンは、きみの父親はまだ生きている、戻ってから助けるよと言い、犯人を追う。少年は、犯人が金を奪うために父を撃ったと言った。紙切れが命よりも価値があると考える人類がわからなくなるマシンマン。フェンスに電流を流しつつ引っこ抜いて犯人にぶつけて倒す。だが、今夜出会った人間たちによって人類への評価が激減したマシンマンは感情を爆発させ、空中に浮いて雷のような高圧電流を周囲へ放出した。

 放射したエネルギーは、マシンマンが考えていなかった効果を及ぼす。エネルギーは近くの建物に飛び、中で実験中だった男が使っていたビーカーやフラスコを割って化学薬品を飛び散らせ何らかの変化をもたらし、さらに中にいた5人の人たちに伝わり、ビルは崩れ彼らは倒れた。死んだかに見えたこの5人だが、彼らに奇妙な変化が起こっていた。

 そうとは知らないマシンマンは、先ほどの父を撃たれた子供のところへ戻った。子供は父を助けるために手を貸してくれないのを言うが、人間不信になっているマシンマンは、人類は私が助ける価値はない、何故手を貸さねばならない?と答えてしまう。子供は父を助けるために必死でマシンマンにお願いをする。マシンマンは、自分は悪人がいるからといって善人を見捨てることはできないと考え直し、手から磁力を放って父親の体から銃弾を取り出した。その時、倒れていた犯人が起き上がった。マシンマンは手を伸ばして犯人を捕らえ、ばらばらにしてやろうかと脅す。男は必死で命乞いをし、マシンマンは男に迫るが、その時、上空からビームが放たれ、「止めるのだ、父よ」と声がかかった。

 見上げると、上空に5人の輝く人物がいた。驚くマシンマン。5人はマシンマンに、命は神聖だ、抹殺すべからずだ、暴力が暴力を生んではならないと言う。自分のセンサーをも圧倒する謎の相手に、きみたちは誰だと問うマシンマン。5人は、アベル・スタックがあなたの父親であるように、あなたは我々の父だと答える。

 マシンマンはブラストを放つが、火線は宙に浮く人物に届く前に曲げられてしまった。彼らはマシンマンが放った電気の影響で人類より発展した存在となったことを明かす。マシンマンのパワーすらまったく通じない超存在となった彼らは、生命を殺すことを否定した。マシンマンは彼らを攻撃しつつ、自分はこれまで人間を倒すだけではなく見守り続けた、だが彼らは破壊を行う、愛を持たない者がいたならば、なぜ死を与えてはいけないのかと疑問を投げかける。マシンマンが伸ばした手も彼らを素通りしてしまいまったく通じない。彼らは、あなたは論理から生まれた者なのに、この世界に役立ち楽園へと向かうより人を殺そうとするのは理屈に合わないと諭す。さらに、宙に浮き飛びかかってきたマシンマンの頭をビームバリアでおおって動きを封じ、あなたは力を無駄に使っており、あなたの父の教えを忘れていると言う。マシンマンは、私を捕らえる権利はないと反論。だが5人は、あなたが我々を超存在にし、人類に手を貸す道をもたらしたと語った。マシンマンは、人類は不快な行動を取り、世界を破壊していると指摘して、その愚行にうんざりするのになぜ彼らに手を貸さねばならないのかと問う。5人は人類には希望があると答え、マシンマンが人類の進歩を妨げるのは許されないと言い、マシンマンの体を強力な力場で包んでしまった。

 動きが取れなくなったマシンマンを前にし彼らは、マシンマンは破壊されるべきであるか、その処遇について裁判を行う。一人はマシンマンを解体すべきだと主張し、別の者はアーロンは生き残るべきだと語る。マシンマンは、自分は犯罪を犯したわけではないと主張するが、超越者たちの判決は下ろうとしていた。

 その時、地上にいた少年から、待って、彼は父さんを助けてくれた、彼はいい人だよと声がかかった。これまで人間不信におちいっていたマシンマンは少年に、私はあなたと違う怪物ではないかと訊ねるが、少年はマシンマンが人々に手を貸そうとしていたと言い、怪物じゃないよと否定する。5人の超越者たちはマシンマンを開放した。マシンマンも人間に絶望していた考えを改めた。安心した5人は、あなたは真実を学んだと言い、地球にはもう居るべきではないと、星の世界へと旅立っていった。

 

 マシンマンに善を説く超越者が突然登場するという、ヒーローコミックとしては奇妙な内容だが、スティーブ・ディッコ独特の道徳観がもろに出たストーリーが興味深い一編になっている。なかなかこんなの読めないという点で読み応えありだ。

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MACHINEMAN #11

1979年 OCT

MARV WOLFMAN : SCRIPT/EDITS

STEVE DITKO : ART

 

 夜のニューヨークの空に、背中に背負った巨大なバルーン状の装備から空気を噴出して飛ぶ怪人バイナリー・バグの姿があった。怪人が飛んでいく下の建物の屋上には、反マシンマン・キャンペーンの看板が見える。バイナリー・バグは、バックパックに付いていた巨大なバルーンメカの着陸脚を出して豪華な高層マンションの屋上に着地し、バルーンメカと分離して指から電流を放ちビルの扉を焼き切って中へと侵入していく。マンションのガードマンは37階へ侵入者があったことをモニターで発見し駆けつけた。大金持ちバイロン・J・ベンジャミンの部屋へ侵入したバイナリー・バグは、金庫に配線をつなぎ、暗証番号を解析する。そこへガードマンが突入。だが怪人は指から煙幕を発射。さらに指から電撃を発射しガードマンの拳銃を撃ち落とした。

 ちょうどその時、ピーター・スパルディングマシンマンことアーロン・スタックをベンジャミンに引き合わせるため来訪していた。マシンマンは37階での異変を知り、反重力装置で空を飛び、急行する。部屋に突入したマシンマンは手を伸ばして侵入者にパンチを放つがそれははずれた。手足を伸ばして怪人を捕らえようとするが、敵はマシンマンを知っていて、触手のようなコードのついた機械を投げつけられる。それはマシンマンの体に巻き付いて高圧電流を流し、彼は行動不能に。続いてピーターが駆けつけたがバイナリー・バグの電撃に打たれてしまう。屋上へ戻ったバイナリー・バグはバルーンメカを装着し飛び去っていった。

 マシンマンは電撃機械をピーターに取ってもらって復活。燃え尽きたトースターになるところだったよとお礼を言うアーロン。そこへ、部屋の主であるベンジャミン氏がやって来た。ピーターはベンジャミン氏とアーロンを引き合わせる。強盗が入ったことを説明したあと、二人はベンジャミン氏に、アーロンが人間と共に生活していくため人間の思考を学ぶ必要があり、そのために仕事をしたいと望んでいると伝える。ベンジャミン氏は快諾してくれた。

 その頃、地球がロボットに破壊されるという反マシンマン・キャンペーンにより政界での立場を確立していくブリックマンが、部下に自説を強弁していた。これを足がかりにホワイトハウスへ進出し、行く行くは大統領になると吼えるブリックマンだった。

 マシンマンはピーターと共に服を買いにいき、カツラをつけ赤い目はサングラスで隠して、人間そっくりの姿になった。翌月曜日、ベンジャミン氏の紹介でアーロンはデルマー保険という会社の社員として机を与えられた。ベンジャミン氏はアーロンに副社長のパトリック・ギルロイを紹介したあと、計算コード伝達の仕事を任せた。ギルロイに、ダイヤモンドなどへ多額の保険金をかけているアンダーソン氏の財産の警備に問題ないか確認するベンジャミン。保険の金額と内容をチェックしながら、こういう浪費は人間特有だなあと感想を口にするアーロン。

 その頃、一人の男がバイナリー・バグのマスクをつけて自分の基地のコンピューターを操作していた。デルマー保険に何か恨みを持つこの男は、自分に対する支払いをさせるべく行動を開始した。バイナリー・バグはバルーンメカを装着してデルマー保険のビルへ飛来しコンピュータールームに侵入。配線をつないで情報を引き出す。その頃アーロンは仕事帰りにピーターと街へ出ていた。人間が娯楽に無駄に時間を使う理由がわからないというアーロンに、「勉強ばかりで遊ばない子は面白みに欠ける」と言うよと返すピーター。雑談をしながらアーロンは、空に奇妙な物体が飛んでいくのを目にする。

 その物体はバイナリー・バグであった。この怪人はアンダーソン氏の屋敷に飛来し、絵画やダイヤモンドなど、デルマー保険に高額の保険金をかけている品を強奪していった。

 翌日デルマー保険では、この事件が大問題になっていた。アーロンは、強盗には、金品を奪うのと同時にデルマー保険を失墜させるという第2の目的がある、誰かから恨みを持たれていますと指摘。彼の冷静な言動に、女性社員のマギー・ジョーンズは興味を持つ。ベンジャミン氏はアーロンに、他の仕事は中断して強盗を見つけるよう命じた。マギーはアーロンに声をかけるが、アーロンは命じられた仕事をこなすためそっけなくあしらい、自分の魅力が通じなかったことに彼女は怒る。それを見たエディー・ホワイトというお調子者の社員がアーロンの肩を叩くが、体が硬いのに、チェーンメイルを着ているのかと驚き、また、アーロンの奇妙な受け答えに絶句する。

 別の建物では、一人の男が祝杯を上げていた。その男、ジェセフ・ランボーは、デルマー保険の社員だったが、データの不正使用が発覚して解雇されたのを逆恨みして、社主のベンジャミンに復讐するため、犯罪装備を売る「組み立て屋」から装備を入手して怪人バイナリー・バグとなったのだ。

 マシンマンもコンピューターから情報を得てジョセフ・ランボーが犯人だと推理し、カルビン・C・ブリヤーという男を訪ねてランボーの住所を調べた。ランボーの家へ潜入したマシンマンは、机に残された文書から、相手の次の狙いが、デルマーの高額顧客であるザナドゥのカーンであることを読み取る。

 ザナドゥとはクビライ・カーンの詩に詠われた伝説の都市であったが、現代のザナドゥは巨大飛行船であった。そこの主であるカーンはその中で踊り子を舞わせ食事をしていた。部下のギアネリーはカーンに不満をぶつけているところだったが、そこにバイナリー・バグが登場。ギアネリーは銃を抜くが、バイナリー・バグの電撃に撃たれる。バグはカーンが保険をかけた金品を要求。ここへ侵入する前に見張りは片付けたし、飛行船を吹き飛ばすにはこのスーツの電力で十分だと脅すが、そこへマシンマンの足が伸びて足払いが命中。またお前かと驚き煙幕を放つバイナリー・バグ。マシンマンは手足を伸ばしてバグを捕らえようとする。バグは再び触手メカを投げつけてきた。その対策はしてきたと言うマシンマンだったが、今度のメカは音波ブラスターを発し、マシンマンはひるむ。マシンマンを一撃したバイナリー・バグはまた来るぞとカーンに言い残し、飛行船から脱出していった。

 ランボーを追うマシンマン。バイナリー・バグは背中の巨大バグ・ポッドからミサイルを発射してきた。マシンマンはそれを避け、前を見ろランボーと警告するが、攻撃に夢中なバイナリー・バグは聞く耳持たず、鉄塔に激突し爆発炎上して死亡してしまう。マシンマンはなぜ人間は命を浪費するのかと嘆くのだった。一方、マシンマンに救われたカーンは、マシンマンを自分のものにしたいと望むのだった。

 

 カービー後のMACHINE MAN2回目だが、前回の#10ではWRITER/EDITORという表記だったマーヴ・ウルフマンが今回はSCRIPT/EDITSになっている。どちらかと言えばスティーブ・ディッコが物語を作っているのかもしれない。

 スティーブ・ディッコという漫画家は、とても単純なキャラクターを創作することもある一方、逆にハイセンスなキャラクター造型をみせてくれる事があるのだが、今回の敵バイナリー・バグは後者の好例だと思う。バックパックに接続される巨大バルーンのようなバグ・ポッドは、複数の噴射口から空気を噴出して大空を飛び、ミサイルも備え、三脚で着陸するスーパーメカ。バイナリー・バグはポッドから伸びた二本の操縦桿で飛行を操作する。飛行時にバグの頭部に大きな角のようなパーツが付くが、これはマスクとポッドを接続するためにポッドから伸びているフレームで、ポッドから離れる時には外れる仕掛けになっている。ぱっと見は古めかしいが、例えばこれが立体になったところや、現在のデザインで描き直したところを想像してみると、めちゃくちゃ格好よくて、ディッコの非凡さがうかがえる。名前の「バイナリー・バグ」も、人間とポッドの二つの合体キャラという意味と、二進法のコンピューターデータを喰う虫という、二つの意味が掛けてあって巧い。こんな素晴らしい悪役が最後には死亡してしまうのが残念で、普通はこのキャラクターを次に使おうと生存させるものだが、悪人はすべからくその罪のため死去するというディッコ独特の道徳観がうかがえるところだ。

 マシンマンの方も、これまでは逃亡者だったのが、人間生活へ馴染むために保険会社に入社するという新展開を迎えていて、続きが気になるところだ。

 このコミックが収録された合本は

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MACHINE MAN #10

1979年 AUG

MARV WOLFMAN : WRITER/EDITOR

STEVE DITKO : ARTIST

 

 倒れたマシンマンは担架でブロードハースト博士の研究所に運び込まれた。マシンマンは危険な状態だった。博士はマシンマンの頭部を開いて内部を診断し、彼のプログラムが自己破壊を起こしたことが判明する。ピーター・スパルディングは友人としてマシンマンの身を案じる。X-51製作者であるブロードハースト博士はマシンマンの各部を修理しながら、これまでの彼について回想する。X-51をあずけたアベル・スタックは、このロボットを息子アーロンとして育てたのだった。

 ブリードハースト博士が計画主任として創られたXモデルと呼ばれるロボットたちは、人間のように思考するロボットとして製作されたが、それ故自己のアイデンティティに悩み暴走するという欠点を抱えていた。X-35は大暴走し警備をしていた軍と交戦したうえ破壊された。ブロードハースト博士は開発を中止しXモデルの自爆装置を起動する。だがアベル・スタックはX-51の自爆装置を取り除き、彼に人間の顔のマスクを与え、自分の姿を記憶させたあと送り出し、自分はアーロンの逃亡を成功させるために犠牲となり自爆装置の爆発で死去したのだった。

 語り終える頃には、博士の修理は終わっていた。ピーターは、マシンマンの目が以前の特徴的な大きい目ではなく人間のような小ささに変わっているのを見る。博士はマシンマンを彼の望み通り、より人間らしく見えるように改造したのだ。意識を取り戻し起き上がったアーロンは、自分が変わっていることに驚いた。あなたを修理した、その時に改変した部分もあると説明する博士。それを聞いて、彼を勝手に改変したのかとピーターは怒る。博士は、きみは試作モデルで、テスト装置のために負荷がかかっていたと言い、今回の改良点を含めたマシンマンの能力の図解を示した。

 自分が改造されたと知ったマシンマンは、博士が止めるのも聞かず、一人になりたいからと窓から出ていった。手足を伸ばして移動し、ヴァスコ山に登り、考え込むマシンマン。ブロードハースト博士は自分のプログラムを勝手に変更した。博士は私がなぜそのことに神経質になっているのか理解できないようだ。だが、普通の人間は、他人によっていじり回されることなどない。他人に勝手に思考や体を改変されるのならば、自分とは何なのか?

 深い悩みに落ち込んだマシンマンの目から映像が放たれ、岩壁に映し出された。それは父であるアベル・スタックであり、父はマシンマンに語りかける。この映像は、マシンマンの回路が改変された時に発動するよう以前から父がプログラムしていたものなのだ。父は、Xモデルのロボットには、政府に不都合な行動に抵抗する誤作動安全装置が組み込まれていると言う。そのため自立行動との矛盾からオーバーロード・キャパシティにおちいることは予想されたが、おまえは信頼するに足る友人と出会うだろうから、それについては心配していないと言う父。おまえはただの歩く機械ではない、おまえは考え、人を愛せる創造物だ。おまえがこの映像を見ているということは、信頼できる友人に救われて再プログラムされたという証拠だ。おまえは人間だと励ます父は、別れの言葉を言い、消えていった。父の心のこもった言葉に、アーロン・スタックは人間なんだと立ち直った。

 その頃、ニューヨークでは、ブリックマン上院議員クラッグ大佐を裏切り者と罵倒していた。歩くガラクタコンピューターに洗脳されやがって、おまえはマシンマンの存在そのものが人類に対する脅威であることが判らないのかとわめき立てるブリックマン。クラッグ大佐は、彼があなたの政治的野心の脅威である事は理解していますがねと答え、自分はロボットどもを止めるために多くの部下を失ったが、X-51と話して彼が他とは違ってほとんど人間と言えることを知ったと反論する。あの殺人ロボットに何をされたんだと言うブリックマンだが、そこへスパルディングとブロードハーストがヴァスコ山へ向かうとの情報が入った。ブリックマンはヴァスコ山にいるマシンマンを破壊すべくジェット機で出発し、大佐も上院議員の暴走を抑えるために同行する。

 ヴァスコ山にいたマシンマンはロボットと人間の狭間で揺れる自己に整理をつけようとしていたが、ジェット機が迫ってくるのを発見。自分を邪魔だと考えるブリックマンの差し金だと見抜いたが、至近で爆発したミサイルにより体勢を崩し、続く2発目を火炎放射で迎撃しようとするも、その機能はブロードハースト博士の改造で除去されていて失敗、直撃をくらってしまう。

 だがマシンマンは左腕を伸ばし、飛んでいるジェット機のキャノピーを取り外す。マシンマンは自分の腕の強度が改良されていることを知った。パイロットは機から脱出し落下していく。マシンマンは腕を伸ばしてパイロットを捕まえて崖の上に降ろし、誰に命令されたと質問をしようとしたが、パイロットに音波銃で攻撃され、崖から落下する。ブリックマンは崖下に倒れているマシンマンに駆け寄り、奴は死んだ、俺は勝ったぞ!と叫ぶ。そのすぐ後ろには同行したクラッグ大佐、さらに向こうからマシンマンを追ってきたピーターとブロードハーストが駆けつけてきた。

 と、そこで崖崩れが起こり、落石で全員が生き埋めになってしまう。誰も怪我はしていなかったが、外へ出る隙間などない。ブリックマンはこの事故をマシンマンの仕業と決めつけ、機械のせいで我々は全滅するんだとわめき立てる。ブロードハースト博士はマシンマンを回復させた。マシンマンは自分を罵倒する上院議員に反論しながら脱出の手段を探る。マシンマンのハンドセンサーは、周囲が石炭であることを探知した。マシンマンは腕の温度コントロール装置を使い、岩盤を冷却したあと加熱し、岩を崩れやすくしていく。だが周囲にガスが発生し始めた。マシンマンは座って岩盤に足を付け、足を伸ばす力で穴を開けようとする。自分たちを救おうと努力するマシンマンを目の当たりにしてすら、彼を責める上院議員の言葉は止まらない。それに反論するピーターやクラッグ大佐だったが、ガスにやられ喋っていられなくなってきた。間一髪穴が開き、マシンマンは手足を伸ばしてクラッグ、ブロードハースト、ピーターの3人を崖上に避難させた。

 崖下に戻ったマシンマンはブリックマン上院議員と対峙する。私がもしあなたが言うような機械にすぎなかったら、あなたのことなどに時間を浪費しないだろうと言いながら、手を差し伸べるマシンマン。しかしブリックマンはあくまでマシンマンの助けを拒み、ハシゴが降ろされるのを待つと言って逃げだそうとする。仕方なくマシンマンは腕を伸ばして上院議員の体を捕らえ崖上に差し上げた。助けられたことを気にもせずブリックマンは、この事故は仕組まれたものだとか、こいつは人類に敵対するとか叫び、わたしはこいつを破壊すると言い続ける。マシンマンの心もこの男には通じなかったのだ。

 

 カービーが去ったあと再開したMACHINE MANの第1回目。ライター兼エディターは、マーベルで編集長の経験もありTOMB OF DRACULAなどのライターを勤めて高い評価を得ていたマーヴ・ウルフマン。アーティストはスパイダーマンドクター・ストレンジで有名なスティーブ・ディッコという強力布陣である。

 マシンマンは設計製作者であるブロードハースト博士が再登場するのをはじめ、これまでのマシンマンの関連キャラが登場してストーリーをつないでいくのが嬉しい。マシンマンの目が、カービーが描いた大きくて波打つ線が入った独特のものから、小さく赤い普通の目に変えられたが、これはディッコの希望だろうか。これ以降のマシンマンはこの時の改変に準じた姿で登場していく。カービー版ではあまり出番のなかったブリックマンは、実に活き活きとした嫌な奴に描かれているのがディッコらしくて、マシンマンに助けられようが何しようが絶対に心を入れ替えないというキャラの立ちかたをみせてくれる。マシンマンのメカニズムも改良が加えられたという設定になり、話も生みの親カービーを離れて育ての親たちによって新たなスタートを切ったのが伝わってくる一編となっている。

 このコミックが収録された合本は

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THE INCREDIBLE HULK #237

1979年 JUL

ROGER STERN & SAL BUSCEMA & JACK ABEL : PRODUCTION

 

 ガス爆発により町には火災が広がっていた。コーポレーションミスター・カーチス・ジャクソンは郊外のあたりで立ちのぼる黒煙をビルから見て、ハルクマシンマンの両方を始末できたことを喜ぶ。だが、爆発の上空には、マシンマンがハルクを抱えて浮かんでいた。そのままハルクを山の方に運ぶ。

 マシンマンはハルクの頭に手を当て、ハルクの記憶を読み取る。マシンマントリッシュをさらう画像が見えた。コーポレーションの手下が自分に化けてハルクを騙したことを、マシンマンは知る。さらに記憶を探ったマシンマンは、ハルクのこれまでの経験を見た。ガンマ線を浴びてハルクになったこと、軍から狙われ続けたこと、そして、愛する者を失ってきたことを。マシンマンはハルクと自分に多くの共通点があることを知った。

 その時、先ほどジャクソンにつながっていた無線信号を再びキャッチする。ジャクソンはトランシーバーを置きっぱなしにしていて、それを受信できたのだ。電波をたどり、目を望遠鏡のように伸ばして、街にあるビルの屋上にジャクソンとトリッシュの姿を発見。マシンマンは手の端子から、ハルクの脳にその画像を送った。とび起きたハルクはそのビルへ向かおうとし、マシンマンはハルクと話し合おうとして止めるが、ハルクはマシンマンを殴り飛ばしビルへ跳んでいってしまった。マシンマンの体内回路はこれまでの戦いでショートしている部分がでていたが、時間がないと無理をおして、反重力装置によって飛び立つ。マシンマンは耳の部分を展開してマイクを出し、軍のクラッグ大佐に通信しはじめた。

 クラッグ大佐はハルク対策のためガンマ・ベースと通信していたが、マシンマンから連絡があったと聞きあわててそちらへ出る。マシンマンはハルクがジャクソンのビルに向かったと伝えた。

 大ジャンプを繰り返し街へたどり着いたハルクは建物の天井をぶち抜きショッピングモールに着地してしまった。警備員が駆けつけ銃を向けるが、ハルクはあっという間に銃を奪い、握力で粉々にしてしまった。ハルクは再びジャンプしてその場を去る。ハルクにぶち抜かれた天井は崩壊しかかっていたが、そこへマシンマンが飛来し手を伸ばして天井を支えた。その間に逃げる人々。

 ビルの上では、ジャクソンがサイレンの音を聞きつけていた。軍のトラックが避難命令を放送している。何があったのかと双眼鏡をのぞいたジャクソンは、壁を割ってハルクが跳び出してくるのを見て驚く。部下のベンソンはハルクの恐怖に逃げだそうとするが、ジャクソンはベンソンを射殺。人質のトリッシュの腕を掴み、ヘリで脱出しようとする。だがそこへハルクが落下してきた。ヘリにぶち当たって粉砕し、周囲は炎に包まれる。ジャクソンはトリッシュに銃を突きつけるが、後ろからマシンマンの腕が伸びてきて銃を握り潰し、トリッシュを救った。ハルクは怒り心頭で、超怪力でなんとビルを真っ二つに引き裂いてしまう。その衝撃でジャクソンはビルから落ちてしまうが、マシンマンは手を伸ばしてキャッチし、トリッシュとジャクソンを掴んだままビルから飛び立った。ハルクはビルに何発もパンチやキックをくらわせ、ビルは崩れ去った。

 ジャクソンは警官に逮捕された。瓦礫の山からはい出したハルクに、マシンマンはうずまき模様を見せ催眠術をかけて眠らせた。意識を失ったまま立っているハルクの足下にエネルギーを撃ち込み、その場の重力をキャンセルし、ハルクは空高く飛び立っていった。ハルクを逃がしたマシンマン。そこへジープが到着、クラッグ大佐たちが駆けつけたが、その時マシンマンは限界を迎えており、倒れてしまった。彼は我々すべてを守ってくれたと言うスパルディング。そしてフレッドは、飛んでいったハルクの身を案じるのだった。

 

 これまでのマシンマンの展開をすべて使いつつ、ハルクともうまくからませて収めているライターのロジャー・スターンの手腕はさすがだ。翌月、MACHINE MAN誌が#10から再開となる。

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THE INCREDIBLE HULK #236

1979年 JUN

ROGER STERN, WRITER

SAL BUSCEMA & M. ESPOSITO : ARTIST

 

 ハルクマシンマンが再び立ち上がったことに驚く。マシンマンの左腕はまだ外れたままだったが、その左腕を右手で掴んでハルクを殴りつけた。ハルクは相手の左腕を掴み、マシンマンに強烈な一撃を打ちこんだ。お前ハルクがこれまでたくさんロボット潰したのを知らないと叫ぶハルクだったが、マシンマンはハルクが掴んでいる左腕をリモートコントロールし、左腕は伸びてハルクの首に巻き付いた。驚くハルクにさらに伸びた腕のパンチが打ち込まれる。伸びる腕を押さえ込もうとするハルクだったが、指のビームが撃ち込まれた。ハルクがひるんだ隙にマシンマンは左腕を体に接続した。

 スパルディングは窓からマシンマンとハルクの戦いを見て焦り、さらにフレッドが銃を向けてくるが、相手が人を撃てるような人物ではないと見抜き、銃を取り返した。フレッドから事情を聞いたスパルディングは、彼らのところへコーポレーション工作員が襲来してガス弾をくらわされ、マシンマンが現れトリッシュをさらっていった事を聞き、そのマシンマンは偽者でこれがコーポレーションの陰謀であることを知る。この銃は本物ではないと言って銃を放りだしたスパルディングは助力を求めて電話しようとするが、そこでマシンマンに組みつかれたハルクが壁を破って部屋に乱入してきた。部屋はめちゃくちゃになり、ハルクとマシンマンは戦いながら再び壁を破って外に飛び出していった。彼を止めないとと言うフレッドを掴み、サイモン・クラッグ大佐に知らせねばとスパルディングはフレッドと共に車でその場を去る。

 ハルクはフレッドが連れ去られたと思い車を追おうとする。マシンマンはハルクの背後に飛び乗って押しつぶし、ハルクを止めた。ハルクは地面のアスファルトを引き剥がしマシンマンに投げつける。マシンマンはそれを避けつつ、投げたものを砲弾のように飛ばせるハルクの怪力に驚く。

 近くに不自然に止まっているミルクトラックから、戦闘を監視していたシューリングという男が、ハルクがマシンマンを激しく攻撃しているとコーポレーションに連絡していた。高層ビルの最上階でその報告を受けたミスター・ジャクソンは、ロボットが破壊されるのも時間の問題だと笑みを浮かべる。その様子を見るため、ジャクソンは双眼鏡を持って屋上へ出た。トリッシュはジャクソンに目的を訊ねるが、相手の答えは「ビジネスの効率と発展」だった。以前、マシンマンのメカニズムの解析に失敗したジャクソンは、コーポレーションの進歩を妨げたマシンマンを潰そうとしているのだ。抗議しようとするトリッシュだが、ジャクソンは双眼鏡で見ている戦いに注目する。

 ハルクはマシンマンに跳びつこうとするが、マシンマンは反重力装置で空高く舞い上がった。これで話し合いができると思ったマシンマンだったが、ハルクは大ジャンプで迫ってくる。ハルクを蹴返し撃墜するマシンマン。ハルクが落下したショックで地面が震動し、街の人たちは地震だと思う。クラッグ大佐もこの地震は震度3.5だと誤認するが、そこへフレッドを連れたスパルディングがとびこんできて、ハルクがコーポレーションの陰謀によりマシンマンと戦っていることを知らせる。大佐はガンマ線研究基地ガンマベースへ通達するよう指示した。

 ハルクが地面に激突した大穴のそばに着地したマシンマンだが、近くで送信されている電波に気付く。すぐそばに止まっているミルクトラックからシューリングが報告を続けていたが、死角から伸びてきたマシンマンの腕に捕らえられた。シューリングはマシンマンにぶん投げられ、空高く飛んでいき、離れた場所のプールに落ちる。マシンマンはトランシーバーから聞こえてくるジャクソンの声を聞いて、それが以前自分のコピーを作ろうとしていたコーポレーションの一団のボスであることに気付いた。発声装置を調整しシューリングの声色に変えて報告を返す。

 墜落し穴の中にいたハルクは、地中にあった送電線を見て、過去ザ・シングに送電線の電流をぶち込まれた(Fantastic Four #25)ことを思い出した。ハルクはその電流では参らなかったが、マシンマンには有効かもしれない。送電線を手に取ったハルクだが、そばのガス管でガス漏れが起きているのには気付かなかった。

 地面が割れ、マシンマンの背後にハルクが出現。送電線をぶち込む。だがマシンマンはハルクの首に手をかけ、自分を通った電流をハルクへ返した。スパークする電流。その火花がガスに引火し、大爆発が起こり、マシンマンもハルクも吹き飛ばされた!

 

 ハルク対マシンマン第2ラウンドは、前回とは逆にマシンマンがやや優勢で進む。マーベル最強ヒーローの一人であるハルクとここまで戦うのは印象に残る。

 自分を狙っているジャクソンがMACHINE MAN #7から登場した葉巻をくわえたボスだとマシンマンが気付くシーンがあり、以前からのストーリーが続いて進行していく楽しさがある。

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THE INCREDIBLE HULK #235

1979年 MAY

ROGER STERN :WRITER

SAL BUSCEMA & M. ESPOSITO : ARTIST

 

 怒りのハルクはジャンプ一番、山をも飛び越えて、マシンマンが待つと言ったセントラル・シティへ急ぐ。フレッドはハルクの首になんとかしがみついていたが、そのうち振り落とされそうになってハルクに声をかけた。ハルクはフレッドの手を掴み、脇に抱えて着地。フレッドはロードマップを開き、目的地を見つける。

 その様子を双眼鏡で監視しているヘンダーソンという男がいた。彼はトランシーバーでコーポレーションミスター・ジャクソンに連絡。ジャクソンのところへは、さらわれたトリッシュが連れてこられていた。トリッシュはジャクソンに、ハルクとマシンマンをぶつける計画を聞かされる。彼らの計画は順調に進行していた。

 カリフォルニア州セントラル・シティ。ここは、リード・リチャーズら4人組が新型宇宙船を発進させ、あのファンタスティック・フォーが誕生した地なのだ。その街に、もう一つの宇宙時代の産物が滞在している。ホテル・マリポーサの一室にて、アーロン・スタック、またの名をマシンマンが、足のハッチを開いてメンテナンスを行っていた。そこへピーター・スパルディング医師クラッグ大佐が入ってくる。どうかしたのかと訊ねる大佐に、あなたの部下に音波銃で撃たれた跡を点検していたと答えるマシンマン。指からの火炎でハッチを溶接し終えたマシンマンに、ピーター・スパルディングは審議のために出頭しなければならないと言う。そこへTV局のミズ・トレーシー・ワーナーが入ってきた。彼女は審議委員会のニュースを伝えにきたのだ。死んだスティバク上院議員の代わりにブリックマンが上院議員となり、X-51はスパルディング医師の保護下に置くべきだと結論し、審議委員会の解散を宣言したというのだ。ここでマシンマンは晴れて自由の身になった。マシンマンにキスするトレーシー。クラッグはマシンマンと握手する。委員会では、念願の上院議員になったブリックマンに他の委員が、スティバクの死はきみにとって意外な祝福になったなと皮肉を言う。むっとした表情でその場を去るブリックマンだった。

 ハルクとフレッドは目的の家に到着した。殴り込もうとするハルクを制して、フレッドはドアの呼び鈴を鳴らすが誰も出て来ず、ハルクはドアノブをねじ切ってしまう。中に入った二人は誰かいないかと家捜しする。だがなぜスパルディングという医師はトリッシュ誘拐に関わっているのだろうか。医師のオフィスの机を探していて、フレッドは引き出しの中にたくさんの銃器が入っているのを発見し、コーポレーション一味はどこにでもいるのだと納得する。

 その通り、コーポレーションはどこにでもいる。だがそれはスパルディング医師ではなかった。家の外の道に止まっているミルクトラックの中で、男がミスター・ジャクソンへハルクたちがスパルディングの家へ入ったことを報告していた。と、スパルディングとマシンマンが車で帰宅してきた。閉めたはずのドアが開いているのに気付いたマシンマンは、コーポレーションがまたも狙ってきたのかと警戒して中に入るが、ハルクの強烈な一撃をくらい吹っ飛ばされる! ぶっ飛んでいくマシンマンにハルクはジャンプで追いつき追撃を加えようとするが、マシンマンは足裏のバネでハルクを跳ね返した。だがハルクは、誰もハルクは止められないと言い、ファイトを燃やす。スパルディングは、なぜハルクがアーロンを狙ってくるんだと驚きつつ、クラッグ大佐の応援を求めようと家の中へ駆け込もうとするが、自分に向けられた銃口を見て動きを止める。フレッドがスパルディングに銃を向け、おびえながらも、トリッシュをどこに隠したのか言わなければ撃つと言うのだった。精神科医のスパルディングには、彼が本気なのが判った。

 外ではハルクとマシンマンの激闘が続いていた。お互い一歩も引かず殴り合う両者。マシンマンはハルクに、私はあなたに悪意を持っていないと説明して攻撃をやめさせようとするが、ハルクは聞く耳持たず、お前ハルクの友達トリッシュをさらった、だから殴ると言う。身に覚えのないマシンマンだったが、今はハルクを防がねば話もできない。指から火炎を発射しハルクの周囲の地面に火を放ったが、ハルクはなんと地面を手で引っこ抜いて火を払い、体当たりから強烈な連打をマシンマンに喰らわせる。手足がバラバラになったマシンマンを見て、こいつはロボットだったのかと知ったハルクは、ピーター・スパルディングがトリッシュの居所を知っているはずだと矛先を変えた。マシンマンはテン・フォーを相手にした時でさえこれほどの強打を受けたことはなかったと驚きつつ、磁力で手足を引きつけて元の位置に接続させていく。ハルクがピーターを殺す前に止めなければならない。ピーターは唯一の親友だ。マシンマンは、たとえ命をかけてもハルクを止める覚悟を固めた。

 

 MACHINE MAN誌を読んでいない読者に向けて、マシンマンに関わる人物が丁寧に紹介されているのが好印象。スパルディングSPALDINGの名は何故かSPAULDINGと誤記されているので注意だが。ブリックマンは野望を叶えて上院議員となり、マシンマンも審議委員会から開放される様子が描かれていて、マシンマンのストーリーをフォローしているが、ブリックマンのマシンマンへの嫌悪の展開が途切れるためやや物足りない。

 ハルク対マシンマン第1ラウンドは、先輩キャラクターであり超怪力のハルク優勢だが、マシンマンもこれまで登場した装備をちゃんと使ってくれるのが嬉しいところだ。

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THE INCREDIBLE HULK #234

1979年 APR

ROGER STERN : WRITER

SAL BUSCEMA and JACK ABEL : ARTISTS

 

 ハルクは友人のフレッド・スローンと旅の途中、カリフォルニア州バークレイにある共同住宅に来ていたが、そこでフレッドの友人として紹介され、トリッシュ・スターと再会する。ハルクとトリッシュがすでに知り合いであることに驚くフレッドは、関係を訊ねる。トリッシュは長い話になるわよと断り、話し始めた。

 彼女の叔父はエッグヘッドと呼ばれる天才犯罪者だったのだが、エッグヘッドは彼の発明した装置を動かすため姪を誘拐して装置につなぐという凶行に出て、彼女はアントマンことヘンリー・ピム博士に助けられた。また、トリッシュは旧友のカイル・リッチモンドがナイトホークというスーパーヒーローとしてディフェンダーズに参加しているのを知り、ヒーローとの関わりが続く。だが、イエロージャケットと名乗っていた頃のピム博士と関わった頃、彼女は左腕を失い、ピムの前から去る。その後トリッシュは魔術の腕を磨くが、それをシャザンナという別次元の女悪魔に利用され、ハルクが参加していたディフェンダーズの活躍で開放されたのだった。

 ハルクはトリッシュに、戦いによってハルクの友達がたくさん死んだ、だけどトリッシュは死なせないと言う。トリッシュも、あなたが故意に人を傷つけないことは知っているわと答え、私の旅は悪いことばかりじゃなくて、沢山友人ができたと言う。トリッシュはハルクを食卓に誘い、同居人の一人であるガンサー・マロリーにディナーゲストよとハルクを紹介。ガンサーはハルクを見て絶句する。

 所変わってニューメキシコ州にあるガンマ線研究基地では、ハルクと戦った新人ヒーロー、マーベルマンがホーク上院議員と会い報告していた。上院議員はマーベルマンに礼を言って握手し、次の任務に向かう前にヒーローは、新しいコードネーム、クエーサーと呼んでくださいと言って飛び去った。ガンマ線研究基地内で窓から飛び去るクエーサーを見送ったドクター・サムソンは、病床の「サンダーボルト」ロス将軍の安否を気づかっていた。ロス将軍はうわごとで、娘のベティの名を呼ぶ。

 メキシコシティのホテルでは、ベティが夫のグレンと会っていた。二人の結婚は破局寸前ではあったが、グレンはまだ望みをつなごうと言葉をかける。だがベティは丁寧に突っぱね、何が起きようと私たちはまだ友達でしょうと言い、去っていった。

 一方、バークレイの共同住宅では、ハルクがフライパンの中の食事をむしゃむしゃ食べているのを住人たちが遠巻きに見ていた。ガンサーたちはトリッシュとフレッドに、なんで怪物がここに居るんだ、なぜ生きた爆弾を連れてきてるとひそひそ声で抗議する。あわてて彼らを止めるフレッド。さらにガンサーは、奴はすでに一週間分の食い物を食っちまったと批難。周囲の声にハルクも不快になっていき、フライパンをねじ曲げ、ついにはテーブルを叩き粉砕してしまった。フレッドとトリッシュはハルクをなんとかなだめ、キッチンから出て行く。フレッドは、実際に何かした訳でもない者を拒絶した皆を批判し、地球で最も虐げられた人物に手を貸せないのかと憤る。寝室へ行きハルクは眠りについた。フレッドは、皆はどうしてしまったんだと失望を口にする。トリッシュはわからないわと言い、理想に燃えた'60年代が過ぎ去ってしまった事を噛みしめるのだった。

 一同の中の一人の男がキッチンから抜け出し外へ走った。あの怪物はブルジョア階級の危険な産物だと決めつけた彼は、電話で何処かへ通報した。電話を受けた男はハルクがバークレイにいるという情報を、コーポレーションへ連絡する。

 秘密組織コーポレーションのミスター・ジャクソンはその連絡を受け、組織の邪魔となっているハルクとマシンマンを両方処分できる一石二鳥の作戦を思いつく。

 バークレイの共同住宅の前にトラックが止まり、荷台からガスマスクをつけた工作員たちが降りた。彼らは住宅内に突入しガス弾を投げ込む。ハルクがいる部屋を発見した工作員はガス弾で部屋にいた3人を麻痺させた。そこへ突然、マシンマンが登場! 身動きが取れないハルクに自己紹介し、トリッシュ・スターを連れ去るから取り戻したければセントラル・シティのピーター・スパルディングの家まで来いと言い、トリッシュを抱えて高笑いしながら去っていった。怒るハルクだが体が動かずどうしようもない。

 外に出たマシンマントリッシュ工作員に渡してトラックの荷台に乗せた。マシンマンがマスクを外すと、別の男の顔が! これはマシンマンに化けてハルクを誘い出し両者をぶつけようという罠だったのだ。ハルクはまだ麻痺したまま部屋の中にいたが、怒りのあまり手が動き、部屋を吹き飛ばす。ハルクはあいつを地面に叩き込む!と叫び、フレッドを抱えて走り出すのだった。

 

 カービー以外のコミック作家が初めて書いた、マシンマンが出てくる話なのだが、御覧の通り出てくるのは偽者。これ以前にTHE INCREDIBLE HULKでもMACHINE MANでも登場していたコーポレーションの陰謀を軸にすることで、マシンマンとハルクをスムーズに対決させる段取りになっている。マシンマン本人の登場は次回だが、これでマシンマンがマーベルユニバースのキャラクターとして確定した。と同時に、マシンマンが作られたのが『2001年宇宙の旅』の世界なのかは微妙になる。ともあれ、これでマシンマンの活躍の場が大きく広がったのは確かだ。

 今回の舞台となる共同住宅は、'60年代のヒッピー・ムーブメントの中で自由を求めて集まった人たちの成れの果てを描いていて、これが書かれた'70年代末の状況が反映されている。かつてアウトローとして身を寄せ合ったはずの彼らがアウトローであるハルクを拒絶してしまうという、理想が現実に押し流されてしまった不条理と、どこへ行っても拒絶されるハルクの悲劇をリンクさせて描いていて巧い。

MACHINE MAN #9

1978年 DEC

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 マシンマンは陸軍兵士によって無事に発見された。本部へ同行したマシンマンは、私が破壊されたという報告は早すぎたねと言う。兵士たちの上官は、どうやって原爆から生き残ったのかと訊ねる。マシンマンは指のウェポンズ・システムを見せ、窓から外に出て実演してみせた。最大出力でレーザーを地面に発射して深い穴を開け、中へ飛び込んで爆発から逃れたのだった。そして放射能値が下がったころに、足裏のバネで飛び上がり穴から脱出したのだ。

 一方、クラッグ大佐の部屋では、帰還した大佐とスパルディングが、マシンマンが消滅したと思い、嘆いていた。ボードに写真が貼られているが、爆発した現場はめちゃくちゃになっており、マシンマンは爆発崩壊したとしか考えられなかった。我々は得難い才能を失ってしまったと嘆くスパルディング。きみや俺やこの国が抱えていた問題は解決されたと大佐は言うが、医師は、我々は問題を解決したのか、友人を失ったのかどちらだと反論する。クラッグは、俺は奴を金属カラクリ以上の何かとして見始めたことは認めると語り、俺はマシンマンを好きになり賞賛するようになっていたともらす。彼がそれを聞いたら喜んだだろうなと答えるスパルディング。

 そこへマシンマンが入ってきて、その言葉にはよろめくなと声をかける。マシンマンが生きていたことに驚愕する二人。すまない私は自分の葬儀に遅れたよとジョークを言うマシンマンに駆け寄り、誰でもブリキ幽霊に取り憑かれるのは嫌だからなあと答えて喜ぶスパルディング。ただただ驚くクラッグ。マシンマンはクラッグに相手の組織について訊ねられ、彼らはコーポレーションと言っていたと答える。

 マシンマンをコピーしようとした敵組織では、デュークという背広姿の男が、新型銃器のテストを監督中のコニックという片眼鏡の男のところへ出向いていた。デュークはビームライフルを撃つコニックに話しかけ呼び出し、ターゲットとしてマシンマンの写真を見せる。

 陸軍本部から出たマシンマンとスパルディング。マシンマンの耳はバッターアップと言う声をとらえる。近くのグラウンドでは兵士たちが野球をしていた。マシンマンは野球に参加することにした。バットを持って打席に立つ。投げられたボールを思い切りバットで打つと、ボールは粉々になってしまった。必要以上の力で叩いてしまったなと反省したマシンマンは、今度は守備につくことに。バッターが高く打ち上げたボールを、腕を伸ばして取ろうとする。その間にランナーが次の塁を狙うが、マシンマンはボールを取った腕を伸ばしてタッチアウトした。こんな奴反則じゃねえかと兵士たちがもめ始めたので、スパルディングはマシンマンをグラウンドから連れ出す。そういえば弁護士が来ると言ってなかったっけとマシンマンは訊ね、スパルディングは、審議の弁護にマイルズ・ベイカーという男を雇ったと答え、二人はベイカーに会いに向かった。

 マシンマンとスパルディングはマイルズ・ベイカーと対面するが、それはあの組織のコニックなのだ! ベイカーは二人に、マシンマンは世紀の社会問題だと言い、彼が公共の恐怖心を取り除くために、歩く武器庫というイメージを無くさねばならないと提案した。だが彼のスーツケースの中には小型の銃器が入っているのだ。私の防御メカニズムを全て取り外せということかというマシンマンに、それは攻撃メカニズムと見なされる、完全に武装解除しなければならないと指摘する弁護士。スパルディングはそれではマシンマンが格好の的になってしまうと反対するが、マシンマンは同意する。ベイカー弁護士はあなたの武装を無力化する中枢ユニットがあるかと訊ね、マシンマンは自分の人間の顔のマスクを外して機械の素顔を曝し、額のX-51のマークを押して武装のネットワークを解除した。そのあと、あなたも同じことをしないか?と言いながら、マシンマンは弁護士に掴みかかる。ポケットに金属反応があり、その中にはマシンマンの回路にダメージを与える小型の音波ビーム銃が入っていた。それを取り上げるマシンマン。この男はベイカー弁護士などではなく、組織が送り込んできた刺客なのだ。男を掴んで持ち上げるマシンマン

 だがマシンマンは突然衝撃を浴びる。男は腹にプラスチックでできた衝撃波装置を付けていたのだ。マシンマンは左手のパンチを伸ばして攻撃するが、男は伏せて避け、衝撃波を受けた時にマシンマンが床に落とした音波銃を拾い、撃つ。だがマシンマンは跳んでそれを避けながら組みつき男を組み伏せ、銃と片眼鏡を奪った。男を説得して話を聞こうとするマシンマンとスパルディング。男は片眼鏡を返してくれ、そうしたら話すと答える。マシンマンは男のベルトの衝撃波装置も握り潰した。スパルディングはレンズを調べたが、何事もないようだった。男はレンズが二重になっていると言い、スパルディングがレンズを分解してみると、一方のレンズが太陽光を受けて火を噴き出した。あっという間に床に火が付き火災になる。男はそれに乗じて逃げ出した。マシンマンは額のX-51のスイッチを再び入れ、指のショック・ウェーブを撃ち込み、炎を吹き飛ばす。衝撃波で起こった真空により炎は消えたが、男の姿はすでになく、上空をヘリが飛び去っていった。敵はすべての事態に対応するよう準備していたのだ。

 ヘリに助けられた刺客の男コニックは、今回のミスから学び、次回へとファイトを燃やす。マシンマンたちは、コーポレーションの執念深さを知り、彼らを倒す次のチャンスを待つのだった。

 

 実はこの#9が、ジャック・カービーの書いた最後のマシンマンのストーリーなのだ。そんな重要な回であるのに、マシンマンが野球をやるシーンなど入れてしまうのがカービーらしくて楽しい。逆に、マシンマンを捕らえたギャングの正体などは明かされずに終わってしまうが、それはあえてこのあとの続きに託しているのだろう。マシンマンの話は2001: A SPACE ODYSSEY #8から数えて12号にわたって展開してきたが、ストーリーの区切りが数号完結だったこともあり、実際読むとかなり短く感じて、まだまだこのキャラクターやストーリーには伸びしろが残っていて、もったいないと思ってしまう。

 この時期に連載されていたカービーのタイトルは'78年にばたばたと終了した。'70年代後半にマーベルでスタートしたカービーの3つのオリジナルタイトルのうちの1つであるTHE ETERNALSは'78年1月号(#19)で先に終了。ファンタスティック・フォーで登場したヒーローがスピンオフしたBLACK PANTHER誌はMACHINE MANより1ヶ月早く'78年11月号(#12)で終わり。そしてMACHINE MANと同時にスタートしたDEVIL DINOSAURは同じく12月号(#9)で完結し、すべての連載が終了している。これには、ジャック・カービーが、この時期に2回目のアニメ化をすることになったファンタスティック・フォーの製作に加わったためという理由がある。その後もカービーは'80年代前半はアニメの仕事に移り、そのあとマーベルで連載を担当することはなかった。

 だがマシンマンの物語はこのあとも続くことになる。ここまでで創られたマシンマンのキャラクターは、かなり有望視されていたということではないだろうか。2001年宇宙の旅がスタート地点ではあったが、マシンマンと人間の対立・対決を描いているうちに、人間の仲間に入れないキャラクターが、軍に追われ逃げながら活躍する展開となる。考えてみるとこれは、カービーの代表キャラクターの一つであるハルクの展開だ。マシンマンは'70年代版ハルクという見方もできるのだ。そして#9の巻末にも書いてあるが、ストーリーはそれから4ヶ月後に出るTHE INCREDIBLE HULK #234-237へと続く。このつなぎ方のハイセンスさ加減は見事という他ない。

 このコミックが収録された合本は

 https://www.amazon.co.jp/dp/0785195777/

で購入できるので、是非!

MACHINE MAN #8

1978年 NOV

EDITED, WRITTEN, AND DRAWN BY: JACK KIRBY

 

 スパルディング医師を人質に取ったギャング風の男は、スクリーンからマシンマンを脅迫する。彼らはマシンマンのコピーのロボットを量産する気なのだ。取引に応じれば医師は家に帰れると脅す男に、マシンマンはスパルディングの様子を映してくれと言う。画面では縛られたスパルディングがヘリに乗せられるところが映された。どこかの道路へ行って彼を離す準備があると男は言う。マシンマンはなんとかこのミサイル・サイロから脱出せねばと思い、足のマグネットを使って壁を登ろうとするが、側に銃口があって、動くなと警告される。銃口から酸が発射され、マシンマンが動くと溶かされてしまうのだ。

 一方、審議委員会では、一同がマシンマン行方不明に頭を悩ませていた。ブリックマンだけは、反マシンマンキャンペーンをうって名を上げてきて、これをチャンスに上院議員の座を狙っている。文句があるならマシンマンを連れてきたらどうだとふてぶてしい態度のブリックマン。委員はクラッグ大佐に望みをかけて連絡する。

 すでに大佐はマシンマン捜索のためジェット機で飛んでいた。唯一の手がかりは、スパルディングの家の側で発見された、スキー板のような跡だ。それがヘリコプターの着陸スキッドだと推理したクラッグは、ついにヘリを発見した。大佐はヘリのパイロットを捕らえようと考える。そいつがマシンマンの行方を知っているはずだ!

 その間にも、ミサイル・サイロに閉じ込められたマシンマンにはガンマ線が照射され、内部メカを透視されるピンチに曝されていた。なんとかここから脱出しなければ。足のハッチを開けて、右手の指を2本外し、足の内部にセット。これで、指のハンド・ウェポン・システムの動力が足へ注入されたのだ。足裏から強烈な噴射が起こり、あっという間に飛び立つマシンマン。ミサイル・サイロを飛び出し上空に舞い上がったマシンマンは、着地したら周囲を警戒せねばと考えるが、着地前に音波砲が撃ち込まれ、撃ち落とされてしまった! 音波砲をかまえた男が迫り、マシンマンは特殊装備のトラックに入れられてしまう。罠に落ちたマシンマンだが、これが反撃のチャンスになるのか。

 ギャングのボスの前に引き出されるマシンマン。ボスは、マシンマンのすべてのメカニズムを解析しコピーを生産しようとしており、これでコーポレーションは大もうけだと言う。ボスはマシンマンに音波砲を浴びせて倒し、部下に運ばせる。

 クラッグ大佐は本部に戻っていた。ヘリを捕らえてスパルディングを発見した大佐だったが、ヘリのパイロットは何も喋らず、マシンマンの行方の手がかりは途絶えていた。スパルディングはどうやって彼を発見するのかと不安がるが、大佐はお前が飛んできたルートをたどればいいと言い、それが唯一の希望だ、我々はマシンマンを必ず連れて帰ると語る。マシンマンを助けようとする大佐の心境の変化に驚くスパルディング。

 そのマシンマンは意識を失ったままギャングの秘密基地にてベッドに横たえられ、内部分析の機械にかけられていた。体内に走査線が浴びせられたことでマシンマンは復活。指からビームを発射し、装置を吹き飛ばす。ボスは音波を撃てと命じるが、マシンマンは岩陰に潜んでギャングたちから隠れ、火炎放射で音波砲を溶かす。ギャングたちはチタン鋼製のハッチを閉じて逃げ、ボスはホロコースト・ボックスのスイッチを入れ、俺たちは脱出する、お前もあと10分の命だと言い捨てる。マシンマンは壁板を引きはがして部屋へ侵入しホロコースト・ボックスを見たが、すでに核爆弾のスイッチは入り、さらに核爆弾は地下深くに設置されているため今から停止に向かっても間に合わない! 生き残るチャンスはギャングが使った脱出経路しかないと考えたマシンマンは、壁を崩し、赤外線アイでギャングたちの足跡を発見、あとを追った。

 鉄道レールを発見したマシンマン。これを使って脱出しなければ死だ。マシンマンは腕キャタピラを出し、転輪を取り外して足に取り付けた。ギャングたちは脱出車で逃げていたが、後ろからマシンマンが足の転輪をレールに乗せて追ってくるのを知り驚く。果たしてマシンマンは脱出に間に合うのか?

 クラッグ大佐とスパルディングはジェット機でギャングの飛行経路を捜していたが、なかなか見つけられずにいた。弱音を吐くスパルディングに、よく見ろ、集中しろと怒鳴る大佐。その時、スパルディングが前方を指さす。眼前の山の頂上が吹き飛び、爆発したのだ。

 

 マシンマン脱出編。メカを駆使し、あの手この手を使うのはマシンマンならではで、盛り上がる。指を抜いて足にセットするのは衝撃だった。#1で出た腕キャタピラが再登場し、しかも裏技的な使い方なのが素晴らしい。また、クラッグ大佐がスパルディング以上にマシンマン発見に尽力しているのがグッと来るところだ。

 スパルディングをさらいマシンマン量産を狙う敵組織はコーポレーションと名乗る。この秘密結社はこの少し前の'76年、DEADLY HANDS OF KUNG FU #22のホワイトタイガーの話で初登場したあと、当時のTHE INCREDIBLE HULKやCAPTAIN AMERICAで暗躍していた組織なのだ。この号までは、マシンマンの話の舞台はマーベルのキャラクターが住むマーベルユニバースかどうか言及されていなかった。むしろ2001: A SPACE ODYSSEY #9ではマーベルヒーローは子供が読んでいるコミックのフィクションキャラクターとしてのみ出ていて、あくまで舞台は『2001年宇宙の旅』につながる何処かだったのだが、ここでこの組織が出たことで他のコミックとのリンクが出来、以後の展開に影響していく。

 このコミックが収録された合本は

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MACHINE MAN #7

1978年 OCT

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY: JACK KIRBY

 

 テン・フォーとの戦いを終えたあと、マシンマンは特別国会委員会へ出頭していた。マシンマンの知人としてスパルディング医師が付き添っていて彼の弁護をし、冷静に答えるようにアドバイスしている。世界を守るために腕を失ったマシンマンだったが、政府により修理され腕を取り戻していた。委員会が問題にしているのは、連邦裁判所からモデルX-51の破棄命令が出ている事で、宇宙ロボットから地球を救ったマシンマンの功績を認めてそれを無効と判断するか実行するか審議しているのだ。4人の委員のうちの1人に、彼はほとんど人間みたいだと言われ、自分はあなたがたに劣らず人間的だとマシンマンは答える。スパルディングも、人間の最も良い性質は人類だけにとどまらないのですと発言し、マシンマンを助ける。審議はマシンマンが模範的な態度だったこともあって、次回の招聘にも出頭するように言われて開放された。

 街へ出る二人。よくやったなと言うスパルディングに、あなたの家に泊めてもらって緊張がほぐれたからさと答えるマシンマン。だが彼らの前に、プラカードを持った市民たちが集まってきた。彼らはマシンマンを危険視し、おまえの火炎放射器とレーザービームを引っこ抜けと野次る。待ってくれ、よく知りもしないのに不公平だぞとスパルディングは言い、取りなそうとするが、マシンマンは突然腕を伸ばす。皆が驚く中、マシンマンの腕はある男の頭を殴りつけた。その男は、騒ぎに乗じて横の紳士の財布をすろうとしていたのだ。警官につき出されるスリ。一同は一転してマシンマンを称える。

 それを建物の中から見ているのは、クラッグ大佐と、下院議員で政府の特殊安全保障機関のブリックマンだ。今はマシンマンが群衆の支持を得ているなと言うブリックマン。大佐はマシンマンを作った計画の警備中の話をし、アイデンティティを失った機械人間によって部下や左目を失った事を語る。

 一方、マシンマンとスパルディングの乗る車が走る道の行き先には、一人の男がリモコンを持ちロボットを操っていた。この男は自分の技術をアピールし有名になるために、自作のロボット、パラトロンマシンマンを倒そうと考えたのだ。車の前に立ちはだかり、怪力で車を持ち上げるパラトロン。車から飛び降りるスパルディングとマシンマン。パラトロンはマシンマンにパンチを浴びせる。こいつと戦うよりリモコンで操っている者を見つけなければと言うマシンマン迫るパラトロンだが、マシンマンは足裏のバネで弾き返した。隠れて操作している男は、思わぬピンチに本気を出す。敵ロボットはなおも組みつき、マシンマンを組み伏せパンチを浴びせるが、マシンマンは指の火炎放射を浴びせパラトロンを炎上させた。あわてて林の中からとび出してきた男は、ハイラム・ガーク教授と名乗り、わたしの弁護士から連絡があるからなと怒るが、マシンマンはパラトロンが燃え残った石ころを返してやり、受け取ったハイラムはあちちちとわめくのだった。

 スパルディングは、審議が終わる前にあらゆる種類の変人に出くわす羽目になるかなと言い、マシンマン有名税だよと答える。マシンマンはパラトロンに転がされた車を元に戻し、スパルディングが運転して再び走り始めた。マシンマンアーロン・スタックという名は父が付けてくれた、父は自分を生き残らせるために死んだと語り、スパルディングは名前をもらった息子は父をがっかりさせないだろう、自由のために戦い、勝利を得ようと励ましてくれた。

 スパルディングの家に着いた。明日も審議が続くため、スパルディングはガウンを着て、もう休んだらどうだと言う。マシンマンはスパルディングの蔵書を読んでコンピューターに情報を貯えていた。きみに夜食は必要ないなと言われて、マシンマンは自分は純粋なエネルギーでないと駄目だよと答える。スパルディングは、ならば壁のソケットから電気を取ってくれと言い、あなたを客として迎えられて嬉しいよと言う。あなたの助けがなかったら私はもっとみじめだっただろうとマシンマンは答え、二人は握手した。スパルディングはまた明日といって部屋から出ていく。マシンマンは手首のハッチを開けて中のボリュームをセットした。これは目覚まし時計なのだ。マシンマンも眠ることができるのだ。スパルディングは私が夢を見ることができると知ったら驚くだろうなと考えながら、マシンマンは眠りについた。

 翌日朝6:30。この日も審議に出席しなければならない。マシンマンは、私にはよい弁護人がいると考えながらスパルディングの部屋に行くが、ベッドはもぬけの殻だった。テーブルにはメモが残されていて、スパルディングは預かった、彼の命が惜しければ指示に従えと書いてあった。家から出たマシンマンを男が待ち受けていた。

 マシンマンが姿を消したことが報道され、人々は再び不審感を募らせる。皆は批難の言葉を口にし、様々な憶測が飛ぶ。ブリックマンはインタビューに、この厄介者の危険から市民が守られねばならないと発言。審議委員会はクラッグ大佐にマシンマンは逃走したのだと思うかと訊ねるが、大佐は否定し、マシンマンは争いを避けようとしていると指摘する。ブリックマンは大佐にマシンマン捜索の任務を課すが、これまでマシンマンを憎んでいた大佐の言動が柔らかくなっていることに驚く。大佐も私はちょうど憎しみを抱くのをやめたところだと答え、マシンマンやスパルディングを捜すため出て行く。委員たちはブリックマンに、大佐をマシンマンにぶつけるため利用していると口々に批難する。この件を利用して政治的な立場を確立しようとしているブリックマンは委員たちの意見にまったく悪びれない。委員たちは我々の助力は当てにしないことだと言うが、ブリックマンは自信たっぷりに、マシンマンを破壊することはここ10年で最も人気がある娯楽になるだろうと宣言する。

 男はマシンマンをヘリに乗せ移動するが、突然スイッチを入れ、マシンマンはヘリから落とされた。真下にミサイル・サイロの穴があり、長い穴に落下。普通の人間なら死んでいるところだが、マシンマンはなんとか着地に成功する。そこにモニターがあり、スパルディングを連れ去った黒幕が葉巻を持って登場した。その後ろに映るスパルディングはマシンマンに逃げろと叫ぶ。こいつらはきみのコピーを作るつもりだと!

 

 前半にリモコンロボット対マシンマンが見られるのもポイント高いのだが、今回メインとなっているのはマシンマンと人間の対話や対立が描かれることだ。マシンマンを人間として扱い献身的にサポートし、頼れる友人として活躍するスパルディング。審議委員会はマシンマンの誠実さを認めていて、これまで追われるだけだったマシンマンが権力側から認められたのは意外だ。マシンマンに対し批判したり喝采したりと勝手な民衆。そして、これまでマシンマンを追う敵として登場していたクラッグ大佐は、前回のことでマシンマンを評価し態度を変えているのが驚きだ。

 その一方、新たな権力側の対立者としてブリックマンが登場、態度がでかくて面白い。最後に新たな悪役も登場し、期待が高まる。

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2019年冬コミ発行の同人誌「スティーブ・ガーバー先生の隠れた名作 A. BIZARRO」の訂正につきまして

2019年の冬のコミックマーケットで頒布いたしました同人誌「スティーブ・ガーバー先生の隠れた名作 A. BIZARRO」にミスがありましたのでお知らせします。

4ページ、7ページ、11ページの数カ所にて、レックス・ルーサーの秘書の名を「エリクサ」と記載している部分があるのですが、「リスカ」が正しいです。

お詫びして訂正します。

          アメコマー菅野(アメコミ向上委員会)

MACHINE MAN #6

1978年 SEP

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 マシンマンは目を望遠鏡のように伸ばして宇宙を観察する。太陽系外縁部に奇妙な現象が観察される。オートクロン艦隊が地球へ向けてワープアウトするためのゲートが出現しようとしているのだ。マシンマンは仮装パーティーから出て行くが、そこへ兵士が殺到してきた。クラッグ大佐マシンマンを探知し、彼を捕らえるために追っ手を指し向けているのだ。天井をぶち抜いて上の階へ移り、手を伸ばして別のビルへ逃れるマシンマン。指揮を取るクラッグのところへスパルディング医師と共にA.B.S.テレビのトレーシー・ワーナーが駆けつけた。彼が必要だというのに、犯罪者のように追うのは間違っていると言うスパルディング。マシンマンは落ち込み苦悩していると言うトレーシー。大佐はいまだにXモデルによって部下や左目を失ったことにこだわっていたが、二人は彼を批難し説得しようとする。

 そこへテン・フォーが引っ立てられてきた。銃を向けられているが気にもしていない様子で、このジェスチャーももう終わりだ、新たなゲームの始まりだと言ってのける。宇宙から来たマシンマンだわと驚くトレーシー。オートクロンだと自己紹介するテン・フォー。スパルディングは生きる悪夢めと罵りテン・フォーに吊し上げられた。

 マシンマンは道でタクシーに乗り込んでいた。タクシーの運転手は黒人で、突然入ってきた機械の男を嫌がり乗車拒否しようとする。だが話しているうちに差別されている同士気が合い、タクシーはマシンマンを乗せて走る。前方に爆発が見え、マシンマンはタクシーを降り、この運転手バーニー・ベイツと握手し、現場へ向かった。

 足裏のバネを使い急ぐマシンマン。兵士が倒れている中を走っていき、ついにテン・フォーと対面する。テン・フォーは手からのブラストを放つがマシンマンはそれより早く組みついた! テン・フォーの顔を掴み攻撃しようとするマシンマン。その時、大爆発が起こった。驚くマシンマン。これは核エネルギー! テン・フォーの胸には核分裂装置が搭載されており、こいつは歩く核爆弾なのだ。テン・フォーは、超新星サイズの爆発も起こせるぞと言う。右腕を伸ばしてパンチを打ち込むマシンマンだが、テン・フォーは腕を掴みへし折ってしまった。さらに足から爪を出してキック。それを避けたマシンマンは、高圧電流を相手に流しダウンさせた。動けなくなったテン・フォーに、マシンマンは目のレンズに模様を出して催眠術をかけ、テン・フォーを眠らせた。マシンマンの勝利だ。

 兵士たちが近づいてきて、今度はマシンマンに銃を向ける。そこへクラッグ大佐、スパルディング医師、トレーシーの3人が駆けつけた。ライフルを下ろさせろと叫ぶスパルディング。マシンマンは自分の頭蓋骨の中の発信器で執拗に追跡してきたことを批難し、大佐は反論するが、こんなことをしている時間はない。侵略艦隊が迫っているのだ。スパルディングとトレーシーに指摘され、マシンマンはこの周囲から皆が離れるよう指示する。クラッグ大佐の指揮のもと、全員が撤退。倒れているテン・フォーとマシンマンだけが残された。

 マシンマンは作動しなくなった右腕を切り離すと、テン・フォーの胸部メカを組み替えていく。おまえが残忍な方法を取っていなかったら、私は人類に味方せず中立のままでいたかもしれないとつぶやくマシンマン。彼は超新星並みの威力を起こせるテン・フォーの核分裂装置を利用しようというのだ。艦隊が到着する場所を計算したマシンマンは、前と同じく次元の壁を開き、動かぬテン・フォーを宇宙へ送り込んだ。次元の壁が閉じ、マシンマンだけが残される。

 木星軌道上にオートクロンの侵略艦隊がタッチダウンしてきた。艦隊指揮官は、危険な物体が進路に探知されたことを知る。それはテン・フォーの体であった。マシンマンに仕掛けられた通り、テン・フォーは大爆発を起こし、艦隊は消滅するのだった。

 

 テン・フォー編完結。機械人間であるマシンマンは何度も悩みに押しつぶされそうになるが、人間との関わりを経て立ち直り、テン・フォーと戦う。二人のロボットの超兵器の応酬が楽しい。テン・フォーを倒したマシンマンが、同じ機械人間であるテン・フォーに同胞としての言葉をかけるシーンがグッとくる。

 4話にもわたって大活躍したテン・フォーはマシンマンのライバルとして創られたキャラクターだが、ここで消滅してしまい、以後オートクロンがマシンマンと戦うことがないのは非常に残念。しかしオートクロン帝国は滅亡したわけではないようで、テン・サーティフォーという同型機が「マキシマム・セキュリティ」クロスオーバーに登場したことがある。魅力的な設定とデザインの敵ロボットなので、今後また登場してほしいところだ。

 このコミックが収録された合本は

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