アメコミ情報誌SleepWalker Blog版

昔のアメコミを紹介しています

2019年冬コミ発行の同人誌「スティーブ・ガーバー先生の隠れた名作 A. BIZARRO」の訂正につきまして

2019年の冬のコミックマーケットで頒布いたしました同人誌「スティーブ・ガーバー先生の隠れた名作 A. BIZARRO」にミスがありましたのでお知らせします。

4ページ、7ページ、11ページの数カ所にて、レックス・ルーサーの秘書の名を「エリクサ」と記載している部分があるのですが、「リスカ」が正しいです。

お詫びして訂正します。

          アメコマー菅野(アメコミ向上委員会)

MACHINE MAN #6

1978年 SEP

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 マシンマンは目を望遠鏡のように伸ばして宇宙を観察する。太陽系外縁部に奇妙な現象が観察される。オートクロン艦隊が地球へ向けてワープアウトするためのゲートが出現しようとしているのだ。マシンマンは仮装パーティーから出て行くが、そこへ兵士が殺到してきた。クラッグ大佐マシンマンを探知し、彼を捕らえるために追っ手を指し向けているのだ。天井をぶち抜いて上の階へ移り、手を伸ばして別のビルへ逃れるマシンマン。指揮を取るクラッグのところへスパルディング医師と共にA.B.S.テレビのトレーシー・ワーナーが駆けつけた。彼が必要だというのに、犯罪者のように追うのは間違っていると言うスパルディング。マシンマンは落ち込み苦悩していると言うトレーシー。大佐はいまだにXモデルによって部下や左目を失ったことにこだわっていたが、二人は彼を批難し説得しようとする。

 そこへテン・フォーが引っ立てられてきた。銃を向けられているが気にもしていない様子で、このジェスチャーももう終わりだ、新たなゲームの始まりだと言ってのける。宇宙から来たマシンマンだわと驚くトレーシー。オートクロンだと自己紹介するテン・フォー。スパルディングは生きる悪夢めと罵りテン・フォーに吊し上げられた。

 マシンマンは道でタクシーに乗り込んでいた。タクシーの運転手は黒人で、突然入ってきた機械の男を嫌がり乗車拒否しようとする。だが話しているうちに差別されている同士気が合い、タクシーはマシンマンを乗せて走る。前方に爆発が見え、マシンマンはタクシーを降り、この運転手バーニー・ベイツと握手し、現場へ向かった。

 足裏のバネを使い急ぐマシンマン。兵士が倒れている中を走っていき、ついにテン・フォーと対面する。テン・フォーは手からのブラストを放つがマシンマンはそれより早く組みついた! テン・フォーの顔を掴み攻撃しようとするマシンマン。その時、大爆発が起こった。驚くマシンマン。これは核エネルギー! テン・フォーの胸には核分裂装置が搭載されており、こいつは歩く核爆弾なのだ。テン・フォーは、超新星サイズの爆発も起こせるぞと言う。右腕を伸ばしてパンチを打ち込むマシンマンだが、テン・フォーは腕を掴みへし折ってしまった。さらに足から爪を出してキック。それを避けたマシンマンは、高圧電流を相手に流しダウンさせた。動けなくなったテン・フォーに、マシンマンは目のレンズに模様を出して催眠術をかけ、テン・フォーを眠らせた。マシンマンの勝利だ。

 兵士たちが近づいてきて、今度はマシンマンに銃を向ける。そこへクラッグ大佐、スパルディング医師、トレーシーの3人が駆けつけた。ライフルを下ろさせろと叫ぶスパルディング。マシンマンは自分の頭蓋骨の中の発信器で執拗に追跡してきたことを批難し、大佐は反論するが、こんなことをしている時間はない。侵略艦隊が迫っているのだ。スパルディングとトレーシーに指摘され、マシンマンはこの周囲から皆が離れるよう指示する。クラッグ大佐の指揮のもと、全員が撤退。倒れているテン・フォーとマシンマンだけが残された。

 マシンマンは作動しなくなった右腕を切り離すと、テン・フォーの胸部メカを組み替えていく。おまえが残忍な方法を取っていなかったら、私は人類に味方せず中立のままでいたかもしれないとつぶやくマシンマン。彼は超新星並みの威力を起こせるテン・フォーの核分裂装置を利用しようというのだ。艦隊が到着する場所を計算したマシンマンは、前と同じく次元の壁を開き、動かぬテン・フォーを宇宙へ送り込んだ。次元の壁が閉じ、マシンマンだけが残される。

 木星軌道上にオートクロンの侵略艦隊がタッチダウンしてきた。艦隊指揮官は、危険な物体が進路に探知されたことを知る。それはテン・フォーの体であった。マシンマンに仕掛けられた通り、テン・フォーは大爆発を起こし、艦隊は消滅するのだった。

 

 テン・フォー編完結。機械人間であるマシンマンは何度も悩みに押しつぶされそうになるが、人間との関わりを経て立ち直り、テン・フォーと戦う。二人のロボットの超兵器の応酬が楽しい。テン・フォーを倒したマシンマンが、同じ機械人間であるテン・フォーに同胞としての言葉をかけるシーンがグッとくる。

 4話にもわたって大活躍したテン・フォーはマシンマンのライバルとして創られたキャラクターだが、ここで消滅してしまい、以後オートクロンがマシンマンと戦うことがないのは非常に残念。しかしオートクロン帝国は滅亡したわけではないようで、テン・サーティフォーという同型機が「マキシマム・セキュリティ」クロスオーバーに登場したことがある。魅力的な設定とデザインの敵ロボットなので、今後また登場してほしいところだ。

 このコミックが収録された合本は

https://www.amazon.co.jp/dp/0785195777/

で購入できるので、是非!

コミックマーケット97にサークル参加します

アメコマー菅野のアメコミ同人誌サークル「アメコミ向上委員会」は、2019年12月28日(土)に開催されるコミックマーケット97にサークル参加します。スペースは南地区 マ-38bです。

 

頒布予定の同人誌をお知らせします。

 

ティーブ・ガーバーの隠れた名作A. BIZARRO   【新刊】

:1999年のA. BIZARROミニシリーズの紹介本です! スティーブ・ガーバー先生の魅力をお伝えしたく!

 

みなさんMAXX #1を読んでみて!

:サム・キースのオリジナルコミックMAXX #1をみなさん読んでみてください!という本です!

 

銀鷹

:シルバーエイジ・ホークマンの紹介本です。輝かしいゴールデンエイジ・ヒーロー「ホークマン」をシルバーエイジで再始動するにあたり、ガードナー・フォックスはどんな構成にしたか?その魅力は?を語ります。

 

ジャック・カービーファンタスティック・フォー -接触篇-

ジャック・カービーが描いた、ファンタスティック・フォーが登場するコミックを、Fantastic Four #21まで御紹介。マーベルのシルバーエイジ開幕を感じていただければ!

 

ジャック・カービーファンタスティック・フォー -発動篇-

:上記の続刊。カービーのアートが加速度的に進化していき、マーベルユニバースも広がっていく醍醐味を是非!

 

これが基本だ!リージョン・オブ・スーパーヒーローズ

:千年後の未来の少年少女スーパーヒーローチーム リージョン・オブ・スーパーヒーローズの誕生を御紹介!

 

続・これが基本だ!リージョン・オブ・スーパーヒーローズ

:上記の続刊。リージョンのストーリーやキャラクターを御紹介! リージョン新タイトル刊行のこのタイミングで是非どうぞ!

 

たとえ赤狩り人とよばれても 【委託】

:サークル「恐竜と電波塔」のラジアクさんからの委託です。'50年代に一時期復活したキャプテン・アメリカについての愛あふれる紹介同人誌です!

コミックマーケット96にサークル参加します

アメコマー菅野のアメコミ同人誌サークル「アメコミ向上委員会」は、2019年8月10日(土)に開催されるコミックマーケット96にサークル参加します。スペースは西地区 あ-06bです。

 

頒布予定の同人誌をお知らせします。

 

みなさんMAXX #1を読んでみて! 【新刊】

:サム・キースのMAXX #1をみなさん読んでみてください!という本です!

 

銀鷹 【5月のアメコミONLYイベントTEAM UP 13での新刊】

:シルバーエイジ・ホークマンの紹介本です。輝かしいゴールデンエイジ・ヒーロー「ホークマン」をシルバーエイジで再始動するにあたり、ガードナー・フォックスはどんな構成にしたか?その魅力は?を語ります。

 

JKGA

:シルバーエイジのグリーンアローは、一時期ジャック・カービーが描いていた時期があるのです。この時期の魅力、そしてグリーンアローのオリジンとは!

 

ジャック・カービーファンタスティック・フォー -接触篇-

ジャック・カービーが描いた、ファンタスティック・フォーが登場するコミックを、Fantastic Four #21まで御紹介。マーベルのシルバーエイジ開幕を感じていただければ!

 

ジャック・カービーファンタスティック・フォー -発動篇-

:上記の続刊。カービーのアートが加速度的に進化していき、マーベルユニバースも広がっていく醍醐味を是非!

 

はみだしっ子達明日をゆく 【委託】【新刊】

:サークル「道野塵芥」のアメージング太郎さんからの委託。マルチバースを旅するヒーローチーム、エグザイルズの紹介同人誌。Exiles(第1シリーズ)のTPBのVol.5-7までのエピソードを紹介。

 

地図を持たないトラベラー 【委託】

:サークル「道野塵芥」のアメージング太郎さんからの委託。エグザイルズの紹介同人誌。Exiles(第1シリーズ)のTPBのVol.2-4までのエピソードを紹介。当日はアメージング太郎さんもスペースにおります。

 

ラビットホールをのぞいてみたら 【委託】

:サークル「道野塵芥」のアメージング太郎さんからの委託。エグザイルズの紹介同人誌。Exiles(第1シリーズ)のVol.1のエピソードを紹介。この方の同人誌は丁寧な調べ物の上での記載が素敵です。

 

当日はよろしくお願いします!

また、アメコミとは関係ありませんが、8月12日(月)西地区 す-01bA Jewel of a Camera」というカメラサークルにも所属しており、新刊「Kamera Manisch #10」には私は「エンボイ・ワイドアングル」という英国広角中判カメラの紹介を書いております。よろしければそちらもどうぞ。

MACHINE MAN #5

1978年 AUG

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 街でテン・フォーマシンマンが対峙する。マシンマンはテン・フォーの手からのブラストをかわして相手の胴体に足を磁力で張り付け壁に叩きつける。だがテン・フォーは胸からビームを発射し、直撃を受けたマシンマンはダメージを受け街灯にもたれかかった。テン・フォーは怪力で街灯をねじ曲げてマシンマンに巻き付け、マシンマンを蹴飛ばしてビルに叩き込んだ。同じ機械人だが自分たちオートクロンの方が優れていると誇るテン・フォー。マシンマンは街灯を投げ返し、再び立ち上がる。

 だがテン・フォーは目からのビームで前面にバリアを張りマシンマンとの戦いを止めた。そこへ軍が殺到、二人に銃を向ける。マシンマンはテン・フォーの危険性を説明しようとするが、テン・フォーは狡猾にも自分の身を守っていただけだと言う。彼の言うことは聞くなと激昂するマシンマンは兵士に取り押さえられ、手を上げ軍に従う態度を示すテン・フォーは対照的に落ち着き払っている。軍の指揮官に、こいつのせいで宇宙から艦隊が迫っているとマシンマンは主張するが、おとぎ話だとテン・フォーは言い、軍は二人とも捕らえようとする。明日になれば宇宙艦隊が飛来し何千人もの侵略者が現れるぞと叫ぶマシンマンだったが、彼には政府から捜査命令が出ていたこともあり、聞いてもらえない。結局マシンマンは兵士たちを振り払ってその場を飛び去るしかなかった。自分の精一杯の誠意にもかかわらず聞く耳を持たない人間に憤るマシンマン

 セントラル・シティの病院には、クラッグ大佐スパルディング医師マシンマンをかくまっていただろうと尋問していた。あいかわらずマシンマンを敵視している大佐だが、スパルディングはいまマシンマンを捕らえれば我々は破滅だと、テン・フォーの脅威について説明する。自分の信念に頑固な大佐はこれが信じられないようだが、マシンマンの協力を認めるのか…?

 軍から逃れたマシンマンは煙突の上に座ってどうしようか考えていたが、仮装大会の会場の窓からそれを見ていた一団が彼に声をかけてきた。腕を伸ばして窓へ移動し、中へ入るマシンマン。パーティーの皆はロボットの仮装をした飛び入りが来たと歓迎したり、ちょっかいを出してやっつけられたり、陽気に楽しむ。トレーシー・ワーナーという女性がマシンマンにダンスを申し込む。彼女はテレビ局で仕事をしており、マシンマンのことを知っていた。踊り終わったあと彼女はマシンマンにテレビを見せるが、その特別ニュースにはスパルディング医師が出演し、マシンマンにきみの力が必要なんだと呼びかけていた。先ほど軍に事情を説明したのに聞き入れてもらえなかったマシンマンは、私を利用したあと手のひらを返すんだろうと疑う。スパルディングは、協力してくれれば軍が恩赦に同意したと発表するが、マシンマンは笑って、それで喜んで出て行くと音波ライフルを持った部隊が待ちかまえているんだろうと言い、信用しない。トレーシーはマシンマンに自己紹介し、彼を心配して、なぜ男の仕事を放棄して不平を言ってるのかと問う。その通り、男の仕事は男がやればいいんだと答えるマシンマン。なぜ自分を人類から切り離すようなことを言ってまで義務から逃げるのかというトレーシーに、マシンマンはマスクを外して機械の素顔を見せる。トレーシーは驚き、マシンマンに詫びつつ、彼の前から立ち去った。自分の態度に嫌悪を抱き拳を振り下ろすマシンマン

 別の銀河では、テン・フォーの信号を受けたオートクロン艦隊が行動を開始していた。艦隊の旗艦に通信が伝達され、指揮官は第三惑星地球へ向けて各艦のスタードライブを作動させるよう命令を下した。完全攻撃態勢を取った宇宙艦隊が地球へ迫る!

 軍に逮捕されたテン・フォーをクラッグ大佐とスパルディング医師が訪ねていた。最初はとぼけるテン・フォー。だがスパルディングとクラッグはマシンマンが兵士に伝えたテン・フォーの脅威について聞いており、侵略艦隊へ信号を送っただろうと訊ねる。テン・フォーは態度を変え、オートクロンの攻撃には反撃不能だと答え、自分たちの邪魔をするマシンマンへ敵対心を露わにするのだった。どうなる地球!

 

 テン・フォーと五角の戦いをするマシンマンだが、敵は狡猾にも人間の不審感を利用してマシンマンをおとしいれる。憤慨し、またもや人間不信におちいるマシンマンだが、ここで仮装パーティーのヘンテコなシーンが登場するのがカービーらしく、面白い場面の末にマシンマンが立ち直るきっかけが得られる。

 また、これまでマシンマンをひたすら敵視し頭の堅い軍人として描かれてきたクラッグ大佐が、スパルディングから聞いた地球の危機に態度を変えるのもポイント。テン・フォーのような機械人オートクロンの艦隊も初めて描かれ、次のクライマックスへ向けて盛り上がっていく。

 このコミックが収録された合本は

https://www.amazon.co.jp/dp/0785195777/

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MACHINE MAN #4

1978年 JUL

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 スパルディング医師マシンマンの指示を受けながら、テン・フォーによって取り付けられた目眩シリンダーの除去に挑む。頭脳ユニットを引き出し、マシンマンの指レーザーを使ってシリンダーを切除することに成功した! 早く宇宙ロボットを追わねば。と、突然壁が崩れる。外ではマシンマンを追ってきた軍とテン・フォーが戦っているのだ。スパルディングは、我々には奴をこの世界にもたらしてしまった責任があると言う。マシンマンは足裏のマグネットを使って建物を垂直に降り、最短距離を通って何が起きたか確かめに行く。

 走って行くと、目茶苦茶に破壊された軍の車両や、傷ついた兵士たちがいた。テン・フォーは卑劣・横柄・残虐的な性質の持ち主であり、地球の軍を蹴散らしてしまったのだ。マシンマンは物陰から軍の部隊を見る。全員が負傷しボロボロになっているが、クラッグ大佐は2体目の機械人の出現にますますファイトを燃やしており、考える機械は街の中心地へ向かった。生きた機械の実験を続けるインテリどもをやめさせるのだと部下を叱咤する。

 セントラル・シティの路地裏では、突如壁が割れ、とんでもない勢いでぶっ飛んでいき、車などを粉砕。テン・フォーが現れたのだ。テン・フォーはこの惑星にまだオートクロン帝国が手をつけていないことに驚き、この田舎惑星に初めて自分が侵攻するのだと考える。周囲の人々は、突然現れた青い金属の男に驚く。

 一方マシンマンは、自分も人間に嫌われ追われている身でテン・フォーを止めるため戦うことに矛盾を感じ悩んでいた。そんな彼に、死んだ父アベルの幻影が話しかけ励ます。自暴自棄になったマシンマンは、自分は人間ではない、政府の秘密プロジェクトで作られた製品なんだと激昂し、父が作ってくれたマスクを投げ捨ててしまう。だが、おまえは私の息子だと語りかける父の言葉にやっと心を開いた。父は、人間と同じように恐怖と嫌悪を克服するんだと励まし、アーロンは捨てたマスクを拾い再び顔に付けた。そこへ、一人の兵士が忍び寄ってきており、音波ピストルを向けて動くなと命じる。味方を呼ぶ兵士だが、マシンマンは腕を伸ばして木の枝を掴んで脱出、さらに次元転移装置を試してみた。この装置は転移場所の調整ができない弱点があったが、マシンマンは転移に挑み、とある食堂に出現。店内の人々は突然機械の男が現れたのに驚く。街へ出たマシンマンはテン・フォーを探し、パトカーが走っているのを見かけて足裏のバネを使ってジャンプしパトカーの天井に着地。逮捕すると言う警官に、このまま事件現場まで連れていってくれたらお役に立てると説明し現場に到着した。現場の警官たちもマシンマンを警戒するが、あなたがたでは対処できないことを助けるために少しの時間をくださいと説得。

 テン・フォーと対峙するマシンマン。人間に味方するマシンマンをテン・フォーは嘲笑し、俺に反抗するとこうなるぜと言いながらフェイス・オープン! 開いた顔から強烈なビームが発射されビルを崩した。この街の全てを破壊してやると言うテン・フォーに、マシンマンは指についているハンド・ウェポン・システムから火炎を発射。火だるまになったテン・フォーは、ロケットブーツを噴射し飛び去り、高速で飛行し火炎を消すと、再び着地しオートクロンとしての使命を再開した。マシンマンは手を伸ばして通りかかったヘリに捕まって移動しテン・フォーを追跡。再び宇宙ロボットと対峙するマシンマンだが、敵は腕をアンテナに変形させ、宇宙のオートクロンたちに信号を送っていた。早くなんとかしなければ、地球にオートクロンたちがやって来てしまうのだ!

 

 自己のアイデンティティに悩むマシンマンはあれほどこだわっていた人間の顔のマスクを投げ捨てるが、父の幻影に励まされ自分を取り戻す。悩めるヒーローとしての描写と、自分を取り戻した時の開放感が良い。

 地球ロボット対宇宙ロボット! ライバル悪役であるテン・フォーは、機械ではない肉の体を持つ人類を軽蔑しきっている一方、マシンマンについてはまだしも同類として認めている言動がみられ、こんな奴ばかりで構成されているオートクロン帝国について示唆される。テン・フォーはマシンマンに負けない装備を内蔵しており、秘密兵器フェイス・オープンはカービーらしいおもちゃ的ギミックとして面白い。この戦闘では火炎放射を浴びせたマシンマンがやや有利だが、まだまだこの二人の戦いは続くのだ。

 このコミックが収録された合本は

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MACHINE MAN #3

1978年 JUN

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 マシンマンは宇宙飛行士の頭部に手をやり、指から展開した装置によって男の思考を感知し目から映像を投影して、彼がどのようなものを見てきたのかを映し出した。そこには、別の星系の巨大な太陽と、その重力に引かれ捕らえられている異星の宇宙船が見えた。気が狂っていると思われていたこの男は、深宇宙探査で目撃した危機を伝えようとしていたのだ。あの異星宇宙船の主は、太陽に引き込まれる危険から逃れるため、人間の知覚を利用して次元を超えたコンタクトを取ろうとしているのだ。宇宙飛行士の男はマシンマンの能力を知り協力を求める。

 一方、マシンマンを追うクラッグ大佐マシンマンを探知し、音波砲などの兵器を持ってセントラル・シティへと出動していく。研究所の機械人間の暴走で部下や左目を失った彼は復讐戦に挑む。

 病院ではマシンマンスパルディング医師に、自分の部品を使って組み立てたアンテナを見せていた。マシンマンはこのアンテナで銀河の向こうとアクセスしようというのだ。と、アンテナはひとりでに起動し、恐ろしい風が起こり次元の壁が開いて向こうへ吹いていく。次元の向こうの宇宙が見え、部屋の家具が流されていく。マシンマンはスパルディングをドア向こうへ避難させ、手足に吸盤を出して体を固定し、アンテナを掴んでなんとか次元の壁を閉じようと操作する。壁は閉じた。スパルディング医師はめちゃくちゃになった部屋に入ってきた。マシンマンは、あの宇宙船の人物にここの位置を知られてしまったと言う。

 病院の外では、クラッグ大佐率いる軍の部隊が展開していた。音波砲を備え付け、戦闘準備を調えた部隊は、大佐の指令を待つ。

 病室ではマシンマンが次元アンテナを設置していた。怯える宇宙飛行士。次元アンテナを起動させると、人型をした影が見え始め、こちらに実体化した。青い金属のボディを持つその怪人は、時空を超えることは我がオートクロンでも高位の者しかなし得ないと言う。登場した機械人を見たマシンマンは、彼も人間のような心を持っているだろうと言うが、しかし相手はオートクロン帝国には心は要らぬと答えた。ベッドに寝ている宇宙飛行士を見た機械人は、この壊れやすい肉でできた生物はコミュニケーション装置として有効だったが、効率が悪いため生かしておいても仕方がないと言う。機械人を止めようとしたスパルディングだが、機械人が目から発したビームを浴びて動きを止められてしまった。機械人はマシンマンに、なぜこの肉袋をそんなに心配するのだと言う。幸い、スパルディングが浴びたのは短時間の停滞光線だった。マシンマンは機械人を危険と考え、次元アンテナで相手を元の銀河に送り返すと言うが、機械人は手からブラストを発射しアンテナを溶かしてしまった。機械人はテン・フォーと名乗り、大量虐殺の1級スペシャリストだと語る。

 そこへ、軍の砲撃が始まった。砲撃のエネルギーを吸収したテン・フォーは外の兵士に反撃しに出向くため、まずマシンマンの頭部に目眩シリンダーを打ち込み行動を妨げた。思考を乱されうずくまるマシンマン。テン・フォーは壁に空いた穴から飛び出していってしまった。停滞光線から回復したスパルディングはマシンマンに駆け寄る。早く目眩シリンダーを除去しテン・フォーを止めねばならない。地球に外宇宙のロボットの危機が到来したのだ。

 

 小さいアンテナで次元の壁を開けたりそこから異星のロボットが到来したりととんでもない話を経て、マシンマンのライバルとして異星ロボットのテン・フォーが登場。全4話にわたって暴れ回る。地球ロボットで心を持つマシンマンとは対比される存在だ。テン・フォーはまだ顔見せで、真の力を発揮していない。この話ではやられっぱなしのマシンマンだが、果たして宇宙ロボットに勝てるのか!?

 このコミックが収録された合本は

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MACHINE MAN #2

1978年 MAY

 WRITTEN, EDITED, AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 森の中で、マシンマンは悪夢を見ていた。自分の体は拘束され、まわりにはロボットたちが群がり、お前は我々と同じ機械だ、それを拒絶するなと迫り、アーロン・スタックの人工皮膚の顔をはがして素顔を暴き追いつめる。私は一人の人間だ、平和に生きる権利がある!と絶叫しながら目を覚ますマシンマン。彼は精神的に追いつめられていた。さらに、音波攻撃により反重力装置の配線が切断されているため逃亡にも支障が出ている。と、すぐ側の道を軍の車両が通過し、マシンマンは地面に伏せ、この場からも去らなければと思いながら、軍が自分を的確に迫ってくることに疑問を持つ。マシンマンの頭蓋骨に反応する探知機を持った軍のクラッグ大佐だがいまだマシンマンを発見できず部下を叱咤していた。

 マシンマンはガソリンスタンドにやってきて、店員にタイヤを売ってくれと言う。いきなりロボットがやってきてそんな事を言い出すので驚く店員は店主に相談。店主は売ってもいいが買う金はあるのかと訊ねる。マシンマンはその場に落ちていた石を手に取り両手で握りしめ、高圧と高温をかけ、このままでは危ないと急速冷却し、できた物を店主に渡した。ただの石だったものはダイヤモンドに変わっており、店の二人は驚く。マシンマンはタイヤを手に入れた。

 一方セントラル・シティの精神病棟では、看護婦がスパルディング医師に、0号室の患者が目を覚ましましたと報告に来た。病院に向かうスパルディング。患者は宇宙飛行士だったが、目を覚ましてから何かを恐れるように叫び続けるので、ベッドに拘束されていた。スパルディングは患者を落ちつかせようと語りかけるが、患者は狂乱しながら「磁気片にチャージして超次元コンバーターの出力を中断しろ!」「軌道が最大空間時間率を外れている!」と専門用語をわめき散らすため、薬を打たれて眠らされる。不可思議な患者に驚く同僚だが、スパルディングはあくまで冷静で、彼がどうしてこうなったのかはいずれ解明されるだろうと自信を見せ、もっと不可思議な話として機械の男に出会った話をするのだった。

 マシンマンを追う軍の部隊はガソリンスタンドに到着し、店員を無視して店内に突入し窓を破壊したりしながら捜索を開始した。と、壁を崩して登場したのは、買ったタイヤを足に接続し簡易三輪サイクルを作ったマシンマンだった。マシンマン・サイクルは一跳びで軍部隊を跳び越しあっという間に逃走する。軍を振り切ったマシンマンは二人連れのバイクの走り屋を驚かせ、セントラル・シティへ入った。目的地が近くなったので、マシンマンは目立ちすぎるサイクルを分離し徒歩で進む。

 夜。スパルディング医師はあの患者について考えていた。患者は外宇宙へ飛び立った宇宙飛行士だったのだが、彼に何が起きたのだろうか。パイプをくわえライターを手にし火をつけようとするスパルディング、だがその時レーザーが飛び火がついた。マシンマンが訪ねてきたのだ。どうやってここに?と問う医師に、レーザービームで窓枠を切ったと答えるマシンマンは、自分には隠れ家と友人が必要だと打ち明け、スパルディングも友人として助けになろうと請け合う。

 だが突如マシンマンは異星の通信が入ったと騒ぎはじめた。そして目から天井に受信した映像を投写する。それは異星の星系だった。スパルディングは倍率を上げるようにいい、巨大な太陽のプロミネンスの間に異星の宇宙船がいるのを発見する。映像はそこで途切れた。スパルディングはマシンマンに外宇宙へ出た宇宙飛行士の患者がいると話し、マシンマンはその人物があの映像通信の発信源だと答え、二人は0号室へ急ぐ。0号室では目を覚ました患者が恐怖でわめいていた。彼の言う恐怖とは一体何者なのか?

 

 #2ではタイヤを手に入れ三輪サイクルを組み立て逃走するマシンマンがメインだが、#1で登場したスパルディング医師の病院にいる患者を発端にして物語が動き出していく。

 このコミックが収録された合本は

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MACHINE MAN #1

1978年 APR

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 マシンマンは腕を伸ばし高山の岩壁から落ちそうになっているフレディという男を救おうとする。フレディの友人の登山者たちは、この機械の男の機能を見て驚く。マシンマンの伸びた腕からはシリンダーが何本も飛び出してハシゴのようになり、眼下で危機におちいっている男を掴もうとするが、寸前でフレディは落下してしまった! マシンマンは飛び降り、伸ばした腕で男の足を掴み、重力制御で浮き上がり、登山者たちのところへ戻ってきた。感謝すると同時に、この機械の男を作った高度な技術を驚きの目で見る一同。私のことはマシンマンと呼んでくれと言い、機械の男は垂直な岩壁を歩いて去っていった。

 ブロードハースト博士の研究室に、政府から派遣された官僚が来訪していた。男は博士が研究していた知能を持つ人間型の機械Xモデルについて問いただす。博士は、新たな人類として製作されたロボットたちはアイデンティティ崩壊という共通した病気を持ってしまったと語る。それ故ロボットたちは暴走し警備隊に死傷者まで出てしまっている。そしてその最終モデルは生きた人間のような精神を持つに至ったが、博士はその理由を、アベル・スタックという心理学者がX-51に人工の皮膚をつけて人間の顔を与え自分の息子アーロン・スタックとして育てたためだと説明する。そのため人間の心を持つに至ったアーロンはこの計画の最後の希望なのだと語る博士。だが政府官僚は全てのXモデルには破壊指令が下っていると言い、最後の一体が外の世界をさまよっているのは明白だと指摘、Xモデルのプロジェクトはすでにあなたの管轄から外れていると知らせ、X-51の破壊を発表した。

 森を歩くマシンマンは倒木で道をふさがれ立ち往生しているピーター・スパルディングという男と出会い、巨木を持ち上げ彼を助ける。スパルディングはお礼にマシンマンを自分のバンに乗るように誘う。スパルディングは精神科医で、知性を持つ機械であるマシンマンと会話しながら車を進める。

 街についたところでマシンマンは車から降りる。スパルディングは何かあったらセントラル・シティを訪ねてくれと言って別れた。足に車輪と板を出して両足をつなげスケートボードに変形させ、渋滞する車の間をすり抜けて進むマシンマン。その姿は警官の目にとまってしまい、マシンマンは追われるが、スケートボードモードをやめて超音速で飛び去った。

 だがそれで窮地を脱した訳ではなかった。ブロードハースト博士の研究室には無数の兵士がやって来ており、彼らの指揮を取るクラッグ大佐は、過去のXモデルに部下の警備兵を殺されたことを恨みに思っており、X-51抹殺に執念を燃やす。ブロードハースト博士は科学が産んだ知性という奇跡は貴重だと説くが、大佐は聞く耳持たず、X-51の頭蓋骨に反応する探知機を受け取り去っていった。

 郊外へ退避したマシンマンだが、そこへ軍のヘリが飛来し音波ライフルで攻撃してきた。攻撃を受け反重力装置が機能しなくなったマシンマン。彼は自分に破壊指令が下ったことを知り、フィンガー・ウェポンズ・システムを開き火炎放射で周囲に炎を放つ。展開する歩兵たちは慌てながらもマシンマンを発見し銃撃。マシンマンも指からのブラストで反撃。混乱の中、気が付くとマシンマンの姿はなかった。腕キャタピラで茂みの中を進み脱出したのだ。だが彼には助けが必要だ。マシンマンはピーター・スパルディングのことを思い出し、彼を訪ねようと考えるのだった。

 

 MACHINE MAN #1だが、2001: A SPACE ODYSSEY #8から続いているストーリーのため、実質的には4話目。主人公の名前はミスター・マシンから、よりヒーローらしいマシンマンに変わった。マシンマン内蔵の超装備が次から次へと出てきて読者の心をぐいっと引き込む。

 マシンマンが得た人口知性を重要な技術と考える科学者ブロードハースト博士に対し、破壊しようと動く政府や軍が描かれ、緊張感が高まる。そんな中、マシンマンに信頼できる知人スパルディングが登場し、ドラマは動き出していく。

 このコミックが収録された合本は

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2001: A SPACE ODYSSEY #10

1977年 SEPT

EDITED, WRITTEN + DRAWN BY JACK KIRBY

 

 リビアジェリーミスター・マシンの三人は、町の保安官のところへ行き、卵型の飛行機械に襲撃されたことを話す。突拍子もない話に、信じられない様子の保安官だが、ミスター・マシンは現場に行ってみれば残骸が発見できると言う。ジェリーは、ヒドラ党がミスター・マシンを捕まえに来たんだよ、でも大丈夫、ニック・フューリーたちが助けに来てくれるからと言い、オリビアはコミックの話ばかりする弟をたしなめる。保安官は機械人間が実在しているのに驚いている。保安官はこのあとどこへ行くのかと訊ね、姉弟はうちに泊まってとミスター・マシンを招待した。

 一方、地下に隠された秘密基地では、ミスター・ホットラインが部下のクリンジから、カプセル機の残骸の始末が完了したと報告を受けていた。この秘密結社自慢の兵器であるカプセル攻撃機が撃退されたことに恐怖するクリンジ。ミスター・ホットラインは、あれは極秘とされるXモデルだと答える。彼らはハーデス神を信仰する一党であり、全地球をマインドコントロールする計画を立てているのだ。ミスター・ホットラインがモニターの前で祈りを捧げると、悪魔のようなハーデス神の姿が登場。ハーデス神は、そやつの秘密を探ることで全ての者をコントロール下に置く方法を得ることができると言い、そのXモデルを連れてこいと命じた。

 ジェリーの家に滞在するミスター・マシン。オリビアとジェリーの父は機械の男の訪問を驚きつつも歓迎してくれた。ミスター・マシンをコミックの中のスーパーヒーローと思っているジェリーの視線はずっと彼に釘付けだ。家族につれて訊ねられ、彼は自分の父はアベル・スタックで、自分にアーロンという名をつけてくれたと答える。ジェリーの父はミスター・マシンが有名な科学者であるアベル・スタックの息子だと名乗ったことに驚き、アベル・スタックは最近亡くなったはずだがと言う。その言葉に衝撃を受けるミスター・マシン。ジェリーの父は、アベルが爆死したと新聞に出ていたことを伝える。父アベルの死を知ったミスター・マシンを皆はなぐさめようとするが、そこへ武装した戦闘員三人が乱入し、銃を向けて、家族を傷つけたくなければ同行しろと命じる。

 ミスター・ホットラインの前に引き出されるミスター・マシン。戦闘員を一撃し、銃弾をはね返すミスター・マシンだが、怪人物ミスター・ホットラインはあの家族を人質にしていると脅す。怒るミスター・マシンではあったがここは従うしかない。彼は固定具に入れられ研究室に運ばれ、技術者たちにX線透過装置で体の秘密を調べられ、ボディのジョイントを解体され両腕・両足・胴体・頭に六分割されてしまった。ミスター・ホットラインは、X-51の意識をつかさどる頭部のみをマインド・モニターのところへ運ぶよう部下に指示する。ミスター・マシンは敵の一団が地球をアリの巣のような意志のない世界にする目的だと知った。ミスター・ホットラインは別室に退避してからマインド・モニターを起動。ミスター・マシンの前にハーデス神が現れる。邪悪な姿を見て、自分の魂を奪うつもりかと叫ぶミスター・マシン。ハーデス神の目からエネルギーが発せられ、X-51の頭脳部分へ強烈な電流がながされその機構を探りはじめた! だがX-51の防衛機構が発動、頭部からテレビジョン・トランスミッティング・ユニットが飛び出し、送信を開始する。

 電波を受けたミスター・マシンの手足が、離れた別室の中で動き出す。分解した手足が突然活動しはじめたことに驚く技術者たち。手足は技術者たちを叩きのめし、胴体のところに歩いていって自分たちと胴体をつなぎあわせた。異変を知った戦闘員たちが銃やバズーカを手に部屋へ向かい、扉を破ろうとするが、扉は逆に内部からの炎で破られ、頭部がないX-51の体が躍り出て、壁を突き抜けて頭部のある部屋へと到着した。

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 ミスター・マシンの頭部は胴体に接続された。彼は眼前の悪魔的な像に立ち向かい、指からのブラストを発射する。ガラスの割れた音がして、そこに残されたのは破壊されたモニターだけだった。あの悪魔は、ただのホログラムだった。このハーデス神教団を支配するために作られたイメージだったのだ。ミスター・マシンは、教団をつかさどるスーパーコンピューターを発見する。彼はコンピューターの画面にジェリーたちの家で爆弾を持って家族を人質に取っている戦闘員を映し出し、コンピューターを操作して爆弾を融解させる。家族は戦闘員が倒れたことに驚き、父はオリビアに保安官へ電話するように言い、戦闘員を縛り上げる。誰が助けてくれたんだろうと言うジェリー。父は、おまえのスーパーヒーローかもなと答えるのだった。

 ミスター・マシンは教団の施設の天井を破って脱出していた。施設は彼がコンピューターを暴走させたことで大爆発を起こした。ミスター・ホットラインはカルト教団を支配する邪悪な天才だった。ミスター・マシンは、人々の自由を守るという自分の運命を初めて自覚するのだった。

 

 この号が、コミック版2001: A SPACE ODYSSEYの最終回だ。モノリスはもはや登場せず、内容は映画を大きく外れ、ロボットヒーロー対カルト教団に偽装した科学結社という、とんでもないストーリーになっている。ハーデス神の名で登場する悪魔は最後に本物ではないと明かされるものの、ミスター・マシンと悪魔の対峙はとても違和感があって面白い。怪人物ミスター・ホットラインの正体は、結局明かされないまま終わる。X-51の腕や足が一本一本独立して暴れまわるシーンはとても可笑しい。

 そして、ロボットヒーローが主人公となったことでこのタイトルは終了し、新たに彼の独立タイトルがスタートするのだ。

2001: A SPACE ODYSSEY #9

1977年 AUG

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

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 機械の顔をさらしたまま、拘束を脱したX-51は行動を開始する。彼は自分の顔が奪い取られたことに激しく怒っていた。扉のダイヤルを回し、セットされていた音波バズーカ砲の攻撃をかわし、指に仕込まれた火炎放射器で砲を焼き払う。その先の扉を破ったX-51は兵士たちを蹴散らして捕らえ、自分の顔がどこにあるのか激しい調子で聞く。だがその兵士は知らない。兵士を指からの軽いビームで気絶させた彼はヘルメットと銃を奪い、頭部の脳の位置にあるコンピューターで兵士の喋った言葉を組み替え「急ぎ部隊へ伝達せよ、機械は牢から脱出した」と通信。あわてて一部隊が鉄の扉を開き入ってくる。扉の影に隠れていたX-51はさっと外へ出て扉を閉じてしまった。彼は求めるものを探しに向かう。

 一方オフィスでは、クラッグ大佐ブロードハースト博士が衝突していた。大佐がX-51から顔を取り外したことを、彼の唯一のアイデンティティーを奪ってしまったのだと説明する博士。それをはなから馬鹿にする大佐に、博士は考える機械に悲しい偏見があるなと答える。神は彼を助け賜うという博士に、あれはただの機械だ、お前はXモデルの破壊命令を出しただろうと言う大佐。X-51は別だ、彼は損なわれないままであらねばならないと反論する博士。そこへX-51脱出の報告が届く。クラッグ大佐は前と同じく音波兵器を使ってバラバラにすべきだと主張し、ハイネスも同意するが、ブロードハースト博士は拒否し、兵士の抵抗を止めさせろと命じる。そんな事をすれば部下の兵士は虐殺されると大佐は憤り、お前は奴がここを出て行くのを許すつもりだなと言う。博士はその通りだと答え、お互いの信念と信頼をもたらすつもりだと宣言した。

 X-51は兵士たちの抵抗と戦う。鉄の防御壁をひねり潰し、兵士たちを弾きとばし、音波ライフルを持つ兵士に飛びかかって持ち上げた。そこへ別の兵士たちが入ってきた。戦いはやめよう、自分たちは話し合いに来た、あなたがこの施設から出て行く許可が出たのだと言う兵士。彼らの言葉を信じてついていくと、技師は自分が求めていたアーロン・スタックの顔を取り付けてくれた。喜びお礼を言うアーロン。さらに兵士はアーロンが持っていたコスチュームも返してくれた。技師は人間そっくりな言動をするアーロンに驚き言葉をかけるが、アーロンは自分の目だけはロボットにしか見えないけどねと返す。自分のことはミスター・マシンと呼んでくれと言い残し、彼は施設から飛び立っていった。それを見送るブロードハースト博士は、我々はあの鳥を籠に収めておくことはできないと言う。クラッグ大佐は、お前は世界の危険を解き放っただけだと怒る。だがブロードハーストはX-51に発信装置を仕掛ける指示を出していた。X-51の所在は人工衛星にモニターされているのだ。

 飛翔していったミスター・マシンは着地し、無用の危険を防ぐため目立たないように道路を歩こうと考える。その彼の前に、モノリスが現れた。彼に脱出をうながしたモノリスは、次に彼をどのように導くのか。そこへ男の子が現れ、彼をみて驚き、まるでマーベル・スーパーヒーローみたいだと感激して言う。この男の子ジェリーの姉リビアの車がこの近くでパンクしていて、二人は立ち往生していたのだ。ミスター・マシンは車を片手で持ち上げタイヤを交換する。驚きつつも感謝したオリビアは、彼を車に乗せてくれ、三人は走り始めた。

 一方、怪しい黒い車に乗ったマスクの怪紳士ミスター・ホットラインは、運転手クリンジからXモデルの一体が破壊されずに逃れたと報告を受ける。細かい状況を伝えない運転手に、報告は正確にせよと威圧した怪紳士は、マイクを取って通信を始めた。

 車で走る三人。ミスター・マシンは何らかの信号を受信した。スーパーヒーロー大好きなジェリーは、アベンジャーズファンタスティック・フォーからのメッセージかなあ、ドクター・ドゥームが来るのかもとはしゃぐ。そこへ、卵形のカプセルが三機飛んできて攻撃しはじめた。車から降りたX-51は、足のシャフトを軸に足首を回転させて地面に埋めて足場を固定し、足のシャフトを伸ばして頭からカプセル機に突っ込み一機目を撃破。二機目は着陸し、乗員は音波砲をかまえて狙いをつける。だがそれが発射される前に、X-51の目は相手をターゲットスコープに捕らえ、衝撃波を撃ち込んだ。三機目は、カプセル機に装備された火器で攻撃してきたが、X-51は突撃しカプセル機は粉砕された。やったぜスーパーヒーロー!と喜ぶジェリー。心配するオリビア。ミスター・マシンは二人を巻き込んでしまったことを詫びる。オリビアは、攻撃されたことを警察に言わなくちゃと言い、三人はこの場を去る。だがその様子は、ミスター・ホットラインたちに監視されていた。

 

 X-51は、父が作ってくれた人間の顔を取り戻すために激闘。人間に反逆するのも、機械ではあるが人間として生きたいという彼の目標ゆえであり、彼の願いが強く感じられる。

 X-51を解き放つブロードハースト博士だが、決していい人だからではなく、秘かに発信装置をつけて追跡するなど、人間としての自我を持ったロボットがどう動いていくのか知りたいという科学者としての冷徹な目的があるのがシビアだ。

 ジェリーはミスター・マシンをマーベル・スーパーヒーローの一員ではないかと言う。後には本当にそうなるのだが、ここではコミック狂の少年がコミックと現実をごっちゃにして喋っている風で、マーベルユニバースの世界観とは分けて描かれている。一方、明らかにヴィランな怪紳士が登場し、ストーリーは急速にスーパーヒーローものになっていく。

2001: A SPACE ODYSSEY #8

1977年 JULY

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 兵士たちが、機械人間を取り押さえている。額にX-35と書かれたそのロボットは「私は物ではない! だが私は何だ? 私は何だ!?」と叫び、すさまじい力で兵士を振り飛ばした。兵士は火炎放射器を浴びせるが、ロボットは「なぜ私は作られた!? なぜだ!?」と言いながらなおも暴走を続ける。兵士たちはたまらず退避し、銃撃するが、ロボットは止まらない。

 研究室にも警報が流れていた。この機械人間のプロジェクトを統括する科学者ドクター・ブロードハーストのところへ、ハイネスという男が駆けつけ、X-35の暴走を知らせる。この種の失敗を重ねてきたことに悩む博士に、ハイネスはプロジェクトの中止を進言するが、博士は「彼らは狂ったのではない、彼らは単に、人間の形をした思考するコンピューターに過ぎないのだ」と答える。だがそのコンピューターは、自分をそれ以上のものだと考えているようだ。博士はロボットを止めるために、自爆装置のスイッチを入れた。

 必死でロボットを食い止めようとする兵士たちは、レーザーライフルで銃撃を続けていたが、ロボットの金属の体はこたえず、動きが止まらない。X-35が兵士たちへ迫るその時、自爆装置が発動し、大爆発を起こした。

 研究所内に警報が響きわたる。全職員の退避が指示され、技術者たちはプロジェクトの破棄を惜しみつつその場を去る。作りかけも含めすべてのロボットの自爆装置が起動され、この研究の成果は爆煙の中に消えた。ドクター・ブロードハーストは、プロジェクトの最新モデルであるX-51について語る。X-51は他のモデルとは異なり、ドクター・スタックにあずけられてスタックの息子として育てられているのだ。だがX-51に取り付けられた自爆装置も起動される。ブロードハーストは爆発の時にスタックが近くにいたいことを祈る他なかった。

 アベル・スタック博士の家では、博士が彼の息子アーロンとして育てているX-51に、新しい顔のマスクをプレゼントしていた。今回の顔は人間そっくりで、アーロンはとても気に入り、父にお礼を言う。アベル博士はアーロンの首筋のハッチを開き、自爆装置を引く抜く。そして、ロボットの姿に戻った息子に別れを告げ、自分の写真の画像を目からのビームで走査させて記憶させる。人間とロボットではあるが、二人は本当の父子のようであった。いまアーロンは父の元を離れ、自由を得るため飛び立つのだ。アーロンは父の用意したグリッド板の上に立ち、グリッドは反重力装置を補助して、アーロンを空高く飛翔させた。それを見送るアベル博士。研究成果であるロボットを息子として育て、彼を逃がしたアベルは、息子の逃亡を完全なものにするため、起動した自爆装置と運命を共にするのだった。

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 空を飛ぶアーロンはジャンボジェット機と併走しパイロットたちを驚かせ、街へやって来る。ビルの上から人間たちが歩き回るのを見ていると、通報を受けた警官隊が彼を包囲した。その場から飛び去ろうとするアーロンだったが、警官隊は発砲し、さらに軍のヘリまで到着しミサイル攻撃を受ける。飛んで逃げようとするアーロンだが、戦闘機の攻撃があり、岩山に身を隠した。なぜ自分が軍に狙われるのかと考えるアーロン。彼のコンピューターにも「データ不十分」で結論が出ない。その間にも軍の部隊が迫る。音波ビームバズーカの攻撃を受け吹き飛ばされるアーロン。

 気が付くと彼は捕らえられ、拘束され、一人の軍人と対面したいた。その男はアーロンを口汚く罵倒し、もし逃げ出せば眼前のソニックガンを撃ち込んでやるぞと脅す。なぜこんな扱いを受けるのか疑問なアーロン。

 この様子をモニターしていたドクター・ブロードハーストは、その軍人クラッグ大佐の態度に怒りを露わにする。ハイネスは彼は優秀な指揮官だと言い、ブロードハーストもそれは認める。大佐の部下たちにこれまでのロボットの反乱で死傷者が出ているのも事実だが、それにしても酷い事をする。大佐はアーロンから人間の顔のマスクを奪い、機械の顔をさらけださせたまま拘束しているのだ。ブロードハーストとハイネスはクラッグ大佐に会い抗議する。

 拘束されたアーロンはこの境遇に苦しんでいた。彼は自分を機械だ屑だと言った、だが自分は考え、感じ、心が痛む。なぜ自分を兄弟のように扱ってくれない? なぜ皆は私を嫌うのか!? 苦悩するアーロン。その時、彼の前に突如、モノリスが現れた。モノリスからの力でパワーを取り戻したアーロンは、驚くべき力で拘束を破壊し脱出する。モノリスとの出会いは彼に何をもたらすのか?

 

 前号まで続いた、人類がスター・チャイルドに至る話から一転し、ロボットの主人公が登場する。もちろん映画にも小説にもこんなロボットは登場しない。ここまでやってしまうと、これはほんとに『2001年宇宙の旅』なのか?と思いたくなる。ではこのロボットX-51アーロン・スタックはどうして出てきたのか?

 謎を解く鍵は、1972年に出版された、アーサー・C・クラーク著の『失われた宇宙の旅2001(THE LOST WORLDS OF 2001)』から得られる。この本は、映画のストーリーが決定するまでに様々な案を試行錯誤する中で、結局本編では使われなかったシーンを集めてクラーク自身が解説するというメイキング本だ。映画のメインテーマが「高次生命体が地球人類を進化させ、人類は次なる段階へ変化する」になり、それを実現するために多方向の検討が行われていく様を読むことができる。

 例えば初期稿では、地球人に知性を与える高次の宇宙人が、太古の時代の地球に登場する場面がある。続いて、この宇宙人(クリンダーと名付けられている)が猿人を捕らえて進化のために分析や実験を行う様子も描かれている。だが、当時の技術では宇宙人を造ってもありきたりのモンスター映画になってしまうという理由で、結局この構想は捨てられている。完成した映画や小説では、異星人の高次ツールであるモノリスが主体となった。

 そして、映画ではボイスコンピューターであるHAL9000は、初期稿ではソクラテスという名のロボットとして登場する予定だったことがこの本に書かれているのだ。

 ジャック・カービーが直接ここから題材を取ったのかは判らない。まず、ソクラテスは人間型のロボットではあるが、X-51ほどではない。描写されるデザインは、右手は三本指だし、左手は万能工具、そして顔の部分はセンサーの集合から成るフレームワークだ。しかし、ソクラテスが人間と同様の思考ができるように訓練されるシーンがある。また、ソクラテスを見た人が機械人間に反感を抱く展開もある。そして、製作者のブルーノ・フォースター博士は、ソクラテスたちロボットが人間にとってかわる存在になることを確信している。いまはプログラムされるままに「生命とは何ですか?」「宇宙の目的とは何でしょうか?」という答えのない質問を発してくるソクラテスだが、

 こういう質問をきっと自発的に、台詞を付けられることもなしに発するようにはるだろう。さらにすこし待てば、その質問に答えるロボットが現れるにちがいない

と述べられ、

 その日が来ても、彼らがおのれの造り主たちと仲良くしてくれていたら……

と書かれているのだ。これらのテーマは、X-51のその後の展開にも関わってくるので注目してほしい。

 さらに、X-51登場と同時代の'70年代後半にジャック・カービーが始めたコミックを読むと、また面白い符号がある。

 '76年にスタートしたTHE ETERNALSには、人類の他にエターナルズ、デヴァイアンツという、猿人から進化させられた種族が登場するのだが、この3種族に進化実験を行った神のような宇宙種族セレスシャルズが実際に登場する。セレスシャルズの姿は異様で不可解であり、人類が理解できない高次の存在として説得力がある。『2001年宇宙の旅』ではリアルに描写できないからという理由で実現できなかった事に、コミックの表現を使って挑んでいるのだ。

 また、'78年にスタートしたDEVIL DINOSAURは、デビルという真っ赤なティラノサウルスと原始人の少年がコンビで主人公なのだが、少年の名がムーンボーイという、小説『2001年宇宙の旅』に登場する〈月を見るもの Moon-Watcher〉を思わせる名前なのだ。さらに、DEVIL DINOSAUR #4から数話続くストーリーでは、宇宙人のロボットが飛来し、ムーンボーイを捕らえて分析する展開があるのだ。

 ジャック・カービーが'70年代後半にマーベルに復帰してから新たに創作したタイトルは、THE ETERNALS、DEVIL DINOSAUR、MACHINE MANと3つあるわけだが、考えてみればそのどれもが『2001年宇宙の旅』初期稿と類似点がある。カービーが、映画や小説の『2001年宇宙の旅』では結局使われなかったアイデアを発展させることで新たなコミックを展開していったと考えると、とても面白い。

 また、X-51の物語は、イアンド・バインダーの『ロボット市民』と類似点が多いことも指摘しておきたい。

 ともあれ、コミック2001: A SPACE ODYSSEYはあと2号続く。

2001: A SPACE ODYSSEY #7

1977年 JUNE

EDITED, WRITTEN, AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 宇宙飛行士であったゴードン・プルエットは森の中を歩いていたが、宇宙での事故のあと自分がなぜここにいるのか記憶がなかった。何が起こっているのか? 気付くと着ていたはずの宇宙服がなくなり普段着になっている。彼はこの森の風景に安らぎを覚える。岩を背に座り込んだ彼の体は、次第に老い、モノリスが現れプルエットをスター・チャイルドに変えていった。

 誕生したスター・チャイルドは新たな力と思考を得て、モノリスのもとを離れ、彗星より速く宇宙を飛翔していった。様々な世界をまわるスター・チャイルド。原始の惑星では恐竜のような生物が戦いあっていた。対照的に、機械技術が極限に発達し驚くべき巨大な建造物を作り上げた世界もあった。

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 そして彼は、文明が崩壊するほどの戦いが行われた世界へとやってきた。瓦礫の上で、兵士はライフルを向けてくるが、スター・チャイルドは炎を発し武器を焼く。逃げ出した兵士を追っていくと、他のも人々がいた。そのうちの一人は、この世界の汚染に耐えきれずに倒れて死んだ。それを宙からながめるスター・チャイルド。

 スター・チャイルドはこの惑星の破壊された文明の跡を見てまわり、銃を手にした野蛮な男たちが女性を襲っているところに遭遇する。男たちは女性を捕らえるが、そこへ一人の兵士が登場し、男たちに向かっていった。集団で兵士をリンチする男たちだが、兵士は逆襲し、鞄から手榴弾を投げつけた。男たちは吹き飛ばされていき、女性は救われた。抱き合う二人。だが男たちが最後の力で男を、さらに向かってきた女を、銃殺してしまう。その場には誰も生き残らなかった。それを見たスター・チャイルドは考える。この惑星は死以外何も生み出さなかったのか? あの二人が最後に見せた勇気と愛を、この星ができた意義として、スター・チャイルドはその力でエネルギー化し、自分の後ろに引っ張って惑星を離れる。そして銀河を横断し、ちょうど生命が誕生する寸前のエリダヌス座イプシロン星へと飛来し、生命誕生のエネルギーとして海へと加えた。別の惑星で生まれた貴重なものは、何万年も後にこの星の生命として開花するだろう。スター・チャイルドは次なる答えを求めて、宇宙の旅を再開するのだった。

 

 人類の次の段階である新たな種スター・チャイルドになった者が、それから何をするかは、映画では語られず、小説版でもわずかに語られるだけだった。コミック版も前号まではスター・チャイルドになるところまでで終わっている。映画の続編として書かれた1982年発行の小説『2010年宇宙の旅』ではある程度語られるのだが、誰しも気になるそのテーマに、本号ではコミック版なりの答えを描いているのが意義深い。愚かさから滅んだ星と、そこにあった人間の美しさが次代へと伝えられるというこの物語は、まるで手塚治虫の『火の鳥』のようだ。

 スター・チャイルドについては本号で区切りがつけられ、次号では別のキャラクターが誕生する。

2001: A SPACE ODYSSEY #6

1977年 MAY

EDITED, WRITTEN AND DRAWN BY JACK KIRBY

 

 宇宙船のスクリーンに、敵の異星人たちの顔が映る。だが相手の言葉は理解できず、何を要求しているのか皆目わからない。焦りながらなんとか翻訳できないかと試みる宇宙船の乗組員二人。だがそこへやってきた三人目の乗組員ハーベイ・ノートンは、異星人の攻撃にこれこそコミックファンの夢だと有頂天で、さらに相手の目的はプリンセスに違いないと断言する。彼にとってカプセルから出てきた女性は自分の相手役のプリンセスなのだ。敵はプリンセスを探知しているに違いないと言うノートン。この緊急事態に浮かれたことを言うコミックおたくにいらだつ二人の乗組員。そこへさらに攻撃が加えられた。急いで宇宙服を着なければとあわてる二人をおいて走り出したノートンは、敵の攻撃のスリルを楽しみながらエアロックを通り抜け、異星宇宙機へ行きプリンセスと会った。だがプリンセスも人間の言葉を理解できないようだ。宇宙船に残された二人は、ノートンの勝手な書き置きを見て怒る。

 異星宇宙機に乗ったプリンセスとノートンは、敵の戦闘艦の追跡をかわそうと宇宙空間を圧倒的な速さで疾走していた。ノートンはプリンセスに名前や故郷を訊ねるが、返事は返ってこない。と、敵艦から攻撃を受け、それを振り切るためにプリンセスは「スター・ドライブ」を起動。あっという間に宇宙機は空間を飛び抜け、人類未到の異星へたどり着いた。驚き興奮するノートン

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 だがそれも束の間、スクリーンに宇宙艦の姿が現れた。追跡されたのだ。プリンセスの宇宙機は攻撃をかわし岩山をくぐり抜け、建物へと近づいていったが、そこで撃墜されてしまう。ぐったりするプリンセスを抱えて脱出したノートンは、彼女が示す建物へと向かう。敵艦から兵士が降下してきた。プリンセスはノートンに銃を握らせ、それを撃ったノートンは威力に驚く。敵兵士を一掃したノートンはプリンセスと共に建物に向かった。そこにあった装置に登るプリンセス。ノートンが下で見ている中、プリンセスはその物質転送機を起動させて消えていった。自分が置き去りにされたことに気付くノートン。そこで、敵艦の攻撃で建物が崩れる。瓦礫に生き埋めになったノートン。戦闘艦は去っていった。気絶したノートンの上にまるで墓標のようにモノリスが立ち、ノートンの体を変貌させる。

 気が付くとノートンは、再びヒーローのコスチュームを着ていた。今度のはキャプテン・コズミックの衣装だ。彼は自分の街を窓から見おろし、安堵する。彼の体は老いていき、モノリスノートンスター・チャイルドに変えるのであった。

 

 異星の「プリンセス」のために尽力するノートンだが、彼女に理解されず便利に利用されたに過ぎないことが語られ、なんとも哀れだ。ノートンに彼女を助けさせたモノリスの意図もわからないまま終わるのだが、最後にはノートンはスター・チャイルドに変えられるところをみると、宇宙規模では何かしらの意味があったことなのだろう。

 人類の知らない星系へ行きそこを描写するのは『2001年宇宙の旅』の初期プロットにあった展開なのだが、コミックではカービーがコミックならではの効果を使って人知の及ばぬ風景を絵にしている。

アメコミONLYイベント「TEAM UP 13」にサークル参加します

アメコマー菅野のアメコミ同人誌サークル「アメコミ向上委員会」は、2019年5月25日(土)に蒲田の大田区産業プラザPiOにて開催されるアメコミONLYイベント「TEAM UP13」 にサークル参加します。

 

【追記】【お願い】頒布しました「銀鷹」のうち1冊が18-19ページが抜けた乱丁本であったことが判りました。もし乱丁本をお買い上げいただいた方がおられましたら、次回以降のイベントでお申し出いただければ、対応させていただきます。申し訳ありませんでした。

 

頒布予定の同人誌をお知らせします。

 

銀鷹 【新刊】

:シルバーエイジ・ホークマンの紹介本です。ゴールデンエイジで輝かしい活躍をみせたホークマンをシルバーエイジで再始動するにあたり、ガードナー・フォックスはどんな構成にしたか?を語ります。

 

シェルドン・モルドフのゴールデンエイジ・ホークマン

:ゴールデンエイジ・ホークマンを、シェルドン・モルドフのアートがもの凄い!という視点を軸に紹介しています。10年以上前の同人誌駆け出しの頃に出した本ですので稚拙なのがお恥ずかしいのですが、今回少部数再版します。

 

JKGA

:シルバーエイジのグリーンアローは、一時期ジャック・カービーが描いていた時期があるのです。この時期の魅力をお伝えする本です。

 

ジャック・カービーファンタスティック・フォー -接触篇-

ジャック・カービーが描いた、ファンタスティック・フォーが登場するコミックを、Fantastic Four #21まで御紹介。マーベルのシルバーエイジ開幕を感じていただければ!

 

ジャック・カービーファンタスティック・フォー -発動篇-

:上記の続刊。カービーのアートが加速度的に進化していき、マーベルユニバースも広がっていく醍醐味を是非!

 

たとえ赤狩り人とよばれても 50年代のキャプテン・アメリカ 【委託】

:ラジアクさんの同人誌を委託頒布。あまり知られていない、キャプテン・アメリカが'50年代に復活していた時期について、全てのストーリーと魅力を紹介・解説されています!

 

The Ghost in the Iron Shell '80-90年代のアイアンマンに何が起きていたか 【委託】

:Humanflyさんの同人誌を委託頒布。タイトル通り'80-90年代のアイアンマンをじっくりしっかりみっちり大解説! 個人的にこの時期が大好きなので、お勧めです!

 

当日はよろしくお願いします!